遅れを補うだけじゃない!発達障害の息子が1週間で着席できるようになった、特別支援級という環境

 

2年生になってまもなく離席しはじめた息子。知的な遅れはなく、学習内容が理解できているので構わないという判断をされ、着席のきっかけを失ってしまいました。特別支援級という環境で、見事に輝きを取り戻した息子の記録をご紹介します。
 

【目次】

 
 

1.思いのほか柔軟!特別支援級の実態

 
 
新学年が始まりましたね。すべり出しは順調ですか?
 
 
我が家の小学3年生の息子は、4月から支援級へ転籍しました。
 
 
息子に知的な遅れはありません。
 
 
「今年から支援級にしたの」と話すと、9割方「なんで彼が?」と驚かれます。
 
 
それだけ、支援級がどんなクラスか知られていないということの現れだと思います。とてももったいないことです。
 
 
私たちが住む自治体の総合教育センターの説明によると、支援級というのは、ひとりひとりに合った支援をするのが目的のクラスです。
 
 
学習の遅れを補うだけではなく、習熟度により学年以上の課題に取り組むこともできるということでした。
 
 
普通級に転籍しなおすことも可能です。
 
 
40年前に小学生だった私には、驚愕の支援内容です。
 
 
 
 
また、転籍手続きにあたり、支援級の扱いが自治体によって異なるということを知り、驚きました。
 
 
ですから、私たちのケースがすべての方にあてはまるとは限りません。
 
 
知的な遅れがない発達障害の子が、ひとりでも良好な環境で過ごせるようになったらいいなと思い、転籍までの経緯をご紹介させていただきます。
 
 
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2.知的な遅れがない発達障害の息子の悲劇

 
 
息子には、注意欠陥多動性障害(ADHD)と自閉スペクトラム症(ASD)の特性があります。
 
 
彼は2年生に進級してまもなく、授業に参加しなくなりました
 
 
単調な計算ドリル、繰り返しの漢字の書き取り、板書の書き写し、そういった地道な作業が大の苦手です。
 
 
衝動性もうまくコントロールできず、答えが分かると挙手なしに大きな声で回答してしまうのも、何度か注意されたようです。
 
 
自席で大好きな鉄道の絵を描く程度で済んでいたのが、離席し、教室後方のベンチで作画や工作をする毎日になりました。
 
 
担任の先生には、2年生の初日に手紙で息子の特性を伝え、頭ごなしの叱責はしないで欲しい旨を伝えていました。
 
 
ですから、先生に叱責されることはありませんでした。
 
 
 
しかし、着席を促されることもありませんでした。
 
もちろん、褒められることもありませんでした。
 
 
つまり、放置されてしまったのです。
 
 
工作している割にテストは100点なので、「学習内容は理解できているし、彼が着席を必要としていないなら、いいのではありませんか?」ということでした。
 
 
大声で怒鳴られたりするよりはマシだし、かなり柔軟な対応をしてもらっているとも言えます。
 
 
だけどなんか…違う、そうじゃない。ここ、小学校ですよね?
 
 
そう思ったものの、この先生に「我が子にもっと寄り添ってください」とは言えませんでした。
 
 
 
 
私は、発達の勉強を始めて2年が経ち、発達障害にネガティブな感情が全くないどころか、凸凹はむしろ強みだと思えるようになりました。
 
 
それでも、授業中、散らかったままの文房具や折り紙や体操着にまみれて、寝そべって鉄道の漫画を描いている息子の姿を見るのは、苦しかったです。
 
 
人が好きで、上手に声をかけてあげれば参加できる子なのに。
 
 
淋しそうな背中が、「声かけて!」って言っているようで、胸が締めつけられました。
 
 
現に、こっそり見学していた私たちに気付くと、走ってきて私に抱き着き、一緒に居たコーディネーターの先生に、描いた絵を見せながら嬉しそうに話し始めました。
 
 
 

3.ADHD、ASD、LD等、診断名にふりまわされないで

 
 
発達障害は、インフルエンザなどの病気と違い、検査で陽性、陰性、とはっきり診断できるようなものではありません
 
 
本人や周りの人間が困っているか否か、が重要です。診断の有無が重要なのではありません。
 
 
診断がついていても、困りごとがないなら問題はありません。
 
診断がついていなくても、困りごとがあるならサポートが必要です。
 
 
たとえば、どうしても気が散ってしまうなら、視界に余計なものが入らないようにパーテーションで区切ってあげることで解決できたりします。
 
 
たとえば、聴覚が過敏で大きな音が苦手なら、イヤーマフさえあれば、かなり軽減できます。
 
 
たとえば、勝ちにこだわってしまって、負けると怒ってしまうなら、何度も心ゆくまで勝つ経験をさせてあげることで、薄れてゆきます。
 
 
環境を整えてあげるだけで困りごとではなくなる特性は、たくさんあります。
 
 
視力が弱ければ、眼鏡をかけますよね。その延長だと考えれば、さほど特別なことでもないと思います。
 
 
ところが、知的な遅れがない発達障害の子ども、特にグレーゾーンの子どもが何に困っているのかを知ることは、大勢の子どもをひとりでみる担任の先生には、とても難しいことです。
 
