集団生活に入ったうちの子、なんだか他の子と違う。もしかして発達障害?障害と個性って、どう違うの?と悩むお母さん。そんなときは専門家を頼るのも一つの方法です。思い切って行政の支援センターのドアをたたいた、我が家の経験談をお伝えします。 |
【目次】
1.もしかして発達障害!?きっかけは保育園の先生からの指摘でした。
2.障害?個性?相談を決めたきっかけとは?
3.「熊本市子ども発達支援センター(ウェルパル)」に相談した我が家の記録。
①電話相談・予約
②面接・心理検査
③検査結果説明
4. 結局、行政の相談窓口を利用して悩みは解決したの?どうしたらよかったの?
1.もしかして発達障害!?きっかけは保育園の先生からの指摘でした。
私の息子は、発達障害・注意欠陥多動性障害(ADHD)の小学校2年生です。年長のときに病院を受診し、診断がつきました。
息子は保育園に通っていましたが、年少に上がったころから多動が目立つようになっていました。
息子は我が家にとって第1子。初めての子育てだった私たち夫婦は、多動な我が子を「個性」だと思っていました。
男の子だから。3月生まれで早生まれだから。思い浮かぶのはそんな理由。まさか、自分の息子が発達障害だとは、疑ってもいなかったのです。
そんな私が、息子が発達障害かもしれないと気づかされた出来事、それは、年少に上がってすぐの保育園の面談。
担任の先生と私で、息子の保育園での様子や、今後の課題などを話し合う場でした。 面談の終わりに先生が、お家で何か困っていることとかありますか?と質問されたのです。
「ああ、そういえば、ご飯を食べるときになかなか座ってくれなくて。」
そう言った私に、
「そうなんですか?実は園でもなかなか座ってくれなくて立ち歩いてばっかりなんです。発達の相談に行かれたほうがいいと思います。」
と話された先生。 突然の話に動揺した私は、何も言えず、市の発達支援センターのパンフレットを手にとぼとぼと家に帰ったのでした。
2.障害?個性?相談を決めたきっかけとは?
帰宅後、夫や同居している祖父母に先生の言葉を伝えた私。 夫は
「え…、発達障害ってこと?支援学級とかにいかないといけないってこと?」
と軽くパニック。 祖父母は、
「元気がいいだけよ。ちょっと元気なだけで発達障害なんて、最近は何でもすぐ病気に結び付けて…。」
と、少し怒りモード。でも、これまでの息子の行動を思い出すと、思い当たるふしがないわけでもなかったので、私は迷っていました。
「もう少し成長したら、よくなるんじゃないかな?」
「ちゃんとしつけすればいいんじゃない?」
「元気すぎるのは障害なの?それとも個性?」
「相談が遅くなってどんどん症状が悪くなったらどうしよう。」
悩みと焦り、不安でいっぱいだった私の頭でしたが、面談の翌週に行われた保育参観での我が子の姿を見て、悩みは吹っ切れました。
そこには、並んだ椅子にきちんと座る他の園児と、すぐに立ち上がり少しの間も座っていられない我が子の姿がありました。
そして、息子が座る椅子の脚だけに結び付けられたゴム。
それは、息子が特別な対応をしなければ、皆と同じように園生活が送れないことを示していました。保育参観での息子の姿にショックを受けたものの、相談を決めた私。
その日のうちに、発達支援センターへ電話をし、面談の予約をとったのでした。
3.「熊本市子ども発達支援センター(ウェルパル)」に相談した我が家の記録。
熊本市子ども発達支援センターは、熊本市在住の0歳から18歳までの子どもの発達に関して相談を受ける行政の相談機関です。
発達に応じた支援・助言を行いながら、保護者の不安や悩みを一緒に考え、援助してくれる場です。行政機関のため、相談・支援は無料で受けられます。
健診で発達の遅れを指摘された子、息子のように、保育園・幼稚園などの集団生活の場でうまくふるまえない子。
そして、就学後の学習の問題、不登校など、子どもの発達凸凹を疑う場合に、通っている園や学校から紹介されて受診する方が多いとのことです。
このセンターが、熊本市中心部にある「ウェルパルくまもと」という建物内にあることから、通称「ウェルパル」と呼ばれています。
ウェルパルへの相談の流れは①電話相談・予約、②面接・心理検査、③検査結果説明、④継続支援(必要時)の4段階になっています。
我が家の相談時の記録に合わせて1つずつ説明していきますね。
◆①電話相談・予約
まずは、電話で相談をします。子どもの年齢・性別、今困っていることについて詳しく聞かれます。
相談時間は20分ほどかかりましたので、時間があるときに電話するのが良いと思います。
面談は通常2~3か月待ちであることが多いのですが、たまたま1か月後に空きがあったため、そう待たずに予約ができました。
予約をする際、「医師の診察もご希望されますか?」と聞かれました。希望すると、必要な場合は診察を受け、診断まで可能とのことでした。
そこまでの心の準備ができていなかった私は、「いや、診察は受けなくて大丈夫です」と答えました。電話の前に考えておく必要がありますね。
両親と本人で来所すること、また、「通っている園からの情報を得たいので連絡してもいいですか?」と聞かれ、電話相談は終わりました。
◆② 面接・心理検査
当日は私たち夫婦と息子の3人でウェルパルへ向かいました。 受付を済ませ、問診票を記載します。息子が産まれるまで、産まれてからのことについて、母子手帳を見ながら記入していきます。
