手をひらひらさせる、ぐるぐる回る、飛び跳ねる…。時と場所を選ばずに反復してあらわれ、目的や意味を明確にすることが困難な行動のことを『常同行動』と言います。ASDの子どもを含め、発達障害がある場合に表れることが多いと言われています。本記事では、お子さんの『常同行動』に不安を感じている親御さんに向けて、原因や対処法について紹介します。
1.子どもの手をひらひら動かす行動が心配…。娘は発達障害⁈
『娘が最近よく手をひらひらと動かす行動をしています。娘は発達障害なのでしょうか?』
先日、このようなご相談をいただきました。
・手をひらひら動かす
・ぐるぐる回る
・飛び跳ねる
・頭を壁などにぶつける
・自分の髪を引っ張る
・物を振り回す
・回転しているものをずっと見続ける
・意味のない言葉を繰り返す など
これらの行動は『常同行動』として見られる行動です。
時と場所を選ばずに反復してあらわれ、目的や意味を明確にすることが困難な行動のことを 『常同行動』と言います。
「子どもが好んでやっていることだし、放っておく方がいいのかな…。」
「最近、人前でもやってしまうから、どうにかやめさせたい。」
子どもの『常同行動』をそのままにしていていいのか。それともやめさせた方がいいのか。
親御さんとしても、どう対応したらいいのか迷っている方も多いのではないでしょうか?
本記事では、お子さんの『常同行動』に不安を感じている親御さんに向けて、原因や対処法について紹介します。

2.常同行動が起きる理由
『常同行動』は3歳頃から表れることが多く、誰にでも現れる可能性がありますが、一般的に成長に伴って、減少していくと言われています。
自閉スペクトラム症(ASD)、知的障害など発達障害がある場合に表れることが多く、発達障害がある場合、幼児期を過ぎても『常同行動』は継続的に見られる傾向にあります。
『常同行動』が起きる理由は、個々で異なります。
ここからは、考えられる3つの原因についてご紹介していきます。
◆安心を求めている
いつもと同じという安心感が得られ、落ち着くことができるため、特定の行動が表れている場合があります。
また、次にする行動がわからずに不安になっている時に、安心を得るために行っている場合もあります。
◆自己刺激を求めている
感覚鈍麻(感覚が鈍い)お子さんの場合は、頭を打ち付けて痛みを感じようとしたり、壁を叩いて刺激を得たりなどの行動に表れることもあります。
◆何かを伝えたい
言葉で表すのが苦手なお子さんの場合、感覚的に嫌なことが起こった時に同じ行動として現れているのであれば、不快な気持ちを『常同行動』によって表しているのかもしれません。

3.常同行動への対応
上記に挙げたように、『常同行動』は無意味なものではなく、本人なりの理由があって現れている行動です。
そのため、無理矢理やめさせるのはよくないと私は思っています。
しかし、『常同行動』が
・周りに迷惑をかけたりしてしまう行為である
・自分や周りを傷つけてしまう行為である
場合は、親御さんも見て見ぬふりをしておくわけにもいきませんよね…。
そこで、上記の理由により常同行動をやめさせたいとお考えの親御さんに向けて、ここからは『2つの改善策』についてご紹介します。
◆STEP1 行動をよく観察しましょう
まずは、お子さんの行動をよく観察することから始めてみましょう。
✔️お子さんの『常同行動』はどのような場面や状況で現れているのか。
✔️行動が起こる前にはどのようなことがあったのか。
✔️行動が治ったきっかけはなんなのか。
可能であれば、記録をつけながら2週間ほど観察してみるとよいでしょう。
記録をつけていくことで、特定の場面や状況で常同行動が現れていることに気づき、本人の伝えたい想いをわかってあげられるかもしれませんよ。
◆STEP2 行動を置き換えてみましょう
本人が欲している行動を無理にやめさせることは、子どもの精神状況に悪影響を及ぼすこともあります。
視点を変えて、やめさせるのではなく、やってもいい行動に置き換えることを試してみましょう。
欲している刺激と同じ刺激を与えてあげることが行動を置き換えるコツです。
(例)
・物を叩いて音を出す → 楽器を叩いて音を出す
・体をつねる → ストレスボールを握る
また、他の行動に誘うのも、行動を切り替えるのに有効な方法です。
「外に遊びに行こう!」
「絵本読もうか!」
など、子どもの好きなことで誘ってあげると、自然と常同行動をやめることができる場合もあります。

4.行動を観察することで、原因は見えてくる!
冒頭でご紹介した相談者さんには、娘さんの常同行動の様子を観察するようにアドバイスさせていただきました。
すると、お子さんが手をひらひらする行動は、どうも何をしたらいいのかわからない状況の時に出現していることがわかったそうです。
そこで、さらに相談者さんには、手をひらひらさせ始めたら、お子さんの好きな行動に誘うようにアドバイスをさせていただきました。
相談者さんの娘さんは絵本を読むのが好きなので、何もすることがない時は、本棚から好きな絵本を選んで読んで読めるように、本棚をリビングに置く環境設定も行ったそうです。
すると、娘さんは何をしたらいいかわからない時には、絵本を読む習慣がつき、落ち着くことができるようになったようで、手をひらひらする行動は少なくなったとご報告がありました。
どのような問題行動も、お子さんなりに何らかの理由があります。
お子さんがどのような思いでその行動を行っているのか、まずはしっかりと行動を観察し、その理由を知ろうとすることから始めていきましょう。
