ギフテッドの女性に聞きました!特性を伝えるのがワクワクする子どもが安心して成長する方法〜前編〜

最近よく話題になるようになったギフテッドの子ども達。すでに大人になったギフテッドはどう生きてきたのでしょう。ギフテッドの女性に出会い話を聞くことで、発達に特性を持つことを子どもに伝える意味、伝え方がわかりました!

1.ギフテッドは大人になったらどう生きているのか

発達に特性のあるお子さんの子育てをしていると、子どもへ発達の凸凹について伝えるタイミングについて悩んだり、そもそも伝えたほうがいいのか伝えない方がいいのか悩むことはありませんか?

私にはギフテッド とASD(自閉症スペクトラム)の傾向がある息子がいます。息子は小学4年で不登校となりました。

息子のギフテッドとしての特性がわかった時の話はこちら。ギフテッドの解説を記載しています。
うちの子はギフテッド?学校嫌いな子どもが得意に気づいてぐんっと輝いた親の考え方

ギフテッドというと、「IQが高くて頭がよくてエリートなんじゃない?才能があっていいよね。海外の大学とか行っちゃうんでしょ?」という印象を持つ人が多いと思います。

ですが、ギフテッドの子ども達の中には学校の勉強に興味が持てない子、正義感が強く先生や友達との衝突が起きてしまう子、頭の回転は良いのに字が書けない子などいろんな子達がいるのです。

文部科学省は、「特異な才能のある児童生徒」についての有識者による会議を昨年に立ち上げ、支援策を検討し、来年度からは学校でも支援が行われることになりました。

公的に理解され、サポートが得られる世の中になるのは嬉しいことです!けれど、サポートが広がるまでにはどのくらいの時間がかかるのだろう?という心配もありますよね。子どもの成長は待ったなし。やはり公的な支援を待っているだけでは手遅れになってしまうこともあります。

私は、息子にギフテッドの特性があるとわかってから、「本人にどうやって伝える?どうやってこの子に合う道を探せばいい?ギフテッドに関わらず、発達障害の特性をもつ大人の人達は、自分の特性を理解して納得して生きているの?」ということを知りたいと思うようになりました。

そんな中、女性のギフテッドとして生きてきた樽タサクさんに出会いました。樽さんは、「おとなになっても」というブログを運営し、大人のギフテッドとして今までの生きてきた道を発信されています。

ブログはコチラです
〜「おとなになっても」大人のギフテッドー楽に生きていこう〜

今回のインタビューでは、人との違いをどのように感じてきて、克服したのはどんなきっかけだったのかを聞いていきたいと思います。

2.自分と周りの違いで苦しんだ若い頃。女性特有の悩みも。

ーーギフテッドの特性として役立つことはありますか?

「私は知的欲求が広いしひどいです(笑)ただテレビを見ていたり、人と話しているだけで知識が自分に入ってきます。そうやって知識をたくさん自分にいれることにとても喜びを感じますね。

想像の過興奮性もあって、思考することが好きなんです。誰かと話す話題が知らない話題だったとしても、会話の中で情報を収集して、相手からいろんな知識を引き出して、会話をいくらでもつなげていくことができます。逆に相手が疲れてしまうこともあるんですけどね。自分は知的欲求が満たされるからすごく嬉しいんです。」

※過興奮性:過度激動とも呼ばれ、知的な側面が大いに発達しているギフテッドは外部からの感覚情報に強く反応すること。過興奮性には5種類あります。こちらの記事で解説しています。
ギフテッドのOE(過度激動)を理解すればヘトヘト育児から卒業できる!

ーー素晴らしいですね!ただ、深く考えすぎたり、人とのやり取りに集中しすぎて疲れてしまいそうだなと心配になります。困ることはありませんでしたか?

「人とのやりとりで、会話を引き出す中でいろんな情報を取り込むのでストレスは掛かります。複数人数になると疲れるのはあるかな。知識の部分でというよりも人の感情まで感じてしまうので、それは辛いですね。

あと、人のことを先読みしすぎて、その人の問題点を見えるのに言えないという葛藤が大きかったりして、自分はものすごく腹黒いんじゃないかな?と自分の内側で攻めてしまうことが多いです。社会生活で辛さを感じることが多かったです。」

ーー 樽さんは小さな頃から自分はギフテッドとわかっていたんでしょうか

「いえ、わかったのは30歳代くらいです。それまでは自分はなんなんだろう?と模索し、葛藤する日々を送っていました。」

ーーでは、子どもの頃から苦しさを感じていたんですか?親御さんや学校の先生は樽さんの特性を理解してくれていましたか?

子どもの頃から辛かったですね。大人に気持ち悪いって思われていたみたいです。大人に怒られても、『なんでぶつんだろう、この辺で力加減したな』と分析して大人を見ていたので、じーっと見つめる私は大人の苛立ちを増長させていたようで。泣いたり、怯えたりしない。ごめんなさいと言わない子でした。

学校の勉強は幸い勉強しなくてもテレビなどで得た知識でできたので、親からは放置されていました。この子はなんでもできるから放っておいて大丈夫だと。『周りの大人は変なやつばっかり。まともな大人は自分の周りにはいない』と思っていましたよ。」

ーー自分のことを認めてもらえる環境がない中で子ども時代を過ごし、どのように進路を決めていったのでしょうか?

