「何度も同じことを言っているのに伝わらない」、「この子には人の気持ちがわからないのかもしれない」そう感じることはありませんか?実はそれ、お子さんの脳の特性が原因かもしれません。特性に寄り添い、子どものコミュニケーション力を育てる2つの対応をご紹介します!
1.「この子は人の気持ちがわからないのかな」と不安に思っているママに伝えたいこと
同じことを何度も伝えているのに、子どもの言動がちっとも改善されないと、「この子は人の気持ちを考えることができないのだろうか?」と心配になりますよね。
実は、これは発達障害の1つであるアスペルガー症候群の子どもの脳の特性が原因です。
特性を正しく理解し、適切な対応を積み重ねることができれば必ず改善できるので、今困っているママも安心してくださいね。
ここでは、すぐに効果を感じられる対応を2つご紹介します!

2.人の気持ちに共感したり同情する様子が見られない息子に、イライラしていた日々
私にはアスペルガー症候群グレーゾーンの息子がいます。
言語の遅れはなく、普段の会話は基本的に問題なく行えるのですが、ここぞという時の指示がなかなか伝わらないということが多く、毎日イライラしていました。
こちらがどれだけ怒っている様子を見せても、まるで何も聞こえていないかのように問題行動を継続する姿に、怒りを通り越して虚しくなり泣けてくるなんてこともありました。
私が泣いても怒っても問題行動を止めない息子の姿に、
「この子はもしかして人の気持ちがわからない子なのかもしれない。。このまま社会に出たら大変なことになるのでは…」
と不安になり、夜な夜なネットで検索するという日々を繰り返していました。

3.アスペルガー症候群の子どもの脳の特性とは
なぜ、言語能力に問題はないのに、指示が全く伝わらないということが起きるのでしょうか。
実は、これは親の育て方や本人の性格に問題があるからではなく、アスペルガーの子どもの脳の特性が原因なのです。
・場の空気を読んだり、相手の顔色から気持ちを推測したりするのが苦手
私たちが「見たらわかるでしょ!」、「普通に考えたらダメってわかるじゃん!」と思うようなことでも、
『空気感』、『顔色』といった、正解のない情報を処理する能力が未熟なアスペルガーの子どもにとっては、理解をするのがとても難しいのです。
そのため、『状況を読む』ということも出来ないのです。
こちらが「どうしてこんなこともわからないの!」という態度で接し続けると、気持ちが伝わらないどころか、なぜ叱られているのかがわからず、「理由なく怒られた、理不尽だ」と心を閉ざしてしまう可能性もあります。
・得意なことや興味のあること意外に関心を向けられない
アスペルガーの子どもは興味や関心の幅が狭いという特徴があります。
また、興味のないことに集中するということが人一倍苦手なので、「何度聞いても内容が全く頭に入ってこない」という状態になることが少なくありません。
また、自分なりのこだわりやマイルールを持っているので、そこに当てはまらないことを言われても受け入れられない、ということもよくあります。
・プライドが高い
学習能力や記憶力が高く、自分が興味のあることに関してはまるで博士のように知識を蓄えていくという特徴があります。
「〇〇なら誰にも負けないぞ!」という自信を持っているからこそ、プライドが高く、人に指摘されることを嫌います。
プライドをへし折るような指摘や注意の仕方をすると、素直に受け取れないので注意が必要です。

4.アスペルガーの子どものコミュニケーション力を育てる対応とは
では、アスペルガーの子どもの特性に効果的にアプローチし、こちらの気持ちや指示を届けるには、どのような対応が必要なのでしょうか。
具体的な対応を2つご紹介しますね。
①指示出しをする時には、してほしいこととその理由を短く、明確に伝える
ダラダラと結論が見えない話し方をしてしまうと、アスペルガーの子どもは何が言いたいのかを察するということが苦手なので、内容を理解できません。
集中力も長くは続かないので、長々と話すことはこちらが疲れてしまうだけで、メリットがありません。
また、こちらが感情的になってまくし立てるように伝えるのもNGです。
相手の感情に共感したり寄り添うということも苦手なので、どうすればいいのかがよりわからなくなってしまうのです。
以上を踏まえて、指示を出す時には、次の例のように、端的にわかりやすく伝えるようにしましよう。
・「お店の中は歩こうね、走ると危ないよ」
・「歯を磨こう、お口の中が汚れてるからね」
先にすべき行動を伝えることで、今何をすべきなのかがすぐにわかるようにします。
また、「あれ」「それ」「これ」などの曖昧な指示語が理解できないという場合もあるので、場所やものの名前などは具体的に伝えるよう意識してください。
②プライドを満たす声かけを入れながら、すべき行動を優しく示す
アスペルガーの子どもは頭がよく、自分に自信を持っているという素晴らしい特性があります。
ですが、他人に理解してもらえない場面も多く、本人に悪気はないのに叱られたり注意されたりするということが少なくありません。
そういった場面が増えると、自尊心が傷つき、「僕はダメな人間なんだ」と必要以上に落ち込んでしまったり、ストレスから問題行動が悪化してしまいます。
だからこそ、「ママは味方でいてくれる」、「ママは理解してくれている」という安心感を与えることが何より大切なのです。
指示出しをする時は、まず気持ちへ共感から入ることを意識しましょう。
また、注意や指示出しの部分は、「〇〇するともっと良かったかもしれないね」という風に、優しい言い方をしてあげると素直に受け入れやすくなります。
さらに、アスペルガーの子どもは、見えないもの、聞こえないものを感じとるということが苦手なので、ママからの愛情もきちんと言葉にして伝えてあげる必要があります。
日頃から「大好きだよ」「私はあなたの味方だからね」と言葉で伝えてあげるとよいでしょう。

5.驚きの成長を見せてくれた息子!
適切な対応を実践し、3週間ほどたった頃、息子とのコミュニケーションに大きな変化がありました。
私の指示をしっかりと聞き、「わかった」と素直に従ってくれるようになったのです。
さらに、私が息子にしてほしいことを伝えた時に、「ママはどうしてそうしてほしいの?」と聞いてくれるようになったり、私の言葉が足りない時には「ママの気持ちがわからなくて困ってる」と教えてくれるようになりました。
やり取りが一方的ではなくなったので、息子が私にも関心を持ってくれていることがわかり、ますます息子のことが愛しくなりました。
発達障害を抱えてる子どもたちは、実は本人が一番困っていて、「なんでうまくできないんだろう」と感じているのではないでしょうか。
だからこそ、こちらの対応が変わると、「ママが理解してくれた!」と敏感に反応してくれるのです。
子どもにとって、一番そばにいるママに寄り添ってもらえることほど嬉しいことはないのでしょうね。
ぜひ、適切な対応でたっぷりの愛情をお子さんに届け、コミュニケーションをとることの楽しさを教えてあげてください。

執筆者:中谷 そら
発達科学コミュニケーション トレーナー