発達障害グレーゾーン・ASD傾向のある繊細な子どもが、外では頑張れるのに家でイライラするのは、脳や身体の疲れが原因かもしれません。親が頑張りを理解し安心して話せる環境を作ることで、子どもが自分の疲れに気づき、調整する力を育てる方法を紹介します。
【目次】
1. なぜ発達障害グレーゾーン・ASD傾向のある繊細な子どもは、外で頑張れても家でイライラするの?
2. なぜ今、繊細な子どもの「家でのイライラ」より「外での負荷」に目を向けることが大切なの?
3. 私も繊細な娘に「どうして家ではできないの?」と思っていました
4. 繊細な子どもが「疲れてから休む」から「疲れる前に気づく」へ変える親の関わり方
5. 繊細な娘が、自分の疲れに気づき、調整できるようになってきました
1.なぜ発達障害グレーゾーン・ASD傾向のある繊細な子どもは、外で頑張れても家でイライラするの?
「学校ではちゃんとできています」
「会社では真面目に仕事をしています」
それなのに、発達障害グレーゾーン・ASD傾向のある繊細な子どもは、家に帰ってくると、
「イライラする」
「不機嫌になる」
「何もしたくなくなる」
「家族にきつく当たってしまう」
そんなことがあります。
親からすると、「外でできているなら、家でもできるはずなのに」と思ってしまいますよね。
でも、もしかしたら見えていないところで、脳がたくさんの仕事をしているのかもしれません。
学校や会社にいるとき、脳が処理しているのは、目の前の勉強や仕事だけではありません。
先生や上司の指示を理解する。
間違えないように確認する。
時間を守る。
周りの人の表情や声の調子を読み取る。
相手の機嫌を気にする。
人間関係の空気を読む。
急な予定変更に対応する。
さらに、
「ちゃんとやらなきゃ」
「迷惑をかけちゃいけない」
「失敗しちゃいけない」
と、自分の行動を細かくチェックしていることもあります。
つまり、一見すると普通に勉強や仕事をしているように見えても、頭の中では、
勉強や仕事をする + 周囲の情報を処理する + 人間関係を読む + 間違えないように自分を監視する + 疲れや感情を抑える
という、いくつもの処理を同時にしている可能性があります。
発達障害グレーゾーン・ASD傾向のある繊細な子どもの中には、音や光、人の多さなどの刺激を強く受けたり、予定変更や先の見通しが立たないことに負担を感じたりする子もいます。
また、こういう子どもは、人間関係の中の小さな変化にも気づきやすいことがあります。
子どもの脳は、周りからたくさんの情報を受け取り、それを一生懸命処理していたのかもしれないのです。
もちろん、ASD傾向のある人がみんな同じではありません。
だからこそ、「この子は一日、どんなことにエネルギーを使っているんだろう?」と考えてみることが大切です。
たとえば、学校や仕事で分からないことがあったとします。
「分からないから聞こう」で終われば、比較的シンプルです。
でも、「こんなことを聞いたらダメかな」
「もう覚えていないといけないかな」
「周りはできているかもしれない」
「ちゃんとしなきゃ」
と考え始めると、どうでしょう。
目の前の課題に加えて、「自分がちゃんとできているかを監視する仕事」まで増えてしまいます。
さらに、
「あの人、怒ってるかな?」
「また何か起きるかな?」
「この空気、嫌だな」
と周囲の反応まで気にしていたら、脳は休む暇がありません。
外から見ると、
「ちゃんと学校に行っている」
「ちゃんと仕事をしている」
ように見えても、本人の中では、とても大きなエネルギーを使っているのかもしれません。

そして、一日中、「ちゃんとしなきゃ」と頑張っていた子が、家に帰ってきます。
そこが安心できる場所なら、学校や会社で張りつめていたものを緩めることができます。
すると、 外で緊張して頑張る
↓
ストレスや疲労がたまる
↓
それでも外では自分をコントロールする
↓
安心できる家に帰る
↓
緊張が緩む
↓
抑えていた疲れや感情が出てくる
↓
イライラする・泣く・不機嫌になる
ということが起こる可能性があります。
つまり、「家族だからわざと不機嫌にしている」とは限りません。
むしろ、外で使い切った自己調整の余力が、家ではほとんど残っていないという見方もできるのです。
また、不安やイライラに関係する脳は、外の世界からの情報だけではなく、身体の内側からも情報を受け取っています。
睡眠。 空腹。 心拍。 呼吸。 身体の緊張。 疲労。
こうした身体内部の状態を感じ取る仕組みは、内受容感覚と呼ばれています。
つまり、 学校や仕事でストレスを受ける + 身体も疲れる + 睡眠不足になる
↓
身体から脳へ入ってくる情報も変わる
↓
不安やイライラを感じやすくなる ということも考えられます。
だから、「家でイライラする」という行動だけを見るのではなく、
この子は一日、脳と身体にどれくらいの負荷を抱えていたんだろう?
と考えてみることが大切なのです。
2.なぜ今、繊細な子どもの「家でのイライラ」より「外での負荷」に目を向けることが大切なの?
発達障害グレーゾーン・ASD傾向のある繊細な子どもが家でイライラする姿を見ると、親はつい、
「家でもちゃんとして」
「そんなに怒らないで」
「どうして普通にできないの?」
と思ってしまいますよね。
でも、家での行動だけを直そうとすると、「もっと我慢できるようになろう」という方向に進んでしまいます。
すると、 学校でも頑張る + 家でも頑張る になってしまいます。
すでに外で頑張りすぎている子どもに、「もっと上手に感情をコントロールして」 と求めるのは、さらに負荷を増やすことにもなります。