質問の項目が多く、記入には10分ほどかかりました。受付前のプレイルームが充実していたので、子どもと夫は飽きずに遊んでくれていました。
問診票の記入が終わると、担当者(保育士、心理士)と面談です。
面談室は広く、おもちゃがたくさんあったので、息子は奥で心理士さんと遊び、私と夫は保育士さんからの質問に答えていきます。
問診票の項目以外に、家での様子や、子どもへの関わり方など優しく聞いてくれます。
私の中にあった、ちょっとした気づきや不安などを聞き出してくれ、話しながら少し涙してしまいました。
相談後、息子の遊びでの様子や相談内容から、発達検査を受けることが決まりましたが、検査はさらに1か月後です。それまでに何もできないことへの不安を訴えると、
「気が散りやすいので食事のときにはおもちゃは見えないところに置く」
「指示を出すときには肩をたたいて意識を向けさせてから話す」
など、息子の様子からみた対応策をアドバイスしていただきました。
1か月後、息子は「新版K式発達検査」を受けました。親は検査中の息子を少し離れた場所から見ることができました。
検査時間は1時間弱で、質問に答えたり、数字を暗唱したり、積み木を積むなどの様々な検査を1つずつクリアしていきます。
息子は、はじめは楽しそうにやっていましたが、最後は少し疲れてしまった様子で、なんとか検査を終えることができました。
◆③ 検査結果説明
さらに、検査から結果説明まで1か月ほどかかりました。
検査の結果、知的な発達に遅れはなく、むしろ平均よりできている部分も多かったとのことでした。
医師の診察は受けなかったため、発達障害の診断はつかず、検査項目の凸凹もあまり目立たなかったので、一般的な対応を教えていただき、説明は終了しました。
「それでは、またなにかありましたらご相談ください。」
という言葉で締めくくられた結果説明。え、フォローしてもらえるんじゃないの?と驚きました。
必要な場合はその後の定期フォローが行われるとのことでしたが、息子についてはそれに当てはまらなかったのです。
結局、相談はしたものの診断はつかず、対応の指導のみで具体的な支援策の提案もなく、相談はいったん終了したのでした。帰り道に、夫婦で
「で、これからどうしたらいいんだろうね」
「とりあえず、言われたことをやってみようか」
と話しましたが、これからの道筋を示されなかったことになんとなくもやもやしたのを今でも覚えています。
4. 結局、行政の相談窓口を利用して悩みは解決したの?どうしたらよかったの?
これは我が家の体験談ですが、同じような思いをしたことがある方も多いのではないでしょうか?
熊本市では、行政の相談窓口はあくまでも相談の場。
子どもの特性とそれに対する対応策は具体的に教えてもらったものの、息子はこれからどうなるのか、そして私はこれからどうしていったらいいのか、という、欲しかった答えは得られませんでした。
そう、相談だけでは、悩みは解決しなかったのです。
もちろん、相談して良かった点もありました。専門家から客観的に息子の発達を評価してもらえたこと、相談することで、自分の中にある不安や考えをまとめることができたのはよかった点だと思っています。
また、ウェルパルから保育園へのフィードバックが得られ、園での息子への対応には役に立ったようです。
今振り返ると、満足な結果を得られなかったのは、相談に行ったのが「親が、子どもが困っていたから」ではなく、「保育園の先生に言われたから」という受け身的な理由だったから。
他の子と違う我が子を見て私が不安になってしまい、子どもの困りごとを解決したい、という視点がなかったからだと思っています。
相談に行く前に、自分がこの相談に何を求めているのかをしっかり伝えなかったために、相談はしたけど様子を見ましょう、という結果に終わってしまったんですね。
専門家に相談できるから、きっと何とかしてくれるに違いない!! そのような気持ちで相談に行くと、私のように理想と現実のギャップにうちひしがれてしまうかもしれません。
もし、皆さんが、発達支援センターに相談に行こう、と一歩を踏み出したのなら、その相談を実のあるものにするために、相談に何を求めるのか、どうなってほしいと思っているのかを、しっかり考えてから相談されることをお勧めします。
行政の窓口への相談は、うまく利用できればお母さんの不安解消や、子どもへの具体的な支援につながります。
せっかく踏み出した1歩を有意義なものにするために、さらにもう1歩を進めてみてくださいね。
さて、この相談の後、私なりに頑張って息子へ対応したものの、園での行動はあまり変わりませんでした。
それどころか、周りの子どもたちがどんどん発達していく中、息子の困った行動はしだいに目立ってきてしまったのです。
そこで私は、年長を迎える我が子のために、もう一度ウェルパルへ相談に行ったのですが、今度は満足のいく結果となりました。
そこで私はどのような相談をしたのか?続きは次の記事をご参照ください。
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※こちらの記事の情報は2016年の情報です。相談の際には必ず最新の情報を確認してください。
執筆者:森博子
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)