発達障害の子どもの子育てで先が見えない…というお母さん、ぜひ「子育てのゴール」を想像してみてください。子どもが一人で生きていけること。そのために必要なものとは?ぜひこの夏休みから将来の自立に向けた一歩を踏み出しましょう! |
【目次】
1.子育てのゴールって一体?
発達障害・グレーゾーンのお子さんの子育て、お母さんの常識を軽く飛び越えるトラブルの連続ですよね。
夏休みに入ると、学校トラブルから解放された!と一安心、という方もおられると思います。
毎日子どものトラブルのフォローに追われていると、ついつい今日一日を乗り切ることで精いっぱいになってしまいますよね。
そんなお母さんに、お子さんが今こそ考えてほしいこと。
それは、お母さんは「子育てのゴール」をどう設定しているか?ということです。
一口に「子育てのゴール」といっても、捉え方はさまざまです。
たとえば、
・18歳(=成人)になったら…
・大学を卒業して就職したら…
・結婚して自分の家庭を持ったら…
・○○なチカラが身に着いたら…
など、いろいろ考えられますよね。
発達障害・グレーゾーンで困りごとが多い子どもを育てていると、「将来子どもにこんな風になってほしい!」という理想を抱く余裕もないかもしれません。
一方で「私がいなくなっても、一人で生きていけるようにしなければ」という焦りは誰でも持っているのではないでしょうか。
今日は、発達障害・自閉症スペクトラムの診断がある息子のために発達科学コミュニケーションを学んだ私が考える、「子育てのゴール」に必要な3つのチカラについて解説します。
2.発達障害の子どもの将来を想像してみよう!
あなたは、お子さんに将来どんな風になってほしいですか?
と言ってもなかなか難しいと思いますが、こんな感じではありませんか?
・やりがいのある仕事をしながら
・生活に困らないだけのお金を稼いで
・それなりに整った家に住んで
・少なくてもいいから気の置けない仲間を作って
・できれば一生共にできるパートナーに出会えて
・毎日生きがいを感じながら過ごしてほしい。
どうでしょうか?「そうそう!」と頷かれた方、ちょっと待ってください。
この人生、平凡じゃないですか?この「ザ・平凡」、絶対にまねしないでください!
私も含めて、発達障害の子どもを育てるお母さんは、子どものマイナス面ばかり目の当たりにしています。その結果、子どもの将来を考えても平凡なイメージが理想になっていきます。
「周囲に迷惑をかけず、人並みに幸せに暮らしてほしい」。こんな風に考えているなら、今すぐ考えを変えてください。
子どもはお母さんの背中を見て育ちます。お母さんがこんな風に考えているなら、子どもの将来もその範囲内におさまってしまいます。
発達障害・グレーゾーンの子どもたちは、もちろん困りごとは多いですが、一人ひとりものすごい才能を持っています。
お母さんが「それなりの人生」を考えてしまったら、その才能も消えてしまうかもしれません。
ノーベル賞をとってほしいとか、
オリンピックで金メダルをとってほしいとか、
世界を股にかける起業家になってほしいとか、
歴史に名前を残すような、モノやサービスを開発してほしいとか、
まずはお母さんがお子さんの将来を飛び切りでっかく想像してみてください。
小学校2年生の私の息子は、びっくりするぐらい記憶力が高いんです。そして、人が大好き。 ポケモンも大好き。これをどうにか形にできないか?と日々考えています。
夫と、ポケモンをテーマパークにしてを誘致できないか?と話し合うことも…(笑)版権が、初期投資が、在庫が、ロイヤリティが…と真剣に話し合っています。
こんな風に妄想とも思える、一見叶いそうにない夢を語るのってすっごく楽しいです!
今は、新しいビジネスを自分で生み出して発信する時代。将来をもっと柔軟に、もっと大きく考えられるんです。
そんな時代の子育てのゴールに必要なものが3つあります。
3.子どもに授けたい3つのチカラ
子育てのゴールに必要な3つのチカラ、それは
① 自己効力感
② 自己教育力
③ 生活スキル
です。1つずつ解説していきますね。
◆①自己効力感
自己効力感とは、きっと自分ならできる、自分に期待するチカラです。 特に発達障害・グレーゾーンの子どもには絶対授けたいのがこの自己効力感。
誰だって、初めてのことにチャレンジするのは怖いです。できればやりたくないって思いますよね。
この自己効力感があると、「きっと自分にはできる」と思えるのでチャレンジすることができます。
脳は新しい経験や行動によって発達が加速していきます。自己効力感を持っている子どもは、どんどん未知のことに挑戦でき、行動量も増えるので、発達しやすいのです。
例えば、
・上司から新しいポストのオファーが来たときに、「難しそうだけど頑張ります!」と手を挙げる人になってほしいのか、「自信がないので…」と辞退する人になってほしいのか。
・自分でやりたいことを発見したときに、「失敗するかもしれないけどやってみよう!」とチャレンジする人になってほしいのか、「やっぱりやめておこう…」とあきらめる人になってほしいのか。
前者になってほしいなら、自己効力感は必須です!
