「サ行がカ行になる?!」話すのが苦手な発達障害グレーゾーンの「発音」を専門家に相談するか悩んでいる方へ

話すのが苦手な発達障害グレーゾーンの「発音」について「様子を見たら?」と言われたり、「受診したら?」と真逆のアドバイスを受けたことありませんか?目安となる時期とポイントをご紹介します。
 

【目次】

 

1.「サ行」が「カ行」になっていたSちゃん

 
 
私は言語聴覚士(ST=Speech Therapist)です。ある日、友人から相談の電話がきました。
 
 
「うちの子、名前に「サ」があるのに、「サ」が言えないの。「カ」になっちゃうの。これって専門家にみてもらった方がいい?」
 
 
Sちゃんは年中さんでした。結婚して遠方に住んでいたこともあり、都合を合わせて会えたのは年中さんも終わりに近い1月でした。
 
 
人見知りが激しく、初めて会う人の前では話さないだろうという話だったので友人宅で会いました。挨拶するのもお母さんの後ろから蚊の鳴くような声。すべてお母さんの耳元でささやき、お母さんが代弁するスタイルでコミュニケーションをとっていました。
 
 
私と直接話せるようになったのは数時間遊んでからでした。よくよく聞くと、「さ、す、せ、そ」が「か、く、け、こ」に置き換わっていました。
 
 
「プリンケクのドレどれにる?」
(プリンセスのドレスどれにする?)
 
 
理解できるまで間が空いてしまいます。その遅れにSちゃんはすぐに気づきます。表情が曇ることもあれば、慌てて別の言葉に言い換えることもありました(例:「どれ着る?」)。
 
 
 
 
5歳でこんなことに神経をすり減らしているなんて、胸が苦しくなりました。
 
 
ここまで発音の問題がこじれている子は、放っておく理由がありません。仲良くなった確信が得られた頃に、本人に聞きました。
 
 
「言いにくい音があるの?」→うなずき
 
「言えるようになる方法があったら知りたい?」→うなずき
 
「その方法を知ってるすごい先生がいるんだよ」→「え?」と驚いた表情
 
 
私が確信を持ったワクワクした表情でもったいぶると、つられてニヤ~っと笑顔に。
 
 
「その先生とお友達だから紹介してあげる」→少し考えてからニッコリうなずき
 
「練習すると、上手に言えるようになるよ」→うなずき
 
「Sちゃん可愛いから、きっとその先生も好きになっちゃうな~」→「Sちゃんもくき(好き)になるかも~」
 
 
幸い通える範囲に知り合いの言語聴覚士(ST=Speech Therapist)が勤務する大学病院があったので、そちらを紹介しました。
 
 
なんと!Sちゃん、受診しましたが、医者の前でだんまり。STに会ってからもだんまり。診察もできません。
 
 
診断するには、心を開いてもらわねばということで、ひたすらSTとお母さんと3人で遊びました。週1回通って、3週目にしてようやく言葉を発したそうです。私も冷や冷やしました!でも、治療が始まってしまえば2か月でよくなってしまいました。
 
 
だんまりだった時期は、お母さんは「どうしよう?やめた方がいい?」と非常に不安そうでしたが、終わってからは「あの地獄の日々が嘘のよう。普通に誰とでも話すようになったよ。頑張ってよかった!」と明るく話してくれました。
 
 
治療が開始できたのが年長さんの4月。だんまりの3週間があったので、終了までに3か月かかりましたが、就学前に悩みがなくなり余裕を持って就学準備ができたそうです。
 
 

2.話すのが苦手な発達障害グレーゾーンの「発音」は専門家に相談すべきか

 
 
なぜ「サ行」が「カ行」になってしまうのでしょう?
 
 
「サ行」は舌の先で発音する音です。「カ行」は舌の奥で発音します。使うところが全く違うので珍しい間違いです。でも、時々そういう子がいます。
 
 
口の構造などには問題がないけれど発音を誤って学習してしまうことを専門的には「機能性構音障害」と言います。「障害」と言うと大げさに聞こえますが、医療用語なので仕方ありません。
 
 
簡単に言うと「原因不明の発音の誤り」または「発音の癖」ということです。サ行は、発音するのが難しい音のため、発音の発達段階では後半に習得されます。その難しさから別の言いやすい音に置き換えてしまうのでは?と考える人もいます。
 
 
幼児期によくみられる「くだしゃい(ください)」など、「さ、す、せ、そ」が「しゃ、しゅ、しぇ、しょ」や「ちゃ、ちゅ、ちぇ、ちょ」になるのは「幼児構音」といい、機能性構音障害には含みません。
 