だからこそ今、
「家でどうしてイライラするの?」
ではなく、
「外で一日、どれくらいエネルギーを使っているんだろう?」
と視点を変えることが大切なのです。
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3.私も繊細な娘に「どうして家ではできないの?」と思っていました
私には、この春大学を卒業し社会人になった、発達障害グレーゾーン・ASD傾向で繊細な娘がいます。
私も以前は、娘に対して、
「外ではちゃんとできているのに、どうして家ではこんなにイライラするんだろう?」
と思っていました。
学校や会社ではとても真面目に頑張っている。
周りにも非常に気を配り、笑顔で接している。
やるべきことも、必要以上にきちんとやっている
だからこそ、家で不機嫌になったり、何もしたくなくなったりする姿を見ると、
「どうして家では不機嫌なんだろう。家でも外みたいにできないのかな?」
と思ってしまったのです。
私の中では、
「外ではちゃんとできている」
↓
「だったら家でもできるはず」
という見方になっていました。
娘が家でイライラしたり、何もしたくなくなったりするたびに、
「仕事で何かあったのかな?」
「どうしてこんな不機嫌なんだろう?」
「八つ当たりしないで欲しいな」
と、私も悩んでいました。
「家では甘えているのかな?」
「家族だからわがままを言っているのかな?」
こんなふうに、娘の行動をどう受け止めたらいいのか分からなかったのです。

そんな私の見方が変わるきっかけになったのが、発達科学コミュニケーション(発コミュ)を学んだことでした。
子どもの行動だけを見て判断するのではなく、
「この行動の奥には、何があるんだろう?」
と考えるようになったのです。
それから私は、娘の「できないところ」を直そうとするのではなく、まず娘の状態を見ていこうと思うようになりました。
4.繊細な子どもが「疲れてから休む」から「疲れる前に気づく」へ変える親の関わり方
では、外で頑張って家でイライラしてしまう発達障害グレーゾーン・ASD傾向のある繊細な子どもに、親はどんな関わりをしたらいいのでしょうか?
ポイントは、子どもの話を否定せず、アドバイスもせず、
「そうなんだね。それで?」
と穏やかな優しい笑顔で聞いていくこと。
否定されない、安心できる環境では、子どもは安心して自分の気持ちを話していけるようになります。
自分の気持ちを言葉にして話すことで、子どもが
「自分はどんなところでエネルギーを使っているのか?ストレスを感じているのか?」
に気付いていくことができます。
また、子どもの話を否定せずに聞いていくことで、先にイライラを吐き出せれば、子どもの脳が落ちついて「じゃあどうする?」を自分で考えられるようになるのです。
そして、話してくれたら、
「話してくれてありがとう。」
「話してくれて嬉しいよ」
と子どもに親の感謝や肯定の気持ちを伝えること。
このことで、子どもは、自分は受け入れられている、自分の気持ちを話してもいいんだ、と思えるようになるのです。

