「ママ、トイレについてきて!」が口ぐせの小学生。一人でトイレに行けないのは甘えではなく、不安と特性が原因でした。発達障害グレーの子が『自立』をつかんだ3つの克服ステップを紹介します。
はじめに
「もう小学生なのに、まだひとりでトイレに行けない…」
そんなわが子の姿を見て、心配になっていませんか?
ママがいないとトイレに行けない。
「ママ、ついてきて!」と毎回呼ばれる。
学校でも我慢してしまい、帰宅後に失敗してしまう。
まわりの子が当たり前にできていることが、うちの子にはどうしてこんなに難しいのだろう…。
「甘えなのかな?」「トレーニング不足?」と不安になるママも多いでしょう。
でも大丈夫です。
トイレに行けないのは、「甘え」や「ママの教え方が悪い」のではなく、その子なりの『一人で行けない理由』があるのです。
1.もう小学生なのに、まだひとりでトイレに行けない…その不安、わかります
わが家の息子も、年長さんのころまでは「ママ、トイレについてきて!」が口ぐせでした。
「トイレくらい一人で行けるようになってほしい…」と思っても、無理に促すと余計に不安が強くなり、逆効果。
「そのうちできるようになる」と見守っても、なかなか変化がありませんでした。
実はこのような「一人でトイレに行けない」悩みは、決して珍しいことではありません。
トイレに関する困りごとは、年齢に関係なく続くことがあるのです。
そしてその多くは、「甘え」ではなく、脳や感覚の特性、そして“安心できる環境が整っていない”ことが関係しています。

2.なぜ“ひとりでトイレ”に行けないの?
「なんでトイレくらい行けないの?」と思ってしまうこと、ありますよね。
しかし、お子さんにとってトイレは“こわい場所”であることがあります。
特に発達障害グレーゾーンや不安の強いタイプの子どもは、五感の感じ方・体の使い方・過去の記憶に特徴があり、「トイレに行く」という一連の流れの中にいくつもの“つまずきポイント”を抱えています。
🔹体の発達と感覚の特徴が影響している
たとえば、
✔ 音・におい・照明の刺激が強くて怖い(聴覚・嗅覚・視覚過敏)
✔ 冷たい便座や床の感触が苦手(触覚過敏)
✔ 感覚鈍麻や過集中で尿意・便意に気づきにくい
✔ 手先の不器用さでお尻がうまく拭けず、不快な経験をした
✔ 段取りが苦手でトイレの一連動作をスムーズに行えない
このように、体や感覚の発達がゆっくりな子は、トイレ動作そのものが“まだ難しい”ことがあります。
「まだできないだけ」のタイプです。
この場合は焦らず、練習のステップを小さくし、ママが一緒に「できた!」を積み重ねるサポートをすることが大切です。
🔹過去の経験や不安がブレーキをかけている
一方で、できる力はあるのに「怖い」「失敗がイヤ」という気持ちがブレーキをかけている子もいます。
たとえば、
✔ おしっこが飛び散って怒られた
✔ 学校で失敗して恥ずかしかった
✔ においや汚れを「気持ち悪い」と感じた
発達グレーの子は、こうした体験を他の子より強く・長く記憶する傾向があります。
そのため、「また失敗したらどうしよう」→「行きたくない」とつながりやすいのです。
このタイプは、「もうできるけど不安でできない」タイプ。
スキル練習よりもまず安心を育てる関わりがポイントです。
「ママが見ててくれる」「少しできた」という安心体験を積み重ねることで、「できない」と思い込んでいた行動が少しずつ「できる」に変わっていきます。
🔹お子さんの“今”を見極めよう
つまり、「一人でトイレに行けない」という行動の背景には、① 体や感覚の発達がゆっくりなタイプと、② 不安がブレーキをかけているタイプがあり、どちらも“甘え”ではありません。
まずは、お子さんが今どちらに近いのかを見極めましょう。
「まだできないだけ」なら焦らず見守り、
「不安が強くてできない」なら安心を育てる関わりを。
どちらも安心が育つことで少しずつ行動が変わっていきます。
焦らなくて大丈夫。お子さんのペースで「できた!」を一歩ずつ積み重ねていきましょう。
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3.わが家の息子も「トイレ付き添い卒業」に時間がかかりました
息子も年長さんのころまでは、トイレの時には私がそばにいないと一歩も動けず、ズボンを下ろすのも私の役目。
おしっこが飛び散ると泣き、「もうイヤだ!」と叫ぶ日も。
私は「どうしてこんなにできないの?」とイライラし、「もう小学生になるのに!」と焦りばかりが募っていました。
息子が泣くと、私もつい強く言ってしまい、親子でトイレのたびに疲れ切っていました。
「一人で行こう」「もうできるでしょ?」と励ましても、息子は固まったまま動けませんでした。
「できるのにやらない」と思い込んでいた私は、「どうしてうちの子だけ」という焦りでいっぱいでした。
しかし、息子は“やりたくなかった”のではなく、“どうやってやればいいのか分からなかった”だけでした。
■うちの子は「段取りが難しい」×「不安が強い」タイプだった
先ほどの2つのタイプでいえば、息子はその両方――
段取りを組み立てるのが難しく、途中で混乱し、過去の失敗を思い出して「無理」と思い込んでいました。
ズボンを下ろす → おちんちんを持つ → 流す → 手を洗う――この一連の流れを頭の中で整理できず、途中で混乱してしまう。
過去の失敗を強く覚えているから、「失敗したらどうしよう」と不安が先に立つ。
だからこそ、私がそばにいないと一歩も動けなかったのです。
つまり、“無理やりやらせる”よりも、“安心を積み重ねる”ことが先――
ようやくそう気づいたとき、私の中の焦りが少しずつほどけていきました。
段取りは私がそっとサポートし、息子が「ママがいれば大丈夫」と思える時間をつくる。
それが『トイレ克服』の第一歩になりました。

