1.多様な人がいる「みんな違っていい」が当たり前の社会
お子さんが、発達障害やグレーゾーンの特性があることがわかったとき、みなさんはどんなお気持ちだったでしょうか?
「障害って…」
「これからどうしていけばいいの?」
「この子は周りと違うのだろうか…」
「どう本人に伝えたらいいの?」
などなど、様々な想いが湧いた方も多いことでしょう。
しかし、違う視点から見ると、みんなと同じようにできないことがあるから、周りの人が考え、社会がより良くなっていくと考えることもできますよね。
前回、バリアフリー社会人サークル「colors」を立ち上げ、そのcolorsを舞台にしたドキュメンタリー映画にも出演された石川悧々さんに、娘さんが不登校だった時の話を伺いました。
障がい者でシングルマザーの娘さんが不登校に?!学校ではない場所で自信をつけて楽しいと思える人生の歩ませ方~映画「ラプソディーオブcolors」出演 石川悧々さんインタビュー~
石川さんは、「“障害”とは障害者個人にあるのではなく、社会や環境の中にある」という「障害の社会モデル」の視点を獲得し、“障害者”ではなく「社会・環境」を変える行動をしていくことを目的とした「障害平等研修(DET)」の認定ファシリテーターとしても活躍しています。
障害平等研修(DET):障害者との対話を通して、多様性を基礎にした共生社会を作る行動を促す障害教育プログラム。東京オリンピックパラリンピックのボランティア約8万人に研修をした実績があります。
多様な人がいる、“みんな違っていい”が当たり前な考え方の社会になると、差別・偏見が減り、さらに発達障害やグレーゾーンの子どもたちも生きやすくなります。
今よりももっと多様な人たちと交流することが予想される子どもたちに、私たち大人は、多様性をどう伝えたらいいのかヒントになるお話を伺いました。
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2. 障害がありなし関係なく集まれる場所がほしかった
石川さんは、障害ありなし関係なく誰でも楽しめる「バリアフリー社会人サークルcolors」を立ち上げます。
そこでたくさんのイベントをする中で、障害者、グレーゾーン、健常者など、多様な人たちが分けへだてなく楽しむ姿を見て、これが当たり前の社会の在り方なのだとたくさんの人に気づいてもらうために障害平等研修を行っているそうです。
ーー石川さんが、映画の舞台にもなった「バリアフリー社会人サークルcolors」を立ち上げるきっかけはなんだったのでしょうか?
「娘のお友だちで、発達障害のお子さんが、おやつの時間に座っていられないなどの理由で、児童館で出入りを断られた子がいました。
その子が、放課後に一人で自転車に乗って街をうろうろして危ない、さらに友達がいなくなってしまったのを見かけて…
近所のNPOが、障害があってもなくても一緒に遊べる場所が必要ではないかと『おもちゃ図書館 じゃりかふぇ』という居場所を作りたいというのを聞いて、私がその運営をやりました。
そこでは、「遊んだら最後には片付けようね」だけがルールで、お菓子もゲームも自由。子どもたちは障害の有無や年齢関係なく自由に遊んでいました。残念ながら私の体調が悪くなり、6年目で閉館しました。
『じゃりかふぇ』では色んな子どもがまぜこぜになって遊んでいました。それは必要なことだし、素敵な場所だと思っていて…それの大人版が『colors』です。
ーー本当は児童館がそういう場所であってほしかったですね。発達障害の子を育てる親として悲しいことです。colorsが舞台の映画『ラプソディーオブcolors』を観させていただきました。colorsに来る様々な特性や個性あふれる人たちがたくさん出てきて、観ていて飽きませんでした。みなさん楽しそうでしたね。
「colorsでは、車椅子用のスロープ、天井には聴覚障害の方のために磁気ループをつけて、様々な配慮をして誰が来てもいいよとしていました。
音楽ライブや、ソーシャルな話題のトークライブ、飲み会なども開催していて…colorsのようなバリアフリーなライブハウスは私が知っているのは渋谷で1件だけと珍しいです。音楽を楽しみたい車椅子の方がたくさん来るようになって、他の障害のある人も来るようになりました。」
ーーみなさんそういう場所を求めていたのでしょうね。
「求めていたのではないですかね。来る人の4割くらいは、障害がある方々でした。
知的障害者や座っていられない人が、歩き回っていても誰も何も言わないし、見た目にはわからない発達障害の人がカミングアウトしても『そうなんだ』で済むような場所でした。
もちろん健常者で福祉関係者ではない人も来場し、最初は障害者が多くてびっくりする方もいます。でも、通ってくるうちに『colorsは誰でも来られるところで、誰でもそのままで楽しめる場所だから、色んな人がいるってことが面白い!』と、多様性を楽しんでくれるようになります。
これが社会でも当たり前になるのが、理想だなと思っています。
一緒に遊んだら「ああいう人なのだな」で済む話だと思う。障害の有無はそんなに気にする必要のないことなのですよ。」
ーーそうなのですよね。お話を伺っていて、みんな違っていいし「人生を楽しもうよ」という人たちがcolorsを訪れていたのだなという雰囲気が伝わってきます。
障害のありなしは関係なく、バリアフリーでそれぞれが楽しめる社会が理想ですよね。
3.子どものときから多様な人がいるのが日常です
ーー『colors』には、娘さんたちも来ていたのですか?
