発達障害ASDの子どもが失敗を恐れたり、負けることが許せず、自分を過剰に責めてしまうことに悩んでいませんか?この記事では、白黒思考のあるASDの子どもが思い通りの結果を得られず失敗した時、親子の会話でネガティブ思考を前向きに変える対応法をご紹介します。
【目次】
1.ASDの息子は失敗を恐れる切り替えベタなタイプ!
2.失敗に弱い子が極端な考え方にこだわる理由
3.白黒思考をゆるめて自信を守る
4.ネガティブな思い込みを前向きに切り替える会話術
1.ASDの息子は失敗を恐れる切り替えベタなタイプ!
こだわりが強いASDのお子さんの、こんな様子に困っているママはいませんか?
・ゲームに負けるとこの世の終わりのように、泣いたり怒ったりする
・失敗しそうなことは最初からチャレンジしない
・ちょっとしたミスが許せなくて何度もやり直す
私の息子は注意欠陥多動性障害(ADHD)と自閉症スペクトラム(ASD)を併せ持つ小学生3年生です。
負けることが許せず、一度負けると次に進めないほど悔しがる。負けるのが嫌でチャレンジしないこともありました。
発達科学コミュニケーションを学び、このような困りごとは随分やわらぎました。
そんな息子が、つい最近「ミニ四駆のレースで一位になりたい!」「負けたら終わりだ!」と一番へのこだわりを発揮しました。
試験や試合で一番を目指し、勝ちを取りに行くのは素晴らしいことです。
もともと負けず嫌いな性格で、負けた悔しさを次に向かうエネルギーに転換できるのなら申し分ないですよね。
ですが、発達特性があって、
・失敗を過剰に恐れる
・負けることが許せない
・負けた自分に価値がないと感じる
こんな風に、極端な考え方が生きづらさにつながる場合は、失敗しても自信をなくさない関わりをしてあげることが大切です。
失敗を恐れる息子がミニ四駆のレースで思い通りの結果を残せなかった時、「自分はもうダメだ!」という思い込みをどのように切り替えたのか。
私の体験をお伝えしたいと思います。
2.失敗に弱い子が極端な白黒思考をする理由
ASDの発達特性を持つ子どもが極端に失敗を恐れ、うまくできない自分を責めるのはどうしてでしょう?
◆①思い込みが強い思考のクセ
ASDやアスペルガーの特性を持つ子どもは、物事を良いか悪いか、0か100かと、グレーゾーンのない二極に捉える白黒思考や完璧主義の特性を持っています。
こだわりの強さから1つの考えに囚われやすく、うまくできないことを失敗と思い込んで他の考えを受け入れにくい傾向があります。
例えば、ゲームに負けた場合は努力が全て無駄だったと思い込み、練習したことで上達した、と柔軟に考えることができません。
「失敗した自分はダメだ!」と出来事ではなく自分自身を責めてしまい、自尊心が傷つくことを避けて失敗を過度に恐れたり、負けを認めなかったりします。
◆②想定外に弱い
ASDの子どもは見通しを持つことが苦手で、予期せぬ出来事に臨機応変に対応できません。
失敗したらどうなるのか、どう対処すべきか想像できない不安から、完璧にこだわることがあります。
失敗すると混乱し、気持ちをコントロールすることが難しくなるため切り替えに時間がかかります。
このように、発達障害の子どもが失敗を恐れ、極端な白黒思考をする背景には、特有の思考のクセと想定外の出来事への対応の難しさがあるのです。
3.白黒思考をゆるめて自信を守る
親は「失敗も成長の糧にして欲しい!」と考えますが、ASDの失敗を恐れる子どもが自信を失うと、物事にチャレンジする意欲を根本から失くしてしまうかもしれません。
脳は行動することで発達します。失敗を避けて行動しなくなるのは避けたいですよね。
そこで私は、息子の自信を守るために、極端なこだわりをやわらげ、本人が受け入れられる実力に応じた目標を立てるサポートをしました。
これまでのミニ四駆レース大会では、参加するだけで花丸、次は予選通過、と徐々に目標を上げてきました。
現在の息子の実力は、ベスト4ならば可能性ゼロではないというレベルです。
