板書を写すことが苦手な発達障害・グレーゾーンのお子さんに悩んでいませんか。決して、子どもが怠けているわけではないんです。その子の弱点や特性を理解して、弱い部分を伸ばしてあげることが得策です。遊びの中で楽しくトレーニングする方法をお伝えします。 |
【目次】
1.板書を写すことが苦手な息子のせいで授業が遅れている…
2.板書が苦手なのはどうして?
3.遊び感覚でできる!トランプ・メモリー
①記憶する練習(ワーキンメモリー)
②視線の往復運動の練習
1.板書を写すことが苦手な息子のせいで授業が遅れている…
我が家には、現在小学5年生の発達障害・注意欠陥多動性障害(ADHD)傾向がある息子がいます。息子が2年生のとき、衝撃的なことがありました。
学校の参観・保護者会のあと、担任の先生に息子の学校での様子を伺ったときの話です。
先生は「今日は、頑張っていましたね。」と仰いました。参観では、真面目に授業を聞いていた息子だったので、“今日は”が気になりましたが、すぐに理由が分かりました。
普段は、
・切り替えができない
・集中力がない
・気が散りやすい
・物をよく落とす
・メガネをなくす…
などいろいろな問題行動が多く、先生も困っているご様子でした。
そして、最後に「◯◯くん(息子の名前)が、板書を写すのが遅くて、クラス全員で書き終わることを待っている状態です。そのため、授業が遅れてきています。」と言われました。
えぇーーー⁉︎息子のせいでクラス全員を待たせていて、そのせいで授業の進みが遅れている。全く知らなかった事実を知り、私はとてもショックを受けました。
当時、息子は荒れていて反抗的になっていたので、いろいろ心配していたところに、先生の言葉にトドメを刺されました。
1年生のときは、先生もノートに書き写す時間を十分にとってくださり、書く量も多くありませんでした。
しかし、2年生からはノートに書き写す時間が減るのに書く量は増えます。そのため、板書につまずく子が2年生あたりで出てくるようです。まさに、息子のこと…
板書が苦手なだけでなく、他にも困りごとがあって本人もお母さんも大変だろうからと、知能検査(WISC-Ⅵ)を受けることを勧められました。
知能検査を受ければ、困りごとの解決法が見つかっていくと説明をされ、知能検査を受ける決心をしました。
知能検査を受け、息子の困りごとには理由や背景があることが分かりました。発達障害ADHD傾向があり、見る力が弱いとのことでした。
知能検査を受けることは、勇気がいることでしたが、今となっては決断できて良かったと、思っています。板書や苦手なことを改善させていくための1歩が踏み出せたのです。
2.板書が苦手なのはどうして?
板書は、大人にとっては簡単なことですが、子どもたちにとってはとても難易度が高い作業です。
見る力が弱かったり、発達障害の特性があったり、また、不注意や衝動性の特性がある発達障害ADHD傾向があると、さらに難しくなります。
では、板書作業を細かく分解してみていきましょう。
・机から距離が離れている黒板の文章を見て、一旦頭に入れます。
・視線を黒板からノートに移動しピントを合わせます。
・記憶していた文章を手元のノートに書き写します。
・ノートから黒板に視線を移動しピントを合わせます。
・先ほどの続きを探し、また記憶します。
このように、たくさんの作業が必要なんです。この一連の作業が上手くできない子どもが、板書を写すことが苦手になるのです。
では、板書を写すためにはどのような力が必要で、苦手だとどうなるのでしょうか?