「はい。娘も遊びに来ていました。
うちの娘は、小さいときからそういう様々な人たちを見ているので「ああいう人なのね」みたいな感じで私よりも寛容です。」
ーーまさに娘さんたちは生活の中で、多様な人と出会い、人を受け入れることを自然と身につけた感じだったのですね。障害についてお話することはありますか?
「娘たちは小さい頃から、私の友人の見えない人・聞こえない人・車椅子利用者たちの家に私と一緒に遊びに行ったりしていましたので、多様な人がいるというのが普通だという環境で育ちました。それはごくごく普通で当たり前のことなので、あえて話題にすることもありませんね。」
ーーなるほど。それだけみんな違っていることが当たり前で、特別なことではなかった…
「特別なことではありません。同じ人っていない、色々な人がいて当たり前なのに、それを同じような人間にしようというのが今の義務教育の中にあるような気がします。
社会の中には障害者、LGBT、外国人、宗教が違う人など、多種多様な人がいます。
※LGBT:レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、両性愛(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の各単語の頭文字を組み合わせた表現である。クエスチョニング(Questioning)、間性(Intersex)の頭文字を加えて、LGBTQ、LGBTI、LGBTIQ、LGBT+などと表されることもある。
教育の中で平均的なことや、みんな同じことが良いことと教えられていると、少数派の人たちの受容が難しくなってしまうのではないかと思います。
本来なら、障害児も含めて色んな子どもが同じ教室で学び、遊ぶべきだと思います。幼い頃から同じ教室で過ごすことで、色々な人がいるということが当たり前のことだと、自然に思えるはずです。
そうしないと大人になってからも、マイノリティに対しての差別障害や苦手意識が残り、障害者・性的指向が自分と違う人、人種が違う人などを受け入れられなくなってしまう。幼い頃の教育の現場が一番大切なのではないでしょうか。」
ーー子どものときから多様な人たちと触れ合うことで、大人になっても多様性を自然に受け入れられるということですね?
「そうです。特に障害児と健常児に限って言いますと、子どもたちは障害の有無は関係なく、近所のお友達同士で一緒に遊んで育つのに、小学校に入る時に突然、あの子は特別だからと言われて、特別支援級とか養護学校とか…
今まで一緒に遊んでいたあの子が、自分たちとは違う子どもだったのだと、学校の振り分けをされる時に思い込んでしまう。
自分とは違う人間なんだと思ってしまう。
そうやって別々の学校で育ち、大人になってから、『障害者雇用したから、障害者と一緒に働きなさい』と言われても、とまどってしまいます。
小学校に上がる時に『イレギュラーな人』と分断され、一緒に過ごすことが無くなった障害者たちと、社会人になって一緒に何かをしろと言われても、『何をどうしたら良いかわからない』という状態になりますよね。」
ーー本当にそうだなと思います。周りの大人が子どもたちへの伝え方を変えないと、色々な人がいるし、みんな違っていいんだよということが子どもたちに伝わらないですね。
お話を伺って、まずは大人たちの意識を変えることが大切だと思いました。
最後に石川さん、私たち発達障害・グレーゾーンの子どもたちを育てる親御さんへメッセージをお願いします。
「私は車椅子ユーザーですが、障害児・障害者は誰でも、できないことや苦手なことは有ります。でも、その『できないこと』を解決していくために本人が工夫をしたり努力をしたり。
周りの人が『できないこと』を『できる』にするための新しい発明品を作ったり研究が進んだり、その障害児を支えたり。
社会の中には多様な人がいて、だからこそ、発明・アイデア・工夫・助け合いが生まれます。それは、障害児本人だけでなく、周りのすべての人の成長でもあります。
お母さんがたも、日々、障害児と向かい合うことで、お母さん自身が成長できたなら、みんなが幸せになれますね。
とはいえ、私の次女も中学は全く行っていないのですが、娘が自信を持てるものを探すことは手伝い、あとは放任主義でした。
手のかかる娘でしたが、18になってやっと、自立してきたように見えます。
発達がゆっくりであっても、誰もが必ず成長します。その時に向けて、親も日々、成長しておきたいですね、子どもと一緒に。」
――石川さん、ありがとうございました。
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4.これからの子どもたちに多様性をどう伝える?
