学校からの宿題の代表に日記や作文があります。しかし、発達障害の子どもにとってはとてもハードルが高く、文章が書けない、やりたくないと苦手意識を持ちやすい課題です。発達障害の子はなぜ文章が書けないのか。文章に苦手を持たないようにするための3つの工夫を解説します。 |
【目次】
1.なぜ、日記や作文を書くことを嫌いにならないようにしたいのか
2.発達障害の子どもの文章が書けない理由
3.「文章がかけない」から「書けるようになる」秘策
①実物を目の前に持ってくる
②インタビュー形式で気持ちの聞き取り調査をする
③マネして書く
4.プラスαの工夫!楽しい記憶と組み合わせる
1. なぜ、日記や作文を書くことを嫌いにならないようにしたいのか やる気がないの?
小学生になると必ずあるのが宿題ですよね。宿題には平仮名や漢字の練習、算数の問題、日記や作文と学年が上がれば上がるほど増えていきますよね。
その中で、得意や苦手は人それぞれですが、日記や作文が苦手というお子さんが多いのではないでしょうか。
低学年のうちは夏休みや冬休みにしか出ない作文も、中学年になると毎日の宿題に短い日記がでるようになることも。苦手であれば早いうちに解決したいですよね。
日記や作文のように文章を書くことは、頭の中を整理し、気持ちを表現するとても大切な能力です。これは学年が上がるごとに、感想文や説明文など難易度の上がる文章作成の基礎となる力でもあります。
だからこそ日記や作文で文章を書くことが大切なのです。
発達障害の子どもは苦手と思ったり、一度嫌な思いをすると、なかなか取り組めなくなってしまいます。だからこそ、発達障害の子どもが「文章が書けない」とならないためにも工夫をすることが必要です!
ここでは発達障害・グレーゾーンの子どもはなぜ文章が書けないのか。書けるようになるためにはどうしたらいいのか。さらに文章を書くことに苦手意識を持つ前に小学校低学年のうちにやってほしい工夫を紹介します。
2.発達障害の子どもの文章が書けない理由
発達障害の子どもが文章を書けない理由は1つではありません。文章を書く行為は脳のあらゆる部分を同時に使う複雑な作業です。
書くためには
1.思い出す
2.気持ちを言葉にする
3.主語・述語の構成を考える
4.文章を組み立てる
5.書く内容を思い出しながら、文字を書く
このように様々な要素や工程を組み合わせないと書けないのです。
上記に上げた作業を2つ以上同時に行うことは発達障害の子どもにとってはとても大変なことです。
ですから、2つ以上の同時処理を行う作業(マルチタスク)は脳内へ負荷が大きく掛かります。
では、どうしたら良いのでしょうか?
脳処理の負荷を減らすため、一つ一つ作業を分解して実施するシングルタスクにする必要があります。
お子さんのつまずいているポイントをひとつひとつ確認しながら、次からご紹介する方法を試してみてくださいね。
3.「文章が書けない」から「書けるようになる」秘策
学校では〇〇について書きましょう。といったお題が与えられて書く場面が多くあります。
例えば「お休み中に過ごしたことについて」「運動会について」「発表会について」書きましょう!といったお題が与えられます。
我が家の息子が「春について」というテーマで作文の宿題を出された時のことをお伝えしますね。その宿題は実際に春探しに出かけ、感想を書くという課題でした。
息子と一緒に公園周辺を散策し、「ツツジが咲いてるね。たんぽぽもあるね。よもぎが生えてる!」とたくさんの春を見つけて家に帰りました。しかし、息子はいざ書こうと用紙を前にすると 「わからない。」「ムリ…」と頭の中が真っ白になってしまったのです。
そこで、以下の3つのポイントに分けてスモールステップで作文を書いてみました。
◆①実物を目の前に持ってくる
発達障害・グレーゾーンの子は一時的に記憶を留めるためのワーキングメモリーが少ないために、思い出すことが苦手です。
実際に体感しても、場面が変わると出来事を思い出すのが難しくなるのです。
そのため、今回は子どもと一緒に取ってきたよもぎの葉や、よもぎを使った草餅など、実物を目の前に置き、色や匂いをその場で体感しながら書きました。
運動会など、実物を用意できないものは、競技のビデオを観たり、実際に使った道具の写真を見ながら書くのがおすすめです!
