もうすぐ小3になる発達障害の娘が「3年生になりたくない、大きくなりたくない」と言って泣きます。元々不安が強い子で、学年が上がることが不安なようですが、いつまでも甘えていて困ります。どうすれば現実を受け止めて自立できますか。
8才・女の子のママ
お子さんが進級に対して不安を抱えておられるご様子。お母さんとしても心配ですね。新学年に向けて、お子さんの不安を和らげ、前に進めるように対応していきましょう。
発達科学コミュニケーション
リサーチャー 水原沙和子
【目次】
1.大きくなることが怖い!?発達障害の娘のケース
2.変化にまつわる不安の理由
①環境の変化への不安
②自分の変化への不安
3.発達障害の子どもの不安を解消する2つの方法
①不安な気持ちを受け止めてあげる
②たっぷり甘えさせてあげる
1.大きくなることが怖い!?発達障害の娘のケース
私には小学校4年生になる、発達障害のある娘がいます。
不安が強く環境の変化が苦手で、小学校入学や進級時期には決まって不安を抱えます。
前の先生が好きだった場合は、いつまでもその先生のことが忘れられず、新しい環境を受け入れられないこともありました。
また、「大きくなりたくない」と言って泣いて不安を訴えることもありました。彼女の場合は、いつまでも小さい子としてかわいがってほしい、お世話してほしいという気持ちが強かったです。
不安は和らげてあげたい。でも学年が上がるのは仕方のないこと。 現実を受け入れるように教えなければ…。
いつまでも甘えていたら自立できない。自立できるように厳しくしなければ…。
そんな風に思って、厳しく叱った過去もあります。
厳しく対応してどうなったか。 自立心が高まるどころか、不安は増大してしまいました。
そう。不安を感じている子に対して、甘えさせないよう厳しく接しても不安がなくなることはありません。むしろ、お母さんに理解してもらえないことで、不安は強くなります。
2.変化にまつわる不安の理由
この時期に子どもが抱える不安の理由について、もう少し整理してみましょう。
◆①環境の変化への不安
分かりやすい不安の理由は、新しい学年になることによって、周りの環境が変わることです。
先生やクラスメイトが変わるのはもちろん、教室や下駄箱の場所、時間割、学習内容もこれまでとは同じではなくなります。小さなことから大きなことまで、全てが不安材料になります。
加えて今年は、臨時休校という想定外のことが起きています。心の準備ができないまま3学期が終わり、なんだかわからないまま長い休みに入っています。
いつも以上に不安が大きくなっていても不思議はありません。
◆②自分の変化への不安
もう一つの不安の理由は、自分自身の変化です。
お子さんは、次3年生になられるということ。中学年になると、生活面でも学習面でも今まで以上に求められることが多くなります。
不安の強い子どもたちは、大きくなるにつれて、もっと頑張らなければいけないというプレッシャーや、勉強がだんだん難しくなるという不安を感じている可能性があります。
学校でも、先生たちはそのような期待を口にされます。
お兄さん・お姉さんになっていくことを喜びととらえる子も多いですが、一方で、自分の変化や周りの期待に不安を抱く子もいるのです。
子どもによっては、身長が伸びるという体の変化そのものにも抵抗を感じていることがあります。
発達障害の子どもたちにとって「変化」は、私たちが思う以上に「不安」をかき立てるものなのですね。
3.発達障害の子どもの不安を解消する2つのポイント
子どもが進級の不安を感じているとき、私がとった対策をご紹介します。
それは、一言で言うと「不安に寄り添う」ことです。
不安に寄り添うってどういうことでしょう?あなたならどんなことをされますか?
私は次の2つのことを特に意識しました。
◆①不安な気持ちを受け止めてあげる
1つ目のポイントは、子どもが感じる不安を否定しないことです。
不安な気持ちというのは自然と湧いてくるものです。自分が抱く感情自体に良いも悪いもありません。
否定しても批判しても不安はなくなりませんし、受け止めてもらえないことで、子どもの不安はより大きくなります。
だから、その気持ちを否定せず受け止め共感しました。
「3年生になりなくない、大きくなりたくない」と言ったら、
・うんうん、とうなずきながらひたすら聞く
・大きくなりたくないね、とそのまま繰り返す
・3年生になるの心配なんだね、と気持ちを代弁する
といった対応をしました。
逆に避けたのは、不安な気持ちを否定すること。例えば、
・もう3年生になるんだからしっかりしなさい、とお説教をする
・みんな大きくなるんだからしょうがないでしょ、とつっぱねる
といった対応です。
ついついやってしまいがちですが、子どもにしてみると、不安な気持ちを受け止めてもらえず消化不良になってしまいます。
◆②たっぷり甘えさせてあげる
2つ目のポイントは、たっぷり甘えさせてあげるということです。
「大きくなりたくない」ということは、今のまま、まだ甘えさせてほしいという気持ちの表れです。その気持ちに応えてあげましょう。
今まで自分でできていたことができなくなったり、いつも以上にくっついてきたりするかもしれません。そういった甘えに応えてあげてください。
娘の場合、不安が強いときは、着替えや食事を手伝ってほしがりました。抱っこを求めてくることも増えました。
そういったことを受け入れてあげます。
もうすぐ3年生なのにと心配されるかもしれません。でも「まだ」3年生です。まだまだ甘えたい盛りです。
子どもがサポートを望んでいないことにまであれこれ手や口を出すわけではないので、過干渉にもなりません。
大人でも、大きなストレスを感じているときは、何かを頑張ることは大変ですよね?誰かにそばにいてほしいし優しくしてもらいたいですよね?
ストレスを感じやすい発達障害のある子どもなら尚さらです。
これが高学年であったとしても中学生であったとしても、甘えを受け止めてあげて良いのです。
さて、次4年生になる娘の今はどうか。 やはり甘えは普段の時期より少し出ています。「もう4年生になっちゃうの、いやだなぁ」と言うこともあります。スキンシップの要求も普段より多めです。
でも同時に「まぁいいや。もうあんまり気にならなくなった」と言っています。以前のように、大きくなりたくないと言って泣くこともありません。少しずつ受け入れてきています。
去年の同じ時期とは比べ物にならないぐらい、自分のことは自分でしています。こちらからスキンシップを取りにいくと「やめて」と断られることもあるぐらいです!
だから、不安が大きくなっているとき、無理に自立を促さなくて良いのです。不安を受け止め甘えに応じることは自立を妨げません。それどころかむしろ、自立への第一歩となります。
どうか安心して、お子さんの不安に寄り添ってあげてくださいね。
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執筆者:水原沙和子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)