石川さんのお話を伺って、私の中で“障害”というものに悪いイメージがあること、それは小さい時から、多種多様な人たちと関わっていないことでできた勝手なイメージで、そのイメージこそが障害なのだなと思いました。
石川さんの娘さんが小さい時から、色んな人と関りを持っていたことで自然に多様性が当たり前、それが日常となっていました。
みんな違っていいんだよとお互いを認め合い、ありのままいられる「大人のバリアフリー社会人サークルcolors」のような社会になることが理想ですよね。
人は、できること、できないことがあり、みんな違っているのが当たり前、それが個性です。
子どもたちには、
「できないことがあるのは悪いことではなくて、どうしてもできないときは『助けてください。手伝ってください』と誰かを頼ってもいいんだよ、その代わりあなたができることで、他の人ができないことはやってあげようね」と伝えていくこと。
それには、いつも子どもたちのいいところを見つけ「いいね!」をして認めて伸ばしてあげることが大切です。これが発達科学コミュニケーションの考え方です。
自分を認められてはじめて、他者も認められるようになります。
家族という小さい社会でも、子どもだから、父親だからということではなく、その人を認めてできないことは手伝う、できることはやってもらう関係を作ると、家族の中でも多様性を学べますよ。
また家庭から一歩外に出て、多様性を学べる機会を持つことも大事です。
最近のスターバックスには聴覚障害のスタッフがいる店舗も増えてきていますし、また自治体によっては障害者がパンやお菓子作りをして販売している場合もありますよね。
「店員さんは聞こえないけどメニューを指せば注文ができるね」
「お金の計算は苦手だけど、正確に粉や調味料が計れてパンやお菓子作りに向いている人たちもいるよ」
など、お子さんに話して、商品を買ってもらい、触れ合う体験をするのもいいですね。
こうして、できないことがあっても工夫をすれば働けることを教えることもできます。
これから開催予定のオリンピックパラリンピックは、多様性を伝えるのには絶好のチャンス!一緒に観戦しながら、人種、障害などについて、積極的に会話をしてみてください。
すぐに社会全体を変えることは、難しいかもしれません。
みなさんが日常の中で、ちょっと意識を変えて、子どもたちに多様性を伝えていく。
多様性が広まれば、障害がある子、発達の特性がある子、そうでない子も、今よりもっとありのままで生きやすくなります。
ありのままでいい社会は、差別や偏見そして不登校やいじめなどの問題もなくなることにつながります。
そして、差別や偏見の目で見られず育った子どもたちは大人になって、自然とそういう社会を創っていく。
これから大人になっていく子どもたちのためにも、そんないい循環の社会にしていきませんか!
石川悧々(イシカワ リリ)さん
神奈川県川崎市生まれ。自身も頚椎損傷と脳の血腫による障害者であり、DET(障害平等研修)の認定ファシリテーターとして活躍。強烈な個性で聖女とも魔女とも称される。電動車椅子と三輪自転車を使い分けながらの行動力と、その楽しげな大きな笑い声には驚かされるばかり。「バリアフリー社会人サークルcolors」の主宰者のひとりであり、たくさんの人を惹きつけるが気に入らない人は一刀両断。
映画『ラプソディーオブcolors』が制作されるきっかけとなった人物。大学生と高校生の娘さんと暮らすシングルマザー。
【バリアフリー社会人サークル colors facebookページ】
ドキュメンタリー映画『ラプソディーオブcolors』
これは演技なのか素なのか⁈「バリアフリー社会人サークルcolors」に来る人たちが、繰り広げる日常の
多様性だらけ。なんでもありでいいじゃん精神が炸裂!社会の多様性や共生社会ってなんなの?を考えさせられる映画です。
2021年6月19日~公開中
東京:シネマ・チュプキ・タバタ、神奈川:あつぎのえいがかんkiki、名古屋:シネマテーク
2021年7月3日〜 群馬:前橋シネマハウス
2021年7月23日〜 兵庫:豊岡劇場
近日公開予定
福岡:KBCシネマ(8月末予定)、大阪:シネヌーヴォ、京都:みなみ会館、神戸:元町映画館、
広島:横川シネマ
執筆者:渡辺くるり
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
お子さんを「いいね!」と認める声掛けはこちらで紹介しています。
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