1 勉強で困らなかった子が不登校になりました!
そんな中、冬休みに風呂上がりに2度倒れることがありました。
冬休み明けより嘔吐や強い腹痛、朝起きれないなど起立性調節障害を発症し、不登校に…
念のため、精神科も受診してカウンセリングを受けるも、発達障害や対人恐怖、うつなどの症状は見受けられませんでした。
息子は、幼い頃から、砂の粒子の分別の仕方を自分で見つけたり、絵本を読んで泣いたり、なんでなんでと質問を繰り返したり。
興味を持ったらインターネットや本で調べて、実際にやってみて、色々一気に吸収していきます。大人でも驚くほどの探究力を持っています。
ですが、こどもの騒ぐ声が苦手で、兄弟たちが口喧嘩を始めると命令口調で注意してしまいます。
また、赤の他人であっても掃除をサボったりゴミを道路に捨てたりすることがどうしても許せないところがありました。
流せばいいところを面と向かって言わないと気が済まないし、相手が行動を改めるまで言うところもありました。
また、毎日決まったものや誰かに押し付けられたものには嫌悪感をあらわにしていました。
毎日の宿題、それから黒板の文字をノートに写すことなど全く価値を見出せないと話していました。
一度は社会の定期テストの範囲を全て間違えて全然違うところを勉強していたこともあります。
興味のないことには身が入らないのです。
そして完全不登校が半年以上続いたころ、発達科学コミュニケーション(発コミュ)に出会いました。
2 科学甲子園に出たい気持ちが息子を突き動かしました。
半信半疑でしたが、藁をもすがる思いで始めたのです。
一日5分しか顔を合わせることのないくらい、部屋に鍵をかけてこもりがちだった息子の「足音」や「声色」をほめるところからはじめました。
本当に地道で先の見えない日々でした。
ですが、少しずつ、そして確かに親子の関係は修復されていきました。
三週間ごとに私の予想をはるかに超える結果が見て取れ、本当に感動しました。
まずは、会話の時間が増え、よく話してくれるようになりました。
自分から、お手伝いをしたり、荷物を持ってくれたり、やってほしいことを自主的にやるようになりました。兄弟たちにも優しくなりました。
そして、「ありがとう」と事あるごとに言ってくれるようになりました。
自分の思いやこれからやってみたいことを口にして言えるようになりました。
大事なことを話し合えるようになり、なによりも私の心持ちが劇的に明るくなりました。
我が子を、我が子の未来を、信じられるようになりました。
そうして少しずつ自分を取り戻し、あれがしたい、これを見てみたいなど元来の息子の姿が戻ってきていました。
そんなときでした。
お友達から科学甲子園の選抜テストの話をたまたま聞きました。
是非受けてみたいと言う息子に、私は急いで学校に電話をかけテストを受けさせてもらうことになりました。
結果は見事合格。
本人も喜んでその日から科学甲子園の練習だけ学校に通う毎日が始まりました。
未知の経験にワクワクしながら、外に出てみるだけのエネルギーが息子に宿っているのがわかりました。
3 仲間とのキャッチボールがこれから始まる予感!
ところが、いざ学校に行ってみるとその道のりは順調ではありませんでした。
この頃から、チームメイトの親御さんから
「息子さんが自分の好きな話ばかりしてみんな困っている」、「息子さんの言葉がストレートすぎて、チームの和を乱さないか子どもが心配している」などの苦情が私の耳にはいるようになりました。
私はこのことを直接息子に伝えることは避けました。
なぜなら、常に頭には「息子が一人前に楽しく人生を送れるようになるためにはどうしたらいいか」という思いがあったからです。
自分の前では、何も指摘しない仲間が親伝いに自分への不満を伝えてきたら、きっとショックで人間不信になってしまうかもしれません。
私は、普段の会話の中でなんとか息子にアドバイスできるきっかけを探りました。
息子は息子で、他の人が群れているのを嫌がる発言がありました。
しかし、内心にはその輪に入れないことへの羨ましい気持ちがあるのでは?とも思う私もいました。
我が家の方針で子どもにはLINEをさせていませんが、LINEをしている友達のことを子どもみたいだ、LINEゲームの話ばかりして幼稚だなどと批判的にみているのもその一つかもしれないと思っていました。
まだ仲間の中に素直に溶け込めない感じがあるように感じました。
そんな時、車で送迎する際に息子から私に打ち明けてくれました。
俺がこう言ったら、みんなの顔がこわばったんだ、どうしてだと思う?と。
私は心の中で「チャンス」だと思いました。
息子が仲間の反応に気づき、はじめて思いを馳せたのです。