 
わがままな子とだけ認識されている可能性もあります。
 
 
低学年であれば、子ども自身も何に困っているのか自覚できず、言葉にすることは難しいでしょう
 
 
家族の観察眼がとても重要になります。学校と家との連携なしにサポートはできません。
 
 
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4.特別支援級に通い始めた息子の変化

 
 
完全に着席のきっかけを失ってしまった息子に、いま私ができることは何だろう…
 
 
これまでも、手をこまねいて見ていたわけではありません。
 
 
通級指導教室に通い、週に1時間、個別授業も受けさせてもらっていましたが、どの工夫も、彼の成功体験につながっているとは言えませんでした
 
 
しかし皮肉にも、解決の糸口をくれたのは担任の先生でした。
 
 
憂鬱な気持ちで臨んだ11月の個人面談で
 
 
「彼は、環境さえ整えばとてもいいところを発揮できるんですが…」
 
 
と言われました。
 
 
「いや、その環境をあなたに作ってもらいたいんです…」と言いかけて気づいたんです。
 
 
特別支援級!
 
 
発達障害に理解があり、適切な声かけをしてくれる先生がいる環境。
 
 
家庭と連携を取ってくれる先生がいる環境。
 
 
なんで気づかなかったんだろう!
 
 
息子は、前述のとおりテストは100点です。朝は、新聞を読んでから登校するような子です。
 
 
鉄道に関しては、博士と呼ばれています。下校後も、公園でお友達と遊べます。 一見、困っているようには見えません
 
 
だからこそ、母親の私にも支援級という選択肢が浮かばなかったのです。
 
 
 
 
面談翌日からは、怒涛の転籍手続きでした。
 
 
1月から週に一時間だけ、おためしで支援級に入れるようにしてもらったところ、息子が「明日も行きたい」と言うではありませんか!
 
 
なんとか成功体験を積ませてあげたいと奔走していた私のほうが、先に成功体験をさせてもらった、ご褒美のような言葉でした。
 
 
知的な遅れがない場合は医療診断が必要と言われたので、児童精神科にも出向きました。
 
 
ドクターに私の見立てを伝え、「ADHDとASDの診断書を発行してください」と依頼したところ、だいたいその見立てで合っていると思います、発行しますねと、珍しがられました。
 
 
繰り返しますが、診断の有無は重要ではありません
 
 
その子にあったサポートをしてあげること、環境を整えることが重要なんです。
 
 
転籍手続き未了にもかかわらず、本人の希望ということで、毎日1~2時間を支援級で過ごせるようにしてもらいました。
 
 
支援級の先生は、毎日学校での様子を細やかに書いて渡してくれました
 
 
答えが分かったら、前に出てホワイトボードに漢字を書いて良いことを喜んでいたそうです。
 
 
私も毎日、息子の様子、発言、家でのサポート方法を報告しました。
 
 
先生が、自分の話を熱心に聞いてくれるのが嬉しいと言いました。
 
 
多動の子専用のコの字型の机をとても気に入り、縁に高さがあるから鉛筆が転がって落ちないということも、得意な絵に描いて説明してくれました。
 
 
こうして安心できる環境を確保したところ、息子はわずか1週間で60分の着席が可能になったのです。
 
 
 
 
支援級で着席して授業を受けられるようになり、息子はこう言いました。
 
 
「勉強(=授業に参加)できないから、もう夢は叶えられないかと思ってたんだ。」
 
 
そこまで絶望させてしまってたんだ…ごめんね、もっと早く気づけなくて。
 
 
新しい学年がはじまった今、慣れるまで見守るだけで良いのか、それとも、違う環境を用意してあげる必要があるのか、見極める大切な時期なのかもしれません。
 
 
そしてもし、後者なのであれば、迷わず一歩踏み出すことをお勧めします。
 
 
お母さんの違和感や勘は、正しいです。自信を持ってくださいね!
 
 
 
 
今回、特別支援級という選択肢をご紹介しましたが、環境を整えるという意味では、ほかにもたくさんの方法があると思います。
 
 
ぴったりな環境が学校とは限らないかもしれません。
 
 
大人の常識や当たり前や思い込みが、子どもの強みを消してしまうことだけは避けたいですね。
 
 
私は、柔軟で奇想天外な発想をする息子を見習おうと思います。
 
 
いつの日か、彼が設計した鉄道車両が走る日を、一緒に夢見ていきます。
 
 
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執筆者:髙田 礼
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
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