子どもを回復させるには“母の心”をまず整える!専門家でもサポートが必要だった~わが子の不登校を経験した心理士さんインタビュー後編~

わが子が不登校になった時、心配や不安で心がいっぱいになってしまうと思います。でも、そんな時こそ、お母さん自身の気持ちを整えることを意識してください。子どもにサポートが必要なように、お母さん自身も相談できる場所を持っていることが大切です。

1.わが子が不登校に…専門家でも相談できる場所は必要だった!

「専門家でも子どもの不登校には心が揺れる!再登校を後押ししたのは〇〇だった」からの続きです。

子どもが学校に行けなくなったり、不安定になると、母親の心も揺さぶられます。

子どものためには母親の気持ちが安定していることが大切とわかっていても、色々なことが起こる中で、気持ちを常に穏やかに保つことは簡単なことではありません。

臨床心理士という立場で、息子さんの不登校や精神的な不調を経験されたアキさんが、どのように自分自身の心を整えていたのかについてお話してくださいました。

―――息子さんの不登校を経験される中で、ご自分の気持ちを保つためにどのようなことをされましたか?

「息子が不登校中は、いつこれが終わるんだろう…という先が見えない不安を体験しました。自分自身の気持ちの面でも、良い時とダメな時のアップダウンが激しくて…。

子どもに強迫行為が出たときは、はじめは子どもを治そうという気持ちでいっぱいだったけれど、一旦その気持ちを手放して『まずは自分を整えよう』という考えにシフトしました。

私は夫婦の問題で悩んでいることもあったので仕事上の先輩にカウンセリングを受けることを勧められて通っていました。

息子の不登校で悩んでいた時もそこで相談をしていて、忙しい中でも自分がカウンセリングに行く時間は確保するようにしていました。

息子の学校のことでは、通級の先生や補助員の先生のことを私も信頼していたので、その先生に様子を聞いたり相談をしていましたね。

常に自分が相談できる場所を持つようにしていた感じです。」

―――相談できる場所を意識して持たれていたんですね。
子どもに問題が起きるとお母さんって責められたり、トラブル対応で精神的に疲れ切ってしまうことが多いですよね。

「そうですよね。学校にも子どもに問題が起こると『母親のせい』と捉えてしまうような風潮がまだ残っているのを感じていて…。

母親を悪者にするのではなくて、受けとめて一緒にやっていこう、という姿勢がないとうまくいかないと思います。

学校の先生に通級の研修をする時も『お母さんをまず支えてください』と話すこともあります。」

―――どこかに相談したいと思ってもカウンセリングなどは、どうしても行きづらく感じられるお母さんも多いと思います。
もっと気楽に相談できる場所があると良いですよね。

「それがまさに今後私がやりたいなと思っていることで、将来的にはお母さん達が気軽に相談できる場をつくっていきたいと考えています。

一度知り合いの方で産後うつのような状態になってしまった方がいて、オンラインで相談にのったことがありました。

その時、保健センターなど相談できる場所をいくつか紹介したら『このぐらいで相談しても良いのかわからなかった』とおっしゃっていたんです。

相談を受ける立場からすると、このぐらいのことで…と思わないで、どんなことでも相談してくれて構わない、つらい気持ちがわかるからこそ話してくれてありがとう、と思います。」

♦ポイント解説

アキさんのお話を伺っていて、心理士の方は自分の心もうまくコントロールできるというイメージがあったので、カウンセリングを受けられていたというのを少し意外に感じてしまいました。

しかし専門家だからこそ、母親の心をケアする時間を持つことの重要性がわかっていらっしゃって、実践されていたのだと思います。

専門家でも難しい子育て中の母親の気持ちのコントロール、時には誰かに力を貸してもらうのも大切なことかもしれません。

ご自身の息子さんの不登校を経験され、お仕事にどのような変化があったのかについてもお聞きしました。

2.辛さがわかるからこそ、お母さん達の気持ちに寄り添っていきたい

―――子どもの発達のことで悩むお母さんが多いですが、そんなお母さん達にアドバイス頂けますか?

「私は実は、発達障害の診断名ってあまり気にしていなくて。その子が何につまづいているかを丁寧に見ていくことが大切だと思っています。

たとえば、うちの息子は学校の先生から『漢字が書けない』と言われて。

漢字が書けないということだけを見ると学習障害⁉と思ってしまいますが、うちの子の場合は、漢字を書いて間違っていた時に×をつけられるのがイヤで書かなかったみたいで…。

子どものできる・できないも気持ちに左右されるところが大きいので、診断名にとらわれずに、その子が何に困っているのかを注意深くみていくことが大切なのではないでしょうか?」

―――お仕事でお母さん達から受ける相談にはどのようなものが多いですか?

