発達障害・自閉症の子は、写真を嫌がる子が多いですね。七五三で着物を着て写真撮影なんてできない!と私も半ば諦めていた1人でした。しかし、わが子の晴れ姿を残したい気持ちも捨てきれず…。同じ悩みを持つ方へ、わが家の成功体験をご紹介します。
【目次】
1.発達障害・自閉症児は七五三できない⁉
2.発達障害・自閉症(ASD)タイプの子が着物や写真撮影を嫌がる理由
3.着物と写真を攻略して七五三の晴れ姿を残す3ステップ
①ムリのないスケジュール組み
②苦手を楽しみに上書きする
③予行練習で安心のタネをまいておく
1.発達障害・自閉症児は七五三できない⁉
秋が近づくと、七五三で華やかに着飾った親子を見かけて微笑ましさを感じる一方、七五三が近い発達障害児の親御さんは複雑な心持ちかもしれません。
特に写真や着物を嫌がる子の七五三は、前もって本人の苦手さや不安を緩和しておく工夫が必要です。
子どもに発達障害がある場合、七五三はできないと判断されるご家庭もありますね。
一連の流れがスムーズには運ばず、本人や家族が嫌な気持ちになったり、さもすると人に迷惑をかけてしまう事態が容易に想像できるからです。
わが家には現在6歳の自閉症(ASD)傾向の息子がおり、実際に私も七五三をするかどうか悩みました。
なぜなら息子は2歳頃から、
・親や保育園の先生以外の他人に写真を撮られるのが嫌
・着慣れないものは絶対に着ない
というこだわりがありました。
保育園のイベントにプロのカメラマンが来て、カメラを向けると顔を伏せる。
旅行中家族で写真を撮っているとき、周りの方が好意で「ご家族の写真撮りますよ!」と声をかけてくださっても撮影拒否。
新しい服や靴・園でごっこ遊び用に用意された衣装は迷わず拒否。
当時のままでは七五三の着物を着て写真撮影、ましてやそのまま神社の参拝など絶望的にしか思えませんでした。
しかしその後、息子の特性を理解することで私たち家族にちょうど良い七五三プランを練り、無事家族の記念写真を撮ることができたのです!
この記事では、息子のような発達障害・自閉症の子が七五三をするのが難しい理由と、可愛い晴れ姿を残す秘訣についてお伝えしていきます。
2. 発達障害・自閉症(ASD)タイプの子が着物や写真撮影を嫌がる理由
◆見通しがもてない
自閉症タイプの子は脳の機能が未熟なために、これから起こることを予測するのが苦手です。
予測ができず見通しが立たないので、何が起きるんだろう…と大きな不安を感じます。
状況をみながらこうすれば大丈夫!と自分で判断する力も、初めて七五三をする3歳、5歳頃では十分に育っていないため、慣れないことには楽しみより不安が上回ります。
不安なままでは動くことができません。
七五三では、普段の洋服とは全く違う形の着物・足袋・草履を身につけたり、行き慣れないスタジオや神社で初めての人に写真を撮られたりと、「いつもと違う」のオンパレードですよね。
見通しがもてない自閉症タイプの子には、次々に不安が襲うシチュエーションになります。
◆慣れない状況を乗り切る力が弱い
不安を感じがちな自閉症タイプは、脳のストレス耐性が弱い傾向にあります。
緊張したり、心配なことがあったりすると脳にストレスがかかり、理性的に考える機能のはたらきが鈍くなります。
安心したくて「いつもと同じ」状態を求めますが、なかなか安心な状態に戻れず、脳が限界を迎えると癇癪を起こすなどの困った行動につながっていくのです。
不安を敏感に察知するためにストレスを抱えやすいので、自閉症傾向の人は1日の中でストレスを感じている時間が長いと言われています。
七五三をやるとなると、短くても半日、しっかりやるとなると日中のほとんどという長い時間を要することになります。
着物を着るだけでも相当な頑張りが必要なのに、触覚的な違和感を感じたまま慣れない場所を歩き回ったり、良い写真を撮るためにカメラ目線やポーズを求められたり…
ストレスフルな状態が数時間続くので、どこで気持ちが崩れてしまってもおかしくありません。
以上のように、自閉症傾向の子は脳の特性上、初めてのことや経験がないことがとても苦手です。
そのため、七五三のイベントをする場合は事前にハードルを下げてあげる準備がポイントになります。
具体的にどんな準備をすると良いか、一例として私の体験をご紹介します。
3. 着物と写真を攻略して七五三の晴れ姿を残す3ステップ
◆①ムリのないスケジュール組み
正しい形式にこだわらず、本人や家族に適した時期・内容を考えましょう。
<時期>
数え年や満年齢の基準もありますが、本人の状態をみて決めるのが良いと思います。