まず「頑張って練習してきたから、一番になれたらいいよね!」と共感から会話をスタートします。
「レースって、電池の状態やブレーキの効き具合で勝ったり負けたりすることもあるよね。」と、想定外のことが起こりうる可能性を伝え、「一番だといいけど、この前ベスト8だったから、ベスト4に入れたらすごいと思うな」と、今回の目標を提案しました。
「そうだね。一番だといいな。せめてベスト4に入れるといいな」と、息子は話をしながら理解を示し、「一番になるために、まずベスト4を目指す」という視点を持つことができました。
こんな風に状況や情報を伝えながら見通しを持たせ、本人が納得できる目標を一緒に考えていくと良いと思います。
4.ネガティブな思い込みを前向きに切り替える会話術
子どもが失敗して落ち込んだら、うまく気持ちを切り替えられるよう適切に対応することが大事です。
息子がレースで1位になれなかった時、私は以下の2つの対応を行いました。
◆①カウンセリングの会話
レース結果は前回同様8位でした。
負けた後、しばらく一人で過ごす時間を与えました。
・承諾を得る:
一人で会場の隅にいる息子を離れたところで見守り、戻ってきたら、「よく戻ってきたね」「今話してもいい?」と承諾を得てから会話を始めました。
・保留、受容:
「最後までよく頑張ったね。」と言うと、しばらく黙っているので、何も言わず受け止めました。
・気持ちの理解、共感:
「負けたのが悔しかった」とポツポツ話し始めたので、「そうか、悔しかったんだね」
「(レース大会に)来なければよかった」「そう思うくらい、悔しいんだね」と息子のせりふを繰り返したり、
「いっそ、予選落ちしていたらよかった」という極端な発言にも、「そうか。勝ち残るほうが負けた時にもっと辛いんだね」と悔しい気持ちを代弁するようにしました。
分かってもらえたことで、息子は肩の力が抜けて表情が少し緩まりました。
◆②事実を褒める
気持ちが落ち着いたタイミングで、
・「話してくれてありがとう」と、気持ちを伝えてくれたことを褒める
・「今日はコースアウトしなかったよね。前よりうまくなった証拠だね。」と、努力して上達したポイントを認める
・勝ち負けではなく参加できた記念としてご褒美をあげる
・第三者に褒めてもらう
このように、できている事実に注目して肯定する対応を心がけました。
怒りや不安を感じたり、落ち込んだりする出来事があった時、立ち止まって別の角度から見てみることで考え方が変わります。
客観的な事実や第三者の褒め言葉は、白か黒かの極端な思考のある子どもが素直に受け入れやすく、思い込みをやわらげる効果を発揮します。
息子の場合、大人のレース仲間から、
「今日はぼくも負けて悔しいんだよ。〇〇くんと同じ。」「マシンが安定して走りが良くなってきてるから、また一緒に頑張ろう!」
とねぎらいの言葉をもらえたことが特に心に響いたようでした。
事実を肯定してもらうことで、
「一番じゃなくても、全部がダメなわけじゃなかったんだ!」
と、結果が思い通りにならなくても、良かったところを認めることができました。
帰り道で、「さっきは気持ち切替えられたね!」と伝えると、
「うん。今日は頑張ったし、それで負けたのは仕方がないから、次はもっと速くなってベスト4に入るようにする!」
と前向きな発言をしてくれました。
ASDの失敗を恐れる子どもが思い通りの結果にならなかった時は、
・カウンセリングの会話
・できている事実を褒める
2つの対応で、思い込みをやわらげ、気持ちを切り替えてあげてください。
失敗しても大丈夫と思うことができれば、自信を持って次のチャレンジに向かっていけますよ。
ご参考になれば嬉しいです!
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執筆者:小川陽子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)