お子さんが「ごめんなさい」と言えない理由には発達障害の特性が関係している事があります。トラブル回避のために「謝りなさい!」なんて強く言ってしまっても逆効果です。ここでは、すぐに謝れない理由とADHDタイプの謝れない息子が、自分から「ごめんね」と謝れるようになった対応のコツをお伝えします。
【目次】
1.発達障害・ADHDタイプの息子が小学生なのに謝れない…
2.実は難しい!「ごめんなさい」の一言がでるまでの過程
3.「ごめんなさい」が言えない発達障害の特性
4.やってはいけないNG対応
◆謝る事を強要する
◆悪い行動だけに注目する
5.自分から謝れるようになった2ステップ対応
◆ステップ1:一緒に状況や気持ちを確認する
◆ステップ2:すぐに声をかけずに様子をみる
1.ADHDタイプの息子が小学生なのに謝れない…
相手に嫌な思いをさせてしまったり、泣かせてしまったら「ごめんなさい」と言葉で謝ることが当たり前と一般的に考えられていますよね。
ですから、小さい頃から相手に悪いことをしたら「ごめんなさい」と謝ることは普通のこととして教えられてきます。
だからこそ、我が子が悪いことをしたのに謝ることができないと、当たり前のことができない子と周囲の目が気になりますし、心配になってしまいますよね。
子どもの年齢が大きくなればなるほど、友達関係にも影響が出てくる可能性もあり、親としては心配になるのではないでしょうか。
無理にでも謝らせようと強く言ってしまい、子どもを怒らせたり傷つけてしまったりと逆効果になってしまった…なんていうことも。
私も同じように悩んだので良く分かります。
・わざと妹を泣かせることをした
・わざとしたことではないけど相手に嫌な思いをさせた
・ダメなことと分かっていてやってしまう
・間違ってやってしまったことを知らんぷり
など、状況や理由は様々でしたが、小学生になっても注意欠陥の多動性障害(ADHD)タイプの息子が自分がしたことに対して、家でも学校でも謝れないということに悩みました。
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2.実は難しい!「ごめんなさい」の一言がでるまでの過程
一般的には当たり前と考えられている「ごめんなさい」という一言ですが、実はいくつもの過程があって出てくる言葉なのです。
①相手に悪いことをしてしまったという認識
②相手が困った・嫌な気持ちになったという認識
③謝りたいという気持ち
④自分の気持ちを言葉と態度で伝える
簡単にまとめて4つの過程があります。
当たり前のように「謝りましょう」と伝えてきましたが、幼い子どもが瞬時に認識して行動に移すということは難しい事だという事が分かります。
だからこそ、何回も繰り返して
・自分がしてしまったことは何か?
↓
・相手がどうして悲しいのか?
↓
・自分はどうしたらよいのか
ということを、子どもに伝えていくことで成長とともに状況を理解して行動することができるようになるのです。
小学生も3年生以上になれば「ごめんなさい」は当たり前にできる事かもしれません。ですから、その当たり前と思われる「謝る」という行為ができない子は困った子と捉えられてしまいがちです。
しかし、本当に困った子なのでしょうか。実は、困った子ではなく困っている子でもあるのです。
3.「ごめんなさい」が言えない発達障害の特性
息子は現在、小学5年生。発達障害の注意欠陥の多動性障害(ADHD)と自閉症スペクトラム(ASD)の両方の気質を持っています。
さらには繊細さもあるので対応にとても悩みます。
発達障害を持つ子どもは様々な特性を抱えているので、当たり前のことと考えられる行動が上手くできないこともあります。ですから、素直に謝れない理由もあると考えられます。
以下に3つのタイプと理由を説明します。
◆ ① 相手の気持ちが分からない、あまのじゃくな子
一般的に言われているのは、ASDやアスペルガー症候群の子にみられる特性です。
コミュにケーションスキルが低いため、社会性に欠けているように捉えられてしまいます。
ですから、「相手が嫌な気持ちをした」と感じにくいため、自分は悪くないと謝ることができないのです。
◆ ② 衝動性が強く、怒りやすい子
ADHDタイプの子に見られる特性です。衝動性が強く、目の前の事しか見ないで行動してしまいます。ですから、注意を受ける事が多いです。
わざとやったことではないけれど、結果的に悪いことになってしまい注意を受けると「わざとじゃないのに!」と怒ってしまいます。
自分がしてしまったことを理解するよりも「注意された」という事に意識が向いてしまい、謝る事ができないのです。
◆③ 注意力がなく多動な子
これもADHDの特性です。注意力がなくて動きが多い活発な子が多いので、うっかり相手を傷つけてしまうということがあります。
そのことに気がつかずにその場を離れてしまい、あとから注意を受けるのですが、自分には悪いことをした覚えがないと謝る事ができないこともあります。
我が子の場合は、ADHDとASDの特性をもっているので上記のすべてが当てはまります。さらには、注意されたことに恐怖を感じて不安を感じることもありました。
このように、当たり前と思われている「ごめんなさい」がなかなか言えないのは発達障害の様々な特性が理由となっていることも考えられるのです。
ではどのように対応したら良いのでしょうか?
