怒られると黙る子どもに、困っていませんか?発達障害ASDの特性がある場合、「静かなパニック」によるフリーズで言葉が出ないのかもしれません。この記事では、ASDの子が怒られると固まって喋れなくなる理由と、おうちでできる対応策をお伝えします。
【目次】
1.怒られると黙る!喋れなくなる子にお手上げ!
2.発達障害ASDの子どもが怒られると固まる理由
◆過敏なためショックを受けやすい
◆恐怖から自分を守っている
◆「静かなパニック」で言葉が出ない
3.ASDの子がフリーズしなくなる対応法
①距離を置く
②カウンセリングの会話
③ふだんから肯定する
4. 言葉が出るようになった子どもの変化と成長
1.怒られると黙る!喋れなくなる子にお手上げ!
怒られると黙る子どもの対応に、悩んでいませんか?
してはいけないことをしたり、誰かに嫌な思いをさせたりした場合、子どもをきちんと叱ることが大切だと考えますよね。
ところが、怒られると黙ってしまい、
・無表情。話しかけても反応がない。
・座り込んだり、立ち尽くしたりして動かない。
・「嫌だ」など拒否の言葉しか言わない。
小学生ともなれば、きちんとワケを話してほしいのに、「なんで喋れないの⁉︎」と腹が立ちます。
こちらが一方的に話しかけるだけの会話に、つい「また黙るの?」と責めるような口調になってしまうこともあるのではないでしょうか。
私は、よく預かって面倒を見ている自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)傾向を持つ、当時小学3年生の子どもに対して、このような思いをしていました。
・友達に馬鹿にされて腹を立て、石をぶつけた
・いとこのおもちゃを触っていたら、うっかり壊してしまった
・ 療育に行く約束をすっぽかして遊びに行く
など、怒られたり嫌なことがあったりすると、殻にこもって石のように固まってしまうことがありました。
「拗ねてるの?怒ってるの?無視しているの?」と、頭の中は疑問でいっぱい。
どうしたら会話ができるのか分からず、お手上げ状態でした。
2.発達障害ASDの子どもが怒られると固まる理由
発達障害ASDの子どもが怒られると黙るのは、しばしば「フリーズ」状態に陥るためです。これには、ASDならではの特性と環境が関係します。
フリーズとは、強い恐怖やストレスに直面した時に一時的に思考が停止し、身体が動かなくなる状態のことです。
この状態はASDの「静かなパニック」とも呼ばれ、言葉が出なくなります。
フリーズは子どもが圧倒的な感情に対処するための防衛メカニズムなので、適切な対応が必要です。
◆①過敏なためショックを受けやすい
感覚が敏感なASDの子にとって、怖い顔をした大人に怒られることは強い衝撃となるため、ショックで固まってしまうことがあります。
また、ASD・アスペルガー傾向の子は、怒られると自分自身が否定されたように感じやすいです。
例えば、ママにねだったものを「今はダメよ」と言われただけでも、拒否された、攻撃されたと捉えることがあります。
この時に話しかけられても頭に入らず、聞いていない、無視しているような印象を相手に与えてしまいます。
◆②恐怖から自分を守っている
発達障害の子どもは、特性ゆえに当たり前のことをうまくできず、怒られる経験を重ねています。
特に、ASDの子は自分や相手の気持ち、状況を理解できず、空気の読めない言動をしがちですよね。
早とちりや勘違いで「嫌なことをされた」と受け取ったり、「友達に嫌われている」と誤解したりします。
このように出来事の捉え方が独特なので、大人に「理由を言ってごらん」と言われて素直に自分の考えを口にしても、「それは違うんじゃない」と否定されることが多く、そのたびに傷ついているのです。
怒られると過去の嫌な体験を思い出して(フラッシュバック)フリーズしたり、傷つくことから自分を守るために、話したくても喋れないことがあります。
◆③「静かなパニック」で言葉が出ない
ASDの子どもは見通しを立てることが苦手で、不安が強いです。
脳の特性から情報処理に時間がかかり、出来事の整理が苦手なため、「どうして?」と矢継ぎ早に質問されると思考が追いつきません。
さらに、自分の気持ちを言葉にするのが苦手なので、うまく言葉が出ません。
「一体、何をどう言えばいいの⁉︎」「対応を間違えたらどうしよう」と混乱し、静かなパニックを起こすことがあります。
怒られると喋れなくなる子どもは、このように心理的ストレスからパニックに陥ってフリーズしたり、自己防衛のために黙り込んだりするのです。
繰り返し怒られる環境にいると、過敏さが増し、特性である考える力と気持ちを言葉にする力が伸び悩むので、怒られると黙ることが習慣化します。
こんな悪循環を断ち切って、子どもがスムーズに気持ちを話せるようになるには、どう対応すれば良いのでしょう?