「高校に入るまで、学習にかんしては授業でぼーっとしていても、テストになったら映像が自分のイメージに浮かぶから、ただ書き写せばいいっていう感じだったんですよね。

ただ写しているだけだから100点をとっても嬉しくない。勉強をどうやっていいかわからなかったんです。

そんな状態で進学校の高校に入ってしまって、周りの人達はものすごく勉強をしているんだと知って、私の勉強の仕方が間違っているんだと思ってしまいました。真似しようと思ったら勉強できなくなってしまったんです。

自分は自分なりのやり方でいいやとやればよかったんですけどね。『自分が間違いなんだ!」と感じてしまって。勉強で競争しなければならない環境だった高校時代は本当に苦痛でした。

ーーそれはしんどいですよね。卒業までは不登校などにならずに耐えて通学されていたんですか?

「もう思考停止ですよね。時間が過ぎるのを待つのみ。体も頭もロック状態で。女子特有の「周りと合わせなければいけない」という気持ちも働いて、見せかけの人間関係は良好で乗り切りました。

高校卒業後、大学受験も失敗し、バイトして、家庭教師なんかで人に教えることをする中で、『なんだ簡単なことも自分にはできていなかったんだな』と心が開放されて気づくことがでてきて。

周りにどう思われても自分は自分でいいやと思えるタイミングがあったんですね。それから遅れて大学に入学することができました。」

ーー大学卒業後はどうしていましたか?困ることはありませんでしたか?

IT系などの会社で社会人として仕事をしていました。その経験の中で、教育・指導の立場になったときに、発達障害のような何かしらトラブルを抱える人達がいて、その人達を観察することをよくしていました。

彼らのことを理解しようと、いろんな本を読み、職場内で他のスタッフとのコーディネーター的な役割として入る際に言葉にして伝える必要がでてきたんですね。

そんな中で、自分にも自閉症スペクトラムやHSPの特徴があるなと思うけど何か違うという感覚が増していって、その後色々と自分の中でも限界がきて体調不良で倒れるという事態が起きてしまいました。その後ようやくギフテッドということにたどり着くんです。」

※HSP:Highly Sensitive Person(敏感な人)

ーー子ども時代から大人に素直に甘えたり、気持ちを伝えることができなかったから、色んな感情を自分で抱え込みすぎてしまったんでしょうか。どんな特性だったとしても、やはり子ども時代には「この子は困っていることはないかな?」と周りの大人が気にかけてあげる必要がありますね。

幼い頃に大人にありのままで受け止めてもらえることで、いろんな問題に立ち向かう強い心が作られるはずですよね。

3.「安心感」それは自分が何者かわかっときに感じたこと

発達に特性のある子ども達が、自分が周りの子ども達とは少し違うと告げられたらショックを受けるのではないかな。みんなと同じがいいと否定したくなるのではないかな。

そんな風に心配してしまうこともありますよね。

しかし、理由がわからないことで周りとの違いに「なんで自分だけ他の人と違うの?」と悩みが深くなってしまうこともあります。

樽さんは、自分の特性の理由を知ったときどのように感じたのか聞いてみました。

ーー自分がギフテッドだとわかったとき、どのような気持ちでしたか?

「最初はすぐに納得できなかったんです!ギフテッドというというと何か秀でた能力を極めていく人のイメージで、私はそんなんじゃない!できないことたくさんあるし!と思いました。

でも、『ギフテッド その誤診と重複診断:心理・医療・教育の現場から』という本の日本語版を読んで、大笑いするほど自分に当てはまることが多かったんです。『これほどか!』ってくらい(笑)

そして、本を読み進めていくうちに『私が今まで苦しかったのは、ギフテッドだからだったんだ!』と思いました。

※「ギフテッド その誤診と重複診断:心理・医療・教育の現場から」
 J・T・ウェブ/E・R・アメンド/P・ベルジャン/N・Eウェブ/M・クズジャナキス/F・Rオレンチャック/J・ゴース著
 角谷詩織・榊原洋一監訳

ーーそのようにギフテッドというカテゴリーにご自分がピッタリ重なったときの感情はどのような感じでしたか?

「とっても安心感が大きかったです!本には自分が思っていたことがそのまま書かれていました。それに納得して、自分を受け入れて、自分の感情を書き出してまとめる作業をしていくうちにだんだん体が楽になっていく感覚になりました。アレルギーまで治っちゃったんですよ!」

ーーアレルギーまで⁉︎自己を受け入れるということが身体にも良い影響になったのですね。

4.怖がらずに子どもに子どものことを伝えたい

樽さんは、大人になってから自ら動き、ギフテッドであることにたどり着きました。自分がギフテッドというカテゴリーの中にはまったことで、人と違うことにも嫌悪することなく対応できるようになったとおっしゃっていました。

私たち親は、特性のある子ども達に恐ることなくその子の得意、不得意について会話することが大切なのではないかと感じます。

世の中には色々な人がいる。普通と言われる人もいれば、忘れっぽい人、臆病な人、不器用な人、記憶力がすごく良い人、物づくりが得意な人。

「お母さんも苦手なことがあるよ。みんな同じにしなくていい。あなたの得意を伸ばしていこう。」と伝えたいですね。

お父さんお母さんが愛情もって伝えることで子どもに安心感が生まれます。子どもが自分は他の子との違うと感じたとしても、自分を押し殺して周りに合わせようと苦しむことのない世の中になってほしいです。

私たちお母さんが、子どもの特性を強みとして見てあげられる視点を持ちましょう。

後編のインタビューでは、樽さんが自分の特性をコントロールして生きるための取扱い方法をどのように作っているのか聞いていきたいと思います。是非ご覧ください!

\こちらの記事でも学校苦手な子どもが苦しい気持ちから抜け出せる方法をご紹介!/

執筆者:すずき真菜
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)

子どもが自分の強みを生かして巣立っていくことができる方法を多数お届けしています!

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