発達障害で元不登校の子どもの将来の選択肢を広げる方法とは?~通信制高校N高を選んだ親子の体験談~後編

発達障害を持ちながら不登校も経験し、通信制高校を選択した注意欠陥多動性障害(ADHD)の子どもを応援しているKさん。後編では、Kさん親子がどのようにしてなんでも話し合える良好な親子関係になったのか、お母さんが実践した対応法を伺います!

1.発達障害で不登校だって怖くない!?ADHDがわかってから良好な親子関係を築くまでにお母さんがやったこと

「発達障害で元不登校!?ADHDの子どもの明るい未来を描いたお母さんの対応法!~通信制高校N高を選んだKさん親子の体験談~前編」からの続きです。

Kさんに、息子さんとの今までのお話を聞かせて頂きました。

ーー息子さんの発達特性は何でしょうか?

「注意欠陥多動性障害(ADHD)と、少し自閉症スペクトラム(ASD)が交ざっていると診断されています。

学習障害(LD)ではないですが、読み書き、話すのが苦手です。」

ーー幼少期の様子はどうでしたか?

「ひざ下がいつもあざだらけでした。いろいろなところによく足をぶつけていました。

幼稚園時代、看護師だった私の姉に『何か発達特性があるのでは』と言われましたが、小学校入学前の就学時検診でも引っかかることがなく、小学校に入学しました。」

ーーいつ特性がわかりましたか?

「小学校1年生のときです。

授業中座っていられず、立ち歩きやノートを取らない、同級生とのトラブルが毎日のように続きました。

言葉の発達が遅かった分、手が出てしまう子でした。

あるときもらった小冊子にADHDのことが書いてあり、息子をよく知っている方に症状のチェックリストにチェックしてもらったところ、全員同じところにチェックしていて、それをもって大学病院を受診しました。そして診断を受けました。」

ーー特性がわかるまでお母さんはどのような対応をしていましたか?

「すごく怒っていました。とにかく怒っていたので、息子は怒鳴り声がこわくなり、固まってしまうことが多くなりました。」

では、特性がわかってからお母さんの対応はどのように変わったのでしょう?

発達障害である息子さんが今、笑顔で自分らしくいられる理由に迫ります!

ーー特性がわかってどのように対応しましたか?

「『普通の子にしたい』という考え方を捨て、きちんとさせなきゃと私が頑張るのをやめました。

そして声を荒げずに、淡々と指示を出すことにしました。

とにかく最初は息子の発達特性を知るために本をたくさん読んだり、対応の仕方がよかったのかなどは主治医の先生と答え合わせをしました。

あとはひたすら子どものことを観察しました。」

ーー小学校は行き渋り、不登校などありましたか?

「発達障害ではありましたが、知的に遅れがなかった為、普通級に通っていました。(その学校はその時は発達障害でも知的に遅れがない場合は支援級に入れなかったそうです。)

小学5年生から6年生までは不登校でした。」

ーーどうして不登校になってしまったのでしょう?

「その当時、息子はまだまだ多動や衝動性が強く、高い所に登ってしまったり危険な行為をしてしまうときがありました。

すると先生から『息子さんに何かあったときは誰が責任を取るんですか?』と言われてしまい、支援級にも入れなかったので、親子で『それならもう学校には行かなくてもいいや』となりました。」

ーーその時のお母さんの気持ちはどうでしたか?

「『もう学校でのトラブルに対して注意したり謝ったりしなくていいんだ』と考えると気持ちが楽になりました。」

ーー不登校中は何をして過ごしましたか?

「学習は少しで、家の事や買い物、あとはフリースクールを利用して、体を動かしたり、『遊ぶ』ことをさせていました。遊ぶというのは楽しみながら学ぶことです。

学校に行っている間は学習に追われて楽しむことをする時間が取れなったため、楽しいことを体感する経験をさせました。

少し時間がたつと、自発的に勉強する姿が見られるようになり、大丈夫だろうと思えました。」

ーー不登校中はどんな様子でしたか。

「思春期による体調不良や不安定さはもちろんありましたが、学校でじっとしていなければいけない、求められた行動をしなくてはらないということがなくなったので、衝動的な怒りなどはぐっと落ち着き、不登校前よりはイキイキしていました。」

ーー中学校は通えましたか?お母さんが工夫したことは何でしょうか?

