小学校2年生、発達障害・ADHDタイプの男の子がいます。書くことや計算が苦手で、なかなか宿題に取りかかれないことが多く、逃げてばかりいます。先延ばしにしてしまい、最終的に怒られながら、夜遅くになって眠い目をこすりながらやることも。結局すべて終わらないこともあります。何か良い方法はないでしょうか?
小学校2年生・男の子のママ
小学生の宿題は悩まされる問題ですよね。 「早くやった方がいいよ!」と言ってもなかなか始めない姿を見ると、何とかしてやらせなくてはと焦りますね。我が家のADHDタイプの子に効果的だった、ガミガミ言わなくてもサクッと宿題を終わらせる3つのコツをお伝えします。
発達科学コミュニケーションリサーチャー
広瀬 裕子
【目次】
1.ADHDタイプの子が宿題に取りかかれないのはなぜ?
2.脳の特性を上手く活用するには「○○○」が効果的!
3.ADHDのやる気が出ない子にやる気スイッチをいれる3つのコツ
①すぐに動ける「分かりやすい」声かけ
②簡単にできる小さな目標を設定
③ご褒美をたくさん用意する
1.ADHDタイプの子が宿題に取りかかれないのはなぜ?
小学生になった子どもたちが、宿題をなかなか終わらせることができないという悩みは、毎回のように保護者会で話題になりますね。
平日、学校のある日はリズムができていて、学校から帰ってすぐに宿題ができるという子も、週末や長期の休みになるとダラダラしてしまい、できないという話を聞きます。
実は、我が家の現在小学2年生の息子も全く同じ、このタイプです。
遊びたい!という欲求が強いのか、やりたくない宿題から逃げているのか、なかなか宿題に取りかかることができずにいることがよくあります。
以前は、なかなか宿題に取りかからない息子に対して、私がイライラして、
「早く宿題やりなさい。」
「宿題をやらないと、遊んじゃダメだよ!」
などと言って、なんとか終わらせようと何度も何度も声をかけていました。しかし、息子は何回言っても宿題に取りかかろうとしませんでした。
宿題に取りかかれない理由を子どもの言動から探すために、子どもを観察してみました。すると、発達障害・グレーゾーンの息子は、必ずと言って良いほど宿題に取りかかる前に「どこにあるかわからない!」と言っていました。
そして私が「宿題は何があるの?」と聞くと、「忘れた」と返事が返ってくるのです。
発達障害・注意欠陥多動性障害(ADHD)グレータイプの子どもたちが宿題に取りかかれない理由と原因は…
何が宿題なのか忘れてしまいやすい上に、「やろう!」と思っても何をして良いか分からず、後回しにするようになってしまう事です。
そして考えても思い出せずに「分からない」となると
「分からない」=「めんどくさい」
と感じるようになり、どんどん取りかかれなくなるのです。
2. 脳の特性を上手く活用するには「○○○」が効果的!
宿題問題を解決するために、子どもたちの脳の特性を上手く活用して、先延ばしにすることなく宿題を終わらせられるようにしていきたいと思います。
「僕、できた!」という成功体験を多く作ることができると、子どもたちは親のサポートがなくても自分でできるようになっていきます。
ADHDタイプの子どもたちは、脳の特性として、次のことがあります。
・片付けが苦手で何がどこにあるのか、わからなくなる。
・自分のやるべきことを忘れてしまう。
・自分の興味や関心の向いたことを優先してしまう。
このタイプのお子さんは不注意が原因で、やるべきことを頻繁に忘れてしまうことが考えられます。
そして、発達障害でなくとも、子どもの脳はまだ発達途中。記憶系の脳の発達がまだ未熟なことで、やるべきことを覚えていられないと考えられます。
また、実際は覚えていても、興味が他にあるときにはよく考えないで、お母さんの質問に対して「宿題、何があるか分からない」と発言することもあります。
そして、嫌なことに取り組むエンジンがかかりにくいのも、このタイプの子どもたちの特徴です。
エンジンがかかりにくいADHDタイプのお子さんですが、このタイプの脳だからこそ、強い部分もあります。
それは「ご褒美」です!
