小学校1年生の乱暴な行動や暴言は、性格やしつけの問題ではありません。叱る・言い聞かせるといった対応が、脳の発達に合わず行動を強めてしまうことがあります。声かけを変えるだけで、数週間〜1か月ほどで落ち着くケースがほとんどです。具体的な対処法を解説します。
【目次】
1.小学校1年生で乱暴な行動や暴言が増えるのはなぜ?
2.叱る・言い聞かせる対応が逆効果になる理由【脳の仕組み】
3.暴言から登校拒否に発展!小学校1年ASD息子の場合
4.乱暴な行動や暴言を減らすシンプルな親の声かけ
5.小学校1年生の乱暴な行動や暴言に関するよくある質問
1.小学校1年生で乱暴な行動や暴言が増えるのはなぜ?
小学校1年生で暴力的な行動や暴言が増えるのは、性格やしつけの問題ではありません。
主な理由は、感情をコントロールする脳の発達がまだ未熟なことと、小学校という新しい集団環境による強いストレスにあります。
文部科学省の調査によると、小・中・高等学校における暴力行為はここ数年で急増しており、 特に小学校1年生の加害児童数は、10年間で10倍以上に増加しています。
小学1年生は、幼稚園・保育園とは大きく環境が変わり、
・集団で行動する時間が一気に増える
・ルールや我慢を求められる場面が増える
・先生からの個別の声かけが減る
といった変化を経験します。
この小1プロブレムと呼ばれる環境変化は、子どもに大きな負担を与えます。
この時期の子どもは、 イライラした気持ちを言葉で整理したり、感情を抑えたりする脳の働きがまだ十分に育っていません。
そのため、気持ちが限界になると、暴言を吐く・手が出るといった形で感情があふれてしまうのです。

特に、発達特性のある子どもは次のような理由から、乱暴な行動が出やすくなります。
◆感情のブレーキがかかりにくい
感情の整理が苦手で、気持ちが高ぶりやすく、とっさに言葉や行動で発散してしまいます
◆自分の気持ちをうまく言葉にできない
本当は困っていたり悲しかったりしても、どう伝えればいいかわからず、攻撃的な表現に頼ってしまうことがあります。
◆周りの刺激に敏感すぎる
音や光、人の動きに過敏に反応し、不安や緊張から強い言葉や行動が出ることがあります。
このように、小学校1年生の乱暴な行動や暴言は、 子どもが発しているSOSであり、発達の途中でよく見られる一時的な反応です。
「このままずっと続くのでは」「乱暴な子に育ってしまうのでは」と心配になりますが、 多くの場合、大人の関わり方を見直すことで落ち着いていきます。
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2.叱る・言い聞かせる対応が逆効果になる理由
乱暴な行動や暴言が出ると、親としてはつい、
「やめなさい!」
「そんな言い方はダメ!」
「どうしてそんなことするの?」
と、叱ったり、理由を説明したり、言い聞かせたりしてしまいますよね。
ですが、子どもにとって、この対応は逆効果になることが多いのです。
◆なぜ叱ると、乱暴な行動が増えてしまうの?
理由は、子どもの脳の仕組みにあります。
人の脳は、注目された行動を強く記憶し、繰り返そうとする性質があります。
つまり、
暴言を吐く
→ 大人が強く反応する
→ 目を見て話しかけてくれる
→ 感情を向けてくれる
という流れができると、子どもの脳は「この行動をすると、大人が自分を見てくれる」と学習してしまうのです。
その結果、 叱れば叱るほど、同じ行動が繰り返されるという悪循環が起こります。

◆小学校1年生に「言い聞かせ」は通用しない!
さらに、小学校1年生は、感情が高ぶっているときに長い説明を理解したり、自分の行動を振り返ったりする力が、まだ十分に育っていません。
そのため、
・正論で説明する
・理由を長々と話す
・反省を促す
といった対応は、頭では理解できず、感情だけがさらに高ぶることがあります。
結果として、
・さらに言葉が荒くなる
・泣く、叫ぶ、手が出る
といった行動につながってしまうのです。
3.暴言から登校拒否に発展!小学校1年ASD息子の場合
この章では、私の息子の例を紹介します。
彼は自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠陥多動症(ADHD)の特性を持っており、小学校1年生の時には暴言やトラブルが原因で、最終的には登校拒否にまで発展してしまいました。
息子には一方的にしゃべり過ぎたり、その場に合わない発言をしてしまう特性があります。
先生がみんなに向けて話したことに反応したり、自分の意見を長くしゃべり過ぎることは、クラスメイトの注意の的になりました。
息子のクラスは授業中の立ち歩きやおしゃべりで授業が進まないなど、いわゆる「学級がうまく機能しない」教室に相当していました。
騒がしさに我慢ならない息子は「静かにして!」と激しい怒りを露わにしました。
次第に、友達に暴言を吐いたり、応戦して手が出ることも起こり、先生から「●●君だけが悪いわけではないのですが…」と、電話をもらった私は対応に苦しみました。
「息子だけに非があるわけではない。でも、彼のいけないところは正さなければならない。でないと、彼も『乱暴な子』と言われてしまうかもしれない…」

