1.不登校の子どもが抱えやすい二次障害
みなさんは二次障害という言葉を聞いたことがありますか?
二次障害とは、発達障害の一次障害を原因として、周囲からの理解を得づらい環境で、繰り返し注意されたり、不安な経験をしたりすることで『どうせ○○できない』『自分は何をやってもうまくいかない』などと二次的に自己肯定感が大きく下がってしまうことで起こる状態です。
二次障害には大きく2つに分かれます。
1つ目は自分に対するいら立ちや精神的な葛藤が、自分に向けた形で現れる症状です。
具体的には不安、抑うつ、引きこもり、対人恐怖、心身症、依存症などを言います。
2つ目は精神的な葛藤などが他者に向けられる形で現れる症状です。
具体的には反抗や暴力、家出、ときには非行などの反社会的な行動として現れていきます。
発達障害や発達グレーゾーンにある人すべてが二次障害を発症するわけではありません。
しかし、ネガティブな体験の積み重ねや、いじめなどの大きな出来事の体験、ストレスへの対処がうまくいかなかった場合などに発症しやすくなります。
二次障害が起こると、元々持っていた困難さに加えて、問題はより複雑になり、本人も家族も辛い状況から抜け出すのに、大変な労力と時間が必要になってしまいます。
次からは吃音・HSC (人一倍敏感な子)の特性のある息子が視線恐怖という二次障害から不登校に至った経過をお伝えします。
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2.吃音・HSCの特性から視線恐怖で不登校になった息子
我が家には現在中1の息子がいます。
小学1年生の頃から人からどう見られているか、自分の言動や態度が相手を不快にさせていないか、とHSCの気質から人の雰囲気にとても敏感で、ささいなことでよく傷ついていました。
小学校2年生進級時、担任の先生が変わったことによる不安から吃音が悪化し、教室で思うように言葉が出なくなり、みんなに一斉に見られた、友達にからかわれた…ことで教室に入れなくなりました。
そして、教室に入れなくなった息子の背中を先生がグイグイ押したことも大きな恐怖体験となり、頭痛・腹痛・吐き気などの身体症状が出るようになり、学校に行けなくなりました。
当初は人に会うことを嫌がり『誰にも見られたくない』と視線恐怖を伴う不登校が息子の二次障害となって現れました。
2年間完全不登校の後、学校で勉強したい意欲が出ましたが、生徒に見られることを嫌がる視線恐怖が強く残っているため、生徒から見られない環境を作り、小4から別室登校が始まりました。
最初は学校に入るのもビクビクしており、不安と緊張の中、まずは別室に入れることから始め、スモールステップで滞在時間が徐々に長くなり、小6の時点では6時間目まで安心して学校で過ごせるようになりました。
息子は学校の理解と協力に恵まれ、空いている先生に個別で勉強を教えてもらったり、タブレットを使ったオンライン授業の参加が可能になったり、小学校生活は充実したものになりました。
生徒の視線を避ければ学校に通える息子に対し、中学校進学に向けたポイントは安心できる環境作りであり、そのために先生の理解と協力が欠かせないことを実感していました。
次に視線恐怖という二次障害のある息子が中学校進学に当たり、先生方と一緒に考えた環境作りのポイントをお伝えします。
3.中学校進学に向けて安心できる環境作りのポイント
◆早めの見学で情報収集
息子は視覚優位で、初めてのことには不安が強くなるタイプなので、目で見てしっかり理解し、安心できるようにしたいと思いました。
夏休み中に私が一人で中学校を見学に行き、中学校の先生に校内を案内してもらいました。
その時に写真撮影の許可を頂き、正面玄関、普通級のクラス、別室登校の部屋の写真を数枚撮りました。
その後、写真を基に息子には1クラスの人数は現在の小学校の息子のクラスの倍になること、1年生クラスは4階にあること、1階にある別室登校の部屋はパーテーションで仕切られた勉強スペースがあること、などを説明しました。
息子は『普通クラスの人数多いなぁ。別室登校の部屋にはどんな人がいるのだろう』と不安はありながらも中学校の様子をイメージできた様子でした。
そして、冬休み前に息子と一緒に再び中学校に見学に行き、正面玄関から普通級のクラスや、別室登校の部屋を見て回りました。
息子は『中学校は普通のクラスに入りたい』という希望を持っており、まずは普通クラスに入る動線を確認した後、人に見られずに通える別室登校の部屋にも足を運びました。
視覚から入る情報の方がイメージしやすい息子にとって、事前に見学することは中学校入学に見通しが持てる安心材料になりました。
◆小学校と中学校の先生と情報交換による連携
中学校進学に向けて、小学校で培った息子の安心できる環境について、中学校の先生と共有できるよう、情報交換をお願いしました。
小学校からは息子と関わりのあった3名の先生、中学校からは特別支援コーディネーターの先生1名、私も含めて5人で中学校に向けた話し合いを行いました。
私の方でA4の紙1枚に小学校の経過、息子の特性、息子の気持ち、中学校に向けた親の要望をまとめた資料を用意しました。
私からは息子は普通クラスを希望しているが、視線恐怖がまだ強く残っているので、別室登校が濃厚であることを伝えました。
小学校の先生方は可能な限り、中学校でも個別支援やタブレット授業など息子に合った学習支援を引き続き行ってほしい、と言ってくださいました。
中学校の先生からは『以前にお母さんや息子さんに会い、状況は分かっていますので、教員配置が決まった時点で、できる限りの支援を考えていきますね』と前向きな返事をもらえました。
息子を取り巻く先生方の連携もスムーズに行われ、中学校生活も明るい希望が見えてきました。
◆新学期前!担任が決まる4月初めに面談予約!
4月の担任が決まった時点での面談は小学校の時から春休み中にしており、中学校でも同様に受け入れてもらえました。
二次障害を抱える息子には、本人の意思に反して集団に放り込む、などの荒治療は傷つき体験を増やす危険性があるため、吃音や視線恐怖の特性を伝え、やって欲しくない対応について担任の先生に説明する必要がありました。
新しい環境では丁寧に信頼関係を作りながら、息子のペースを尊重してもらうことが何より重要であることを、担任の先生にはしっかり伝えるようにしました。
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4.視線恐怖克服⁉中学校に入学して、別人のような息子の変化
入学式当日、『緊張するなぁ』と言いながらスムーズに準備を行った息子。
中学校につくとこちらが拍子抜けするほど、すーっと新入生の親子の中に入っていき、入学式も何も問題なく、終えることができました。
その後も一番苦手としていた人前での自己紹介や日直などもこなし、バトミントン部に入部し、友達もでき、すっかり充実した中学校生活を送っています。
入学前に相談していた中学校の先生達からも『息子さんはいつも楽しそうに過ごしていますよ』とお墨付きをもらい、通級を利用できるように準備をしていましたが、一度も利用せず卒業となりました。
いかがでしたか?
二次障害に苦しみ不登校であってもその子のタイミングで大きく動き出す時がきます。
大きくジャンプするためにはしっかりしゃがみこむ必要があります。
息子をみて感じたことは小学校時代はスモールステップを積み重ねながら自信というエネルギーを蓄えていました。
不登校を経験した子どもには小さなできた!の積み重ねが自信を育む上でとても大切であり、先生達の協力もあって、安心できる環境で望む未来を手にすることができました。
二次障害があると時間がかかることも多いのですが、希望を見出し、一歩ずつ前に進んでいきましょう!
執筆者:みしまひかり
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
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