◆②自己教育力
自己教育力とは、文字通り「自分で自分を教育する力」です。
生きていれば、分からないことなんて山ほどありますよね。
私たちも、子どもの困りごとを解決する方法を求めて、インターネットで検索したり、書籍を読んだり、心理士さんに相談したりしていくうちに、いつの間にか知識がついていきました。
知らない、分からないからと言って、「知らないからしょうがない」「分からないからできない」で終わる人にはなってほしくないですよね。
「ちょっと調べてみよう」「誰か知っている人はいないかな?」と考えて実践する人に育ってほしいもの。
この自己教育力は、自己効力感とも密接に関係しています。
何かわからないこと・困ったことにぶつかったときに、まず「自分にもできる」と思えるから「じゃあ調べてみよう」と行動することができるのです。
発達科学コミュニケーションでは、自己効力感と自己教育力を授けることを「子育てのゴール」として位置付けています。
◆③生活スキル
自己効力感と自己教育力を身に付ければ、人として社会で生きていくための資質は十分に備えることができます。
プラスして私自身が大切だと思っているのは「生活スキル」です。
どんなにすばらしい資質を持った人、たゆまぬ努力ができる人でも、生活基盤がボロボロだと一緒にいたいと思えないですよね。
・びっくりするような汚部屋に住んでいる
・服装がいつもだらしない
・食生活が極端に偏っている
・金銭感覚がおかしい
こんな人だと、仕事でもプライベートでも一緒にいることを躊躇しませんか?
「○○さんって、仕事はすごいのに…ねえ?(笑)」と噂されるに決まってます!
実は、こういった生活スキルが低いのは、大人の発達障害やグレーゾーンの方に見られる特徴です。
ちょっと想像してみてください。お子さんは今の段階で、お母さんが生活サポートを一切しなかった場合、どんな生活になりますか?
朝、自分で起きられますか?
自分で着替えをし、顔を洗えますか?
食事の準備を自分でできますか?
調理はできなくても、冷蔵庫から飲み物を出してコップに注いだり、バナナをむいたりできますか?
もしくはコンビニに行って食べ物を調達する、という発想がありますか?
実際にコンビニに行く行動力はありますか?
コンビニで適切に商品を選ぶことはできますか?
片付けや掃除や洗濯はどうですか?
お風呂は1人で入って体や髪をしっかり洗えますか?
ちょっと厳しいかも…と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。もちろん、年齢によってできる・できないがあるのは当然です。
私は息子が18歳になったら1人暮らしをしてほしいと思っています。私自身も7年ほど1人暮らしをしましたが、この経験から得られるものはたくさんありました。
発達障害の子どもたちはどうしても「サポートされる側」に立つことが多くなります。だからこそ、子ども自身が「自分1人でできる」「自立している」と感じられる機会を積極的に作りたい。親元から離れて暮らすことは本人の自覚や自信を育てるはずです。
一方、最低限の生活スキルがない状態で、「1人暮らししたいかどうか」と聞く勇気はさすがにありません。
ある程度のスキルを持たせた状態で新生活に送り出すためにも、小さいうちから少しずつ、無理なく抵抗感なくスキルを獲得していくのがいいと考えています。
4.この夏は3つのスキルをまとめて鍛えよう!
発達障害の子どもたちのなかには、「なんとなく親の背中を見て覚えるだろう…」が通用しない子もいますよね。ということは、お母さんが積極的に生活スキルを教えていかないと、獲得する機会すら逃してしまいます。
子どもが1人暮らししなくても、お母さんだって体調がつらいときもあるでしょう。子どもが小さくても、「自分でできることは自分でする」と生活スキルを教えていくことは、お母さん自身の生活にゆとりをもたらすはずです。
生活面は毎日のことだからこそ、子どもがスキルを獲得できると毎日がラクになっていきます。そしてそのスキルは一生モノです。毎日のことだからこそ、毎日トレーニングするチャンスがあります。
自己効力感、自己教育力、そして生活スキル。この冬は3つのスキルを一気に鍛えてみませんか?
今年の夏休み、息子は学校で決めてきたお手伝いである「タオルたたみ」を毎日欠かさずやってくれています。
生活スキルを鍛えるためのタオルたたみを通して、息子は試行錯誤しながら
・自分で全部たためた!(自己効力感)
・端と端をあわせたらきれいにたためた!(自己教育力)
・たたんだ洗濯物を片づけたら部屋がすっきりした!(自己教育力)
と、生活スキルを高めながら自己効力感、自己教育力も同時に得られていると感じました。そして、気が向いた時には、タオル以外にも、自分の洋服をたたむ日も出てきました。
自己効力感を鍛えたい!と何か特別なことをする必要はない、と気づいたんです。
この夏休みは、何か1つでもいいので毎日お手伝いをしてもらい、創意工夫する経験、1つのことをやり遂げる経験、人の役になっている経験をさせてあげてください。
お母さんの方も、
子どもがやる気を持って取り組める声かけをする。
最初から完璧を目指さず、スモールステップで取り組む。
飽きたら無理強いしない。
できたところまでをしっかりほめる。
など、「どう教えたら子どもが楽しく覚えられるか」が腕の見せ所です!
ぜひこの夏から、子育てのゴールを意識してみてくださいね。私も頑張ります!
執筆者:丸山香織里
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)