4.トイレ克服の3ステップ【安心環境→見通しづくり→ご褒美作戦】
息子のタイプが「段取りが難しい」×「不安が強い」とわかってから、私は『安心を育てながらサポートする』ことを意識しました。
行動が変わり始めたのは、この3つのステップを意識してからです。
ステップ① 環境を『安心仕様』に整える
トイレそのものが怖く感じている子には、まず 「安心できる空間づくり」 から。
・明るさを調整する(電気を少し暗めに・やわらかい照明に)
・ドアを少し開けたままにする(ママの気配が感じられる)
・踏み台やカバーで“自分のトイレ”をつくる
息子も、最初はドアを開けたままにして「ママ、そこにいて」と言いながら入っていました。
この“見守ってもらえる安心感”が、行動の第一歩になりました。
ステップ② 見通しを持たせて“できた!”を増やす
段取りを頭で整理するのが難しい息子には、「見通しを持たせる」ことが安心につながるとわかりました。
・トイレ動作をイラストで順番に貼る
・「トイレカード」や「チェックシート」で流れを視覚化する
・「ここまでできたね!」とこまめに声をかける
すると、息子は「次に何をすればいいのか」がわかるようになり、混乱や不安が減っていきました。
『ルーティン化』することで「できた!」の回数が増え、自信の積み重ねになります。
ステップ③ ご褒美作戦で“やる気”と“自信”を見える化
安心が育ち始めたら、次は「成功を見える化」するステップ。
ここで役立ったのが、息子が夢中になった“ご褒美ポイント作戦”でした。
・一人でトイレに行けたら3ポイント
・300ポイントでご褒美(ゲームソフト)をゲット
・ポイントシートをリビングに貼り、いつでも見えるように
「あと何ポイントでご褒美!」が目に見えることで、「やってみよう』という気持ちが自然に生まれます。
ご褒美というと「甘やかし」と思われがちですが、大切なのは「行動してみよう」というきっかけづくり×こまめに「できた」を伝えること。
これが実は『“自分でできた”という成功体験を積む仕組み』なのです。
トイレや登園など「ママじゃないとダメ!」という場面で使える、“安心を届ける言葉がけ”を紹介しています。

5.焦らなくて大丈夫。“安心”を積み重ねた先に“自立”がやってきます
「トイレくらい、ひとりで行けるようになってほしい」
ママなら誰もがそう願いますよね。
しかし『自立』は、安心が土台になって少しずつ育っていくもの。
焦って引き離すより、安心の中で“できた”を重ねることで、子どもは自信を取り戻していきます。
息子が「ママ見ててね」から「ママ、トイレに行ってくるね!」に変わったとき、子どもが安心して挑戦できる関係こそ、ほんとうの自立のスタートラインだと感じました。
🔹まとめ
・「一人でトイレに行けない」背景には、発達や不安の特性が関係している
・見守りと安心づくりの両方が必要
・環境・見通し・成功体験の3ステップで“できた!”を積み重ねよう
安心を積み重ねていけば、「ママと一緒じゃないと無理」から「ママがいればやってみよう」、そしていつか「もう一人でできるよ」に変わっていきます。
焦らず、親子のペースで。
今日の一歩が、未来の『自立』につながっていきます。






