1.不登校の子どもたち、その後はどうしているの?
私には、小学3年生の4月から不登校になった注意欠陥多動性障害(ADHD)の娘がいます。
子どもが不登校になった初めの頃は、どうしたら学校に行くようになるのかとやっきになって、勉強の遅れを取り戻すため家庭教師を頼んだり、フリースクールを見学に行ったりと色々子どもに働きかけたりしました。
しかし子どもは「やらない」「やりたくない」「行かない」と言います。
「えーこのままずっと家にいるの?」
と思うとさらに不登校のその後の将来が心配になってきました。
・この先、勉強をしたくなったときに不登校でも行ける学校はあるの?
・不登校だったお子さんはどのような高校に行っているの?または通っていたの?
・不登校だった人は、社会人になってどんな職についているの?
・子どもの得意を伸ばせる学校・居場所はあるの?
など。私は発達障害の娘の将来を考えたときに、過去には不登校だったけれども、高校に行った方や社会人になって働いている方はどうしているのだろうと思うようになりました。
ちょうど住んでいる地域に不登校親の会があることを知り、こちらだったら不登校のその後がわかるかもしれないと代表(Iさん)にお話をうかがいました。
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2.子どもに合う学校とは
Iさんのお子さんは不登校ではありませんでしたが、親の会の代表としてお話を聞くことで、いろいろな気づきや自分自身の子育て中に救われたことがあるそうです。
お子さんは3人(現在は成人されてます)いらっしゃいます。
下のお子さんは、不登校ではありませんでしたが、高校時代に公立高校を中退して、定時制高校に編入されたそうです。
定時制高校は、私の娘が発達障害の特性である朝が苦手で、好きなことには過集中のため、好きなことができる時間を持てるということから、選択肢の一つとして考えていました。
先に、定時制高校についてお話をうかがってみました。
定時制高校というと、昭和世代はちょっとやんちゃなお子さんが通うイメージを持つ方もいらっしゃると思いますが、Iさんはどうだったのでしょうか。
―――お子さんが、高校を中退されて、定時制高校に編入することに反対はされなかったのですか?
「不登校の親御さんの話を聞いてきて、親は子どもが決めた生き方を否定するべきではないと感じていました。 ですので、自分が選択したのだからと特に、反対はしませんでした。」
―――お子さんが定時制高校に行って良かった点を教えてください。
「どこでも生きていけるような子ではありますが、やはり子どもの世界と大人の世界をつなぐ場所として、常識的なことや、いろいろな人との接し方を学ぶ場であったのかと思います。バンドも学校ではじめたようですし。」
―――定時制高校に編入して良かった点を教えてください。(Iさんのお子さんに聞いていただきました)
「いろんな年齢、職種の同級生がいて幅広い意見や見方があって自分の視野を広げられたと思っています。
今でも付き合いがありますし、定時制で知り合った友人が起業した会社で働いています。職場も見つけやすかったかな。
学校の授業前に時間があって、働くことができるので、スキルアップも普通高校の子よりはしやすいですよ。
空いている時間に働かなくても資格の勉強にあてることも可能です。」
―――
普通高校の場合は、同級生は同じ年齢でバイトもしてはいけないなどの制約がありますが、定時制高校は同級生であっても、同じ年齢とは限らず、働きながら学んでいる人もいたりと、多様な人たちとの交流ができますね。
私は、高校中退し、定時制に編入されたお子さんを「子どもが決めた生き方を否定しない」という考えのもと本当に否定しなかったIさんを見習おうと思いました。
そして、あらためて子どもであっても1人の人として接することの大切さを教えていただきました。
3. 親の考えをシフトチェンジ
―――Iさんは以前よりも不登校の人数が多くなってきていることを、どのように感じていらっしゃいますか?
「一人一人の子どもに向き合うことが大事だと思っています。
人は、自分のことをわかってもらえるように説明することが難しいです。
理解しあうことが家族の基本なのですが、学校へ行けなくなった子は、家族を含め人とつながれず自分の中にこもってしまうことが多いようです。
『時間をかけて気持ちをほどいていく』ことが大事だと思います。
子どもは子ども同士でなければ学べないものもあり、人は1人では生きていけないので、人とのつながり方を模索してほしいです。
今の学校教育で悲鳴をあげている子どもたちがいるのをなんとかしなければいけないと思うし、制度は改善していくことも考える必要がありますね。」
―――親御さんが不登校を受け入れられたお子さんは、どうなっていきましたか?
「行かなくてもいいんだ、と思ったら、お子さんは安心して暮らせるようになる、と言われています。それまでは時間がかかりますが…。
毎日苦しくてもそんなふうにはなかなか思えないのでしょうね。
苦しまなくていいんだ、と思ったらいつか子どもは動き出すと言われています。」
―――不登校の本人は親にどのようにしてほしいと思っていると感じますか?
