今年小学生になる5歳息子がADHDです。社会的ルールのある外に出た時「電車に乗る」「外食する」「スーパーでの買い物」などでやってはいけない行動の連続になります。
具体的には、
「電車に乗る→座席に立って跳ねる」
「つり革掴むためずっと走ってジャンプ」
「スーパーの買い物→商品であるお米の上に乗ったり、パンを素手で触る、レジが気になって機械を触る、積んである商品で積み木がはじまる」
「外食する→落ち着けず走り回る、箸や爪楊枝を全部出す」
などいろいろとあります。
別の行動に促そうと声掛けはしますが、気づくと身体が衝動的に動いて触ったり投げたりといった様子です。常に行動を注意し続けるのは本人も苦しいよねと思いながらも、周りの目がある場所では、つい大きな声で注意してしまいます。
野原に解き放てばこの子を注意しなくて済むのかなぁ…と思うくらいヘトヘトになるときもあります。
「できたら褒める」「できたら褒める」と思っているのですが、あまりの動きになかなかそうもできないときがあって、社会的ルールのある場所での効果的な声掛けや行動変容の促し方を教えていただきたいです。
年長 男の子のママ
お母さん、大変お疲れ様です。5歳でこのタイプは今一番大変なタイプなんですね。
知っておいてほしいのは、脳の特性なんです。すぐ触ってしまうという「衝動性」というのは脳の特性なので、5歳の子がコントロールすることはかなり難しいと思ってください。
たとえば、大人だって「ねむい」とか「お腹がすいた」という脳から発せられる信号をコントロールすることはちょっとすごい難しいですよね。
それとほぼ同じなので、言えば言うほどなかなか効果がないからお母さんも苦しくなります。ですから、整理して考えていきたいと思います。
まずは、困った行動の対応を2つに分けて考えていきます。
➀速攻性のある対応(今困っている、だから何とかしないと)
➁根本的に解決する対応(そもそもこういう行動がなくならないかなあと解決する対応)
どっちを先にするかということなのですが、やっぱり根本的に解決する対応が先にあった方が圧倒的に上手くいくのです。
お母さんたちはどうしても即効性のある対応をまず知りたいと思うのですが、「根本的な解決する対応にはどんなことがあるのか?」ということを考えていきたいと思います。
相談してくださったお母さんがおっしゃるように、できたら褒めようと思っているというのは全然ありなのですが、もう一工夫あると全然効果が変わってきます。
実は、できたら褒めるの「できたら」は落とし穴なんです。
なぜなら、大人が期待するほどの「できたら」の状況にはなかなか出会わないと思いませんか?できたら褒めようと思っていると、どうしても褒めたいけど褒められないということが続いてしまいます。
ですから、こう考えてほしいんですよね。
「もう本人が終えたこと」を褒めることと「まだやっていることはいったんスルー」することです。
これを基本的な対応としてやり続けると子どもの行動がだんだんだんだん変わってくるので、ちょっと騙されたと思ってぜひやってみてほしいです。これがまず1点です。
では、「即効性のある対応はどうしていくか?」というと、まずは状況を変えるのが一番なんですね。
衝動性が高いタイプは耳よりも目のほうが得意だから、見えたものに反応します。だから、目の前にその状況があるかぎりは見えているものに反応し続けてしまいます。
今、根本的に行動が変わるまえに状況を変えることは難しいので、できれば状況を変えてあげる。目の前に見えるものを視界から消して意識を変えることがすごく大事です。
例えば、「ジュースが欲しい!」という子どもにジュースを目の前にして「ジュースを買わない!」と説得しても、永遠にそれが続いてしまいます。ジュースを視界からまずは消していくことをやっていったほうが良いです。
その代わり、これが効果を発揮していくということは、根本的な対応をやりながらのほうが上手くいきます。
やっぱり人前での困りごとの対応は難しくて、お母さんもしんどいと思うんですよね。
その時に、人前で大きな声で怒ってしまったことを後悔したり自分を責めたりするお母さんたちが多いのですが、人前にいるときは「対応してますよ」ということを見せることも大事です。
大きな声を出したことで自分を責めないでください。出かけることが嫌にならないこともすごく大事なこと。
根本的な対応をすぐに始めていくことですね。声かけの質を変えていくということが即効性があると思ってください。
もうすでにできたことを褒める、終えたことをほめるの具体的声かけにはどんなものがありますか?
衝動性のタイプではないけれど…着替えでテレビを見てボーっとしていることがあると思います。
例えば、右足だけズボンに足が入っているけど左足が入っていない状況だと、「まだできていない」ことが目に付きます。だから「まずは着なさい」と言ってしまうのが普通の声がけと思うのですが、右足に注目してほしいです。
右足がズボンに入っているのなら「右足がズボンにはいっているね」が終えたことの褒めになります。
終わったことを言うと、子どもたちも右足が終わったら左足を入れたらいいんだと分かります。次は?と気が付くので、もう終わったことを見つけてほしいです。
そもそも着替えていない場合はどうしたらいいですか?
例えばその時も、洋服を手に握っていたら持っているし、パジャマを脱いでいる時なら、脱ぎかけているときにボタンが1つ外れていたら「ボタンがとれたね」でOKです。
終えたことが1つもないという状況はありません。起きてきているなら「起きてきたね」でいいのです。
彼らがやっていることを評価せずに、指示ばかりしているからついバトルになってしまうんです。終えたことを見つける目を養うことが大切です。
発達科学コミュニケーショントレーナー
学術博士、臨床発達心理士
吉野加容子