①まず「頑張っていること」を認める
「そんなに頑張らなくていいよ」
「もっと気楽にすればいいのに」
と言いたくなることがあります。
でも、本人にとって「ちゃんとすること」が自分を守る方法になっている場合もあります。
だから、
「ちゃんとやろうとしているからこそ、知らないうちに疲れていることもあるのかもしれないね」
と伝えて、本人が疲れていることに気付いてもらうのです。
「頑張りすぎ!」
と否定するのではなく、
「それだけ頑張っていたんだね」
と、まず認めるのです。
②「何が嫌だった?」より「何に力を使った?」と聞く
「今日、何が嫌だった?」ではなく、
「今日、一番気を使ったのはどこ?」
「一番頭を使ったのはどこ?」
「仕事と人との関わり、どっちが疲れた?」
などと聞いてみます。
さらに、
「相手の顔色を気にした?」
「失敗しないように気を張っていた?」
「急な予定変更はあった?」
「音や人の多さは疲れなかった?」
など、具体的にしていくと、自分がどんな時に疲れるのか、自分の疲れを観察しやすくなります。
③身体の状態にも目を向ける
精神的な疲れだけではなく、
「ちゃんと眠れてる?」
「お腹が空いていない?」
「肩に力が入ってない?」
「帰ってくると一気に眠くならない?」
など、身体の状態も一緒に見ていきます。
「今の身体はどれくらい疲れている?」
と気づくことも、自己調整の第一歩です。
④「どうすればいい?」を親がすぐに決めない
「人に気を遣って疲れる」と言われたら、
「そんなに気にしなくていいよ」
「もっと気楽にすればいいよ」
と親が解決策を出したくなります。
でも、まずは、
「そっか、人に気を遣うことでかなりエネルギーを使ってるんだね」
と受け止めます。
そのあとで、
「じゃあ、その中で少しだけ楽にできそうなところってあるかな?」
と聞いてみる。
そうすると、子どもが自分で解決策を考え始めます。
最初から完璧な解決策でなくていいのです。
親が解決策を出すのではなく、子どもが少しずつでも自分で気付いて考えていくことが大切です。
⑤帰宅直後は「原因究明」しない
仕事から帰ってきた直後は、一日の中でも疲れが大きい時間かもしれません。
そんなときに、
「今日はどうだった?」
「何があったの?」
「会社で疲れた?」
と質問しても子どもの負担になってしまいます。
むしろ、
「おかえり。今日はもう何も話さなくていいよ。ゆっくりしてね」
くらいで十分です。
少し回復してから、
「話したくなったら聞くよ」
と伝えておく。
「話すことを求めないけれど、話したければ受け止める」 という距離感をつくります。
⑥家に「減圧時間」をつくる
会社や学校と家庭の間に、気持ちを切り替える時間をつくるのも一つの方法です。
会社・学校
↓
帰宅
↓
一人で静かに過ごす
↓
身体と脳の緊張を下げる
↓
家庭で過ごす という流れです。
シャワーを浴びる。
着替える。
何か食べる。
静かな部屋で横になる。
少し散歩する。
方法は人それぞれで構いません。
「帰ってきたんだから、すぐ普通に振る舞わなきゃ」 を増やさないことが大切です。
⑦「これは本当に私が処理する情報?」と考える
職場で誰かが不機嫌。
同期同士が険悪。
空気が悪い。
そんなことに気づくことと、「私が何とかしなきゃ」まで引き受けることは別です。
だから、「これは本当にあなたが処理しなければならない情報かな?」と聞いてみる。
全部を自分の責任として抱え込まないことも、自分を守る一つの方法です。
5.繊細な娘が自分の疲れに気づき、調整できるようになってきました
発コミュを学んでから、私は発達障害グレーゾーン・ASD傾向のある繊細な娘への関わり方を少しずつ変えていきました。
以前のように、
「会社で何があったの?」
と原因を聞き出そうとするのではなく、まず家で安心して過ごせるようにして、娘の話を、
「そうなんだね。それで?」
と、否定もアドバイスもせずに聞くようにしました。
そして、娘が話してくれた時は、
「話してくれてありがとう」
と感謝の気持ちも伝えました。
すると少しずつ、
「仕事そのものより、人に気を遣って疲れた」
「失敗しないように、ずっと気を張っていた」
「仕事の予定がギリギリまでわからないのがストレス」
「周りの人たちの人間関係が悪いのがとても嫌だ」
など、娘が何にストレスを感じ、どこでエネルギーを使っているのかが見えてきました。
もちろん、本人にもすぐには分からないことがあります。
「分からない」
と言われたときは、
「そっか。じゃあ、しばらく様子を見てみようか」
と、それで終わってもいいのです。
大切なのは、親が答えを出すことではなく、本人が自分の脳と身体の状態に少しずつ気づいていくことだからです。
こうした関わりを通して、娘自身も、自分の疲れや負担に目を向けられるようになってきました。
「今日は早めに休もう」
「今は一人になりたい」
「ここは分からないから聞こう」
「全部完璧にやらなくてもいい」
と、疲れ切るまで頑張るのではなく、自分の状態に合わせて調整する方向へ進めるようになりました。

もちろん、今でもイライラすることはあります。
でも私は、家で不機嫌になる姿だけを見て「困った行動」と捉えるのではなく、「もう疲れたよ」という脳と身体からのサインかもしれないと考えられるようになりました。
外ではちゃんとできているのに、家ではイライラする。
その姿だけを見ると、「外ではできるのに、家ではやらない子」と思ってしまうかもしれません。
でも、外で頑張ってきたからこそ、家ではもう余力が残っていないのかもしれないのです。
だからこそ、必要なのは「もっと家でもちゃんとしよう」と頑張らせることではありません。
子どもが自分の疲れや負担に気づき、限界になる前に休んだり、必要なときに人に助けを求めたりできるよう、少しずつ自己調整の力を育てていくことです。
我慢できる子を目指すのではなく、自分の状態に気づき、自分に合った方法で調整しながら生きられる子を目指す。
外で頑張っている子ほど、家で見せる姿だけで評価せず、見えないところでの頑張りにも目を向けてあげたいですね。
まずは今日、
「今日はどこで一番、気を使った?」
と聞いてみませんか?
答えを急がず、話してくれたことを受け止める。
その小さな関わりが、子どもが自分の脳と身体を知るための一歩になります。
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執筆者:佐藤 絢子
(発達科学コミュニケーションアンバサダー)
(発達科学コミュニケーションアンバサダー)