 
なぜならサ行をきれいに発音する前段階に必ず通る道なので、時間はかかっても、たいていの場合勝手に良くなるからです。
 
 
ただ、発達障害グレーゾーンで言葉の遅れがあったり、口が不器用だったりして、4歳を過ぎてもまだ幼児構音があるとしたら、お友達からからかわれたり、指摘されるようになります。
 
 
そうなると、話すことに苦手意識ができ、二次障害を起こすリスクがあるので放っておかない方がよい場合もあります。
 
 
幼児構音が気になる子は『「サ行がうまく言えない⁈」話すのが苦手な発達障害グレーゾーンの子は毎日1分ママと〇〇するだけ!』でご紹介している口のトレーニングをおうちで取り組んでみてください。
 
 
 
 
Sちゃんのようにこじれてしまうと、いざ専門家に相談にいっても治療が進みにくく、子どももお母さんも苦労します。
 
 
Sちゃんのママもいろんな人に相談したけど「様子をみたら?」と言われていたそうです。
 
 
言葉の遅れは少し長期的に様子をみた方がよい場合がありますが、発音が原因の「話すのが苦手」という子の場合は介入のタイミングが遅れると、Sちゃんのように二次障害を起こすリスクが大きいので目安となる時期があります。
 
 
それはずばり4歳です!
 
 

3.専門家に相談するなら?2つの理由と相談申し込みの時期について

 
 
どうして4歳で支援をスタートさせるのか?それには2つの理由があります。
 
 

①音韻能力がある程度できあがる時期であること

 
 
「音韻」とは、言葉を「音」に分けて操作できる能力のことを言います。例えば、「さくら」が「さ」と「く」と「ら」の3つの音でできていることがわかるということです。
 
 
これがわかるようになるのが、平均すると4歳(2~5歳と幅がある)とされています。
 
 
音韻能力が発達すると、しりとりで遊べたり、文字の読み書きができるようになります。でも、まだ文字数の多い単語は「とうもろこし→とうもころし」など言い間違えがある時期です。
 
 
音韻発達が未熟だと発音も未熟です。つまり、音韻が発達すれば、発音も自然とよくなります。音韻が正常に発達しているのに、発音がおかしい子は自然には回復しにくので、専門家に相談した方がよいということになり、目安の時期が4歳とされています。
 
 

②二次障害の予防が必要であること

 
 
4歳ぐらいになると、周りが見えてきて、自分と他の子との違いに気づき始めます。
 
 
自分でうまく発音できないことに気づき始める時期です。周囲の子どもからも指摘されるようになり、話すことに苦手意識ができ、二次障害を起こすリスクが高くなります。
 
 
声が小さくなった、人と話すときにお母さん伝いに話す、苦手な音を別の言葉で言い換えるなどがみられたら二次障害のリスクがかなり高い状態です。
 
 
4歳になっていなくても、これらの様子がみられたら、悪化する前に専門家に相談しましょう。
 
 
 
 

③専門家に相談する場合の治療頻度と期間、相談を申し込む時期

 
 
もし専門家に相談し通うとなると、発音の練習の場合、たいてい週1回の頻度になります(異なる場合もあります)。
 
 
毎日2~3分の宿題をお母さんと楽しく取り組めれば数か月でよくなることがほとんどです。治療の間が空いたり、宿題に取り組めないと治療が長引きます。
 
 
発達障害グレーゾーンの子で体を使うのが不器用で、口も不器用だったり、集中するのが苦手な子になるともう少し治療期間は長くなります。でも必ず良くなります。
 
 
地域による差はありますが、申し込んでから治療が開始するまでに数か月待つことはよくあります。そして、たいていの療育は就学までしかみてもらえないので、STの集中的な治療を望まれるのならば小学校入学前がチャンスになります。
 
 
そうなると動き出すのは年中さんがちょうどよいということになります。
 
 
さらに細かいことを言うと、秋以後になると、年長さんは小学校入学前の「就学前検診」を受けます。そこで、受診を進められた子の相談が集中します。秋以後は年長さんが優先になるので、予約が取りにくくなります。
 
 
相談に行くなら年中さんの夏までに行くことをお勧めします。
 
 
発達障害グレーゾーンで、発音の未熟さが原因で話すのが苦手なお子さんには、発音を言い直させることだけはしないようにしましょう。
 
 
4歳までは楽しいコミュニケーションの体験をたくさん積んでおいてください。それでも変わらないときは4歳を目安に専門家に相談してみましょう。

 
 
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執筆者:おざわ つきこ
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
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