このタイプの人たちの「ご褒美」を待って期待している状態の脳と、受け取ったときの脳の状態を調べた研究があります。
結果は、ADHDを持たない子がご褒美を待って「期待」しているときに脳が活性化したのに対し、ADHDを持つ子の脳は、ご褒美を受け取るときの方が活性化していました。(frontiers for young minds 沖縄科学技術大学院大学の研究より)
ADHDの子は、そうではない子とでは脳が活性化するタイミングが違っていたのです。この「期待して待っているときよりも、もらった瞬間の方が、活性化している」ということから、
こまめにご褒美をあげた方が、集中力が持続するこということになります。
これらの特性を理解して、ADHDのやる気が出ない子に宿題へのやる気スイッチを入れる3つのポイントをまとめました。
3.ADHDの子にやる気スイッチを入れる3つのコツ
◆①すぐに動ける「分かりやすい」声かけ
一つ目のポイントは、「分かりやすい声かけ」をすることです。
実は「宿題やろうね。」という声かけは、漠然とし過ぎていて子どもたちには伝わりにくいのです。
子どもたちは、見通しを立てることがまだ上手くできませんので、聞いただけで分かりやすい声かけが効果的です。
ですから「宿題をやりなさい!」や「宿題やったの?」「早くやりなさい」の声かけではなく、
「宿題をランドセルから出そうか!」
「予定帳を出してみよう!」
「本読みカードと、漢字ドリルを準備しよう!」
などと、聞いたら何をすればいいか分かる言葉で伝えること、そしてそれを短い言葉で、伝えていくことでスッと行動に移せるようになります。
発達障害ADHDグレーの息子は、「宿題やろう!」と声をかけても「宿題わからない」ということが多いです。頭の中に宿題がインプットされていなかったり、何も考えずに返答をしていることが多くあります。
そんなときは、いくら言っても宿題に取りかかれないときが多かったのですが、声かけを分かりやすく、短くしたところ、すぐに言われたことに反応できるようになりました。
さらに今からやる宿題が全部、机の上に準備されることで、スイッチが入って取り組むことができています。出だしが好調だと、不思議とそのまま最後まで取り組むことが問題なくできます。
サクサク進めている様子や、スッと宿題に取りかかれるとお母さんも「良し!やったぁ!」と思うので、自然と、言葉が柔らかくなったり、素直に褒められるようになっていきますね。
私自信もやはり、いつも言うことが聞けない子どもが1回の指示でスッと動いてくれると余裕ができるので、褒めも何度も何度もしています。
これが、とってもいい効果になって、息子はどんどん宿題を終わらせています。
宿題の量が多い日や苦手な科目のときには、次の2つポイントを合わせ技で使っていくと、とっても上手くいきました。
◆②簡単にできる小さな目標を設定
2つ目のポイントとして、簡単にできる小さな目標を設定します。
宿題の量が多い日は、全部の宿題を終わらせるという大きな目標を、まずは「国語だけ終わらせよう!」などと、小さな目標に分解して設定します。
好きな科目や、簡単な宿題のときは、一度スイッチが入れば、最後まで集中しちゃう!とってもすごい集中力を発揮してくれるADHDタイプの子どもたちですが、
苦手な科目や、量が多い日には注意散漫になり、集中できず叱られることが多くなってしまいます。
このタイプの子たちは、「宿題を全部終わらせよう!」を、「〜だけまずやってみよう!」という小さな目標にしたほうが効果的で、達成しやすくなります。
小さな目標を設定する時のおすすめは、子どもが得意なものや量の少ないものなど、簡単にできるものから終わらせていきます。
お子さんに、「今日の宿題、どれが一番簡単?」と聞いて、本人が一番得意で簡単なことから終わらせることを目標にするのがおすすめです。
我が家では、ほぼ毎日、「今日の宿題、どれが一番簡単?」と聞いています。書き取り、本読み、算数プリントがある日には、
息子は、「もちろん本読み!」と言うので、まずは本読みからスタートします。
そうして本読みができたことで、「〜の読み方上手になったね!はっきり読めたね!」などと褒めることができて、褒めが増えることで息子は、気分が上がってきます。
そうすることで、次の宿題も意欲的に取り組めるようになりました!
先が短く、達成しやすい目標は取り組みやすく、「もうできた!」と言う達成感も得られます。そこをすかさず褒めていくことで、さらにやる気がアップしています!
◆③ご褒美をたくさん用意する
途中まで調子良くできていたのに…最後まで行く前にスイッチが切れてしまった。
もしくは、疲れていて、分かりやすい声かけされても、目標が小さくなっても何もやる気が起こらない。
そんな、どうしても、やる気が出ない日にはどんどんご褒美を使います。
ADHDタイプの子どもたちは、宿題が終わってから最後に用意されたご褒美では、やる気が持続せず途中で離脱してしまいだらだらしてしまう可能性があります。
遠い先のご褒美より、目の前のご褒美が効果的!
ですので、小さい目標が達成できたときに貰える、子どもが喜ぶご褒美を用意します。
そうすることで、たくさんご褒美をもらうために、どんどん頑張ります。
我が家で喜ぶご褒美は、
「チョコレート」
「アイスクリーム」
「ゲーム時間5分延長券」
などです。
宿題の量が多い日は、③のご褒美作戦を使うときが多くなりがちですが、気にしません。 ご褒美を使ってでも、自分で行動してやり抜くことができるとそれが自信となっていくからです。
苦手な宿題を自信がつくまで繰り返すのは少し時間がかかってしまうかもしれませんが、泣きながら「嫌だ」と時間をかけて問題を解くよりも、「ご褒美♪」とワクワクしながらサクッと問題を解く方が、いい記憶が残ります。
今、2年生の息子は、ゲームにハマっています。ですので、ご褒美はゲーム時間延長券が多いです。
「やりたいゲームが長くできる!と言うご褒美」があることで、彼の集中力は10倍上がります。一度火がつくと、サクッと全部終わらせることができるので、火をつけるための「ご褒美」は、我が家では大活躍です!
いかがでしたか?
①すぐに動ける「分かりやすい」声かけ
②簡単にできる小さな目標を設定する
③ご褒美をたくさん用意する
この3つのコツを使って、ADHDの子どものやる気スイッチを入れてあげましょう。
そして最後に、忘れてはいけないのは、「褒め」テクニックです。発コミュ流の「褒め」肯定テクニックは忘れないように、たくさん使っていきましょう!
①の「分かりやすい声かけ」で声かけした後、行動したらすかさず「宿題出せたね!」(にこっ♪)
②の小さな目標をクリアできたら、「もうできたの!早いね!」(にこっ♪)ハグ(ぎゅっ)
まだまだ声のかけ方はたくさんありますが、我が子に響く「褒め」でしっかりと成功体験を作っていきましょう!
なかなかやる気が起こらない、そんな日はガミガミ言うのではなく、ぜひ言い方を変えて試してみてくださいね!
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執筆者:広瀬 裕子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)