「通級の相談では『通級に行ったらいじめられないですか?』とお母さんからよく質問をされるのですが、合わない環境に子どもを居させ続ける方が実は問題なんですよね。

その子がどのような環境であれば、安心して過ごせるのかを考えてあげることが大切だと思います。

あとは『学校から通級に行くように言われたんですが、なんでうちの子が行かないといけないんですか?』とか。

本来だったら、学校側が通級を勧めるのであれば、その子を通級に通わせてあげることで最終的にどのような状態にしてあげたいのか、ゴールのイメージを持って、それを保護者にも伝えて共有しないといけないのですが…。

それができていないことが課題にあるなと感じています。」

―――お仕事ではお母さんの相談に乗る立場だと思いますが、息子さんの不登校を経験をしたことで、ご自身の仕事にも変化がありましたか?

「自分が実際に経験してみて、わかったことがたくさんありました。

心理士だから、不登校のセオリーもわかっている、学校へ行くことがゴールじゃないのもわかっている、でもお母さん達がこんなに先が見えない辛い思いをしているんだということを体験して初めて知りました。

学校からの電話に怯えるきもち、特別な支援を受けるきもち、不登校の親のきもち、子どもに医療機関を受診させる時のきもち、薬を飲ませる覚悟を決めるきもち…
色んな気持ちを体験して支援者としての立場からではなく、経験者として共感できるようになったと思います。

お仕事の先輩から『絶対にその経験は、仕事をしていく上で財産になる。カウンセラーだからって、冷静に相手の話を聞くだけじゃなくて、時に共感して涙する、そんなことがあってもいいじゃない?』と言われて。

自分の体験にも意味があると思えるようになりました。

今思うと、不登校は、なるべくしてなったような気がします。不登校は、息子が出せたヘルプのサインだったんだと思います。

気持ちに寄り添い続けたことで、親子関係はとても良くなりました。

家では、勉強に対してうるさく言ったり、ゲームに制限をかけたりもしていないですね。宿題も、朝やって行くことが多いです。

それでも、友達と遊ぶ時間、ゲームをしてリフレッシュする時間、勉強する時間、と自分でメリハリをつけて生活できるようになってきています。

ちょうど、息子の不登校を経験した直後にスクールカウンセラーの仕事を始めることが決まっていて。

もしかしたらこの体験は自分がスクールカウンセラーの仕事をする上で必要だったから体験したことだったのかもしれない、とも思うようになりました。」

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息子さんの不登校を経験し、悩みながら、信頼できる人に相談しながら、乗り越え、その体験をお仕事に生かそうとされているアキさん。

アキさんのように悩んでいるお母さんに共感してくれる専門職の方が一人でも増えると心強いですね。

3.サポートを受けることを、ためらわないで!母親も支えられながら乗り越えていく

アキさんの、発達障害の診断がある場合でも診断名に捉われずに子どもが何に困っているのかを丁寧に見ていくことが大切だというお話にハッとしました。

診断名ではなく“その子が何につまづいているのかに気づくこと”、その姿勢が子どもの気持ちに寄り添うことにもつながっていくのだと思います。

子どもに合う環境を見極めていく上で、支援を受けることもあるでしょう。時には、医療の力を借りることもあるかもしれません。

“普通”から外れてしまうように思えて、その決断をすることは母親にとっては勇気が要ることもあります。

しかし、環境やコンディションを整えてあげることは、その子が自信を持って自分の力を発揮していく上で、大切なことです。

アキさんは「サポートを受けるのは悪いことではない」とおっしゃっていました。それは、子どもであっても母親であっても同じではないでしょうか。

自分のことは後回し、子どもの問題も一人で抱えがちなお母さんが多いと思います。

しかし、母親の状態は、子どもの心に影響を与えます。

相談できる場所を持っていることが母親の心の安定につながり、結果として子どもにもプラスの影響がある、そう考えれば「思い切って相談してみよう」と思えるかもしれません。

子どもが色々な人との関わりの中で大きくなるように、母親もまた信頼できる人とつながり、支えてもらいながら、課題を乗り越え成長していくのだと思います。

執筆者:滝麻里
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)

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