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4.やってはいけないNG対応
まず最初にやってはいけない対応について2つお話します。ついついやってしまいがちな対応ですが、子どもの心理的には逆効果になってしまいます。
◆謝る事を強要する
冒頭でもお話しましたが、「謝りなさい!」と強要することは逆効果です。余計に意地をはって謝る事を拒否したり、お母さんが怖いからひとまず謝っておけば良いと心のこもっていない「ごめんなさい」になってしまうからです。
これは以前の息子の様子です。とにかく相手に悪いことをしたのだから謝らせないといけないと必死になっていました。すると、息子は「ごめんなさい」と言えば良いという態度になってしまったのです。
そんな息子の様子に、何が悪いのかも相手がどんな気持ちかも分かっていないのに「ごめんなさい」といっても意味が無いと気がつきました。
◆悪い行動だけに注目する
発達障害の特性のお話をしたとおり、衝動的な行動や不注意から相手に何かしてしまった…ということも多々あります。やってしまった行動にだけ注目すると、
・そんなつもりがなかったのにせめられた
・何もやってないのに怒られた
などと、一方的に注意されたと感じて、逆に怒りだしてしまう子やいつも怒られる…と感じてしまうなど、どんどん自信をなくしていってしまいます。
5.自分から謝れるようになった2ステップ対応
上記のNG対応は実際に私がしていたことです。しかし、2ステップに分けた対応をしたことで、今では自分から謝れるようになりました。
どのような対応をしたのかお話しします。
◆ステップ1:一緒に状況や気持ちを確認する
状況や気持ちを一緒に確認します。子どもが落ち着いて話を聞ける雰囲気を大切にしてください。
・どうして相手は泣いているのか?
・相手はどんな気持ちか?
・なぜ、自分がそのような行動をしたのか?
・どうしなくてはいけないか?
ということをゆっくりと優しく聞いていきます。
幼稚園児にすることだと思うかもしれませんが、自分で理解して行動できない段階では大切なことです。小学生なんだからという考えは無しにして、ゆっくり時間をかけて対応してください。
ADHDタイプの息子はじっくり話を聞くことができなかったり、視線が合わないこともありました。そっぽ向いて話をきくこともありましたが、それでも話をきいていられたら○にしました。
そこで、「ちゃんとこっちを向いて話をききなさい!」と言ったら…振り出しに戻ってしまいます。
何回も繰り返すうちに話も聞けるようになってきて、質問にも早く答える事ができるようになり、謝る事ができるようになってきました。
◆ステップ2:すぐに声をかけずに様子をみる
一緒に状況を確認しながら謝る事ができるようになってきたら、自分で状況を理解して行動する段階にレベルアップします。
例えば、息子が妹を泣かせてしまった時です。あえて声はかけずに黙っています。気がつかない振りをして家事をしたりします。
息子が怒って泣かせたのか間違った行為で泣かせてしまったのかによって、状況は違ってきます。娘がすごく泣くときもありますし、怒ることもあります。それでも、黙って口だしはしません。
このとき、息子にも少しの沈黙ができます。
この沈黙タイムがとても大切です。息子が 頭の中で、状況確認している時間なのです。口に出しませんが、気持ちを落ち着かせて自分が何をして、どうしたらよいのかを自問自答しているのです。 そして、自分から「ごめんね」と謝ります。
いかがでしたか?
◆NG対応1:謝る事を強要する
◆NG対応2:「どうしてしたの?」と行動だけに注目する
◆ステップ1:一緒に状況や気持ちを確認する
◆ステップ2:すぐに声をかけずに様子をみる
この4つをポイントにしてお子さんの成長を待ってくださいね。
発達障害があるから謝れないのではなく、成長のスピードがゆっくりだから、当たり前に思っていることもできるようになるまで時間がかかります。
障害があるからできないのではなく、ゆっくりでもできるようになります。小学生なんだからと焦らずに、その子のペースで成長していくことを大切にしていていきましょう。
発達障害のある小学生のテレビやゲームについても読んでみてくださいね。
執筆者:さとう みな
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)