子どもを連れてスーパーに買い物に行きたいのに「イヤだ」と言われて困っていませんか?ASD傾向の子どもは感覚過敏という特性からスーパーでの買い物は人一倍疲れてしまいます。感覚過敏があっても楽しく買い物ができるようになる2つの工夫をお伝えします。
【目次】
1.買い物が嫌い!スーパーに行ってくれない息子に困る日々
2.ASD傾向の子が買い物で疲れる理由は感覚過敏だから
3.感覚過敏の子がスーパーでの買い物を楽しめる2つの工夫
①スーパーの陳列順に買い物リストを作って子どもと共有する
②子どもにお役目を与える
4.息子がノリノリでお買い物をリードしてくれる現在
1.買い物が嫌い!スーパーに行ってくれない息子に困る日々
子どもが小さいと一緒に買い物に行く機会は多いですよね。しかし、お子さんを「スーパーにお買い物に行こう」と誘っても「イヤだ」と言われて困ることはありませんか?
実はお子さんにASD(自閉症スペクトラム)傾向があると、感覚過敏が原因でスーパーでの買い物は人一倍疲れてしまいます。
感覚過敏について知り、ちょっとした工夫をすることでスーパーでの買い物を楽しい時間にすることが可能です。
わが家にはASD傾向がある小学校2年生の息子がいます。
息子は幼稚園の頃からスーパーでの買い物が嫌いです。わたしは息子を買い物に誘う度に憂鬱な気持ちになっていました。
「スーパーにお買い物に行こう♪」と明るく誘っても「イヤだ」と動かないからです。
理由を聞くと、「時間がかかるからイヤだ」「遊びたいからイヤだ」と言います。
「10分で終わらせるよ」「30分遊んでから行くのはどう?」など説得を試みますが、なかなか首を縦に振りません。
一緒に行かなくていいように、なるべく息子が幼稚園や学校に行っている間に買い物を済ませるようにしていましたができない時もあります。
また、息子には偏食があり食べられるものが決まっています。
その食材をうっかり切らしている時などはどうしても買い物に行かなければなりません。
ある日も「行こうよ」「イヤだ」の押し問答が続いてほとほと困ってしまい、わたしは黙り込んでしまいました。すると息子がポツリと言いました。
「買うものは何個あるの?それを教えてくれたら行くよ。」
その言葉にハッとしました。
「時間がかかる」「遊びたい」以外にも息子がこんなにも買い物が嫌いな理由があるかもしれないと気づいたのです。
息子の買い物嫌いの本当の理由が分かったら、息子とスーパーでの買い物を楽しめる工夫を考えつきました。
この記事では、ASD傾向の子どもが買い物に疲れて嫌になってしまう理由と、特性があっても楽しめる工夫をお伝えします。
2.ASD傾向の子が買い物で疲れる理由は感覚過敏だから
わたしは発達科学コミュニケーションで学んだことを思い出しながら子どもの目線に立ち、ASD傾向の子どもが買い物で疲れてしまう理由を3つ見つけました。
◆感覚過敏があるためスーパーの環境で不快な気分になる
感覚過敏というのは、五感の刺激に敏感であるために小さな刺激も見逃せず、全て受け取ってしまう特性のことです。
感覚過敏の特性がない人にとってはなんでもない環境でも、特性がある人にとっては不快に感じてしまうのです。
感覚過敏の特性がある子どもにとって、スーパーは刺激が多い場所です。
①視覚の刺激
・たくさんの種類・色・形・大きさの品物がぎっしりと並べられている
・初めて見るものや見慣れないものがある
②聴覚の刺激
・スーパーのテーマ曲がエンドレスで流れていたり、突然店内放送が入ったりする
③味覚の刺激
・ASD傾向の子どもは偏食である場合が多いため、嫌いな食べ物を見た時にまずい味を思い出してしまう
感覚過敏の特性があっても大人なら苦手な刺激を避ける方法を知っています。
子どもはまだうまく対応できないのですべての刺激を受け取ってしまい、とても不快に感じて疲れてしまうのです。
◆見通しが持てないから疲れたり不安になったりする
ASD傾向の子どもは脳の発達がゆっくりで見通しをもつことが苦手です。
そのため以下のような場面で見通しが立たずに疲れたり不安になったりします。
・お店の中を順番に進むかと思ったら色々な場所でしょっちゅう立ち止まって疲れる
