1.「なんで、うちの子はあと一歩が踏み出せないんだろう…」
「なんで一歩が出ないだろう…」
繊細で不安が強いお子さんを持つ親御さんなら、誰もが一度はそう感じたことがあるのではないでしょうか。
新しい挑戦を前に「大丈夫だよ!」と励ましても、なかなか前に進めず、見ているこっちまでヤキモキしてしまいますよね。
でも、それは決して勇気がないわけではありません。繊細な子ほど、失敗や未知の物事に対する不安が強く、心の中で葛藤しているのです。
この記事では、同じように繊細で不安が強い小学生の娘を育ててきた筆者が、娘の「あと一歩」を後押しするために試した声かけのポイントを解説します。
読み終わる頃には、お子さんの心に寄り添い、自己肯定感を育むための具体的なヒントが見つかるはずです。

2.繊細で不安が強い子が「あと一歩」を踏み出せない理由
繊細さゆえに、何事にも慎重になってしまうお子さん。
・周りに聞くのをためらい、一人で悩みを抱えがち
・本当はやりたいのに、挑戦することを諦めてしまう
・「失敗したらどうしよう」という不安が常に付きまとう
このような傾向は、決して「甘え」や「ワガママ」ではありません。子どもの心の中で、強い葛藤が起きている証拠です。
人間は、失敗した経験を鮮明に記憶に残す習性を持っています。
これを「ツァイガルニク効果」といい、人は達成できなかったことや中断されたことを、達成したことよりも強く記憶に残す傾向があります。
この習性が、新しいことに挑戦する際の恐怖感をさらに強くしてしまうのです。繊細で不安が強い子は、この「失敗への恐怖」を人一倍強く感じています。
学校生活でも、失敗を恐れる場面はたくさんあります。
・聴覚過敏で、教室の大きな声に驚いた経験がある
・みんなの前で挙手や発表を促され、注目されるのが苦手になった
・無理やり集団に入れられ、居心地の悪さを感じた
・先生や友達に否定されたり、怒られたりしたことがある
これらのネガティブな経験が「挑戦は怖い」という気持ちを植え付け、子どもを足踏みさせてしまうのです。

3.「あと一歩」が出ないHSCの娘にもどかしさを感じていました。
私の娘も、繊細で不安が強い子どもでした。
小学校高学年になり、委員会活動など初めての役割が増えると、さらに消極的になってしまいました。
特に苦手だったのが、みんなが集まって話し合う委員会活動です。
集団が苦手な上、挙手や発言など、注目されることへの抵抗がとても強く、委員会の仕事は一人でできるものだけをやっていました。
私は母子登校をしていたので、そばで娘の様子を見ていましたが、あと一歩が踏み出せない状況にもどかしさを感じていました。
そこで、私は「ある2つの声かけ」を試してみることにしたのです

4.繊細な子の自己肯定感を高める具体的な声かけテクニック2選
繊細な子は、否定されたり怒られたりすると、そのダメージを何倍にも感じてしまいます。
逆に、褒め言葉は心に響きにくく、すぐ忘れてしまいがちです。
だからこそ、ただ「すごいね」「えらいね」と褒めるだけでは、あと一歩を踏み出す勇気には繋がりません。
大事なのは、「行動そのもの」を肯定する声かけです。
テクニック①:「実況中継」で行動を肯定する
子どもが「できるかな…やっぱりやめようかな…」と迷っている時こそ、その行動を言葉にして肯定してあげましょう。
「実況中継」のように、目に見える行動をそのまま伝えるのがポイントです。
・委員会の紙を見ながら悩んでいたら → 「委員会の紙をじっと見てるんだね」
・教室の前まで行ってウロウロしていたら → 「行こうと思って教室の前に立ったんだね」
・筆記用具を準備していたら → 「委員会の準備をしているんだね」
これは「すごい!」「えらい!」という評価ではなく、「あなたの行動は、ちゃんと見ているよ」というメッセージになります。
この「存在の肯定」が、子どもの心に安心感を与え、「やってみようかな」という小さな勇気を育んでくれます。
テクニック②:「前置き」で挑戦のハードルを下げる
「できるかどうかは別にとして」という魔法の言葉を前に置くことで、子どもの心の負担を軽くしてあげられます。
たとえば、委員会を決める時。
「できるかどうかは別にとして、給食委員会と保健委員会、どっちに興味がある?」
こう聞かれると、「できなくてもいいから、何がしたい?」と聞かれているように感じませんか?
そして実際に委員会に参加するのをためらっていたら、
「きっと○○ちゃんならできると思うんだけど、行ってみる?」と声をかけます。
このように「前置き」をすることで、不安の強い子でも「もしかしたら私にもできるかも?」と、挑戦へのハードルがグッと下がるのです。

この2つの声かけを実践した結果、娘は今まで躊躇していた「委員会の話し合いに参加する」という一歩を踏み出すことができました。
このテクニックは、委員会活動だけでなく、家で宿題をなかなか始めない時や、学校に行き渋っている時、新しい習い事を怖がっている時など、「あと一歩」がほしいあらゆる場面で応用できます。
子どもの成長は、「できた!」という結果だけでなく、「やろうとした!」という過程を認めることから始まります。
ぜひ、お子さんの小さな一歩を「実況中継」で肯定し、「前置き」で背中をそっと押してあげてください。
きっと、お子さんの自己肯定感は高まり、やがて自分で力強く進んでいく未来が開けるはずです