今回は「発達検査の事前準備シリーズ」その2です。ドクターに勧められるままに受けてしまっては、検査から得られる情報が半減してしまうことをご存知ですか?検査を受ける前には、ドクター(あるいは担当の心理士)に軽くジャブを打っておくと良いんですよ! |
【目次】
1.発達障害の検査や診断で、なぜジャブを打っておくのか?
2.ジャブを打つときのお約束
3.検査や診断を受ける前に打っておくべきジャブ、その1
4.検査や診断を受ける前にうっておくべきジャブ、その2
5.発達検査の本来の目的を考えてみましょう!
1.発達障害の検査や診断で、なぜジャブを打っておくのか?
子どもの発達が遅いかもしれない。子どもが発達障害かもしれない。いや、きっと大丈夫・・・。
子どもに発達の検査(心理検査)を受けさせるとき、保護者にもそれなりに勇気が必要なはずです。でも、心理検査の結果=発達障害の診断基準ではありません。
厳密に言えば、発達障害の診断をするときに、その検査の結果を参考にする「補助検査」的な位置付けです。
では、なぜ心理検査を受けるのでしょうか?心理検査の目的は主に3つあります。
① 発達の程度を知ること
② 発達支援の有効な方法を考えること
③ 今までの教育(発達支援)の効果検証をすること
心理検査を受けるのが初めてならば、その目的は①と②に絞られます。
つまり、心理検査は、「これからこの子の何を、どうやって育てたら良いの?」という問いに答えるためのヒントを得るためのものです。
ところがですよ!!!(← 声を大にして言っています)
検査の結果を有効に使っていない機関が、た〜くさんあります。
例えば、こんなのをよく耳にします。
・検査の結果を知らせない
「ま〜、平均のところもありましたけど、ちょっと平均を下回るところもありましたね」程度のコメントのみで、数値そのものを見せてもらっていない。
・検査の結果を紙で渡してくれるが
数字ばかりズラ〜っと並んで意味がわからない!
・数字の羅列の下にコメントは乗っているが
コピペか?と思うような、通り一遍の所見が5〜6行書いてある程度!
・口頭で説明があったが、難しくて分からなかった!
どれも、心理検査の目的①と②を満たしてないですよね!?アゴが外れそうですよね!?
今は、どこの機関も予約でいっぱい。心理検査を受ける順番だって、待ちに待ったはずです。挙げ句の果てに、診断もグレーで発達支援も受けさせてもらえない。もしくは2〜3ヶ月に数回のみの支援にとどまってしまう。
医療機関の苦労もわかるんです。もう本当にいっぱいなんです。そしてできるだけ重度の人から目一杯対応しているのです。決して手を抜いているわけではないんです。
でも!でも!でも!「せっかく受けた検査の結果が、コレ?」って思いたくはないですよね!?
だから、検査を受ける前にジャブを打っておくんです!
ジャブが効くかどうかは正直分かりません。一生懸命なドクターや心理士、言語聴覚士(ST)なら効くでしょう。
そもそも心理検査を読み取れない人なら、どれだけジャブを打っても無意味かもしれません。
でも、打つのはタダです。もちろん、相手を痛めつけるためのジャブではありません!ドクターや心理士やSTさんの闘志を引き出すジャブです。
あなたの子どものために「いっちょ、やってやりましょう!」というプロの本気を引き出すためのジャブなら、そしてタダなら(笑)、打っておきたいと思いませんか?
どんなジャブを打っておくのか、お伝えしていきます。
2.ジャブを打つときのお約束
勘違いしてはいけないのは、プロの本気は、だてや泣き落としでは引き出せないということ。小手先のコミュニケーションでは、あなたの熱意は伝わりません。
どんな職種でも、プロの本気を引き出すには仕事の依頼をするときに「それこそ、俺たちプロの仕事だもんな!」と思わせることがポイントです。
つまり、心理検査を受けるときには、心理検査の本来の目的や効果を強く望んでいることをしっかり伝えることが大切です。
だからジャブを打つときのお約束は、あなた自身がしっかりと心理検査の目的を理解すること。
医療スタッフと患者さん側に優劣はありません。しかし、専門知識を持っているかどうかの違いにより、どうしても「お願いする方と、される方」という関係が自然とできてしまうもの。
そんな関係になると、どうしても患者さん側に物足りなさが生まれてしまうことがあります。
ですから、心理検査の特徴をよく理解した上でジャブを打ってみてくださいね。
3.検査や診断を受ける前に打っておくべきジャブ、その1
さて、どんなジャブを打てば良いのでしょうか?