そして、どうやったら自分の真意が伝わるのだろうと考え始めたのです。
仲間とのキャッチボールがこれから始まる予感がしました。
そうやって息子は送迎の時にたびたび私に相談してくるようになりました。
私はその都度、息子の思いを受け止め、その上でこうしたらいいんじゃない?と明るく伝えるように努めました。
また、息子はこの頃こんなことを思っていたそうです。「絶対こっちの方法がいいのにどうして分からないんだろう。」「自分の得意分野は生物なのにどうして任せてもらえないんだろう」。
こんな心の葛藤もチームだからこそ抱けたものだし、息子が他者と繋がりたいからこそ出てきた思いだと思います。
日を追うごとに段々と息子の表情が明るくなり、仲間との連携が取れてくるのがわかりました。
その日にあったことを楽しそうに話す息子の話を聞きながら何度も溢れ出るものを堪えました。
一人で部屋に閉じこもっていた息子が、仲間とひとつの目標に向かって切磋琢磨している姿など本当に夢を見ているような感覚でした。
そして、県予選で見事優勝。
5 仲間とともに勝ち取った全国大会
しかし、全国大会は修学旅行と重なっていて最初から行くことはできないと子どもたちに伝えられていました。
そこで仲間と話し合い、先生たちに直談判をしに行くことになりました。
その日は1日実力テスト、しかも直談判は朝7:30に計画されていました。
9ヶ月以上テストをまともに受けてもなく、ましてや朝から1日登校するなど考えられない息子がその日は朝から登校し、仲間と先生に直談判し、テストを最後まで受けてきました。
にわかに信じがたいことでした。このことは、先生やスクールカウンセラーの先生を驚かせました。
そうして勝ち取った全国大会。
放課後や毎週末の練習が楽しみで楽しみで欠かさず参加しました。
このころもまだ親御さんからの苦情は続いていました。建築のお仕事をしているお父様の助言に大人のような口調でチームの方針を話し議論することもあり、そういうことも場の雰囲気を張り詰めさせました。
その都度さりげなく助言し少しずつですが、周囲の方も息子を受け入れてくれるようになりました。
最後の週は1日12時間缶詰め状態。
普段なら自分のやりたいことだけをして自由に過ごす息子が文句ひとつ言わず、練習を続けました。
最後の方はチームが一丸となっているのが見て取れました。
全国大会の筆記試験の時、本人が希望する「生物」の分野の担当をはずされ、あまり得意でない「物理」の分野を任されていました。
当日問題をみた生物担当の子が「おれ、クリオネ無理や!」と言った瞬間、息子が「おれ、クリオネ得意!」と言って全問正解できたそうです。
私も知らなかったのですが、クリオネを飼いたくて調べていた時期があったそうです。
それらの成果が実り全国大会で9位になりました。
その瞬間、息子は1番に飛び上がり仲間たちと抱き合って喜びを分かち合いました。
まさか、こんな経験ができるとはほんの少し前の私には想像もできませんでした。
駅で校長先生や教頭先生、保護者のみなさんに出迎えられたときの達成感と心地よい疲労感に満ちた顔は忘れられません。
6 本人をありのまま受け止めれば、子ども自身も本来の力を発揮できる
そして、帰りの車の中で「俺、どうやって友達と付き合えばいいか分かった気がする。もう大丈夫だ。」といいました。
私はこれを聞いて、息子がひとつ大きな壁を乗り越えたんだと実感しました。
発コミュはこうして、私たち親子のあり方や心の持ちよう、そして「今」を、劇的に変えてくれました。
本人をありのまま受け止め、認め、信じて、発コミュを実践していけば、子ども自身も本来の力を発揮できるのだと思います。
これからは、息子に、自分自身の良いところを存分に知ってほしいし、苦手なところも素直に認められて、少しずつ社会との繋がりを構築していってほしいと思っています。
学生時代ならではの青春も仲間と共に歩めますように。
今、息子は「学校の授業はつまらないけど、みんな優しいし、話すのが楽しいからこれからも少しずつ登校してもいいな」と話しています。来週ある定期テストに向けて勉強も開始しています。
そして、それに飽き足らず、さらに「自分がしたいことに通じることにチャレンジしたい。ひとまず今は3Dプリンターで作るものをデザインから自分でしてみたい。」と話し、理科系のオルタナティブスクールを調べて体験コースを申し込みました。
学校のレールには完全には乗らない子です。ですが、自分のペースで、自分の人生の歩みを確実に進めています。
この先も様々な困難にぶつかるでしょう。
でも、その都度きっと相談しながら、ひとつひとつ乗り越えて行ける気がしています。