「不注意」の症状は注意欠陥多動性障害(ADHD)に強く生じる症状。 自閉症スペクトラムや学習障害(LD)のお子さんにも見られます。「不注意」の対応についてシリーズで紹介、症状を目立たなくする方法をお伝えします。最終回は「選択的注意」です。 |
【目次】
1.発達障害・グレーゾーンの「不注意」の子、いつも探し物してませんか?
2.「選択的注意」ってどんな時に必要なの?
3.探し物上手になれる!脳を発達させる4つの方法
方法1 知育プリントや論理パズル
方法2 地図や路線図で遊ぶ
方法3 本で特定の文字を探す
方法4 片付け過ぎない
1.発達障害・グレーゾーンの「不注意」の子、いつも探し物してませんか?
発達障害・グレーゾーンの「不注意」の対応を、全4回のシリーズでお伝えしています。 今日は最終回「選択的注意」です。
発達障害・グレーゾーンで、「不注意」として、ひとまとめにされている特性はたくさんあります。しかし、そのメカニズムは微妙に違うので対応はひとまとめにはできません。
そこで、今日のテーマは「探し物」にフォーカスしてみましょう!
不注意傾向があるお子さんたちは、「忘れ物・なくし物」が多いですね。
もちろん、そこには片付けが上手にできない特性も重なっているのですが、結果的に「あれ〜?どこにやったっけ〜?」といつも探し物をしています。
つまり、持ち物の管理が下手なんです。
「お母さん、○○どこかに動かした〜?」
「いやいや、知りませんけど」
というやり取りも多いですよね。
実は、子どもが「無い無い」と言っているけれど、一緒に探してみたらすぐに見つかった!ということはありませんか?
・探しているのに、見つからない
・探しているのに、見つかるまでに時間がかかる
・一人では探し出せない
これが「不注意」のポイントです!
「探す」という行為に必要な注意力を、専門用語では「選択的注意」と呼びます。不注意傾向があるとこの選択的注意が苦手になりやすいんです!どんな影響があるのかお伝えしていきます。
2.「選択的注意」ってどんな時に必要なの?
「選択的注意」って、聞きなれない言葉ですよね。
私たちは、常に複数のものに注意を払っているのですが、必要なものへ向けている注意力だけを高めることです。
不注意シリーズ<その1:注目>でもお伝えした内容ですね。
これって、勉強するときには周囲の雑音への注意を低くして、先生の話への注意を高くする、というように発揮される能力なんです。
この例は「聴覚」の選択的注意です。
実は、日常生活では「視覚」の選択的注意も必要ですが、代表はやっぱり「探し物」です。
「無い無い」って言ってるから一緒に探したら「いやいや、目の前にあるじゃん!!」ってことも多いはず。
視野の中に入っているはずなのに、1つ1つの物への注意が高くないので、探し物がそこにあることに気づけない。
・洗濯物から、着たい服が見つからない
・おもちゃ箱から、遊びたいおもちゃを見つけられない
・ランドセルから、お便りが取り出せない
・本棚から、必要な本が見つけられない
・路線図から、目当ての駅が見つけられない
・パソコンで、必要なファイルが見からない
などなど、「探す」という行為は、日常生活の中で案外多いのです。
探す行為のたびに
・時間がかかる
・探せないから、物をさらに散らかす
・周りの人に探し物を頼む
・探せないから、物をさらに散らかす
・周りの人に探し物を頼む
結構まわりの人は大変なんですよね。
さて、「視覚」の選択的注意は、勉強する際にもすご〜く関係します!選択的注意が苦手な子は、プリントや教科書の紙面上で必要な情報を探すのに時間がかかるんです!
