発達障害・自閉症スペクトラムの息子はお気に入りの車のおもちゃがあります。寝るときも遊ぶときも手放せません。公園に行くときも必ず持っていき、手に持ったままアスレチックで遊びます。危ないので置いておくように何度も言うのですが、なかなか聞けず、私が取り上げると大泣きしてしまいます。
5歳・男の子のママ
おもちゃを手に持ったままアスレチックで遊ぶと危なくてヒヤヒヤしますね。実はおもちゃを手に持ったまま遊べるってスゴイことなんですよ!
発達科学コミュニケーションリサーチャー 丸山香緒里
【目次】
1.おもちゃを持ったままジャングルジムに登って遊ぶ息子
おもちゃを持ったままアスレチックで遊ぶ姿を見ると、危なくてヒヤヒヤしますよね。 実は私の発達障害・自閉症スペクトラムの息子も、公園には必ずお気に入りの飛行機のおもちゃを持っていきます。
息子はその飛行機のおもちゃを持ってジャングルジムのてっぺんまで登って遊ぶのがお気に入り。ジャングルジムに登ると空が近くなりますから、飛行機で遊ぶのも臨場感が出ます。
私も初めは危なくて心配で、とにかくおもちゃを置いて遊ぶように言っていました。 何度も言うのですが、絶対に飛行機で遊びたい息子は断固拒否!私は無理やり息子から飛行機を取り上げることもありました。
飛行機を取り上げられた息子はもちろん大泣き。 せっかく公園に来たのに、「飛行機で遊べないならおうちに帰る!」となにも遊ばずに帰宅することもありました。
帰り道には決まってこの会話。
息子:「飛行機で遊びたい!なんでダメなの?」
私:「飛行機を持ったまま遊んだら危ないよ!ジャングルジムから落ちたらどうするの?」
息子:「でも遊びたい~!」
私:「危ないんだよ!じゃあ息子君が落ちても、お母さんは助けません!」
息子:またグズグズ泣き出す…
本当は公園で思い切り体を動かして遊んでほしいのに、おもちゃが手放せない為に帰宅することが何度もありました。
最後には根負けしておもちゃを持ったまま遊ばせることがありましたが、そんなときは決まっておもちゃを無くしたり壊したりしてしまい、結局息子は泣きながら帰る…という日々でした。
2. 発達障害の子どもの「注意」とは
私の息子や相談者さんの息子さんだけでなく、お気に入りのおもちゃが手放せないというお子さんはたくさんいると思います。
特定のおもちゃにこだわっている、持っていると安心する…いろいろな理由があります。
お母さんは何とかやめさせたい、と思うものですが、発達障害の子どものこだわりは脳の特性。無理やりやめさせてもうまくいきません。現に私の息子は毎回大泣きしていました。
大事なおもちゃを持って遊ぶ。お母さんがやめさせたいこの行動も、実は発達の観点からみるとスゴイことなんです!
発達障害の子どもは「不注意」傾向があると言われています。
目の前におもちゃがあるのに「ないない!」とパニックになるという「探し出す力」が課題だったり、先生の話に注意を向け続ける「集中力」が課題だったりします。
この「不注意」の観点で考えると「おもちゃを持ってまま遊ぶ」ということは、
①おもちゃを持ち続ける注意
②アスレチックに登る注意
と2つの注意が同時に働いていることがわかります。
もし不注意傾向が強いのであれば、アスレチックに登ることに注意が傾いて、おもちゃを落としてしまったり、おもちゃを持ち続けることに注意が傾いてアスレチックに登れなかったりするのです。
違う注意を同時に払い続けるなんて、すごいですよね!
こう考えると、安全面に配慮する必要はありますが、おもちゃを持ったままアスレチックに登ることが必ずしも悪いこととは言えないのではないでしょうか。
3.どうしてもおもちゃを置いておいてほしいときの対応法
私は息子が飛行機のおもちゃを持ったままジャングルジムに登ることに抵抗がありましたが、この注意力に気づいてからは無理におもちゃを取り上げないようにしました。
もちろん安全面は気になりますので、しばらくはジャングルジムが小さめの公園に絞って行くようにして、ジャングルジムの下で息子を支えられるようにしたり、私も一緒に登って声をかけたりするようにしました。
そうすると、息子も私が無理に取り上げないと分かったのか、自分から 「お母さん、ちょっと持ってて!すぐに返して」と一瞬おもちゃを預けてくれるようになりました。
息子は一瞬でもおもちゃを手放してもいい、と思えるようになったのです!こだわりが少し和らいだ瞬間でした。
そこで、もう少し大きな公園に連れて行ってみました。 大きなジャングルジムを前に息子にこう声を掛けました。
「飛行機、どうする?ポケットに入れとく?それともお母さんが持っとく?」そうすると、「じゃあお母さんが持ってて!」と答えて、素直におもちゃを預けてくれました。
こだわりがあるのなら、
無理に取り上げないこと。
選択肢をいくつか提示して、子どもに判断をゆだねること。
こうすることで、今では自分からおもちゃを預けてくれるようになりました。
4.子どもに選択肢を示す場合の注意点
おもちゃを置いて遊んでほしい場合、
・ポケットに入れておく?
・お母さんが持つ?
・カバンに入れる?
・ベンチに置いておく?
といろいろな選択肢が考えられます。相談者さんの状況に応じて、2~3個提示してみてください。
大切なのは、子どもの選んだ選択を否定しないこと。
「じゃあお母さんが持って!」とせっかく言ってくれたのに、「じゃあカバンに入れておくね!」とさりげなく子どもの選択とは異なる対応をしてしまうこと、ついついやってしまいがち。
子どもからすると、「お母さんが持っておく」と言ったのに、お母さんが話を聞いてくれていないと感じてしまいます。
また、「ポケットに入れる!」と答えたのに、肝心のポケットが小さくておもちゃが入らなかった、などもパニックの元ですので避けるのがおすすめです。
選択肢を提示するときは、必ずどれを選んでも対応できるものを考えてください。ここはお母さんの腕の見せ所です!
ぜひ、試してみてくださいね。
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執筆者:丸山香緒里
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)