外出嫌いな子どもはひきこもりがちで少しでも外に出て欲しい…と思い悩んでいませんか?発達障害の子どもは安心できるお家から出たがらないこともしばしば。どうしたら外出できるようになるのか、子どもの心理を交えてお伝えしていきます。
【目次】
1.楽しそうに誘っても外出できなかった過去
2 外出に興味を示さないのは「想像できない」から
◆楽しそう!という感情にならない
◆お母さんの誘いを圧力のように捉えてしまう
3 外出嫌いな子どもの心に響く誘い方
1.楽しそうに誘っても外出できなかった過去
外出嫌いな子どもはお家にひきこもりがちになりますよね。お家でゲームばかりする姿を見て、ちょっとでも外に出て欲しい…と思い悩んでいませんか?
特に、自閉症スペクトラム傾向のある子どもは不安が強く、ひきこもりを解決するには「上手な誘い方」がポイントなんです。
おでかけに行くときに、どんなふうに子どもを誘っていますか?
「お母さんはここに行ってみたいな」
「楽しそうだし行ってみない?」
「美味しそうなものもあるね」
こんな誘い方では、発達障害の中でも自閉症スペクトラムタイプの子どもは全然興味を示してくれず、苦労されているお母さんも多いのではないでしょうか。
わが家の息子は発達障害・自閉症スペクトラムの診断があります。
不登校が長く続いているため、外出の機会が減ってさらにひきこもりがちです。
近場のお出かけでも普段からお留守番を選ぶことが多く、外出の機会を作ることに苦労していました。
外に出て成功体験を積むことが成長には欠かせないとわかっていても、外出嫌いな子どもをどうやって誘えばいいのかわからなかったのです。
そんな中、コロナもあけたのでそろそろ家族旅行に行きたい!という話が持ち上がりました。
ガイドブックを見ながらワクワクした気持ちで計画をしてみたことがあります。
けれど、全くうまくいきませんでした。
息子にガイドブックを渡しても、パラパラっとめくっただけで 「行きたいとこは別になかった!」
動画を見せて、「ここ良さそうじゃない?」と聞いても「いや、特に。」
素っ気ない反応に「行きたくないなら仕方がないか…。」と、わたしもいつしか旅行に行くことは諦めてしまいました。
ところが、そんな外出嫌いな子どもの心に響く誘い方を、先日ついに発見しました!
ずっと子育てが大変すぎて、旅行なんて考えられませんでしたが、なんと6年ぶりに家族水入らずの県外旅行に行くことができたのです。
この記事では、外出嫌いな子どもの脳の特性やと心理と、自閉症スペクトラムの子どもの上手な誘い方をお伝えしますね。
2.外出に興味を示さないのは「想像できない」から
◆楽しそう!という感情にならない
観光地の写真や動画を見れば「楽しそう!」という感情が湧いてくるものですが、その感情のチカラが弱いのが自閉症スペクトラムの特徴。
見通しが立たないことがとても苦手で、はじめての場所、何が起こるかわからない状況は楽しみより、不安が勝ってしまうのです。
そのため、はじめての場所におでかけに行くときは、本や動画を見せて事前に様子を伝えたり、スケジュールを紙に書いて視覚的に予定を伝えたりすると安心できると言われています。
けれど、そもそも興味の幅が狭いうえに、ポジティブな感情が湧きにくいという脳の特性を持っているので、ガイドブックや動画だけでは心惹かれないのです。
本や動画の情報と実体験がまだ結びついていないので、行ってみたいと思えるほどに興味をそそることができません。
つまり、外出に誘う1つ目のポイントは、「それ、楽しそう!」「行ってみてもいいかな」という感情を湧きあがらせるような働きかけ!ということになります。
◆お母さんの誘いを圧力のように捉えてしまう
また、自閉症スペクトラムの子どもは、「行ってみようよ!やってみようよ!」と誘われると、お母さんの楽しそうな様子から、自分に期待されている感じを強く受け取ります。
この楽しそうな期待感を子どもは圧力のように捉えてしまうことがあるんだと気が付きました。
定型発達の子どもは、ママが楽しそうに誘えばワクワクが伝染し、やってみたい!おもしろそう!と感じることが多いでしょう。