そんな思いに、息が詰まるような心地で、厳しく叱りつける対応を続けました。
支援員の配置もありましたが、解決には至りませんでした。
息子は日ごとに元気をなくし、怒りっぽさが目立つようになりました。
そして、「誰とも喧嘩したくない…学校が怖い」と登校を拒否するほど追い込まれました。
窮地に立たされた私を変えたのが、発達科学コミュニケーションの対応でした。
私が対応を変え安心感が満たされた息子は、ふたたび登校する自信を取り戻せました。
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4.乱暴な行動や暴言を減らすシンプルな親の声かけ
乱暴な行動や暴言を減らすカギは、「何に注目するか」を変えることです。
発達段階にある小学校1年生の子どもには、悪い行動を叱る対応よりも、できている行動に注目する関わり方のほうが、行動改善につながりやすいことがわかっています。
子どもの成長は待ったなしです。
私のように誤った関わりで後悔してほしくないので、ぜひ効果のあった対応を参考にしていただきたいと思います。
◆①肯定的な注目が10割
子どもができていることに注目し、肯定する関わりを徹底します。
「肯定的な注目」を10割、「否定的な注目」は0。
子どもを叱っていいのは、危険行為と倫理・道徳に違反する時だけです。
脱ぎっぱなしの洋服、電気の消し忘れ、忘れ物…。こんな、「減らしたい行動」「まだできない行動」は取り上げずスルーします。
いくら褒めても注意・指示が多いと、子どもは肯定されている実感を持てません。
子どもが怒る時などは、応戦せずに見て見ぬフリをします。やってみると分かりますが、子どもの怒りはそれほど長続きしないものです。
これは、家庭でしかできない効果のある対処法です。
乱暴なふるまいをする子どもは、傷ついた体験やネガティブな記憶をたくさん持っています。
本人が望んで乱暴になっているわけではありません。
どうしていいかわからず自信をなくしている子を、まずは全力で肯定的に受け止めます。
疲れ切った心身を休め、家を安全基地にすることが最優先です。

◆②褒め方のバリエーションを増やす
実は、子どもの褒め方には、8つも種類があります。
トラブルの多い子でも、褒めることが苦手なママでも大丈夫です。
・子どもの行動に「興味を示す」
・していることを「実況中継」
・「もうできたの?」驚く・喜ぶ
・「ありがとう」と、感謝する
・「そうだね!」と、同意する
・「もうちょっとだね」と、励ます
・スキンシップ
・ジェスチャー
特に、子どもがしていることをそのまま言葉にする「実況中継」はどんな子どもでもすぐに褒めることができます。
・起きたんだね!
・ごはん食べているね!
・ゲームしてるんだね!
・ごはん食べているね!
・ゲームしてるんだね!
事実を言葉にするだけで、子どもの行動を認めて肯定していることになります。
◆③スキンシップ
スキンシップは、感情を落ち着かせるのにとても効果的です。
体に触れることで、脳が「安心していいよ」という信号を受け取り、気持ちがリラックスしやすくなります。
ぎゅっと抱きしめる、頭をなでる、軽くマッサージしてあげることを続けるだけで、息子の心が少しずつ落ち着き、乱暴な言動も減っていきました。
スキンシップは、「大丈夫だよ」と伝える方法の一つです。
私が家でこのような対応をすると、息子に笑顔が見られるようになりました。
安心感が満たされて情緒が安定し、ふたたび登校する自信を取り戻すことができました。
◆④学校の連携と環境調整
学校環境は、反応しやすい子どもにとって「刺激を減らす」視点で調整します。
クラスに相性のよくないお子さんがいる場合、席を離したり、別室登校などで距離を置いたり、子どもが安定するまで腹をくくって休むことも考えてみてください。
ですが、乱暴なふるまいは、親子関係が安定していなければ、たとえクラスや学校だけを取り替えても根本的に解決しません。
親が否定的な注目をしている限り、子どもはネガティブな記憶と経験を溜め続けてしまいます。
それは、些細なきっかけで感情が爆発する引き金となります。
「子どもの心を壊してまでやるべきことなんて、この世に何一つない」
これが、発達科学コミュニケーションの考え方です。
乱暴なふるまいをする子には、まずはお家でママが子どもを全身全霊で肯定する。遠回りに思えても、これが最短で効果のある解決策です。
ママの接し方次第で、子どもは変わる力を持っています。
一人でも多くのママが、子どもの表面的な行動や環境に振り回されず、困りごとを解決できることを心から願っています!
5.小学校1年生の乱暴な行動や暴言に関するよくある質問
Q1.小学校1年生の乱暴な行動や暴言は、いつまで続きますか?
A1.多くの場合、小学校1年生の乱暴な行動や暴言は一時的なものです。大人の関わり方が整ってくることで、数週間〜1か月ほどで落ち着いていくケースがほとんどです。ただし、叱る・注意する対応が続くと、行動が長引くことがあります。
Q2.発達障害(ASD・ADHD)と関係がありますか?
A2.乱暴な行動や暴言があるからといって、必ずしも発達障害があるわけではありません。小学校1年生は、発達特性の有無に関わらず、環境の変化やストレスから行動が荒れやすい時期です。一方で、ASDやADHDなどの特性がある子どもは、感情の切り替えや言葉での表現が難しく、乱暴な行動として表れやすいことがあります。大切なのは「診断名」よりも、その子の脳の特性に合った関わり方をすることです。
Q3.叱らないと、もっとひどくなりませんか?
A3.「叱らない=甘やかし」ではありません。 叱る代わりに、注目の向け方を変えることが重要です。乱暴な行動が出ているときに強く反応すると、その行動が「注目を集める手段」として学習されてしまうことがあります。落ち着いているときや、できている行動に注目することで、子どもは安心し、問題行動は自然と減っていきます。
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執筆者:小川陽子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)




