自閉スペクトラム症(ASD)傾向のある子どもの多くに見られる『感覚過敏』。一見、子どものわがままだと思われがちですが、脳の発達の未熟さから起こるものです。本記事では、ASD傾向のある子どもの感覚過敏を和らげる方法についてお伝えします。
1.わがままに見えるのは感覚過敏かもしれません!
これ嫌い!
これ着たくない!
うるさい!
外に行きたくない!
そう言って、なかなか行動しない子どもに手を焼いているママはいませんか?
それ、わがままでなく感覚過敏かもしれません。
感覚過敏とは、同じ刺激を普通の人より、過敏に受け取ってしまうこと。
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)など、発達障害の特性を持つ子どもの中には、この感覚過敏を経験する人が多くいます。
感じ方は人それぞれで、また、1人の人でも感覚の種類によって感じ方は異なってきます。
食べ物の味が苦手な味覚過敏や、舌触りや歯ざわりが嫌、特定の洋服やタグを嫌がったり、泥遊びを嫌がったりするという触覚過敏。
他にも、光がまぶしい視覚過敏や、掃除機など大きい音を嫌がる聴覚過敏など、1人1人感じる度合いも感じるものも違い、本当に様々です。
2.自閉スペクトラム症(ASD)傾向のある子どもに多く見られる感覚過敏
感覚過敏の原因の1つは、脳の特性から感覚統合がまだ未熟であることだと考えられています。。
感覚統合とは、脳に伝わる様々な情報を交通整理する働きのことです。
この感覚統合には、大切な3つの感覚「触覚」「固有覚」「前提覚」があります。
この中でも触覚は、主な働きとして『情緒の安定や防衛する』というものがあるので、触覚過敏が和らぐと不安も軽減されていきます。また、逆も然り。
また、自閉スペクトラム症(ASD)傾向のある子は特に
・必要のない感覚刺激を無視するのが難しい
・感覚に関する予測が難しい
・感覚刺激同士を結びつけて処理するのが難しい
と言われています。
要するに、入ってきたい感覚刺激をそのままダイレクトに感じやすいということです。
感覚過敏が強く出ているときは、不安も強い時であるという1つのバロメーターにもなっています。
それなら今すぐ感覚統合をすすめたい!と思われるでしょうが、これは、一朝一夕に良くなるというものではなく、積み木を積み上げるように発達していくので、まずは、子どものわがままだと叱るのはやめて過敏さに共感してあげることが大切です。
3.ASDグレーゾーンの娘の感覚過敏
私の娘は幼い頃から保育園に通っていたため、砂遊びや水遊びなど、感覚遊びを色々と体験させてもらっていました。
でも、保育園の先生からは「今日も嫌だと言ってできませんでした。」と言われることが多く、私は『なんでうちの子はみんなと同じことをできないんだろう?』と不思議に思っていました。
その後、娘は幼稚園に通うようになりました。
娘が通っていた幼稚園は制服があり、娘は毎朝制服に着替えるのを嫌がるようになりました。
「制服嫌だ!着たくない!」の一点張りで、初めは幼稚園に行くことに抵抗しているのだと思っていました。
しかし、制服に対しての抵抗は日に日に強くなり、あまりにも嫌がって泣き叫ぶ日もあったのです。
そんな娘に私は「制服着ないと、幼稚園行けないんだよ!」と無理やり制服を着せようとしていました。
その頃から
・コンビニに入ると「まぶしい」と言う
・食べ物も特定の食感をひどく嫌がる
・とても小さな音でも嫌いな音があって耳を塞ぐ
このような娘の様子に、違和感を感じるようになりました。
そう感じていたのは感じていたのは私だけでなく、幼稚園の先生もでした。
その後、幼稚園の先生に相談し、発達検査を受けることに。
検査の結果、娘には自閉スペクトラム症(ASD)の特性があることがわかりました。
4.幼少期こそ感覚統合を促すことが大事
先にもお伝えしましたが、感覚統合が進めば、ASDの子どもの感覚過敏は和らいでいきます。
感覚統合は、子どもの育ちを支える土台です。
これが育っていかないと、「わがまま」「自分勝手」とみられる困った行動が目立ち、禁止されたり、怒られたりして、自信を失い、不登校や二次障害に繋がりやすいと言われています。
感覚のネットワークは、幼少期にさまざまな感覚を入れることでどんどん作られ、それらがうまく繋がることで、困った行動が少なくなっていきます。
5.家庭でもできる!感覚過敏を理解した声掛け
感覚過敏、聴覚過敏などと言われても、なかなか理解できないですよね?
よく言われるのが、「黒板をギーッと爪で引っ搔く音を嫌だと感じる」と例えられます。
気持ち悪くないですか?不快じゃないですか?
それなのに「そんなの我慢すれば慣れる」なんて言われても、嫌だと感じるものを感じない方法はありませんよね。
でも、感覚を入れてあげることで感覚統合は進んでいきます。
そこで私は、荒療治はやめて、「制服着たくない」と言ったら「そうなんだ。いいよ」と着なくてもいい選択を続けながら、毎朝「制服着よう」とも促していくことにしました。
このような毎日にを続けていると、ある日娘が「ここが気持ち悪いんだよね」と袖口のゴムが締め付けられることが苦手であることを教えてくれました。
そして、ゴムが直接手にあたらないように袖を曲げてあげると、今まで着ることのできなかった制服をすんなり着れるようになったのです!
しばらく袖を曲げて着せてあげていましたが、気付けば曲げないで、普通に着て行けるようになっていました。
娘は普段着も素材のこだわりがあり、タグも全部切っているのですが、先日は、大好きキャラクターのシャツを購入すると、タグにもそのキャラクターがついており、タグを着ることを拒否。
感覚よりも『好き』の方が優った瞬間でした。
子どもの脳は楽しいことで発達していきます。このように子どもの好きなもので感覚に慣れていく方法もおすすめですよ!
できないことばかりに注目してしまうと、子どもは自信をなくし劣等感を持ってしまいます。
感覚過敏で苦しんでいる子どもの心に寄り添いながら、少しずつ慣らしていきましょう。
同時に好きなものを取り入れることで、感覚統合が進み、感覚過敏は和らいでいきますよ。