発達障害・ADHDの子が友達にしつこくちょっかいを出し、注意してもやめられない…。そんな行動には理由があります。元小学校教員でADHDの息子を育てる筆者が、しつこくなる理由と、叱らずに行動を切り替える対応を紹介します。
1.友達にちょっかいを出す小学生|「わざと」ではなく「やめられない子」だった
2.ADHDの子はなぜしつこい?友達へのちょっかいをやめられない理由
◆友達に関わりたい気持ちが強く、反応を求めてしまう
◆退屈や待ち時間で刺激を求め、ちょっかいにつながる
3.友達へのしつこいちょっかいを叱らず止める3つの対応
◆できている行動に注目する
◆止めさせるより、別の行動へ切り替える
◆家庭で見つけた「うまくいく条件」を先生と共有する
監修者:吉野加容子
発達科学コミュニケーション創始者/パステル総研主宰/発達科学ラボ代表
脳科学をベースに、発達障害・発達グレーゾーンの子どもの発達支援を専門とする。広島大学教育学部卒業後、東京学芸大学大学院修士課程、慶應義塾大学大学院博士課程で学び、民間企業での脳科学研究、医療機関での発達支援、大学での教育に従事。
15年以上にわたり発達に悩む親子と向き合う中で、「子どもの発達を本当に伸ばすのは、家庭での365日の関わりである」という結論にたどり着く。
病院や学校だけでは支援が届きにくい発達グレーゾーンの子どもたちに対して、家庭で再現できる支援を確立するため、脳科学・教育学・心理学を融合した独自メソッド「発達科学コミュニケーション」を開発。
これまでに数多くの親子の変化を生み出し、“ママが変われば子どもが変わる”という発達支援の新しい当たり前を広げている。
著書に『発達障害とグレーゾーン 子どもの未来を変えるお母さんの教室』『脳を育てる親の話し方』『脳が喜ぶ子育て』など。
1.友達にちょっかいを出す小学生|「わざと」ではなく「やめられない子」だった
「やめて」と言われているのに、何度も友達にちょっかいを出す。
注意しても、その場ではやめてもまた繰り返す。
そんなわが子の姿に、
・何度言えばわかるの?
・また友達とトラブルになるんじゃないか
・このまま嫌われたらどうしよう…
と悩んでいませんか?
発達障害・注意欠陥多動性障害(ADHD)の子が友達にしつこくちょっかいを出すと、「わざとやっている」「相手の気持ちがわからない」と見えてしまうことがあります。
私も以前は、「困った行動をなんとかやめさせなければ」と思っていました。
元小学校教員として、教室でしつこいちょっかいが続く子に、叱る、褒める、席を変えるなど、あの手この手で対応してきたからです。
そして母親になってからは、ADHDグレーゾーンの息子が学校で友達トラブルを起こすようになり、
「どうして何度言ってもやめられないの?」
「また学校から連絡が来たらどうしよう」
と、今度は親として悩むようになりました。
けれど、発達科学コミュニケーション(発コミュ)で発達や脳の仕組みを学んだことで、私はこの行動をこんなふうに捉え直すようになりました。
「わざとやめない子」ではなく、「やめたいのに、うまく止められない子なのかもしれない」
そう考えると、見る場所が変わりました。
「どうしたらやめさせられる?」ではなく、「この子はなぜ今、止まれないんだろう?」と、行動の奥にある理由を見るようになったのです。
すると、必要なのは叱ることだけではなく、子どもが行動を切り替えやすくなる関わりだとわかってきました。
この記事では、元小学校教員として子どもたちを見てきた経験と、ADHDの息子を育てる母親としての経験から、発達障害・ADHDの子が友達にしつこくちょっかいを出す理由と、叱らずに行動を切り替える対応をお伝えします。
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2.ADHDの子はなぜしつこい?友達へのちょっかいをやめられない理由
では、どうして発達障害・ADHDの子は、友達にしつこくちょっかいを出してしまうのでしょうか?
行動だけを見ると、
「注意されたのに、なんでまたやるの?」
「相手が嫌がっているのに、どうしてやめないの?」
と思ってしまいますよね。
けれど、
「この子は今、何を求めている?」
「どうして止まれなくなっている?」
と行動の奥を見ると、しつこいちょっかいの背景が見えてきます。
◆友達に関わりたい気持ちが強く、反応を求めてしまう
・人が好き
・友達と関わりたい!
・自分を見てほしい!
・反応してほしい!
という気持ちが強いADHDタイプの子。
それ自体は決して悪いことではないのですが、どう関われば相手も楽しいのかがまだわからないことがあります。
当然、やられた方は「やめて!」と反応するのですが、リアクションが得られることで 「かまってくれた!」 「こっちを向いてくれた!」 と感じ、よくない行動はよりエスカレート!
ちょっかいを出す
↓
友達が「やめて!」と反応する
↓
「こっちを見てくれた」「反応してくれた」と感じる
↓
また繰り返す
という悪循環になってしまうのです。
※小さな変化も成長と捉えてコツコツと声かけを続けたことで、止まれることが増えていきました!
◆退屈や待ち時間で刺激を求め、ちょっかいにつながる
ADHDキッズは退屈が大っ嫌い!
