不安が強くネガティブな記憶を残しやすい発達障害の子どもは、怖い経験をすると苦手なことに挑戦できなくなってしまうことも多いと思います。そんなお子さんに「この子の将来は大丈夫だろうか」と不安になりますよね。この記事では、そんなお子さんにどう対応したらいいのか、私の体験談を交えてお伝えします。
1.不安が強いと苦手なことに挑戦しない
怖かったり嫌な経験をして、その記憶が強く残っているせいで、できていたことができなくなってしまったり、苦手なことに挑戦できなくなっているお子さんはいませんか?
無理にやらせることもできないし、どうしていいかわからない。
でも大きくなるにつれて、苦手なことや嫌なことでもやらなければならない時が来るのに、このままでは将来子どもが困らないか心配になりますよね。
2.発達障害の息子の気持ちが理解できずに悩んでいました
私には、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)の息子がいます。
息子は、小さい時から乗り物が好きで、2歳の時に新幹線を見に行きました。
初めて生で見る新幹線に喜んでいるのも束の間、通過列車が通ると息子は驚いて大泣き!
その時は、「大人でもびっくりするし、怖かったよね~」と声を掛け、軽く考えていました。
しかし、この出来事をきっかけに、新幹線の駅の駐車場でさえ、発狂して泣きわめいて車から降りられないほど新幹線が怖くなってしまい、
それまで乗れていた電車でさえも乗れなくなってしまいました。
当時の私は、大きくなったら乗れるようになるだろうと思っていました。
だけど、それは大きくなっても変わりませんでした。
他にもスポーツ教室の体験に行って、楽しかったからやりたいと言って通い出したのに、鉄棒で一回転したことをきっかけに「怖いから嫌だ」と言って行くのを嫌がり、先生も私も
「鉄棒はやらないから大丈夫だよ」
「やりたくないものは、見てるだけでいいよ」
と話しても、教室の中にも入れない、やっと入れても私から離れられない…
私がどれだけ「大丈夫だよ」という言葉を掛けても息子の怖い気持ちは変わらず、スポーツ教室はやめることになりました。
私はこの様な出来事がある度に、
「なんでうちの子は嫌なことがあるとできなくなってしまうんだろう」
「他の子は、なんで大丈夫なんだろう」
「毎回こんな風になってたら、息子の将来はどうなるんだろう」
と不安になったり、
「嫌なことがあったからってすぐやめてたら、これから何もできないよ!」
と、息子のことが理解できず脅す言い方をしてしまいました。
不安が強いのに、色々なことにやりたいと興味はいっぱいな息子。
ますます息子のことが理解できず、悩んでいました。
3.息子の不安の強さや行動には理由がありました!
なぜ、こんなにも不安が強いのでしょうか?
なぜ、初めてのことでも興味のあることはやってみたいと思うのでしょうか?
それは、ASDとADHDの特性からでした。
ASDの子:不安が強くネガティブな記憶を残しやすい。
不安や恐怖を感じるということは、生き残るための本来の脳の役割で、ASDの子はその不安などを感じる内側の脳が他の人より反応しやすい傾向があります。
また、記憶を保管する脳の部分がその隣りにあるため、ネガティブな記憶を残しやすい原因となっているのです。
ADHDの子:好奇心旺盛である。
ADHDの子はエネルギッシュで新しい刺激を求める傾向があります。
ですから常に新しいことに興味があり、知りたい!やってみたい!と思うのです。
つまり、初めてのことでもやりたいと思うのに、怖いことがあると不安になって挑戦できないのは、息子がASDとADHDの両方の特性を併せ持っているからだったのです。
これを知っただけでも、今までの息子のあらゆる行動が腑に落ちました。
4.息子を変えた、たった2つの対処法
1つ目は、『こまめに実況中継する』です。
日常生活のあらゆる場面で、
「歯磨きしてるね」
「パジャマ脱げたね」
「ご飯たくさん食べたね」
こうしてこまめに実況中継することで、小さな成功体験を作っていきました。
ネガティブな記憶 < ポジティブな記憶
にしていくことで、脳に「できるかも!」と思わせるのです!
2つ目は、『共感する』 です。
今までは、なぜ息子が不安を感じるのか理解できず、「大丈夫だよ」という声掛けしかしてきませんでした。
なぜなら、私まで一緒に「怖いよね、不安だよね」と言っていたら、余計にそう思ってしまい、やろうとしなくなるのではないかと思っていたからです。
でも、ASDの息子にとってはそれは逆効果だったのです!
脳は、前に説明した内側の脳が落ち着いていないと、正常に考えたりすることができないので動き出すことができません。
じゃあ、どうしたらいいのか?
それは、一旦共感することによって、内側の脳の部分を落ち着かせることができるのです。
そして、初めて動き出すことができます。
私は息子が、「やっぱり怖い」という度に、
「そうだよね、怖いよね」と、それが自分には理解できないことでも、一旦共感しました。
この2つの肯定の声かけを増やしたことで、不思議と息子はあらゆることに前向きになっていきました。
5.好奇心をきっかけに、びっくりするほどあっという間に苦手を克服できました!
今まで何度も「新幹線乗ってみない?」の提案には「嫌だ」と即答だった息子でしたが、
こうして息子の特性を理解して、息子に合った対応に変えていったことで、前向きな気持ちになり、
「ヘッドホンをして好きな音楽を聴きながら乗ってみるのはどう?」という作戦には、「やってみようかな」と言ってくれるようになりました。
ここまできたら、後はきっかけです!
ADHDの息子は好奇心旺盛。
自分がやりたいと思ったことは、人目も気にしないでやってしまうところがあります。
ここを狙って、息子が行きたいと言っていたイベントの話を出して話しました。
私「新幹線に乗れたら、イベントに行けるよ!」
息子「でも、怖い」
私「そうだよね、怖いよね」
共感して提案を繰り返しました。
そうしたら、息子も「楽しそう!乗ってみたい!」と言い出し、あんなに怖がっていたのが何だったんだろうというくらいに息子が変わりました。
ヘッドホンをすれば電車にも新幹線にも乗ることができ、通過列車も大丈夫になったのです!
乗れるようになった後も、「楽しかった!また乗りたい!」とずっと話していました。
これは、息子の大きな成功体験になりました!
新幹線に乗れるようになったことで、今まで行きたくても行けなかった所に行けるようになりました。
これからは、色んな所へお出かけして色んな体験をさせてあげたいです。
皆さんも、発達科学コミュニケーションを学び、お子さんの特性を知って対応を変えることで、お子さんの可能性を広げてあげませんか?
執筆者:いりやま あみ
発達科学コミュニケーション リサーチャー