「9歳の壁」をご存知ですか?小学校4年生前後の年代は発達段階における大きな転換期を迎えます。勉強面・生活面において大きな壁が立ちはだかります。コミュニケーションが苦手な発達障害の子が「9際の壁」を乗りこえるための対応をお伝えします! |
【目次】
1.子どもが最近変わってきた!?
2.子どもの発達段階の大きな転換期「9際の壁」とは?
♦︎学習面の壁
♦︎生活面の壁
3.発達障害の子の脳のメカニズムから考える
4.コミュニケーションが苦手な発達障害の子どもへの対応!
♦︎認める・共感する
♦︎感激する
♦︎感謝する
1.子どもが最近変わってきた!?
・子どもが最近、言うことを聞かなくなってきた
・親よりも友達の話を信用するようになってきた
・口ごたえすることが多くなった
・言葉使いが悪くなった
・学校のことを話してくれなくなった
最近、こんな変化があったり、変化の兆しがあったりすると言うお母さん、それは「9歳の壁」かもしれません。
「9歳の壁」という言葉は、元々1964年ごろに聴覚障害児の学力が9歳あたりで停滞する現象を表す言葉として使われるようになりました。
その後2009年にNHKのクローズアップ現代+で「10歳の壁を乗り越えろ」というタイトルで特集されたことから「9歳の壁」「10歳の壁」という言葉の知名度が上がったようです。
今では、「9歳の壁」「10歳の壁」「小4の壁」や「ギャングエイジ」などとも言われ、広く知られるようになりました。
言葉どおり、9〜10歳の頃いわゆる小学校4年生前後の年代は子どもにとって大きな転換期なのです。
発達段階でハードルがあるこの時期は、学習面と友達関係などの生活面で様々な「壁」にぶつかるようになります。
子どもたちは、小学校中学年の頃になると様々な悩みやもやもやを抱えるようになります。
この時期に、子どもが直面する壁はどのようなものなのか、発達障害の子どもはどのように感じているのか、そしてそれをお母さんがどのようにサポートし乗り越えていくかについて、お話ししたいと思います。
2.子どもの発達段階の大きな転換期「9際の壁」とは?
これまで順調だった勉強や遊び、友達関係などで「みんなと何か違う」と差を感じつまずきやすくなる時期が小学校4年生前後です。
「9歳の壁」を学習面と生活面から詳しくみていきましょう。
♦︎学習面の壁
学習面において、小学校低学年(1〜2年生)頃までは具体的なことや身近なことが対象ですが、小学校中学年(3〜4年生)頃になると抽象的な内容に変化していきます。
例えば算数を例にとると
小学校低学年(1〜2年)頃
具体的なものを例えにした簡単な計算
↓
学校中学年(3〜4年)頃
少数や分数、余りのある割り算
文章問題が複雑になる
このように抽象的な内容が増えていくようになります。
低学年の暗記、反復練習、目で見てすぐ解るような内容から、中学年では抽象的な概念が入り質的に上がっていくので「考える力」が必要になってくるのです。
「考える力」がまだついていない子どもにとっては、勉強についていけず学習面で問題が出てくる子が増えていきます。
♦︎生活面
生活面というと、対人関係、生活の中での自立や精神面のことを指します。
この時期からは、親よりも友達との付き合いを優先したり、親に素直に話さなくなったり、友達同士で固定のグループができたりと、少し閉鎖的になる時期でもあります。
私たちも経験がありますよね。
自分中心だったものが「他者を意識」するようになります。
お友達と自分とを比べるのもこの時期からです。
「他者意識」の中でお友達よりできないことが多いと、自分で自分を下げるような評価をするようになり自己肯定感が下がることもあります。
このように、定型発達の子どもでさえこのように自己肯定感が下がるのことがあります。
では発達障害の子どもはどうなのでしょうか?
次に発達障害の子どもの脳のメカニズムから「9歳の壁」について考えてきましょう!
