子どもは現在、幼稚園の年長組で6歳です。発達障害のグレーゾーンで、不安が高くかんもくの症状があります。何かをしてもらったときにお礼を直接言葉で伝えることが困難です。何か良い方法はありませんか?
6歳・女の子のママ
年齢的にも、直接言葉でお礼が言えないとなると、周りに誤解されてしまうのではと心配ですよね。しかし、伝え方は一つではありません。言葉を使わなくても、直接ではなくても、気持ちを伝える方法はあります!
発達科学コミュニケーションリサーチャー みずおち梨絵
【目次】
1.対面+言葉にする=発達障害・グレーゾーンの不安が高い子には困難
2.かんもく症状を視野に入れた上で対応策を考える
3.表出方法の選択肢を増やすことが重要
◆お手紙を利用する
◆ビデオレターを利用する
1.対面+言葉にする=発達障害・グレーゾーンの不安が高い子には困難
相談者さんのお子さんの年齢のように、年長組で6歳となれば、何かしてもらったときにお礼などを言葉で直接伝えることを期待されますね。
できなければ親のしつけがなっていないからと思われてしまうのではと心配になりますよね。
しかし、発達障害やグレーゾーンで不安の高いお子さんには、対面で言葉にしてお礼を伝えることが困難なことがあります。
それは、しつけの問題でも、お子さんが言いたくないからでもなく、不安の高さから行動を抑制してしまっているのです。
不安が高い子の中には、人と目を合わせることや話すことが苦手だったり、コミュニケーション自体が苦手だったりすることがあります。
それらが組み合わさると、直接言わなくてはならないことがわかっていながらも、相手を目の前にすると言葉が出てこないことがあるのです。
小さなうちは、まだ周りも温かい目で見てくれるでしょう。しかし、年齢が上がるとだんだんと周りの目は厳しくなり、誤解を招きかねません。
せっかく築いた人間関係ですら、壊れてしまいかねません。
今回は、直接伝えられないことが、誤解で終わらないよう、対面や言葉以外で感謝の気持ちを伝えられる方法をお伝えします!
2.かんもく症状を視野に入れた上で対応策を考える
不安の高いことで、うまく相手に気持ちを伝えたり、言葉にしたりすることできないことが続いた場合、「かんもく」という症状と考えられるかもしれません。
もし、かんもく症状の傾向がある場合には、なるべく早めに、しかし焦らずに対応してあげましょう。無理に事態を変えようとするより、長い目で緩和を目指しながら、共存していく方向で対応することが要となります。
発達障害やグレーゾーンに、「かんもく」が加わった場合には注意が必要です。かんもくは、症状を悪化させてしまうと厄介な状況になります。
いくつかの場面で、声が出せていたり、表情を出せていたりしたものが、悪化することにより全ての場面で何もできなくなってしまうこともあります。
もし、不安の高いお子さんで、少しでもこのかんもく症状が疑われる場合には、言葉にして伝えるというよりも、言葉を伴わない伝え方の手段を考えていって欲しいと思います。
たった一言、相手に言えば終わるようなことも、不安と緊張で声が出せなくなることがあるからです。
周りからしたら、どうってことないと思うかもしれませんが、かんもく症状の傾向があるお子さんからしたら一大事なことなのです。
そのようなお子さんに、表出方法をどれだけ選択肢として与えてあげられるかが重要になってきます。
ほんの一部ではありますが、かんもく傾向のある我が家の娘に実際に行っている、お礼の伝え方をご紹介していきますね。
3.表出方法の選択肢を増やすことが重要
今回は、「ありがとう」というお礼の気持ちの表し方を、我が家の実例をあげて説明します。
これからご紹介する方法は、かんもく症状が強く出ている娘が行っているものです。
かんもくの出方は十人十色なので、お子さんにあったものを選んでくださいね!
◆お手紙を利用する
幼稚園や小学校ならば、折り紙や可愛い便箋に「ありがとう」を書いて渡すのも一つの手段です。
今は、便利な世の中になり、メール等で済ませてしまうことも多いですね。そこで、手紙を使うと新鮮で良いのではないでしょうか?感謝の気持ちも伝わりやすいかもしれません。
もし、相手に直接お礼が言えなかったことを悔いていたりするのであれば、その旨を一言書き加えても良いと思います。
娘は、慣れている幼稚園のお友達にも話せないときがあります。そうしたときには、自分の気持ちをお手紙に書いて渡しています。
そして、お友達もお返事をくれたりと、一つのコミュニケーションの手段となっています。
◆ビデオレターを利用する
今は、無料通信アプリの「ライン」とかがありますよね。
その中には、ビデオを撮影して相手に送ることができる機能があります。自分の家という安心した環境の中での撮影なら声を発することもできるお子さんもいますね。
「ありがとう」と一言ビデオレターで送るのもおススメです。
安心できる環境なので、もしかすると笑顔と共に言葉が滑らかに出てくるかもしれません。
「さぁ!これから撮るよ!」と緊張させるのではなく、さりげなくアプローチしていきたいですね。
娘は先日、ランドセルの出資者であるじいじにビデオレターでお礼を伝えました。いつも会ってはいるのですが、なかなか目の前にすると思うように気持ちを伝えることができません。
しかし、ビデオでは少し恥ずかしそうにはにかみながら、「ランドセル、ありがとう」と伝えていました。
直接ではないけれど、父はとても嬉しそうでした。
方法はどうであれ、相手に感謝の気持ちを伝えることが目的です。状況によっては直接言葉で伝えるよりも、相手にしっかり気持ちが届くことがあるのではないでしょうか。
私もそうですが、親は焦り、言葉を引き出すことに焦点を当ててしまいますが、まずは言葉以外の表出方法を探し出し、実践し、積み上げていくことが重要だと考えています。
何も困っていない人からしたら、まわりくどく遠回りな伝え方かもしれません。しかし、発達障害やグレーゾーンで不安が高い子や、かんもく症状のある子には、有効とも言える伝達方法です。
かんもくの症状が薄れたときに、本人自身が、こんなまわりくどいことをするより、自分で伝えた方が楽だわ!となることがあるかもしれません。
「しつけができていないから、お礼も言えないんだ!」など、周りの余計な言葉に惑わされることなく、目の前のお子さんにとって最良の伝達方法を見つけていってくださいね。
かんもくへの理解を広めるために、まずはお子さんのために一緒に頑張りましょう!
執筆者:みずおち梨絵
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)