1.親子で発達障害・自閉症スペクトラムタイプ、コロナ禍で不安がいっぱい
息子は現在高1で、昨年の3月は中学3年生の最後の日々をほんの少しだけ残したタイミングで、突然一斉休校の指示が出されました。
生活は一変!子どもたちはもちろん、私たち保護者も本当にびっくりしましたね。
さらに自粛生活が思いもよらない長期戦になり、新学年も例年とは違う形でのスタートになりました。
もうすぐコロナが流行り出してから1年。
再度関東では緊急事態宣言が発令され、例年とは違うスタートで新年が始まりました。
政府は今回、一斉休校はしない方針だそうです。
将来を担う子どもたちの教育の機会を奪わないため都立の学校では分散登校が決定していたり、大学共通試験は通常通り実施、小・中・高校受験は各校で様々な対応、そして十分な感染対策をした上で、試験は実施するとしています。
でも、子どもの将来この先どうなるのだろう?いつまでコロナは続くのだろう?
そんな「見通しがつかない」「いつもと違う」状況には、大人でも不安を感じます。
特に発達障害・自閉症スペクトラム障害(ASD)アスペルガータイプの子どもたちは、私たちが思う以上にストレスを感じているはずです。
私と息子は、親子でASDの傾向があり、いつもと違う状況はとても疲れます。
「ASDは空気が読めない」とよく言われますが、実は「空気を読みすぎて身動きが取れなくなってしまう敏感タイプ」もいるのです。私は、まさにそのタイプ。
無意識に周りの空気や人の表情や感情を「必要以上に」読んだり、様々なことから「必要以上の」情報を読み取って疲れ果ててしまうのです。
また、発達凸凹の傾向があると、自分を守るために情報をあえてネガティブに捉え、身構えてしまうところがあります。
ニュース番組から流れてくる溢れるほどの情報や、キャスターの緊迫した表情や声色で、私は頭も心もいっぱいになってしまうのです。
一方息子は、気になることを見つけたらそのことについて徹底的に調べるなど、こだわりを見せるタイプです。
神経質で繊細なので滅入ってしまわないように、あまりニュースを見せたくないのですが、 「今の状況を知らないで過ごす方が怖い」と言って、情報を仕入れようとします。
「先が見えない」「自分が置かれた状況がわからない」のが嫌で、「目の前の景色が変わることが耐えられないんだ」とも話していました。
ソーシャルディスタンスに、マスク姿。世界中の景色が変わってしまいました。それが辛いのだそうです。
そして不安でざわつく心をおしゃべりで落ち着けたいのか、ストレスが溜まってくると、興味のある分野についてのマニアックな話を早口でたくさん話してくるのです。
2.特性により世の中のいつもと違う状況に対応できない
コロナ禍により社会の変化を目の当たりにして、特に「変化に敏感で苦手」な、アスペルガー傾向の強い子どもたちにとっては、ストレスを感じる場面が多くなりました。
・生真面目でこだわりが強く、融通がきかない
・抽象的なことや目の前にないものをイメージしたり、理解することが苦手
・視覚、聴覚、味覚、嗅覚、など様々な感覚の受け取り方に歪みがある
・ネガティブな思考で頭がいっぱいになってしまう
このような発達の特性を持つ子どもたち。
普段と違う、こんな様子はありませんか?
・こだわりが強く現れている
・極端におしゃべりが多くなった
・極端におしゃべりが少なくなった
・いつもよりとても早口になった
・いつもより独り言が増えた
・食欲がない
・落ち着きがなく、不安げに体を動かしている、癖が強く出ている
それらは不安が強くなり自分でうまく対応できないストレスの表れかもしれません。
3.変化が苦手なアスペルガー傾向の強い子どもに安心を手渡す
それでは、不安の強い子ども達を、どのようにサポートしてあげたらいいでしょうか?