例えば男の子の場合、年中さんの間は難しいと思っていたけれど年長さんになったら少し落ち着いたので、年長さんになってからやったというお話も聞きます。
また、七五三の正式なお参りの日取りは11月15日とされていますが、 その前後は神社や写真スタジオも混みあいます。
混雑具合や待ち時間を考慮して、ピークの時期を外すのも一つの手です。
わが家は年中さんの3月初旬に行いました。
2月はインフルエンザが心配だったのと、3月中旬以降は卒業・入学シーズンに入るのでその間にしました。
<内容>
本人や家族と相談し、優先順位を決めてみてください。
・着物を着る
・神社に参拝する
・家族で食事をする
・写真撮影をする
上記が七五三ですることの代表的なものですが、一度にすべてをやるのはなかなかの負担になると思います。
私はできれば息子に着物を着せて、家族の記念写真を撮りたいと思いました。
なぜなら息子は自分の映った写真のアルバムを見るのが大好きで、もし格好良く着物を着た七五三写真が残せたら大きな自信に繋がるだろうと考えたからです。
神社の参拝は別日に普段着で行く、食事はなしとしてできるだけ手短にすませるようにしました。
◆②苦手を楽しみに上書きする
難関の一つであった着物を着せるということについては、時間をかけて少しずつ取り組みました。
着慣れないものが苦手でしたが、特別なものを着ることへのイメージを変える作戦です。
いきなり着物を着せるのはハードルが高すぎる上機会もないので、普段着と違う「衣装」を着られるように段階を踏んでいきました。
何か普段とは違うものを着てみたいと、本人が言い出すタイミングを伺いました。
はじめのきっかけは、七五三をやった1年ほど前です。
当時息子は『おさるのジョージ』にハマっていたのですが、ジョージが蜂に扮してブンブン踊るという回がありました。
そのとき、「ぼくも蜂になりたい。」と言ったのです!
それを聞いた私はすぐに黄色の大きなゴミ袋や黒いビニールテープ、画用紙等を用意して即席の蜂の体と触角を作りました。
クオリティが高いとは言えないものでしたが、息子は大喜びで服の上からそれを被ることができました。
好きなことに関連させればいつもと違うものも着られるようになるかもしれないと考えた私は、その後もチャンスを見つけては「着てみない?」と誘ってみました。
・外出先の遊び場で、プラレールと一緒に置いてあった駅長さんの帽子を被ってみる
・キッザニアで、大好きな車関連のお仕事服を着てみる(全身でなく羽織るだけのものから)
・旅先で、コックさんの服を着てクッキング体験をする
少しずつ初めてのものが身につけられる体験を重ねていくうち、息子の中で特別な衣装に対する印象が変わっていきました。
「得体の知れない嫌なもの」から「憧れの対象に変身できるもの」になったのです。
「リフレーミング」と言いますが、ものごとの捉え方が変わると行動も変わっていくのです。
◆③予行練習で安心のタネをまいておく
写真撮影については事前に撮影練習をしました。
近所の写真屋さんにお願いすることにし、息子も下見と事前打ち合わせに一緒に行き顔合わせをしました。
人柄の良いご夫婦で、良い距離感で子どもとお話してくださるので徐々に慣れていきました。
息子の特性についてもお話したところ、「私たちも思い出深い撮影をたくさんしてきましたから、大丈夫ですよ。」と心強いお言葉をいただいて私も安心することができました。
その後ちょうどお正月のタイミングがあり、お正月の撮影イベントをすると聞いて家族で伺い、写真を撮ってもらいました。
かっちり決めたポーズではなく、自然な動きの中でラフに撮影してくださる写真屋さんなので、息子も緊張しすぎずに撮影することができました。
一度練習をして、場所や人、撮影の雰囲気に慣れておくとやはり安心感が違うと思います。
そして本番の撮影の日。
着物の着付けでは少々気持ちが崩れることもありましたが、着た後の撮影はばっちり。
自分で選んだ着物を見事に着こなし、ニコニコ笑顔の写真を撮ることができました!
七五三は、その年頃にしかできません。
はじめは着物で写真なんて嫌がるに決まってる!と思いましたが、格好良く笑顔で撮影ができたという写真は成長の証、家族の宝物です。
そしてわが子の着物姿って本当に可愛いです!
発達障害・自閉症傾向のある子の七五三は、着物も写真撮影も一筋縄ではいきません。
それでもなんとかできないかと迷われている方に、私の体験が参考になれば嬉しいです。
パステルキッズとの生活が楽しくなるヒントが多数あります!
執筆者:諸住乃莉子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)