1.どうして発達障害ADHDの子どもはやる気を失いやすいのか?
お子さんの学年が上がるにつれて、「うちの子、小学校入学当初はがんばっていたのに、いつの間にかやる気がなくなってしまったな。」と感じてはいませんか?
発達障害グレーゾーンの子どもは、周りの対応が原因でやる気をなくしてしまうことが多いんです。
発達障害 注意欠如多動性障害(ADHD)タイプの我が息子も、学年が上がるにつれ、やる気をなくして行った一人です。
発達障害 ADHDタイプは、楽しいことが大好き!
自分が楽しいと思うことは、際限なくやり続けられる過集中という特性があります。
このADHDタイプの子は、学校での勉強のように受け身の姿勢で臨むものは、退屈に感じるため苦手になりやすい。
だから、ADHDタイプの息子の学校生活では、次のようなことが度々ありました。
ただ座って話を聞くだけの授業は、つまらない。
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つまらないから、授業に集中できなくて、先生に注意される。(注意欠如という発達障害の特性も絡む)
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先生から報告の電話を受けた母親に怒られる。
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学校がつまらない上に注意されるので、本人の中での学校の重要度が低くなる。
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学校が重要でないので、授業に必要なものを忘れても平気。(忘れ物しやすいことも特性の1つ)
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忘れ物をしたことを先生に注意される。
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先生から忘れ物が多いことを電話報告され、また母親に怒られる。
このように、注意され、怒られる日々を過ごした息子は自己肯定感が下がり、学年が上がるごとに、やる気がなくなっていったのです。
小学5年生で発達障害と診断されるまで、特性を理解していなかった私は、怒ってやる気を出させようと、先生にまで「怒ってください」と頼むなど、今思うと誤った対応をしてしまっていました。
そして、息子は「どうせできない」が口癖となり、テレビやゲームに没頭するようになっていきました。
このままでは、頑張れない大人になってしまうのでは…と、息子の将来に不安を感じた私は、「小さい頃のように、息子にやる気を取り戻してほしい」そんな望みを持ち、発達科学コミュニケーション(発コミュ)で学んだコミュニケーションを実践していったのです。
2.今「やる気」をなくさせるわけにはいかない理由
皆さんの子育てにおける目標は何ですか?
私の目標は「子どもの自律」です。
「自律」=「自分をコントロールすること」
自分で「やる気」がコントロール出来たら、人生楽しく過ごせると思いませんか?
以前、インターネットで「モチベーションに関する意識調査」の結果から「仕事の満足度と意欲の関係」を調べた記事を目にしました。
記事には、
・「仕事の満足度の高さ」と「意欲の高さ」は、かなり強く関係している。
・「意欲の高さ」は、「モチベーションの高さ」と置き換えられる。
とありました。
そして、とても興味深かったのは、仕事に「とても不満」「不満」「どちらかといえば不満」に感じている人の中に、わずかながらも「意欲が高い」つまり「モチベーションが高い」人がいるという調査結果だったのです。
その人たちは、
・仕事はやらないと派…仕事は仕事と考えている
・職場を変えたい派…自分の力で職場を変化させたい
・やりがいがある派…仕事内容にやりがいを感じる
・成長できる派…自分のスキルを高めたい
と考えている人たちだそうです。
(「出典:「インテージ 知る Gallery」2020年7月20日公開記事」)
まだ先のことで気が早いと思われるかもしれませんが、将来、子どもが仕事に就くことをイメージして、今のうちから、必要な力を授けたいと思いませんか?
上記の調査結果のように、大人になると、たとえ望まない仕事でも、自分をコントロールして取り組む必要がある場面もでてきますよね。
発達障害ADHDタイプの息子には、将来、自分が楽しいと思える仕事をしてほしいと願っています。
でも、もしかしたら、自分がやりたいと思っている仕事に就けないかもしれません。
息子には、そんな状況でもやりがいを見出し、自分を成長させたいと思う「モチベーションが高い人」を目指す大人になってほしい!
将来に備えるために、今、「やる気」をなくさせるわけにはいかないのです!
では、この「モチベーション」を高めるマインドを、どのように子どもに授ければいいのでしょうか?