けれど、不安の強い自閉症スペクトラムの子どもは、楽しそうに誘われても「行っても楽しくないかもしれない」というネガティブな感情が優位になります。
ワクワクが伝染するのではなく、楽しくなかったらどうしよう…という不安な気持ちがどうしても先に出て来てしまうのです。
これは脳の特性なので、ワガママなどではありません。心配や不安な気持ちになると、大人でも尻込みしてしまいますよね。
そして、心の中がモヤモヤとしていても子ども自身はなかなかそれを言語化できません。
自分の気持ちを捉えて言葉にするのが苦手なのも、自閉症スペクトラムの特性のひとつです。
ですので、ひとこと「いや」「特に興味ない」という素っ気ない言葉になってしまうのです。
子どもに圧力や過度な期待感を持たせない誘い方が、2つ目のポイントになります。
いくら誘っても、応じてくれない子どもの心理はこんな状態だったのですね。
3.外出嫌いな子どもの心に響く誘い方
外出の中でも、宿泊をともなう旅行となると親子ともに特にハードルが高いものですよね。
そんな旅行に連れ出すことに成功した秘訣は、私の体験談を楽しそうに語ることでした。
たまたまガイドブックを見ながら私の昔話をしたときのことです。
「お母さんが若いとき、ここに行ってすごく楽しかったよ、美味しいものもたくさん食べたんだよ」
そのときの臨場感や、お店のレトロな雰囲気などが懐かしくなり、つい息子に語ったことがありました。
そうすると、ガイドブックを渡して「行きたい場所ない?」と声をかけたときには全然興味を示さなかった場所なのに「そこに行ってみたい!」と言ったのです。
ひきこもりがちな息子からの「行きたい!」という言葉は、感動するほど嬉しいものでした。
すぐに無理のないスケジュールで家族旅行に行くことにしました。
無理のないスケジュールとは
・行き先を決めるときは子どもと楽しく相談して、予定を詰めこみすぎない
・子どもが好きなメニューのお昼ご飯やおやつを調べておく
・お母さんかお父さんがだいたいの地理を把握していて、公共交通機関の乗り換えなどに迷わない
・子どもが歩き疲れることがないペースや距離を把握する
・暑さや寒さ対策を万全にする
・疲れて帰りたいと言ったときには長居せず帰るという選択肢も考えておく
幼い頃以来、6年ぶりの旅行でしたが、疲れすぎないスケジュールと、味覚で五感を癒しパワーチャージする計画で、成功体験にすることが叶いました。
この一度だけではなく、その後も私の体験談と交えて昔話をした場所へは、行ってみたい!と言うことが多くなったため、意識して楽しかった体験と絡めて誘っています。
こうして、身近な人の楽しかった体験談は自閉症スペクトラムのひきこもりがちな子どもの心に響くのだと気が付きました。
お母さんやお父さんが行ったことがある場所なら、たとえはじめての場所でも安心感を感じやすいので、「行ってみたい!」という感情を湧きあがらせることができるのですね。
楽しかった経験を語ることで、第三者の写真や動画を見せるよりもポジティブな感情が伝わりやすくなるため、お母さんの過度な期待や圧力を感じにくい誘い方にもなります。
一度行ってみて「旅行は楽しい!お泊りするのも楽しい!」という記憶ができれば、「また旅行に行きたい!」と行ける場所は増えていきます。
そうして、電車に乗ったり、美味しいものを食べたり、旅先でたくさんの経験が増えることで、「旅行は楽しい」と記憶に残ります。
そんなポジティブな記憶がたくさん増えていくことで、まだ行ったことのない場所にも少しずつ行けるようになっていくのです。
子どもの脳は、楽しい体験を重ねることでどんどん発達していきます。
子どもからの行ってみたい!を引き出して、楽しいおでかけ体験を作りましょう。
わが家ももっと子どもの行動力が加速するよう、日々試行錯誤しながらチャレンジしていきます。
▼楽しく脳を育てる方法を毎日配信中です
執筆者:作倉 帆香
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)