脳は止まることが苦手な性質があるのですが、ADHDの特性があると、より暇な時間が耐えられないので、何か刺激を求める行動を取り始めます。
学校では、
・集中しにくい授業
・課題が終わった後
・次の活動までの待ち時間
・休み時間の前後
などが、ちょっかいが出やすくなるタイミングです。
「退屈だな」
「何かしたいな」
という状態に、衝動的に動きやすい特性が重なると、近くにいる友達へ手や言葉が向いてしまうことがあります。
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3.友達へのしつこいちょっかいを叱らず止める3つの対応
しつこいちょっかいを見ると、つい「やめなさい!」と止めたくなります。
けれど、行動だけを止めようとするより、「この子は今、どんな状態なんだろう?」と考えると、必要な対応が見えやすくなります。
◆できている行動に注目する
友達の反応を求めてちょっかいを出しているなら、まずは「困った行動をした時だけ注目される」という状態を減らしていきます。
ポイントは、特別なことではなく、普段できていることに気づいて言葉にすることです。
・時間までに朝の支度できたね
・歯みがき終わったんだね
・ごはん食べてくれてうれしいな
・今日も元気に帰ってきたね
・宿題始めたんだね
できていないことを直すだけでなく、できている行動に目を向けて伝えることで、子どもは好ましい行動でも注目してもらえる経験を重ねていきます。
「困った行動をしなくても、ちゃんと見てもらえる」という感覚が増えていくことが大切です。
※「できていることに注目」して声かけを始めたときの実践の記録
◆止めさせるより、別の行動へ切り替える
ちょっかいが始まった時に、
「やめて」
「触らない」
「しつこいよ」
と何度も止めようとしても、すぐには切り替えられないことがあります。
そんな時は、「やめる」だけを求めるより、次に何をするかを渡す方が切り替えやすいことがあります。
お家でよくない行動が続いている時には、
・おやつの時間にしない?
・あ、あれ見て!
・今何時か教えてくれる?
・そういえば、この前言ってたあれさ…
など、意識を別の方向へ向けてみます。
ここで大切なのは、一度でやめられたかだけを見ないことです。
・少しこちらに意識を向けた
・別のことを始められた
・前より短い時間で切り替えられた
そんな小さな変化も、切り替える力が育っている途中の姿です。
切り替えられたら、その瞬間を言葉で伝えて切り替え上手にしてあげましょう!
◆家庭で見つけた「うまくいく条件」を先生と共有する
お家で、
「この言い方なら切り替えやすかった」
「暇になるとちょっかいが出やすい」
「先に役割を渡すと落ち着いていた」
などが見えてきたら、それは学校での対応にも使える大切なヒントです。
先生には、「こうすると切り替えやすかったです」と、うまくいった関わり方を共有すると伝わりやすくなります。
学校でも、
・苦手な授業
・課題が終わった後
・長い休み時間の後
・次の活動までの待ち時間
など、ちょっかいが出やすい場面が見えてくることがあります。
傾向がわかれば、始まってから叱るだけでなく、
・別の活動を提案する
・お手伝いを頼む
・次にすることを伝える
など、トラブルになる前に対応することもできます。
家庭と学校で一緒に探したいのは、「どうしたら困った行動をなくせるか」ではなく、「この子がうまくいきやすい条件は何か」という視点です。
子どもの行動を変えようとすると、つい「何て言えばやめる?」を探したくなります。
けれど、その前に、「この行動にはどんな意味がある?」と見てみると、かける言葉も変わってきます。
困った行動がゼロになることだけが成長ではありません。
・前より少し早く止まれた
・別の行動に切り替えられた
・大人の声を一度聞けた
そんな小さな変化も、子どもの中に育っている力です。
まずは今日、できていないことを直そうとする前に、「この子は今、どんな状態なんだろう?」と一度見てみることから始めてみてくださいね。
▼「子どもが行動をやめられない理由」と「今日からできる穏やかな関わり方」を動画で解説しています。
ちょっかいがしつこい子のよくある質問(F&Q)
Q1:ADHDの子が友達にしつこくちょっかいを出すのはなぜですか?
A1:友達と関わりたい、反応してほしいという気持ちが強かったり、退屈や待ち時間に刺激を求めたりすることがあります。相手を困らせようとしているとは限らず、関わり方や行動の切り替えがまだ育っている途中のことがあります。
Q2:友達にちょっかいを出して、何度注意してもやめないときはどう対応すればいいですか?
A2:「やめなさい」と止め続けるだけでなく、別の行動へ意識を向ける声かけをしてみましょう。また、普段からできている行動に注目して伝えることも大切です。一度でやめられたかだけでなく、前より早く切り替えられたなど、小さな変化も見ていきます。
Q3:学校で友達にしつこくちょっかいを出す場合、先生にはどう伝えればいいですか?
A3:家庭で「どんな時にちょっかいが出やすいか」「どんな声かけだと切り替えやすかったか」を伝えてみましょう。学校でも、苦手な授業や待ち時間など、ちょっかいが出やすい場面が見えてくると、トラブルになる前の対応につなげやすくなります。
執筆者:若月綾
発達科学コミュニケーションアンバサダー
元小学校教員。授業中の離席や友達に手が出てしまう息子の行動に悩み、謝罪を繰り返す日々。
「困りごとを減らさなければ」と叱れば叱るほど、「息子の強みである好奇心や行動力まで失わせてしまうのではないか…」という葛藤の中出会ったのが、発達科学コミュニケーションでした。
子どもを変えようとするのではなく、関わり方を変えることで、子どもの困りごとは落ち着きながらも強みが伸びていくことを実感。
今では「どう関わるか」の軸を持ち、迷いながらも選べる子育てへ。同じように悩むママや先生に、子どもの強みを活かしながら育てる関わり方を届けています。
困った行動を止めるだけでなく、わが子を見る目から変えていきたいママへ