人と話すのが苦手で、友達との会話が続かない中学生を見ると、このまま人とうまく関われないのではと心配になりますよね。実は、話す速さや量を増やそうとする前に、家庭でできることがあります。人と関わる自信を育てる3つの対応をお伝えします。
【目次】
監修者:吉野加容子
発達科学コミュニケーション創始者/パステル総研主宰/発達科学ラボ代表
脳科学をベースに、発達障害・発達グレーゾーンの子どもの発達支援を専門とする。広島大学教育学部卒業後、東京学芸大学大学院修士課程、慶應義塾大学大学院博士課程で学び、民間企業での脳科学研究、医療機関での発達支援、大学での教育に従事。
15年以上にわたり発達に悩む親子と向き合う中で、「子どもの発達を本当に伸ばすのは、家庭での365日の関わりである」という結論にたどり着く。
病院や学校だけでは支援が届きにくい発達グレーゾーンの子どもたちに対して、家庭で再現できる支援を確立するため、脳科学・教育学・心理学を融合した独自メソッド「発達科学コミュニケーション」を開発。
これまでに数多くの親子の変化を生み出し、“ママが変われば子どもが変わる”という発達支援の新しい当たり前を広げている。
著書に『発達障害とグレーゾーン 子どもの未来を変えるお母さんの教室』『脳を育てる親の話し方』『脳が喜ぶ子育て』など。
1.人と話すのが苦手な中学生に「このままで大丈夫?」と不安になっていませんか?
誰かに話しかけられても、うまく返事ができない。
友達との会話が一言で終わってしまう。
グループ活動では目を合わせず、黙っている。
そんな中学生のわが子を見ると、「このまま人と関われないのでは」「将来、友達や職場の人とうまくやっていけるのかな」と不安になりますよね。
実は、話すことが苦手なお子さんが人との会話に自信を持てるようになるためには、お子さんの会話力をアップさせるよりも先に大切なことがあります。
家では無邪気に話せるのに、外ではほとんど話さないとなると「話せるのに、どうして話さないんだろう?」「中学生なんだから、もう少ししっかりしてほしい」と感じることもあると思います。
だから、何か話題を出せるようにさせたい、周りの会話についていけるように練習させたい、と焦ってしまうのです。
けれども、会話が続かない子に最初に必要なのは、テンポよく話す技術ではありません。
まず必要なのは、「自分には会話する力がない」と決めつけず、「自分にもできていることがある」と感じる経験を増やすことです。
話すことだけでなく、聞くことやうなずくことも会話の力だとママと本人が気づけると、人との関わり方の見え方が変わり始めます。
癇癪を止めようとするほど
親子バトルが長引く子へ
まず指示をひとつ減らして、
子どもの脳が安心して
動ける状態をつくる
↓↓

2.うまく話させようとするほど会話の自信を失いやすい理由
会話では、相手の言葉を聞き、意味を整理し、返す言葉を考え、話すタイミングをつかむ必要があります。
さらに、相手の表情や反応も気になります。
話すことが苦手な子にとって、友達とのテンポの速い会話は、想像以上に負担が大きいものです。
何を言おうか考えている間に話題が変わる。
正しい返事を探しているうちに、言葉が出なくなる。
やっと話そうとしたときには、会話に入れなくなっている。
この経験が続くと、 「また話せなかった」 「自分は人と会話することが苦手だ」 という記憶が積み重なってしまいます。
そこへ大人が、 「もっと自分から話しかけたら?」 「何か返事をしないと相手も困るよ」 と促すと、子どもは会話のたびに「できていない自分」を意識しやすくなるのです。
ママは励ましているつもりでも、子どもには「今の自分では足りない」と伝わってしまうことがあります。
焦って話す量を増やそうとすることが、かえって人と話す自信を小さくしてしまう。
ここが、多くのママが見落としやすい分かれ道です。
3.「もっと話しなさい」と焦っていた私が気づいた会話の本当の力
わが家の娘も、家族とは普通に話すのに、学校では別人のように黙っていました。
なじみのない先生に話しかけられると表情が消え、返事もできずに固まる。
クラスメイトとの話し合いでも、目を合わせず言葉が出ないことがありました。
私は、「家では話せるのに、なぜ学校では話さないのか?」「このままでは困る。もっと周りの子と話せるようにさせないと…」と焦っていました。
けれど、しっかりと話すようにすすめればすすめるほど、娘の気持ちは内側へ向き、ますます言葉を出すことをためらうように見えました。
そんな中、発達科学コミュニケーションを学び、娘に必要なのは、たくさんの話題を次々に繰り出す力ではないと知りました。
子どもの脳は、繰り返した経験を記憶していきます。
「また話せなかった」という経験が続けば、会話への苦手意識は強くなり、反対に、家庭で「話せた」「聞いてもらえた」「会話が続いた」という経験を重ねることが、自信の土台になります。
つまり、娘に必要だったのは、「私は人と話すのが苦手な人」と自分を決めつけずにすむ経験を重ねることでした。
会話は、自分からたくさん話すことだけではありません。