◆距離が離れている場所の情報を一旦記憶する「ワーキングメモリー(記憶保持)」
この力が弱いと黒板を何度も見なければならなくて疲れてしまい、時間だけが経ってしまいます。
◆見る焦点を遠くにある黒板から手元のノートに移動させ焦点を合わせる「視線の往復運動の力」
この力が弱いと、焦点を合わせているうちに、どこを書いていたかわからなくなってしまいます。
◆目から得た情報を元に、ノートを見ながら手を動かす「眼と体のチームワーク力」
手先を動かすことが苦手な不器用なタイプは、書くことに時間がかかってしまっていることもあります。
◆視界に入ってくる情報のうち、黒板とノート以外は無視し、黒板とノートに注意力を続ける力
発達障害ADHDの特性あると、教室内の掲示物や周囲の友達の動きに興味が向いてしまい、集中できない、気が散りやすい状態になってしまいます。
このような力が不足していると、書き写すことが苦手でも無理はありません。友達のように板書の写しができなくて1番困っているのは、子ども自身なんです。
発達障害の特性や見る力の問題なので、子どもを叱ったところで、メリットは何もありません。大人がサポートして、改善できる方法を見つけてあげましょう。
3.遊び感覚でできる!トランプ・メモリー
板書を写すことが苦手だからといって、書く練習をたくさんやると苦行になってしまい、続きませんよね。
特に、発達障害ADHD傾向の子どもは、興味関心がないことには集中が続きません。
そこで、板書を必要な力を伸ばすためにトランプを使ったトレーニング“トランプ・メモリー”をおすすめします。
遊び感覚・クイズ感覚で、楽しく無理なくトレーニングできますよ。
我が家の発達障害ADHD傾向の息子も、トランプを使うのでクイズ感覚で取り組むことができました。トランプのおかげで、負けず嫌いを発揮してやる気満々でトレーニングできました。
“トランプ・メモリー”とは、簡単に説明すると限られた時間でトランプの数字とマークを覚える練習です。それでは、やり方を詳しくご説明します。
最初に、トランプの中から1〜10の数字だけを取り出してください。数字が1〜10のトランプを使います。
◆①記憶する練習(ワーキングメモリー)
カードの中からカードを2枚取り、テーブルの上に表を上にして並べます。マークと数字を覚えます。覚える時間は、1枚につき3秒くらいを目安にします。
カードを裏返します。覚えたマークと数字を左→右の順に口頭で答えます。合っているかカードを戻し、確認します。
例えば、「ハートの7とクローバーの3」のように答えます。
もし、これが難しいようでしたら、最初は同じマークのカードだけ使い、数だけ覚えることにチャレンジしてください。これができたら、数とマークを覚える問題にして、徐々に難しくしていきましょう。
逆に、簡単そうで余裕がある場合は、カードの枚数を増やして3枚→4枚と増やしてやってみましょう。
この練習は、眼から入った情報を図形や文字の形を正確に把握して、記憶するトレーニングです。
◆②視線の往復運動の練習
黒板とノートを交互に見るような目を動かす「視線の往復運動」のトレーニングをします。紙と鉛筆も用意してください。
お母さんは、お子さんが座っている場所から少し離れた前方に立ちます。この距離も徐々に伸ばしていき、学校の席から黒板までの距離くらいを目指してください。
離れたところで、お母さんはトランプを2枚、お子さんに見せます。お子さんは、手元の紙にそのトランプの数とマークを書きます。例えば、「♡7 ♢3」のように書きます。
できたら、枚数を3枚→4枚と増やしていきます。視線を手元から別の場所へ移動し、また手元を見ることにより目を素早く動かし焦点を移動するトレーニングです。
横並びにして左→右の練習ができたら、縦並びにして上→下に答える練習をしましょう。
遊びながらトレーニングするときのポイントは、お母さんの声かけをちょっとだけ工夫することです。楽しく取り組むことができますよ!
例えば、
「クイズだよ!クイズ第1問!」
「次の問題は、答えられたらすごいけど、ちょっと難しいよ!」
などお子さんのやる気を引き出せるような声かけをしてみてください。
そして正解だったときは、「正解!すごーい!」と褒めてあげてください。
例え間違えたとしても、「数字は正解だよ!」や「じっくりカード見れたね!」など、できているところを見つけて褒めてあげたり、声に出して伝えたりしてくださいね。
トランプを使って、遊び感覚で板書に必要な力を鍛えることができるかと思います。
もし、お子さんのやる気がでないときは、無理強いする必要はありません。できそうなときに、トライしてみてください。
さて、現在小学5年生になった発達障害ADHD傾向の息子ですが、学校での板書がスムーズにできるようになっています!
取り掛かりがワンテンポ遅れてしまうことが時々あるものの、時間内に書き終わらないことはなく、しっかり授業のペースについていっていると、担任の先生が仰っていました。
板書を写すことが苦手なお子さんには、何か原因があります。
大人がその原因を理解して、できるだけ楽しく鍛えてあげられると良いですね。
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執筆者:高嶋ともこ
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)