私たちはなにげなく、「プリントの○○見て〜」と指示を出します。でも探し出すのが遅いので、見つけたときには周りは先へ進んでいて、その間の説明を聞き逃しちゃっていることもあるんです。
テストのときにも関係します。小学校までは、テストの問題用紙と回答用紙は分かれていませんよね。
でも学年が上がって、問題用紙と回答用紙が分かれてしまうと、問題をといて「わかったぞ!」と思って、回答用紙に視線をうつすと「書く場所はどこかな〜?」と探す。
その間に…
・答えを忘れる
・答えを書き間違える
・回答欄を間違える
・答えを書き間違える
・回答欄を間違える
のトリプルパンチ!
選択的注意が苦手なことで、日常生活や勉強で思うようなテンポで進めないことが、たくさんあるんです。
マークシートも要注意なんですよね。
3.探し物上手になれる!脳を発達させる4つの方法
探し物上手になっておくと、日常生活や学習がテンポアップでき、うっかりミスも減りやすくなります!
注目すべきものへの注意力を、選択的に高めることができると、集中力アップにも繋がっていきます。そのための対応をご紹介しますね!(年齢に合わせて実施して見てくださいね)
◆方法1 知育プリントや論理パズル
市販の知育プリントや、論理パズルなどは、選択的注意を高める遊びとして有効です。
例えば「点つなぎ」。紙面上に数字がたくさん書いてあり、順番通りに数字を線で繋いでいくと絵が完成する定番の遊びですね。この遊びをするときには、「1」を探し出すときからが勝負!毎回時間を測って、時間短縮を狙うことが大切です。
その他にも、文字探し(文字が行列状に並んでいて、縦横斜めで特定の単語を探す遊び)や数独などの遊びが役立ちます。
◆方法2 地図や路線図で遊ぶ
発達障害・グレーゾーンに方には、電車や乗り物好きが多いですよね。そういった好きな素材を使って遊ぶのも、注意力のトレーニングになります。
広〜い紙面(路線図や地図など)から、特定の駅や地名を探すとか、どっちが早く探せるか勝負!…とか、そんな感じでも大丈夫。
興味があるものなら、注意力が高まりやすいので、初期におすすめの取り組みです。
◆方法3 本で特定の文字を探す
昔「ウォーリーを探せ!」という絵本が流行りましたが、これも不注意トレーニングに最適の教材です!
ウォーリーが手に入らなくても、読み聞かせをしながら、特定の絵を探すように指示するといいです。年齢が上がったら、本を開いて、その見開きページの中から「す」という文字を全部探す。という遊びを取り入れてもいいでしょう。
コピーをして、文字に丸をつけさせるとより力がついてきますよ!
・目標タイム内に終わったか
・漏れがないかどうか
・漏れがないかどうか
が、振り返りのポイントになります!
◆方法4 片付け過ぎない
洋服や文具、身の回りの雑貨など、不注意の子の周りは片付いていなくて、ついつい片付けちゃうお母さんも多いと思います。
ところが、子どもの記憶は大人ほど発達していません。もし、物をしまい込んでしまうと、不注意のお子さんの場合は、自力で探し出せないことがあります。
引き出しの中に入れてしまうと、目当ての物がどこにあるのか見えないので、探すことを諦めてしまう。または、そんな物を持っていることを忘れてしまうこともあります。
例えば「これどうしても買って!」とねだられて買ったTシャツなのに、まったく着ない!高かったのに〜!もう〜!メラメラ〜!
ということがあっても、 Tシャツをタンスの引き出しの中にしまっているので、Tシャツが見えていない。こんな状況だと、Tシャツへの意識がなくなってる可能性もあるんです。
ですから、見せる収納を工夫して、自分で見て探せる環境を作っておくことも大切なのです!
そして、この選択的注意。老化によっても衰えやすい能力の1つなんです!
・なんだか最近探し物をしている
・動作がゆっくりになってきた
・思い出しにくい
・動作がゆっくりになってきた
・思い出しにくい
そんな兆候があるなら、ご家族もお子さんと一緒に実践するのもおすすめですよ!
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執筆者:吉野加容子
(発達科学コミュニケーショントレーナー、学術博士、臨床発達心理士)
(発達科学コミュニケーショントレーナー、学術博士、臨床発達心理士)