・1つのものを選ぶのに時間がかかって疲れる
・何を買ったら買い物が終わるのか分からなくて不安になる
・会計でただ待っている時間が長くて疲れる
◆ネガティブな記憶が残って買い物嫌いになる
人間の脳はネガティブな記憶を長期間残しやすいという性質があります。
・感覚過敏で刺激を受け取り過ぎて疲れたり不快になったりする
→買い物=疲れる・不快になる
・見通しをもつことが苦手で疲れたり不安になったりする
→買い物=疲れる・不安になる
このように買い物に対するネガティブな記憶が頭に残ってしまいます。
そして買い物嫌いになってしまうのです。
以上の理由で買い物嫌いになっていた息子ですが、ある2つの工夫をしたらスーパーでの買い物を楽しめるようになりました。次の項でお伝えします。
3.感覚過敏の子がスーパーでの買い物を楽しめる2つの工夫
◆①スーパーの陳列順に買い物リストを作って子どもと共有する
これは「買い物の見える化」をして、何をどの順番でどこまで買ったら終わるかという見通しがもてるようにし、不安を減らす工夫です。
まずは買い物リストを作ります。
次にいつも行くスーパーの陳列順にリストを並べ替えます。
最後にそれを子どもに見せて共有します。
このリストを共有することで息子はすんなり納得してくれました。
陳列順にすることでスーパーの中を行ったり来たりする必要もなくなるので余計な労力がかかりません。
陳列順のリストをつくるのは面倒に感じるかもしれませんが、買い忘れが少なくなって結果的に時短になりました!
リストがあまりにも長いと息子が難色を示すので、数を減らすために余計な買い物もなくなりました。
◆②子どもにお役目を与える
これは子どもが買い物の際に与えられた役目に集中することで、五感の刺激を受け取り過ぎないようにできる工夫です。
我が家では、息子が乗り物好きなので「カートの運転」をお役目にしました。
やることは次の3つです。
・カートにカゴをセットして最初から最後まで押してもらう
・「7番通路のふりかけコーナーまでお願い」などの声かけで目的地まで行ってもらう
・一番空いているレジを探してもらう
この工夫で特によかったことは2つです。
・「7番通路のふりかけコーナー」など目指すものに向かうので、余計な刺激を受け取り過ぎて不快になる様子がなくなった
・空いているレジを自分で探すことで、待ち時間があっても納得できた
「カートの運転」以外にもお役目は作ることができます。
野菜が好きな子なら「一番赤いトマトを選んでね」、数字が好きな子なら「250gのひき肉を選んでね」というお役目が与えられます。
プチ冒険が好きな子なら、買い忘れたフリをして「鮭ふりかけを持ってきて欲しいな」というお役目もいいですね。
お子さんの個性に合ったお役目をお願いすることで「お母さんの役に立っている!」という自信も育まれます。
4.息子がノリノリでお買い物をリードしてくれる現在
2つの工夫をするようになってから、わたしは息子を買い物に誘うのが苦痛ではなくなりました。
陳列順の買い物リストを共有するようになると、息子は持ち前の記憶力を生かしてスーパーの陳列順を覚えてしまいました。
そして「次は食パンだから12番通路だったね」などと買い物をリードしてくれるようになり、とても楽をさせてもらっています。
更に嬉しい変化もありました。息子がリストに無いものを買うことを受け容れてくれたことです。
最初は、わたしが買い物中にリストに書き忘れたものを思い出すと息子は気分を損ねていました。
しかしある日「お母さん、人は誰でも忘れてしまうことがあるから、書き忘れてしまったものを5つまで増やしていいよ」と言ってくれたのです。
リストを見ながら買い物をすることを通して、見通しが持てないことに対する不安が和らいできたことを感じて嬉しかったです。
お子さんの買い物嫌いに困っている方のヒントになれば嬉しいです。
お子さんとの外出が憂鬱な方にはこちらの記事もよんでいただきたいです。
「こんなやり方あったんだ」たくさんの新常識を教えてもらえます!
執筆者:はた まゆ子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)