「学校に行きたくない」と登校しぶりをするのは朝だけ。行ったら楽しそうなのに、なぜ?朝に不安が強くなりやすい理由と、行けば楽しいのに「行きたくない」という子どもの気持ち、親ができる3つの関わり方をお伝えします。
1.登校しぶりが朝だけなのはなぜ?「行けば楽しい」なら大丈夫?
毎朝、子どもが「学校行きたくない」「園に行きたくない」と泣く。
何とか説得したり、背中を押したりして送り届け、ようやくホッと一息。
特に夏休み明けは、昨日はなんとか学校へ行けたのに、翌朝になるとまた「行きたくない…」ということもあります。
そんなとき先生から、
「学校に来ちゃえば元気ですよ!」
「園では楽しく遊んでいますよ!」
「お友達とも普通に過ごしていますよ」
と言われると、「うちの子、大丈夫だったんだ。そのうち朝も平気になるかな」 と少し安心しますよね。
「行けば楽しい」のに、朝だけ「行きたくない」。
一見すると矛盾しているようですが、この2つは、どちらも子どもの本当の気持ちかもしれません。
学校に着けば、友達と遊んだり、好きな授業を楽しんだりできる。
それでも朝、「これから学校へ行く」と考えると、不安や緊張が大きくなったり、安心できる家から学校へ気持ちを切り替えることに大きなエネルギーが必要になったりもします。
だからこそ、「行けば楽しそうだから大丈夫」と朝の「行きたくない」をなかったことにせず、子どもの様子をもう少し広く見てほしいのです。
私も以前、この「行けば楽しい」という言葉に安心して、息子の変化を見過ごしてしまったことがありました。

2.「行けば楽しい」を信じて見過ごしていた息子の変化
息子が5歳、幼稚園に通っていた頃の話です。
毎朝、「幼稚園行きたくない!」と泣いて家の中を逃げ回り、お着替えを拒んでいました。
私は、共感したりなだめたりしながら、なんとか着替えさせ、半ば強制的に園バスに乗せていました。
ところがお迎えに行くと、息子は笑顔でお友達とおしゃべりしているのです。
先生に「朝はとても行きしぶっている」と相談しても、
「来てからは楽しそうにしていますよ」
「お友達とも元気に遊んでいます!お母さん、頑張って連れてきてくださいね」
と言われました。
「園では楽しく過ごせているんだ」
私は少し安心しました。
しかし同時に、
「じゃあ、どうしてあんなに朝は嫌がるの?」
「このまま無理に連れて行って、本当に大丈夫なの?」
と、先生との感じ方の温度差にモヤモヤしていました。
そうやって様子を見ているうちに、息子の行きしぶりは少しずつ強くなっていきました。
以前は、
「〇〇ちゃんがこんなことしてた!」
「〇〇ちゃんはこのアニメが好きらしい」
などと幼稚園のことをたくさん話してくれていたのに、あまり話さなくなりました。
家でも笑顔が少なくなり、朝の嫌がり方もどんどん激しくなっていきました。
そこでようやく私は、 「園で楽しそうにしている姿だけを見て、大丈夫だと判断しない方がいいのかもしれない」 と気づいたのです。
では、なぜ子どもは学校や園に行けば過ごせるのに、朝になると「行きたくない」と訴えるのでしょうか。

3.なぜ朝だけ「学校に行きたくない」?子どもの心と脳で起きていること
■朝は「学校へ行く」不安が大きくなりやすい
学校から帰ってきた子どもが、 「今日、〇〇ちゃんと遊んだ!」 「明日も一緒に〇〇するんだ!」と楽しそうに話していた。
それなのに翌朝になると、 「学校、行きたくない…」 と言い出す。
そんな姿を見ると、
「昨日はあんなに楽しそうだったのに、どうして?」
「〇〇ちゃんと遊ぶって言ってたじゃない」
と、親も戸惑ったり、ついイライラしたりしてしまいますよね。
けれど、ここには学校との心理的な距離が関係していることがあります。
学校から帰って家で安心して過ごしているときは、学校で楽しかったことを思い出したり、「明日は〇〇したい」と楽しみなことを考えたりする余裕があります。
ところが朝になり、「もうすぐ学校へ行く」という時間が近づくと、学校が一気に現実のものになります。
すると、
「今日もちゃんとできるかな」
「嫌なことがあったらどうしよう」
など、これから起こることへの不安が大きくなり、「行きたくない」という気持ちが前に出てくることがあるのです。
また朝は、安心できる家から学校へ気持ちを切り替えるだけでなく、着替える、支度をする、決まった時間に家を出るなど、いくつもの行動を次々に切り替える時間でもあります。
学校そのものだけでなく、「学校へ向かうまで」にも負荷が集中しやすい時間なのです。
■「行ったら楽しい」と「行きたくない」は矛盾しない
そして実際に学校へ着くと、また子どもの状態は変わります。
- 友達に会えば楽しい。
- 好きな授業は面白い。
- 休み時間には笑って遊べる。
だから、先生から見れば「学校では楽しそうに過ごしている」ように見えることもあるでしょう。
つまり、「学校で楽しい」と「朝は学校に行きたくない」は、どちらか一方が本当なのではなく、どちらもそのときの子どもの本当の気持ちなのです。
一方で、もう一つ知っておきたいことがあります。
真面目で頑張り屋な子や、周りに合わせようとする子の中には、不安や緊張があっても、学校ではそれを表に出さず頑張って過ごしていることがあります。
いわゆる「過剰適応」と呼ばれる状態です。
もちろん、「行けば楽しそう=過剰適応」ということではありません。
だからこそ、「学校では笑っているから大丈夫」と学校での姿だけで判断するのではなく、朝や帰宅後を含めて子どもの様子を見ることが大切です。
■「朝だけ」で判断しないで見てほしい子どものサイン
たとえば、こんな変化はありませんか?
- ✓ 朝、学校の話になると「お腹が痛い」「頭が痛い」と訴える
- ✓ 帰宅するとぐったりしている
- ✓ 以前より口数や笑顔が減った
- ✓ 学校のことを話さなくなった
- ✓ 好きだったことを楽しめなくなっている
一つ当てはまったからといって、すぐに「学校で無理をしている」と決める必要はありません。
ただ、こうした変化がいくつも重なったり、長く続いたりしているなら、「行けば楽しいから大丈夫」と朝の登校しぶりだけを何とかしようとするのではなく、今どれくらい負担がかかっているのかを見極めることが大切です。
では、朝「行きたくない」と言われたとき、親はどう関わればいいのでしょうか。