困りごと別に考えていきましょう。
◆イレギュラーに混乱する場合
「いつもと違う」状況に、極度に興奮したり、不安になったり。これは、「先の見通しがつかないことが不安で苦手だから」です。
できる限りいつもの習慣を守って、規則正しい生活をさせることを心がけてください。
落ち着いた気持ちで過ごせるでしょう。
こだわりが強く出てくることがあるかもしれませんが、これも不安な心を落ち着かせるためにしていることが多いです。
こだわりを止めさせたり、否定せずに「それが好きなのね。」「興味があるのね。」と共感し、寄り添うことで、安心させてあげましょう。
不安が強いときは、お子さんが嫌がらなければ、ギューッと抱きしめてあげたり、マッサージをしてあげたり、きっとお母さんのぬくもりで心からホッとできるでしょう。
お母さんとのスキンシップはASDだけではなく、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子どもたちにも有効です。
もし、夜眠れない日が続いているなら、掛け布団を苦しくない程度に重めに調節してあげてみてください。
“強め”のハグ、と同じような効果のある“重め”の掛け布団がポイントです。
強めの刺激を与えてあげると、例えばマッサージの圧迫でほっとリラックスできるように、幸せホルモンが分泌されて、安心できるのだそうです。
また、不安からいつもの常同行動(手をひらひらさせる、体を揺するなど)が強く出ている場合。
これは、その感覚があることで、安心感を得るために起こります。
もしも気になるようであれば、別のことに置きかえてみてはいかがでしょうか。
ポケットに好きな手触りのものを入れておいたり、椅子の脚に切れ込みを入れたテニスボールを被せて椅子揺らしやすくしてみたりなど。
また、大手通販サイトで「フィジット玩具」と検索してみてください。刺激を得ることで、お子さんの不安を沈め、集中力を高める効果も期待できます。
*フィジット=fidget=英語で「そわそわ」「ムズムズ」の意味
◆抽象的なことを理解することが苦手な場合
コロナウイルスは、ヒーロー番組に出てくる悪党のように、目で見ることができません。
ASD・アスペルガータイプの子どもたちは、抽象的なもの、目に見えないもの、目の前にないものをイメージしたり理解するのが苦手です。
コロナウイルスは「見えないからこそ怖い」と思っているかもしれません。
怖がっている様子の時には、子ども用に優しい明るいトーンで描かれた、絵や図などで説明してあげるとよいですね。
また「きちんと予防対策をすれば、避けることができるよ」と教えてあげることで、心が落ち着きます。
◆視覚、聴覚が敏感なお子さんの場合
視覚や聴覚が過敏なお子さんは、ニュースの出演者の緊迫した表情や声色から不安を大きくしてしまう可能性があります。
不安の強いお子さんには、あまりニュースを見せない方がいいかもしれませんね。
私の息子は、「今の状況を知らない方が怖い」と言います。
そのような場合は、正確であまり深刻ではない雰囲気の番組を選んで、ほどほどの量で見せてあげるようにしましょう。
◆ネガティブな思考でいっぱいになってしまう場合
「いつもと違う」状況の中で不安が大きくなり、頭の中でネガティブな思考がグルグルとものすごい勢いで回ってしまう。
そのために混乱し、身動きが取れなくなってしまうタイプのお子さんもいます。
そのような時は、ぜひお母さんがお子さんのカウンセラーになり、頭の中の混乱を言葉で表現することで、思考の整理をするのを手伝ってあげてください。
人は「大丈夫?」と聞かれると、反射的に「大丈夫だよ。」と答えてしまがちです。
まずは「どうしたの?」「心や頭にモヤモヤがあるのなら、よかったら話を聞くよ。」と声をかけ、「大丈夫?」とは聞かないようにしています。
無理に聞き出そうとせず、本人が話したくなるタイミングをリラックスできる環境の中で待ちましょう。
私は、一緒におやつを食べながらおしゃべりをしたり、ゴロンと横になって話を聞いたりします。
お母さんが話を否定せずに共感したり、お子さんの言葉をそのまま受け止めながら話を最後まで聞いてあげることで、きっと落ち着きを取り戻せます。
最後に1つ、お母さんにお伝えしたい大切なことがあります。
まだまだ緊張の日々が続くことが予想されます。
繊細なお子さんのサポートをするのは、とても大切なことですが、支える側の心理的負担も大きいもの。
まずは、お母さんが疲れ果ててしまわないように、どうか休息や睡眠をしっかりとって、ご自分の心と体の健康にも気をつけてくださいね!
笑顔がご自分とお子さんの心を救ってくれます。
そして一緒にこの難局を乗り越えていきましょう!
我慢の先には、きっと希望が待っていてくれるはずです。
執筆者:飯島なち
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
「いつもと違う」が苦手なASDタイプの子をサポートする方法を提案しています。