3.発達障害の子の脳のメカニズムから「9歳の壁」を考える
「9歳の壁」は、人間の脳の中で一番高度な働きをしている前頭葉の発達と関係していると言われています。
特に、9歳〜15歳くらいまでは前頭葉が発達して自分自身を探求していく時期であり、中でも脳の思考を担当するエリアは10歳以降に飛躍的に伸びていくと言われています。
この思考を担当するエリアが発達していくと、自分自身を客観的に見られるようになっていくのです。
だから、このギャングエイジである「9際の壁」の時期になると、まだまだ未発達ではありますが少しずつ友達のことを自分のことと置き換えて考えられるようになったり、相手の気持ちを予測することができるようになっていきます。
そして、自分の気持ちや感情に気づくことができ、それを文章や会話で表現できるようになってくるのです。
発達障害のある子どもの場合、学習面においては、頭の中でイメージをすることが苦手なので抽象的な概念が入ると勉強についていけなくなってしまいがちです。
また、生活面においては、発達障害の子どもたちは脳の特性により空気が読めず人の気持ちや感情をうまく察知できなかったり、自分の気持ちをうまく表現できない子どもがたくさんいます。
コミュニケーションが苦手なことから、特定の仲間やグループの中で過ごすことがとても辛くなってしまうことがあります。
お友達との関わりの中でうまくいかず自分と他人との違いに葛藤したり、思っていたより自分ができなかったことに気が付いたりして劣等感を抱きやすくなり自信をなくしてしまうことも多いのです。
特に、コミュニケーションが苦手な子どもは、純粋で繊細な傾向にあるので注意が必要です。
友達に言われたことを真に受けてしまい傷ついたり、グループでの会話についていけなかったり、また悪気なく言った言葉で友達を傷つけてしまい仲間外れになることもあるかもしれません。
事態が悪くなると、自分でどういう風に接したらいいのか分からなくなり、余計にコミュニケーションがうまくいかなくなってしまいます。
また、一度失敗してしまうと、
「やっぱり僕(私)はダメなんだ」
「何をやってもうまくいかない」
「なんでうまくいかないんだ」
このように、発達障害の子どもはネガティブな記憶をためやすい特性があるので、1度悪い方向に考えてしまうとどんどん自信をなくしてしまいやる気を失ってしまいます。
やる気を失ってしまうと行動量が落ちてしまいます。
行動することで成長しますから、そのままにしておくと成長できる機会を逃してしまいます。将来、社会生活で困りごとが増えてしまうかもしれません。
このようなことから、発達障害のある子どもは定型発達の子どもたちよりも「9歳の壁」にぶつかりやすくなるのです。
ですが、お母さん。大丈夫です!
コミュニケーションの苦手な子どもでも、壁を乗りこえる方法はあります。
では次に、「9歳の壁」を乗り越えるためにお母さんがする子どもへの対応についてお伝えします。
4.コミュニケーションが苦手な発達障害の子どもへの対応
発達障害の子どもたちが「9歳の壁」を乗り越える方法。
それはズバリ!
お母さんとの1対1のコミュニケーションを成功させることです!
対人関係、人との関わりの1番の根っこは家族です。
その家族であるお母さんが子どもとのコミュニケーションをリードしていくことが大切です。
まだ子どもがコミュニケーションの苦手さを自覚していないのなら、なおさら今!動くことが大切です。早いに越したことはありません!
♦︎認める・共感する
まず認めること・共感することです。
子どもが発言することに対して
「ヘ〜そうなんだ!」
「お母さんもそう思うよ」
と、認めてあげて共感してあげてください。
こうすることで、子どもに自信がついていきます。
♦︎感激する
2つ目はお母さんが感動することです。
「よく思いついたね!」
「こうやったら発想できたの?やるね!」
と、子どもが考えたことを思いっきり褒めて感動してあげてください。
そうすることで、認められていると感じ、自己肯定感が上がっていきます。
♦︎感謝する
3つ目が感謝をしましょう。
「教えてくれてありがとう!嬉しい。」
「片付けてくれ他のね。助かるわ。」
と、子どもがした好ましい行動に対して感謝の気持ちを伝えましょう。
人に喜ばれると嬉しいという気持ち、共感力が育っていきます。
それは、そのままお友達との関係に活きていきます。
このようにお母さんとの楽しいコミュニケーションを通して
「話すことって楽しいな」
「話が伝わるって楽しいな」
というように自分が話をして相手に認められる、理解してもらえるという意思疎通の成功体験を積むことです。
すると、自信がつき子どもからどんどん話してくれるようになりますし、自分の意見も言えるようになります。そして、何よりも行動量が増えてきます。
このように、日常的に子どもに小さな成功体験を作ってあげることが重要なのです。
親子でのコミュニケーションを通して、子どもの自己肯定感が上がります。
その自信を持って外の世界、つまり、友達や社会で活かせるコミュニケーション術を使えるようになるのです。
これが、コミュニケーションが苦手な発達障害の子どもが「9歳の壁」を乗り越える1番の近道です。
いかがでしたか?
小学4年生前後からお母さんの役割は、子どもと一緒に生活している段階から子どもの自立に向けて少し後方からの支援にだんだんと変わっていきます。
ですので、目の前の困りごとだけではなく「将来のお子さんが笑顔で過ごすために今どのサポートをするのがいいのか」と言う長期的な視点で子育てをしていってほしいと願っています。
ぜひ、トライしてみてくださいね!
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執筆者:今村裕香
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)