1.発達障害の子がすぐに怒る理由
うちの子すぐに怒って、いつも友達と喧嘩になってばっかり。
何を言ってもすぐに怒るから嫌になっちゃう。なんでこんなことで怒るのか理解できない!
もっと冷静になって、コミュニケーション上手になってほしい。
そんな悩みを持つお母さん、なぜお子さんがすぐに怒ると思いますか?
実は、すぐに怒る発達障害の傾向があるお子さんは、自分でも怒っている理由がわからずに困っているんです。
「怒る」という感情の表現方法は早めに発達しやすく、瞬発力があります。
なので、何か気になる刺激が入ってきた時に「怒る」ということは、簡単にできるんですね。
でも、その怒りの中には、刺激に対する「気持ち」が隠されています。
例えば、欲しいものが手に入らなくて「悲しい」とか、やりたいことをやめないといけなくて「残念」とか、寒かったり暑かったりして「辛い」などです。
幼児のころは、誰でもその隠された気持ちがわからず、「怒り」で表現をします。
ですが、だんだんと成長するに従い、しっかり言葉で自分の気持ちを伝えるコミュニケーションができるようになっていきます。
ですが、発達障害の傾向を持つ子は、この隠された自分の気持ちに気付く力が弱いのです。
なので、いつまでたっても怒りで気持ちを表現してしまい、「すぐ怒る子」という風にみられてしまうんですね。
また、発達障害の傾向がある子は、怒られたり、失敗する経験を繰り返していることが多く、周りからの刺激に対して敏感になっていることがあります。自分を守るために、周りの刺激を排除しようとするんですね。
すると、ほかの子どもが反応しないような声掛けなどでも、すぐに「怒り」で反応をしてしまいます。
このような理由から、発達障害の傾向がある子は、定型発達の子よりもすぐに怒りやすくなってしまうのです。
2.怒ってばかりではコミュニケーションに問題が出ます!
まわりの定型発達の子たちは、だんだん自分の気持ちを自分で理解する力がついて、言葉で気持ちを表現するコミュニケーションができるようになっていきます。
すると発達障害の傾向を持つ子にはどういうことが起きてくるのか。
小学校高学年くらいになると、周りの子たちはほとんどの子が、言葉で上手にコミュニケーションをとっています。その中に発達障害の傾向が持つ子が「怒り」で表現を続けていたら、どうなると思いますか?
そうです、怒りで表現する子は「乱暴な子」「すぐ怒って面倒な子」「ワガママの子」と見られて、だんだん集団の中で問題児扱いされて疎外されてしまいます。
しかも、周りから見ると怒っているだけなので、発達障害の子ども自身が持つ、本当の気持ちには気づかれないままになって、どんどん誤解されてしまいます。
本当は急に教室に入ってこられてびっくりしただけなのに、「なんだよお前!」と怒ってしまい、「怖い子」「乱暴な子」と思われた。
本当は一緒に走って遊びたかっただけなのに、ボール遊びになって悲しくて「ひどい!」とののしってしまった。
こうして発達障害の子のコミュニケーションの問題は、集団生活での問題に直結していくのです。
3.すぐに怒る息子に疲れる日々
これらのコミュニケーションの問題、全部うちの息子の話です。
注意欠陥多動性障害(ADHD)と自閉症スペクトラム(ASD)の傾向を持つ息子は、自分の気持ちに気付く力が弱いうえに、周りからの刺激に衝動的に反応してしまうので、なんでもすぐに怒っていました。
片付けてと言っただけで怒る
友達にやりたい遊びを嫌がられて怒る
暑いと怒る、疲れると怒る
正直、なんて面倒な子なんだろうと、息子とのやり取りに疲れていました。
怒る息子にさらに「なんで怒るの?」と怒ってしまい、余計にエスカレートさせてしまうことも多々ありました。
学校でも同じように怒ってしまうので、どうにかしないと!と思い、アンガーマネジメントの本を一緒に見てみましたが、どうにもうまくいかない日々。
結局息子自身が、自分で自分の気持ちを理解する力が弱いので、うまくいかないのも当たり前でした。
ですが、私が息子の脳の発達の問題を理解したおかげで、息子は自分の気持ちを言葉で表現する力を身につけることができたんです!
4.実践したい、親子の会話でコミュニケーション力をアップする方法
発達障害の傾向がある子どもがコミュニケーション力をアップさせるには、まず、子ども自身が自分がなんで怒っているのかを知ることから始まります。
発達障害の傾向がある子どもは、自分の気持ちを自分で理解することが苦手です。
ですが、小さいころから一緒に過ごしているお母さんは、子どもの本当の気持ちに気付くことができます。
あ、今これが嫌だったんだな。
暑くてイライラしてるんだな。
などなど、子どもが自分ではわからない気持ちを、お母さんたちは知っているんですね。
そのお母さんが知っている、お子さんの本当の気持ちを、お子さんに伝えてあげましょう!
具体的な方法はこうです。
まず、お子さんが怒っているときは、何も言わずにお子さんの気持ちが落ちつくのを待ちましょう。
怒っているときに話しかけても、発達障害の子どもの耳にはうまく情報が入りません。それどころか刺激を排除しようと反発されてしまうので、何も言わない、何もしないことが鉄則です!
お子さんが落ち着いたところで、なぜお子さんが怒ったのか、「○〇だったんだね」と本当の気持ちに共感する声掛けをしましょう!
もしかしたら「わかんない」というお子さんもいるかもしれません。そんなときは、「そういう気持ちを○○っていうんだよ」とお子さんが気付いていない感情に名前を付けてあげます。
息子の例を挙げてみますね。
塾から帰宅して疲れてイライラしている息子。親からの「お風呂入ってきな~」の声掛けに「わかってるよ!」と怒り出します。
そんなときに、イライラが続いていないのを確認し「疲れたよね~、お疲れ様。」と声をかけると、息子は「疲れてイライラしている自分」に気が付くことができます。
すると同じ状況になった時に、自分から「つかれた~、ちょっと待って~」と言葉でコミュニケーションをとることができるようになりました。
このように、発達障害の傾向のある子どもの「怒り」の中にあるいろんな感情を、親子の会話の中で気づかせてあげることを続けると、言葉で伝えられる感情が増えていき、なんでも怒って表現をすることが減っていきます。
子どもが自分の気持ちを言葉で伝えるコミュニケーションをできるようになると、コミュニケーションでの問題が減っていきます。
集団でのコミュニケーションでは、さらに相手の気持ちを考える力が必要ですが、まずは自分の気持ちを言葉で表現する力がつくと、親子や友達と良好なコミュニケーションをとる第一歩ができます。
まずは、子ども自身が自分の感情を知り、表現できるようになること。親子の会話で取り入れてみてください!
執筆者:やなぎ みほ
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
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