4.朝だけ登校しぶりをする子に親ができる3ステップ
STEP1|まずは「聞くこと」から始める
子どもから「学校行きたくない」と言われると、
「どうして?」
「昨日は楽しかったって言ってたじゃない」
「何かあったの?」
と理由を知りたくなりますよね。
けれど、子ども自身も「なぜ行きたくないのかわからない」という場合もあります。
そんなときに何度も理由を聞かれると、答えられないことがさらに負担になってしまいます。
まずは、
「そっか、今日は行きたくないんだね」
「そういう気持ちなんだね」
と、その気持ちをただ受け止めてみてください。
すぐにアドバイスをしたり、正しい答えを出したりせず聞き役に徹することが原則です。
「ママにわかってもらえた」という安心感が生まれると、張りつめていた気持ちが少しずつゆるみやすくなります。
STEP2|不安から少し視点をずらす
子どもが不安でいっぱいになっているときは、
「学校へ行ける?」
「今日はどうする?」
と考えようとしても、なかなか頭が働かないものです。
そこで、気持ちを受け止めたあとに、いったん不安から視点をずらしてみましょう。
たとえば、
「今日は学校まで全部“さかさ言葉”でしゃべるルールにしよう!」
「アザラシを地球温暖化から救うために、理科の授業だけ受けに行く?」
こんなふうに、ちょっと非常識なくらいふざけた提案でも大丈夫です。
好きな音楽を聴いたり、すぐに終われるゲームをしたり、好きなものを朝ごはんに食べるのもいいですね。
子どもが「なにそれ!」とふっと笑ったり、「じゃあさ…」と話し始めたりしたら、それが視点が動き始めたサインです。
ここでの目的は、問題をごまかすことでも、楽しい気分にさせて無理に学校へ連れていくためでもありません。
不安でいっぱいになっている子どもの視点を少しずらして、心と脳に「ほかのことも考えられる余裕」をつくるための一手です。
少し余裕が戻ってきたら、「今日はどうしたら少しラクになりそう?」 と一緒に考えてみましょう。
「一日学校へ行く」「休む」の二択だけではなく、 「少し遅れて行く」「好きな授業だけ行ってみる」 など、今の子どもが「これならできそう」と思える方法が見つかることもあります。
結果的に「今日は休む」と決めても大丈夫です。
大切なのは、親が学校へ行くという答えに導くことではなく、子ども自身が考え、今できそうな一歩を選べる状態に戻していくことです。
STEP3|朝だけでなく子どもの様子を広く見る
そしてもう一つ大切なのが、その朝に学校へ行けたかどうかだけで判断しないことです。
- ✓ 帰ってきたときの表情はどうか。
- ✓ 家では話せているか。
- ✓ 好きなことを楽しめているか。
- ✓ 週末には元気が戻っているか。
学校の先生にも、「学校では楽しそうですか?」だけではなく、
「授業中、かなり頑張っている様子はありませんか?」
「休み時間はどんなふうに過ごしていますか?」
など、具体的な様子を聞いてみると家庭とは違う姿が見えてくることがあります。
そして、
- ✓ 登校しぶりが強くなっている
- ✓ 体調不良が続いている
- ✓ 生活全体にも変化が出ている
など、親だけで抱えるのが難しいと感じたときには、スクールカウンセラーや医療機関などに相談することも選択肢の一つです。
また、同じように登校しぶりの子どもを育てているママとつながることで、「こんなとき、みんなはどうしているんだろう?」と一人で悩まずにすむこともあります。
専門家や似た経験を持つ人の話から、自分では気づかなかった子どもの見方や関わり方が見つかるかもしれません。
「行ったら楽しい」という一面も、「朝は行きたくない」という一面も、どちらも大切な子どもの姿。
一つの場面だけで判断せず、その子全体を見ていくことが、今必要な関わりを見つけるヒントになります。

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