1つめは、前回「 発達検査の事前準備シリーズ<その1> でお話しした「検査を受けた後、指導が受けられますか?」の一言。
病院や教育センターに発達支援のプログラムがありそうなら、「ぜひ指導を受けたいんですが!」とひと押し。
お子さんの発達レベルに合う支援プログラムがなさそうなら、「家や学校でやれることを、結果と一緒に教えてください」
診断だけを目的として心理検査を用いている施設では、医療機関側が数値だけを把握することを目的にしている場合があるのです。
そこで、「せっかく心理検査を受けられる貴重な機会なので、診断も大事だと思うのですが効果的な指導に繋げたいんです!」という態度を見せておくジャブが必要なのです!
だって、診断名が付いただけで、発達が進むワケではありませんからね。
4.検査や診断を受ける前に打っておくべきジャブ、その2
2つ目のジャブが今回の本題。これは、プロも見落としがちなところに、しっかり視点を向けてもらうためのジャブです。
それは、「息子(娘)の、強みになる能力を教えてください!」と伝えておくこと。
心理検査を受けるまでに話が進んでいるのですから、当然、日頃の困った行動を事前に伝えてあるはずですね。
そういった困った行動について聞くと、発達の専門家は、「あ〜、ADHDっぽいな〜」とか、「学習障害の重複がありそうだな〜」など、頭の中である程度の見立てや仮説を立てています。
だからこそ、事前の聞き取りはとっても大切ですし、その聞き取りから、適切な検査を複数選ぶことができます。
専門家は、この時点で既に「この親子が困っている原因は何か?」という頭の回路になっています。原因探しということは、言葉を換えれば「短所探し、弱み探し」です。
もちろん、どんな項目で発達が遅れているのか?を探し当てることは、今後の発達支援の方向性をフォーカスするためにとっても大事です。
逆に、忘れてしまいがちになるのが「強み探し」の視点なのです。強みはなぜ大事か?というと、お子さんの弱いところを補う能力として使えるからです。
もし本当に発達障害やグレーゾーンだった場合、弱い能力を指導して力をつけていく方法では追いつかず、強い能力でカバーする方法を身につけさせることが有効な場合が多々あります。
この方法は、発達業界ではもはや常識です。
ですが、ついつい弱いところに目がいってしまって、「言語発達が遅いよね…」みたいな結果の通知になることがしばしばあります。
5.発達検査の本来の目的を考えてみましょう!
医師からお子さんの弱いところばかりを言われると、子どもをよく観察しているお母さんならきっとこう思うはず。
「分かってますから!!」
「だから検査を受けてますから!!!」
「だから検査を受けてますから!!!」
どうすればいいのか知りたいのに、傷に塩をベッタリ塗りたくられるように言われると「で?検査で分かったことは、それだけ?」と思っちゃいますよね。
だから、こんな報告で終わらせないために、最初から言っておくんです!
「この子の今後の人生のために、弱いところだけでなく、この子が自分自身で頼りにできる強い力を知りたいです!」と。
強い能力って観察だけで見つかる場合もありますが、日々、失敗を繰り返している子を見ているとついつい見逃してしまうポイントです。
「検査で、強みを見つけましょうね」と言うと、「えっ、この子に強みがあるんですか!?」とおっしゃるお母さんもたくさんいます。
大学に行くときや、職業を選択するとき、あなたは自分の得意な分野、強い分野を選んだのではないですか?
発達が気になるお子さんには、その選択を少〜し早めにさせてあげることが大切です。
もちろん、弱い能力を諦める訳ではありません。でも発達が遅いということは、普通の「苦手」というレベルよりもちょっと手強い苦手さなんです。
生きている間中ずっと弱い力を指摘されてばかりいたら、生きる気力も失ってしまうってモンです。
強い力を知って、子どものやる気を引き出し成長力を高めることが、心理検査の本来の目的だと私は考えています。
最初に目的を与えておくと、その目的に見合う情報を自動的に探しに行くのが、人間の脳の仕組み。
だから、検査の後ではなく、検査の前にジャブを打っておくことが大切なんですよ!
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執筆者:吉野加容子
(発達科学コミュニケーショントレーナー、学術博士、臨床発達心理士)
(発達科学コミュニケーショントレーナー、学術博士、臨床発達心理士)