3.ASDの子がフリーズしなくなる対応法
私が実際にやってみて、効果を感じた対応をご紹介します。
◆ ①距離を置く
子どもに話しかけても反応がないと自分の気持ちも昂ってしまうため、少しの間、時間や距離を置きます。
「今はちょっとお話できないみたいだから、少し時間を置いてから話そう。」と、見通しを伝えます。
その際、必ず、怒っていないことを伝えることが大切です。
「私は怒っていないよ。〇〇から話を聞いて、一緒に整理しよう。」と伝えて子どもを安心させます。
お互いにクールダウンできたら、お茶でも飲もうかと誘ったり、隣に座って穏やかに話しかけてみます。
私の場合、5〜10分程度、離れて見守ったり、安全を確保して部屋を出たりしました。
嫌がらない場合は、背中をさするなどスキンシップを取り入れてもいいと思います。
表情が和らいだら、緊張が解けて話しても良いタイミングの目安になります。
◆②カウンセリングの会話
出来事を整理するのは子どもにとって難しい作業です。ぜひ大人が一緒にやってあげましょう。
落ち着いた環境で、以下のようにカウンセラー対応で話を聞きます。
・出来事の把握:何が起きたのか
・相手の気持ち:相手はどんな気持ちか
・行動の理由:なぜやってしまったのか
・改善策:どうすればよかったのか
質問形式でやさしく尋ね、穏やかに相槌をします。
発達障害の特性を持つ子どもはふだんから独特のものの見方をしていることがあります。
たとえ突拍子のない解釈でも、常識をいったん脇に置いて、否定せずに受け入れることがうまくやる秘訣です。(保留・受容)
気持ちを言葉にするのが苦手な子には、「それは、悲しいね。」「悔しかったね。」などと、大人が察して言い当ててください。
モヤモヤした感情に名前をつけることで、子どもの気持ちが分かります。
子どもは、気持ちを理解して共感してもらえるので安心します。(理解・共感)
すると、自分から話をするようになります。
保留、受容、気持ちの理解と共感のステップを踏むことで、子どもは
「思ったことを話しても大丈夫なんだ!」
という安心感と自信を持つことができます。
その前に、そもそも子どもを怒る必要があることなのか、いま一度考えてみることも大切です。
◆③ふだんから肯定する
これは最も重要なポイントです。
叱られることの多い発達障害の子どもは自信をなくしています。
普段から「できていることだけに注目して、できていないことはスルーする」という対応が効果的です。
困りごとの多い子に褒めるところなんてない!と思うかもしれませんが、難しいことはありません。
「お帰り!」
「手を洗ったんだね」
「プリント出してくれてありがとう!」
こんな風に、本人がしていることをそのまま実況中継するだけでも褒めて認めることになります。
特に、「ありがとう!」は年齢・特性を問わず有効なので、ぜひ毎日伝えてあげてくださいね。
4. フリーズしなくなった子どもの変化と成長
このような対応を続けると、怒られると黙って固まる子どもに変化が見られました。
・数か月で固まることが減り、1年ほどでほとんどなくなった。
・叱る場面で、だんだん会話ができるようになっていった。
・おかげで、先生に本人の考えを伝えて学校でトラブルを防ぐ対応ができた。
・謝れるようになり、人間関係がスムーズになった。
何よりも、日々できていることに注目し続けることでトラブルの数自体が目に見えて減ったことが嬉しかったです!
いかがですか?
怒られると黙る、フリーズするASDの子は、
・距離を置く
・カウンセリングの会話
・ふだんから肯定する
この3つの対応で安心感を育むことが大切です。
普段からいいところを探して伝えてあげると、やがて心を開いてくれる雪解けの時がきます。
子どもに合った対応を知り、焦らずに変化と成長を見守っていきたいですね。
育てにくいASDっ子の対応がラクになる!今日から役立つ子育て情報をお届けします。
執筆者:小川陽子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)