「中学校は教育委員会の人を交えてしっかりと話し合い、環境を変えることもありだと思い、地元ではない中学校に通わせました。

行きたがらないときは、その日の予定を親子で話し合い、学校で自分のやりたいこと、楽しみがあることがある場合は、休むとその活動ができないことを伝えて考えさせ、それでも行きたくない!というときには無理をさせずに休ませていました。

いきしぶりはありましたが、不登校にならずに通うことができました。」

ーー進路について親子で話し合える関係はどうやって築いたのでしょう?普段のかかわり方で気を付けていたことは何ですか?

「親子の距離感が近すぎると冷静になれないのですが、プロやたくさんの方に助けてもらうことによって、子どもと冷静に向き合えるようになりました。

プロに教わることによって私自身の変わり方がわかって、小さいときは肯定的な関わりを増やしましたし、大きくなってからは息子がイメージしやすい伝え方ができるようになりました。」

ーーー

このようにKさんは日々我が子の発達特性や対応をしっかり学んで実践し、不登校になっても動じず、しっかりと息子さんの特性に向き合い最善の策を考えて、ニコニコ笑い合える今のような親子関係を築いたのですね。

息子さんは、お母さんが自分をしっかりと理解し守ってくれていることを、きっとよく見て安心していたのでしょう。

2.発達障害があっても、不登校になっても、自分らしくいられる場所は必ずある。子どもの為にお母さんができる対応法

Kさん親子の体験談を聞いてみて、私は、息子さんが今、笑顔で自分らしくいられる理由がわかりました。

皆さんはわかりましたか?

まず1つ目は、お母さんが息子さんの発達特性をよく理解し肯定した、ということです。

お母さんが発達の特性を理解するのがなぜいいかというと、お母さんがその子だけの専門家になれるからです。

こういう所が苦手だな、こんな得意な所があるんだな、とわかってくると、

●どういう風に苦手をフォローしてあげたらいいのか
●どんな得意を伸ばしたらいいのか
●どんな進路がいいのか

が見えてきます。

お母さんがその子自身をしっかり見てあげることによって、その子にあった場所や生き方を一緒に考えてあげられるのです。

そして2つ目は、お母さんが一人で頑張らずに、プロや周りの方に助けてもらったことです。

発達の勉強は自分だけで頑張ろうと思って本を読んで勉強したりしても、なかなかうまくいかないことも多いです。

頑張れば頑張るほど、冷静になれずに疲れてしまいます。

Kさんは、プロにアドバイスをもらうことによって、上手な対応方法を身に付けることができて、怒るよりも冷静に対応して、息子さんとのいい距離感を見つけたのですね。

3.Kさん親子から、あなたへ

最後にKさん親子から、今、不登校や進路で悩んでいるお母さんや子ども達へのメッセージをいただきました。

ーーー

【Kさん】

親が自分のことを責めすぎないでください。

親にできることは、子どもにたくさんの選択肢を与えること。

発達特性のある子たちはネガティブになりやすいので、なるべくポジティブな言葉をかけてあげてください。

お母さん達も一人で抱え込まずに、相談できる人を見つけてください。

そして、子どものためにも自分のためにも笑顔でいてほしいです。」

【息子さん】

「学校にいやな気持ちで行くなら、学べることは少ないんじゃないかなと思います。

自分が楽しいと思うことや気になったことから学べることはたくさんあります。

学校じゃない居場所もあります。

いろんな選択肢があるから、自分が何をしたいか、楽しいことを考えてみて下さい!」

ーーー

インタビューが終わった後、

「実はこれから初めてのアルバイトなんです!緊張するな。」と息子さん。

「私の方がドキドキしてますよ!」というお母さんでしたが、息子さんへの明るい未来への希望と、愛情あふれる眼差しがとても心に残りました。

Kさんへのインタビューを通して、発達の特性のある子ども達が自分らしくいられるためには、

●お母さんが子どもを理解し肯定し、良好な親子関係を築いてどんなことでも話合える関係を作ること
●お母さんが今までの常識に囚われない考え方、たくさんの選択肢を与えてあげること

が、とても大切なんだと感じました。

皆さんはどんな風に感じたでしょうか?

この体験談が少しでも皆さんの子育てのヒントになってくれたらとても嬉しいです。

様々なインタビューで元不登校さんの生き方学べます!

執筆者:別井理恵
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)

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