人の話を聞き、うなずき、相手が話しやすい空気をつくることも大切な会話の力です。
ですから、人との会話に自信を持たせたいなら、外でたくさん話すように促す前に、家庭で「自分にも会話ができている」と気づける経験を増やすことだったのです。
4.会話が続かない中学生に自信を育てる3つの親子の関わり
家庭で育てたいのは、会話のテクニックよりも「話すと楽しい」「自分にも人と関われる」という感覚です。
次の3つを意識してみてください。
◆対応①安心して話せる親子の会話を増やす
学校のことを知ろうとして、 「今日はどうだった?」 「友達と何を話したの?」 と矢継ぎ早に質問を重ねると、子どもは頑張って答えようとして疲れてしまいます。
まずは、推し、ゲーム、食べたいものなど、子どもの好きな話題、自然に話したくなる内容から始めます。
質問するときは、「この会話で何をしたいのか」を一つに決め、一問を投げたら待ちます。
答えがすぐに出なくても、すぐに質問を言い換えたり、次の質問を重ねたりせず、子どもが自分の中で言葉を探す時間を守ります。
話した内容を正すより、 「そうなんだ」 「それは面白いね」 と受け取ることで、会話は答えを試される時間ではなく、安心して言葉を出せる時間になります。
◆対応②相手が話しやすくなる聞き方をママが見せる
会話は、たくさん話す人だけで成り立つものではありません。
相手の話に顔を向ける、うなずく、表情で関心を示す、一言返すことも会話のキャッチボールです。
ママが、 「うんうん」 「そうだったんだね」 と急かさずに聞き、子どもの言葉をいったん受け取る姿を見せることで、子どもは「人の話を聞くとは、こういうことなんだ」と体験できます。
友達との会話でも、面白い話をしなければならないわけではありません。
「そうなんだ」 「わかる」 と返したり、相手の話を最後まで聞いたりするだけでも、相手が話しやすい空気をつくれます。
◆対応③できている会話の力を具体的に伝える
子どもが無意識にできていることを、ママが言葉にして返します。
「うなずいてくれたから、続きを話しやすかったよ」
「最後まで聞いてくれたから、安心して話せた」
「今みたいに一言返してくれると、会話が続きやすいね」
「あなたと話すと、急かされないから話しやすいな」
「会話が上手だね」
と漠然と褒めるより、何が相手を話しやすくしたのかを具体的に伝えることで、子どもは自分の中にある会話の力に気づけます。
家庭で子どもから話題を出すことが増えた、うなずきや一言の返事が増えた、ママの話に質問を返すようになった。
そんな小さな変化は、「自分にも人と関われる」という自信が育ち始めたサインです。
家庭で話せたからといって、すぐに友達とも同じように話せるとは限りません。
それでも、家で重ねた「会話って楽しい」 「私は人の話を聞くことができる」 という経験は、外で人と関わるときの土台になります。
周りと同じ速さで話すことを目指すのではなく、その子のペースで会話に参加できる力を育てていきたいですね。
よくある質問
Q1.会話が続かない中学生は、コミュニケーション能力が低いのでしょうか?
A1.会話が続かないからといって、コミュニケーション能力が低いとは限りません。相手の話を理解し、返す言葉を考え、話すタイミングをつかむことに時間がかかる子もいます。話す量だけでなく、うなずく、最後まで聞く、一言返すことも大切な会話の力です。
Q2.家ではよく話すのに、学校や友達の前では話せないのはなぜですか?
A2.学校では会話のテンポが速く、相手の表情や周囲の反応も気になるため、家庭より負担が大きくなります。「何を言えばいいのか」と考えている間に話題が進み、言葉が出なくなることもあります。家で話せることは、その子に会話する力がある証拠の一つです。
Q3.人と話すのが苦手な中学生に、親が最初にできることは何ですか?
A3.まずは子どもの好きな話題で、安心して会話できる時間を増やしましょう。質問を重ねず、返事を待ち、うなずきながら話を聞きます。「最後まで聞いてくれたから話しやすかったよ」など、すでにできている会話の力を具体的に伝えることが、自信につながります。
▼▼繊細タイプの子どもの気持ちを立て直す!効果的な親子の会話術はこちらから▼▼
執筆者:井上喜美子
発達科学コミュニケーションアンバサダー
小さい頃から不安が強く、音や光の刺激に敏感で、不登校気味だった自閉スペクトラム症の娘。「この子は将来どうなるんだろう」と悩む日々でした。
新しい挑戦が苦手で自信をなくしやすいタイプでしたが、少しずつ自分で選び行動できるようになり、今では高校受験も乗り越え女子高生に成長しています。
発達科学コミュニケーションを実践する中で、子どもを変えようとするのではなく関わり方を変えたとき、娘は自分から動き出しました。
かつての私のように悩むママが、「この子も大丈夫かもしれない」「関わり方を変えたら変わるのかもしれない」と思えるきっかけを届けたいと思い、発信しています。
子どもが動き出すタイミングや関わり方は、メルマガでもお届けしています。
▼ご登録はこちらから