◆②インタビュー形式で気持ちの聞き取り調査をする
発達障害の子、特に自閉症スペクトラム(ASD)の子どもは、想像力の弱さが原因で感想を思いつかないということがあります。
そんなときは、お母さんが具体的に気持ちを聞いて書き取りましょう。
いつ、どこで、何を、どんな風に思ったのかをお子さんに聞いて書き取ります。このとき、付箋や、メモなどの小さな紙に書き取ると、あとで構成を組むときにスムーズです。
また、どう思った?と言った漠然とした質問より 面白かった?楽しかった?いい匂い?なんの匂いに似てた?など 具体的な質問をしてあげると答えやすくなります。
例えば
(ママ)よもぎとか、たんぽぽ、ツツジもあったね。何について書く?
(息子)よもぎかな。
(ママ)よもぎはどこに生えてた?
(息子)公園の草のところ。
(ママ)どんな匂いだった?嗅いだことある匂いだった?
(息子)…わからない。
(ママ)よもぎは草餅の材料なんだよ。同じ匂いがするか嗅いでみる?
(息子)ちょっと違うけど、草の匂いがする!
このように、状況を思い出しながら、いつ、どこで、何を、どう感じたのか、インタビュー形式で質問と回答を繰り返し、文章を書き起こします。
◆③マネして書く
文章が書けない、苦手な子は主語、述語など何をどのように並べればよいのかが分からない場合が多いです。また、発達障害の子は文字を書くこと自体が苦手な場合があります。
そのため、まずはお母さんが文章を作り、お子さんが文字を書き写すという作業からしてみましょう。
さきほどのインタビューで書き起こした文章を並べて 「ぼくは、公園でよもぎを見つけました。草餅と同じ匂いがしました。」 とお母さんが文章を書いて見せます。その書いた紙を横に並べて、子どもが用紙にそのまま書き写します。これで作文の完成です。
親が作ってしまっては文章力が付かないんじゃないか?と思うかもしれませんが、 発達障害・グレーゾーンの子どもにとって、文章を書くことは難易度の高いミッションです。
難易度が高くてすぐに書くことができないから、発達障害の子どもに「文章が書けない」というイメージがついてしまうのです。
ですから、まずは書くことへのハードルを下げ、文章を書くことは難しくないんだ!自分にもできるんだ!という成功体験を積むことが大切です。文章嫌いにしないことが、将来、表現する力を育むときに役立ちます。
4.プラスαの工夫!楽しい記憶と組み合わせる
我が家では、子どもの苦手なことに取り組む場合には、楽しい記憶と連動させるような工夫をしています。
例えば今回は、草の匂いを表現できないようだったので、一緒に草餅を買いに行って、食べるという楽しみを準備しました。
「よもぎの匂い=草餅=おいしかった、いっしょに買い物に行けて楽しかった」というポジティブな記憶が残ることで、自分の気持ちを感じて表現したり、書くことが、子どもの記憶の中でプラスの出来事であると認識させるようにしています。
なぜなら、「文章を書くこと=大変なこと、辛いこと」と認識してしまうと、苦手意識が芽生え、「日記や作文=やりたくない」となってしまうからです。
まずは子ども自身に、取り組むことの楽しさと、できるという成功体験を積ませて、書くことへの苦手意識を減らしていきましょう。
いかがでしたか?お子さんの成長を長い目でみて、スモールステップで進みましょう。
そして、文章を書くという、難しい行為に取り組んでいるお子さんをぜひ褒めてあげてくださいね。
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執筆者:中澤久美子
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)