何度も手を洗いすぎる子どもを見て、もしかして強迫性障害なのかな…と、心配になっていませんか?手を洗いたがる子どもに手洗いをやめさせようとする対応はNGです!どうすれば、その執着を手放せるのか家族の関わり方をお伝えします。
【目次】
1.何度も手を洗いすぎる子どもに「やめなさい!」と言っていませんか?
2.手を洗いたがるのは強迫性障害だから?何度も手を洗う理由とは
◆日常の小さな変化に敏感
◆手洗いをやめさせようとする言葉に傷ついている
3.「お母さんは分かってくれる!」子どもに安心感を伝える方法
4.手を洗っている最中と家族の対応
1.何度も手を洗いすぎる子どもに「やめなさい!」と言っていませんか?
急に手を洗う回数が増えたり、汚い!と言って怒ることが増えたりすると、お母さんも驚いてしまい、つい「やめなさい!」と言ってしまいがちではありませんか?
もちろん心配の気持ちからなのですが、やめさせようとしたり、汚くないよと伝える声かけは、ますます子どもの手洗いをひどくさせてしまうんです。
・1日に何度も石鹸でゴシゴシ手を洗う
・一度洗い始めるとなかなかやめられない
・家族と手拭きタオルを共有できなくなった
・あかぎれや乾燥で、手に傷ができて治らない
こんな様子が見られたら、注意してください。
障害・自閉症スペクトラムタイプのわが家の息子が小学4年生の秋から冬にかけて、急にこんな風に手を洗いすぎるようになりました。
実際に私ももう手を洗いすぎ!やめよう。そんなに洗わなくても大丈夫!などと言っていましたが、全く改善されることはありませんでした。
やめなさい!と言えば言うほど、家族が困った…という顔をするほど、エスカレートして回数が増えていく気さえしました。
どうして手を洗うのか息子に聞くと、当然のようにこう言いました。
「汚いから。汚れたら手を洗うのは当たり前でしょ?」
自分で使ったティッシュを触った、手に汗をかいた気がする、誰かが触ったかもしれないものを持ったなど、子どもなりには理由があって何度も手を洗うのです。
あまりにも私の感覚とはかけ離れた息子の衛生観念にとまどい、インターネット検索をして、息子は強迫性障害や潔癖症かもしれない…と感じるようになりました。
発達の経過観察のために通院しているので、心配で聞いてみましたが、特に強迫性障害ですと診断されることも、治療をしましょうと言われることもなく
「様子を見ましょう」と言われただけでした。
薬を塗っても手が赤黒くなるほどに傷はひどくなり、いったいどんな風に対応すれば手を洗わなくてすむようになるのかと悩んでいました。
2.手を洗いたがるのは強迫性障害だから?何度も手を洗う理由とは
◆日常の小さな変化に敏感
1日に何度も手を洗いたがるようになった場合、環境の変化や子どもにかかるストレスが大きくなっているという可能性があります。
・いつも決まったスケジュールではなくなった
・担任の先生や席替えなどで環境が変わったことに慣れていない
・集団のなかで勉強やスポーツについていけなくなってきた
・お友達とうまくいかない
など、環境が変わることで、知らず知らずのうちにストレスを感じていたり、少し自信を無くしていたりしませんか。
大人には信じられないような、日常の小さな変化を子どもは敏感に受け止めてストレスを抱えてしまうことがあります。
その変化のせいで、子ども自身も言語化できない心配や不安感が強くなり、ストレスを和らげるために何度も手を洗うという行動が見られることがあるのです。
◆手洗いをやめさせようとする言葉に傷ついている
何度も手を洗いすぎることをやめさせようと声をかけることは、子ども自身を否定していることと同じなのです。
そして、否定されたという傷ついた気持ちから、ますます手を洗うようになって負のループにおちいっていきます。
お母さんは子どもを否定しているつもりは、全くないですよね。
優しい穏やかな口調で「そんなに手を洗わなくても、汚くないから大丈夫だよー。」と言ったとしても、子どもにはその心配する気持ちがなかなか伝わりません。
言葉の通りに受け取り「汚いのに、汚くないって言われた!」と思ってしまい、自分自身のことを否定された気持ちになるのです。
手洗いに関して話すと、子どもがイライラしたり、怒りっぽくなったりしませんか。
お母さんはそんな子どもの態度を見て、「心配してあげたのに!」という気持ちになると思いますが、子どもは見えないストレスと戦っています。
少し多めにみてあげて、手洗いをやめさせようとしないでくださいね。
強迫性障害とは、本人がやめたいと思っていてもやめられない、不安から同じ行動を繰り返して日常生活に支障をきたすなどの場合に、病院で診断されます。
自閉症スペクトラムの子どもが持つこだわりの行動なのか、病気なのか判断は難しいですよね。
では、どうすれば何度も手を洗いすぎるという行動を減らすことができるのでしょうか。
3.「お母さんは分かってくれる!」子どもに安心感を伝える方法
息子の手洗いが減ったときに効果的だった二つの対応をご紹介します。