3.将来に役立つ自己効力感の授け方
発達障害ADHDタイプの子どもたちの「やる気」を引き出す重要キーワードは「モチベーション」です。
モチベーションとは、「人が何か行うときの原因または目的意識」のこと。
人は、目的意識によって行動した結果、目的が達成されたときに満足感を得ます。
そして、この「モチベーション」に大きく影響するのが「自己効力感」の高さと言われているんです。
◆自己効力感の授けるためのアプローチ法
自己効力感とは、「自分にもできる」「自分ならうまくできる」といったポジティブな感情のことです。
私は、自己効力感を授けるためのアプローチ法4つを実践しました。
1.子どもが少し頑張ればできる目標を設定して、成功体験を積ませる。
2.「○○(子どもの好きな芸能人など)さんも、小学生のころ△△だったんだって」と
あこがれのあの人が出来たのだから自分もできると思わせる。
3.「○○(お子さん)ならできるよ!」と励ます。
4.「緊張のドキドキ」を「ワクワクするね!」「興奮してきたね!」などと生理的現象をプラスに変換する声掛け。
これまで、発達障害ADHDタイプの息子に叱責ばかりだった対応を、上記のような自己効力感を授けるコミュニケーションに変えたのです。
◆我が家の自己効力感を授けるコミュニケーション実践例
「自己効力感」を授けるために、息子が「まぁ得意かな、やってみてもいいかな」と思うことでアプローチしようと考えました。
発達障害ADHDタイプの息子は、基本的には体を動かすことは好き。
ただ、一人ではなく、誰かと一緒じゃないと嫌なタイプ。
そんな息子を観察していると、主人の筋トレに付き合い、一緒に筋トレしているではありませんか。
そこで、母である私と一緒に、筋トレに挑戦する中で、自己効力感を授けるコミュニケーションを実践することにしました。
ただ、自己肯定感を授けることが目的なので、筋トレのモットーは楽しく!
我が家が実践した筋トレは、ダンベルや腹筋など、自分を追い込む筋トレではありません。
ぶら下がり健康器の下に、バランスボールを置き、トランポリンのように跳ねたりしながら、ぶら下がったりする楽しめる筋トレです。
そして、一番大事にしたことは、息子が考えたメニューを一緒にこなすということ。
そうすると、自分で目標を設定したことになるというわけです。
たとえば、
・バランスボールの上で30回跳ねる
・バランスボールでジャンプし、ぶら下がり健康器に飛び移り3秒キープ
など、息子が面白そうなメニューを考え、実践していきました。
メニューの中には私にできないものもあり、自然と息子が「お母さんはできないけど自分はできる」と自信がつくシステム。
次第に、私ができないメニューに対し、私の動きを見たうえで「こうしたらできるんじゃない?」と提案してくれるようになりました。
また、ちょっと回数が多かったかなと思うメニューに対しては、「○○(息子)ならできるよ!」と励ますことで、頑張ってこなすようになっていったのです。
終わるときに、「やっぱり体動かすと気持ちいいよね!」と伝えることで、筋トレの効果を気持ちの面で実感し、次もまたやろうと思えるようにしました。
こんな風に、まずは発達障害ADHDタイプの息子の得意なところからアプローチした結果、少しずつ「自分はできる!」という自己効力感が備わってきたようです。
すると、勉強への姿勢にも変化が出てきました!
今まで、授業内容について質問しても、「どこをやっているか分からない」と言っていた息子が、「今は○○をやっている」と言えるように。
そして、「今やってる算数の○○のところが良く分からないんだよね」と言うようにまで成長。
分からないところを分かっているというのは自分のことが理解できている証拠で、対策するべき次への一手を持ったということ。
今の私は、この一手を逃さず、次なる成長につなげていきたいと意気込んでいます!
発達障害の子どもは、たとえ遠回りでも、ポイントを押さえ、丁寧に関わっていけば、ゆっくりでも、必ず成長すると実感しています。
将来、「やる気」に満ちた人生を送れるように、丁寧に「自己効力感」を授けていきましょう♪
執筆者:福井 縁
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
発達障害グレーゾーンの子どもに自信を授けるコミュニケーションを多数紹介!