給食は食べるのに、家では食事よりお菓子を好む。もしくは給食も家でも食事に興味を持たない…そんな偏食のお子さんに困っていませんか?発達障害の特性を活かして、偏食でも食事に興味を持てるようになる方法をお伝えします。
【目次】
1.給食時間が睡眠時間になっていた息子
入園前、食べるものが少なくて心配だけど、
「幼稚園に通ったら食べるから大丈夫よ。」
「みんなが食べているから食べるようになるわよ。」
と言われたことはありませんか?
私はこの言葉を信じて、先生に任せれば今よりも食べられるようになるんだ!と、幼稚園生活を楽しみにしていました。
しかし、幼稚園で給食が始まっても、息子は全く食べることはありませんでした。
給食は、幼稚園で作っているのではなくお弁当型の宅配給食でした。
みんなが美味しそうに食べている近くで、給食を食べない息子が何をしていたかというと…
寝る!です。
給食弁当の蓋を少し開けて、食べられるものがあるか確認。食べられそうなものがなければそのまま机に突っ伏して寝る!
年少1学期の給食時間は、息子のお昼寝タイムになっていました。
幼稚園のあと、息子は「お腹が空いた」とは一度も言ったことはありませんでしたが、息子は空腹になると機嫌が悪くなります。
何も言わない息子に対して、私は毎日のように「癇癪にならないか?」とヒヤヒヤしていました。
癇癪を避けたい私は、お腹が空いても大丈夫なように、家には大好きなお菓子を大量にストック!
息子は食事に興味は薄くても、お菓子は大好きです。息子のお腹はお菓子で満たされる日々でした。
2.なぜ発達障害には偏食が多いのか?
偏食は、好き嫌いとは違います。
【好き嫌い】
好きなものと嫌いなものがはっきりしていることを意味する言葉
【偏食】
食べ物において、好きなものと嫌いなものがあり、その偏りが激しいこと
偏食は、他の人から見て食べない理由が明らかに分かるようなものではないことが多いです。
本人でさえも食べられない理由が分からないこともあります。
発達障害の偏食の理由の1つは、想像力が豊かなことが影響しています。
見たことのない食事の味や触感などの想像がつかないから
「中身が分からないから心配」
「嫌いなものが入っていないかな?このトロトロしたのは何だろう?」
「茶色くて美味しくなさそう…」
色々な考えが頭の中をグルグル駆け巡ります。
しかも、食べられなかったときの嫌な触感や怒られたなどの記憶が残っているので、余計に不安にさせます。
「あのときのようになるのは嫌だな…」
そして、自分が完全に知っているもの以外は「食べられないもの」と 判断してしまうのです。
大人は「食べられる食材=食べられる料理」と考えて、食べるように誘うことがありますね。
偏食のある発達障害の子どもには、好きな食材が入っていても、得体の知れない料理であれば「食べられないもの」なのです。
「〇〇くん(ちゃん)の好きな〇〇だよ!」と言っても、かたくなに食べないのは、大人と子どもの考え方の違いが原因です。
そして「みんな食べているから大丈夫だよ」という声掛け。
食事に不安がある状態では 「ぼく(わたし)は食べられない…」と食べることに自信をなくしてしまう可能性もあるので、要注意です。
3.食事への興味を引き出す「食べない挑戦」とは
食事に興味がない子どもには、食べる挑戦はハードルが高すぎます。
偏食の子どもは、自分が他の子どもよりも食べるものが少ないことは分かっているので、食べる挑戦はプレッシャーになってしまうからです。
そこで、最初のオススメは、食べない挑戦。つまり「食事の観察」です。給食の日の前日夜か当日の朝に、給食調査をお願いします。
「焼きそばが、どんな匂いだったか教えて~」
「〇〇っていう料理には、何が入っていたか教えて~」
「え~、何で~?」と言われたら「お母さんも知らない料理だから、どんなものか知りたいの。」などとお願いをしてみてください。
観察をすることのメリットは3つです。
1つ目は、前項でお伝えした「知らないもの=食べられないもの」をなくしていくこと。
2つ目は、「食べないでいいの?」と子どもが思うことで、挑戦がしやすくなることです。
しかも「集中して何かを見る」というチカラもつけられるのです!
「匂いを嗅いだことあるから大丈夫」
「給食の焼きそばは、いつも〇〇が入っているんだな」
経験を増やしていくことが「知っているもの」に変わっていくことによって、食事に対する安心感を得ることができてきます。
そして「食べない挑戦」を後押しするものが「ご褒美」です。
もともと気分が乗りにくい食べ物への挑戦ですから、やる気にさせるものが必要です。
子どもが好きなものを用意して「1つ教えてくれたら、〇〇1個食べて良いよ!」と伝えます。
実は、息子はご褒美の話をする前は、フリーズして「なんでお母さんは、そんな話をするんだろう…」と怪訝そうな顔をしていました。
しかし、ご褒美があることを知ると「匂いを嗅ぐだけでもいいの?」と話し、少しやる気が出てきたと感じました。
そこで私は「できるかどうかは別として、やってみない?」と一言。
「挑戦はやらないといけないこと」ではなく、できなくても大丈夫!という安心感を与える言葉です。
この小さな食事の観察の積み重ねが、食べることへのチャレンジの土台になっていきます。
4.親子の会話が積極的になった
私が、食べることではなく食事の観察に目を向けたところ、食事のことでも、食事以外のことでも息子に良い影響が出てきました。
食事に関しては、これまでは給食は食べず、家では決まったメーカーの海苔たまふりかけのご飯だけを食べることがほとんどでしたが、給食では新しいものを食べる挑戦もできるようになったのです!
そして、家でも給食と同じ料理を食べることができるようになりました。
何よりも嬉しかったことは、親子の会話が増えたことです。
1学期のうちはバスから降りても何も幼稚園の話をしなかった息子が、2学期からは給食の話を自分からしてくれるようになったのです。
楽しかったことだけではなく、観察できなかったことなど上手くいかなかったことも話してくれるようになりました。
ネガティブなことを話してくれるということは、息子にとって私は安心できる存在という証なので、とても嬉しかったです。
挑戦と考えると大変そうだなぁと思うかもしれませんが、ちょっとした負荷があると脳は発達します。
挑戦しやすい負荷を、お子さんと試してみてくださいね。
子どもの興味を引き出すコツをご紹介!
執筆者:渡辺 ひろみ
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)