「まずは、『そっとしておいてもらいたい』と思うようです。
でも、存在そのものは肯定しているサインは必要ですよね。本人が一番つらいんですから。」
―――
学校制度はすぐに変えることはできないけれども、親の考えを変えることはできます。
親の会にお話に来られる方は、考えを変えようと、不登校を受け入れていらっしゃる方が多いようです。
私は、本人よりも、親の自分が苦しいと思っていましたが、実は本人が一番困ったり、苦しんでいたんだとわかるまで、時間がかかりました。
本人が一番つらいんだと思ったら、接し方も変えることができるようになったのです。
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4.勉強はいつでも取り戻せます
昨年からのコロナの影響で勉強の遅れが問題視されていますが、不登校中は誰もが学校の勉強には遅れている状態です。
ここからは勉強や進路などについて伺ってみました。
―――私の娘は不登校で、今まったく勉強していませんが、元不登校のお子さん達の進学はどうされているのでしょうか?
「中学卒業後、高校卒業資格が必要になったり、大学進学希望になったときは、通信制高校を利用した人もいます。
小学校3年生くらいまでの学力がついている子は、その気になればいくらでも学校教育に戻ることはできます。
たとえ戻らなくても、学びは一生。学ぶことは学校ばかりではありませんしね。」
―――就職はどうされているのでしょうか?
「単位制高校から大学に入り教師になった人、教師になりたくて大学に入った人、介護職をしている人、定時制高校に進学し、事務職に就いている人など、その子によって様々な職業に就いてますよ。
どんな風に生きていきたいかを考える子が多いかな。
あと、不登校もなく順調に育っている子よりも挫折しにくい子が多いように思います。
高校は所属していないと不安で保護者が高校に入れても、本人がその気になっていなければ挫折感が残るだけだし、がんばろうと思っても体力や気持ちがついていかないこともあります。
個性は一生ものなので、自分との折り合いがつかなくて苦労することはあるでしょうね。
『本人が決める』ということが大事だと思います。」
―――進学するために勉強しよう!など、動き出そうとするきっかけはなんだと思いますか?
「本人に聞いてもあまり記憶にないらしいんですよ。それまで家族が、待っていてくれたことがありがたかったのではないでしょうか。
でも、動き出しても少しずつです。親も焦らないことですね。
人との出会いがきっかけになった子もいますよ。」
―――外に向かって動き出せるようにするには、親はどのようにサポートしたらいいと思いますか?
「その子によりますが、もう学校にもどってほしいという家族の気持ちを感じなくなり、家にいてもいいんだよ、と親は心底思っていると感じられるようになってから。
更に時間がたって、消えてしまいたいという本人の気持ちが落ち着いて自分の人生をどうしていくのか、と考えられるようになってからなので、待つしかないように思います。
家の中の誰かが『あなたは肯定されている』というサインを送り続けることが大事かと思います。
会話の少ない子どもには、自分のことを自発的に話してくれるようになるまで、毎日話しかけることを逃げないでほしい」
―――
その子にとって動き出すタイミングがあります。
それをじっと待つ周りの大人はやきもきしてしまうのですが、その間にできることそれが「肯定的な関り」です。
肯定されているサインを送り続けることで、不登校のその後の将来に子どもたちは自信をもって動き出すようになれるのですね。
5.子どもの可能性が見えてくる
―――Iさん、最後に不登校でお悩みの親御さんにメッセージをお願いします。
「親御さんが元気になって、お友だちづきあいもして、前向きに過ごしていただいたらいいと思いますよ。
お子さんと普通の家族の会話を続けて、お子さんの良いところを見つけてあげて、お手伝いをしてもらったら、ありがとうと言える。
そういう良好な親子関係だったらお子さんが救われると思います。」
―――
Iさんのお話を聞いて、家族がその子の存在を認めてあげること、子どもの勉強の遅れや、不登校のその後の将来のことよりも、今の親子関係を大切にすることが一番大事だということがわかりました。
そして「子どもの将来を決めるのは子どもである」ということも、改めて教えていただきました。
私の娘はまだ10歳で、自分で将来を考えられるようになるには色々な経験が必要だと思います。
発達障害の特性もありますし、本人も望んでいないので、学校に戻すことは今のところ考えていません。
家で好きなことをやるなかで、自分の得意なことを知ったり、それを伸ばしていったり、こういう学び方が娘には合っているのだと思えるようになり、可能性が見えるようになってきました。
今まで発達障害の特性もあるし、娘が不登校でその後の将来はどうなるのかな?と不安に思っていましたが、それは娘が決めることですね。
今は娘が迷っているときに「どうしたらいいと思う?」と相談でき、「こういうところもあるらしいよ」と強制ではなく提案できるような親でいようと思っています。
不登校のお子さんの将来で悩まれているお母さん。
家族が学校に行っていないことを否定せず、当たり前を肯定し続けていたら、子どもが自分で考え、動き出すようになります。
それまで、もう少し待ってみませんか?
お子さんが「学校に行かない」となったときの対応方法は、こちらで解説しています。ぜひ併せてお読みください!
執筆者:渡辺くるり
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
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