すぐに始められる簡単なことなので、ぜひ今日から実践してみてくださいね。
◆子どもの認知を変えようとしない
子どもが何度も手を洗うのは「汚いと感じるから」でした。
発達科学コミュニケーションは、子どもの認知・感じ方を変えるものではありません。
ママの対応や声かけを変え、子どもから良い行動を引き出して発達を加速させるメソッドです。
例えば、大好きなお菓子を嫌いになりなさい!嫌いな野菜を好きになりなさい!と言われても、それは難しいですよね。
つまり、子どもの「汚い!」と感じる気持ちを変えてあげよう!と思う必要は全くないのです。
汚いと思う気持ちには「そうなんだね。そう思うんだね」と共感的に接しましょう。
◆子ども自身に伝わるように肯定する
自閉症スペクトラムタイプの子どもは、ネガティブな感情が優位になり不安が強いという特性を持っているため、お母さんの褒めが目減りして伝わります。
お母さんとしてはたくさん褒めているつもりなのに、子どもには半分くらいか、それ以下にしか褒めが伝わっていないということがとても多いのです。
ですので、手を洗っていないときの普段の生活の中で、今までの10倍も20倍も「あなたを大事に思っているよ」というメッセージを伝えてあげましょう。
子どもに安心感がジワジワと浸透し、肯定の声かけを素直に受取ってくれるようになると、手を洗いすぎることが減っていきます。
言葉にするのに抵抗がある方は、目が合えば笑顔を向けるのがおススメです。
笑顔もしんどいときは、手でグッドサインを作って、OKだよ、見ているよという肯定を伝えていきます。
また、会話の最初はいつも「いいね」「そう思うんだね」とまず肯定の言葉かけをしましょう。
〇〇しなさい!やめなさい!という否定的な声かけはもちろんのこと、お母さんはこう思うんだけど、という提案さえもまずはグッと飲み込んでみましょう。
子どもの言葉に耳を傾けて共感し、いつも肯定的に接していきます。
そして、手が痛いと言って苦手な薬を塗るときには
「薬、塗れたね(ハナマル)」
「できれば石鹸を使わずお水で洗うと傷の治りが早いって聞いたね」
など手を洗っていないタイミングで肯定の言葉と短い提案の言葉かけをセットでしていきました。
生活する中で、手洗い以外のことで色々と気になることも何か言いたくなることもたくさんあると思います。
けれど、環境の変化などで子どもにストレスが掛かっている今だけだと割り切って、100%肯定的に接するくらいを心掛けることが大切だと感じています。
息子は、この肯定的な接し方がしっかりできてきた!と感じ始めた頃から「汚い!」と怒ることが減り、手を洗う回数も徐々に減ってきたからです。
4.手を洗っている最中と家族の対応
手を洗いすぎる子どもを肯定するというのは「そんなに手を洗わなくても大丈夫だよ」と声をかけないということでした。
ですので、手を洗っているところを見ても、特に反応せずに声をかけないようにしましょう。
手を洗う行動はやめてほしい好ましくない行動なので、最初から見て見ぬフリをするのです。
たまたま手を洗っているときに目が合ったら、何も言わずにその場を離れましょう。
このとき、怒りのオーラや負のオーラで子どもが否定されたと感じないようにすることが大切です。
もしも目が合ってしまったときは、少しニコッと笑顔を向けてから黙ってその場を離れていました。
しばらく肯定的な態度を続けていると
「どうしても汚いって感じてしまう!何度も手を洗うのは面倒だし本当はすごく大変なんだ!」
そんな風に子どもが自分の気持ちを話してくれるようになりました。
大変だと思う気持ち、汚いと感じる気持ちに「そうなんだね、教えてくれてありがとう」と丁寧に共感していきました。
また、手拭きタオルの共有ができなくなったため、使い捨てペーパーやハンカチを大量に用意して、毎回新しいもので手を拭ける環境を整えていました。
最初は、1日に20枚以上必要なハンカチの量にも、使い捨てペーパーがなくなる早さにも本当にびっくりしました。正直に言えば、異常な気さえしました。
けれど、それが当たり前になるように家族に話して協力してもらいました。
子どもが手を洗うことに関してネガティブな気持ちを抱かないような環境づくりにも配慮してみてくださいね。
こうして、肯定的な接し方を続けることで、子どもの汚いと感じる気持ちを和らげることができたのです。
「もう、そんなに手を洗わなくてもいいかな、もういいかなって思ったんだ。潔癖じゃなくなってきた」
徐々に手を洗う頻度が減って、1年たった今ではこんな風に子ども自身が言えるまでに成長しました。
何度も手を洗いすぎる子どもは強迫性障害や潔癖症なのかな?と心配になったら、原因を探るのではなく、まずは肯定的に子どもと関わってみてくださいね。
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執筆者:作倉 帆香
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)