1.思春期の不登校、これって起立性調節障害⁉
皆さんのお子さんの中には、次のような症状を訴えるお子さんはいませんか?
・朝、起きられないけど、午後からは元気
・立ち上がると、めまいがする
・風呂上がりに倒れる
・腹痛がつづく
思春期のお子さんで、こんな症状があったら要注意です!それは、起立性調節障害かもしれません。
起立性調節障害って、知っていますか?自律神経系の異常で、立ち上がったときに血圧や心拍数などの調節がうまくいかずに、めまいや動機、失神などが起きる病気です。
正常な状態では、立ち上がったときに重力によって血液が下半身に移動すると、血圧が下がるので、それを防ぐために交感神経を興奮させて下半身の血管を収縮させ、心臓へ戻る血液量を増やし、血圧を保ちます。
しかし、自律神経の機能が低下した結果、このメカニズムが働かず、血圧が低下し脳血流量が減少するため、様々な症状が現れるのです。
起立性調節障害って、体の病気であるというだけではありません。もうひとつ、見逃してはいけない大事な要因があります。それは、精神的な不安や緊張などのストレスが関係するという点です。
2. 弱った体の回復が、動き出すため第一歩!
我が家の場合、それは息子が中学1年の冬休み明けに起こりました。早朝5時ごろ、お腹を抱えて私のいる寝室に来ると、「気持ち悪い」といいながら突然嘔吐したのです。
その後、自分の部屋でしばらく休んでいましたが、腹痛は続き、その日は欠席することにしました。午後から少し回復した様子の息子は食事を食べ、夜までゆっくり過ごしました。「明日の準備、もうできたから、早めに寝る!」そう言って、その日は床につきました。私も、明日は行けるだろうと思い、安心して眠りました。
翌朝、起こしに行くと、またお腹を抱えて苦しそうな表情でベッドで丸くなっています。声をかけても目を開けません。体をゆすっても、時々意識がうっすらあるようで「お腹が痛い」といいますが、また目を閉じて意識を失ってしまうのです。5分おきに体をゆすりますが、息子は目を開けることも、体を起こすこともできません。
また午後になると起きてきては、「明日には行けそう。」と話し、そして朝になると腹痛を訴え、無理やり起こそうとしても、意識がもうろうとしてはっきりしないという日々が続きました。
明らかに普通ではないため、病院を受診すると、診断は「起立性調節障害」でした。
病院では、昇圧剤や漢方を処方されました。薬は処方されたものの、どうやってこの思春期の息子と過ごしたらいいか最初はわかりませんでした。
決して学校や勉強のことなどプレッシャーとなるような余計な声掛けは控え、ストレスを与えないように、かつ毎日のリズムは崩さないように接しなくてはなりませんでした。
夫は夫で帰宅時間を1時間早くして、毎日のように近くの温泉に息子を連れていきました。男同士の裸の付き合いを、息子は心から楽しみにしているようでした。
それに、リラックスした雰囲気の中で交わされる会話は、お互いの心を通わせていっているようでもありました。こうして、少しずつですが体は回復していきました。起立性調節障害の発症から、2カ月の月日がたっていました。
3. 心の回復のために試した「まきびし作戦」!
体が元気になったのは喜ばしいことではありました。ですが、体がよくなったところで息子は一向に学校に通おうとはしませんでした。
まだ、心が十分に回復していなかったのです。では、心の回復ってどうやってしてあげたらいいのでしょう?
そんな時、思いついたのが「まきびし作戦」です!そう、昔、忍者が使っていた道具です。忍者の場合は、追っ手から逃れるためにばらまくのですが、私の場合は、とにかく息子の好きそうな「情報」をばらまくのです。
息子はもともと好奇心旺盛なタイプ。「今でこそ元気を失って部屋で過ごしているけど、小さい頃からとにかく興味のあることに恐れず飛び込んでいく性格。なにか面白そうなことに食いついてくれるかも!」。
そして、私はさりげなくいろいろな情報をばらまき始めます。それと同時に、夫と話し合った結果、息子にタブレット端末を自由に使える権利をあげました。もちろん、夜遅くまで使うのは起立性調節障害を悪化させるので、制限しました。
それまで、子ども携帯すら持たせず、ゲームも1日1時間までと制限していた我が家にとっては大きな決断でした。
そうすると、どうでしょう!私がばらまいた情報と、息子が自ら取りに行った情報で少しずつ息子が動き出し、根付づくりや、牧場通いなど、学校に行っていたらできないような面白いことに没頭していきました。
心の回復のためには、自分の本当にやりたいこと、好きなことをするのがポイントです。好きなことだと自然と没頭し、行動することができます。そして、脳は行動すると発達するというのが、私が学んだ発達科学コミュニケーションの基本の考えです。
おうちでの親子のコミュニケーションで動き出す力を取りもどし、「好き」なことを通して行動しながら、心の回復を図ってみませんか?
執筆者:大下 真世
(発達科学コミュニケーショントレーナー)