多動や衝動性のないASD傾向の子どもの場合、内向的な性格だと周りが困ることが少なく発達障害への対応が遅れがち。子ども自身も安心できるルーティンに収まり行動範囲も狭くなりがちです。今回は子どもへ自信を持って行動させたいママへ提案です。 |
【目次】
1.発達障害があっても周りは困っていない、けど…
発達障害のわが子のことをもっと支援したい!と思っていろいろ検索しても、どうも当てはまってないなと感じることはありませんか?
多動や衝動性のない発達障害の子どもの場合、周りが困ることが少ないです。結果として、ママが一人で違和感や育てにくさを感じているという傾向があります。
そのため、学校でも対応が遅れがちです。
ASD傾向のあるわが家の娘も内向的な性格。
こだわりがあっても主張することが少なく、特性が目立たないせいか、学校でも特に問題はないと思われているようです。
しかし、実際には学校に行っても授業はだまって座っているだけ。
変化や目立つことが苦手な娘はたとえ授業で分からないことがあってもおとなしくして、周りに合わせることに一生懸命なので学校に行くだけで疲れてしまいます。
そのせいか、家ではゲームをしたり、テレビを見て過ごしたり。ゆったりまったり過ごして体力を回復させるのがお休みの定番となっていました。
お買い物に一緒に行こうと誘っても、「行きたくない。ゲームしてるからママ1人で行って来て」と、外に出たがりません。
これでは、いつまでたっても行動範囲は狭いまま。何かに挑戦する機会なんてやってきません。
実際、自宅周辺以外の地図はあいまいで、電車に乗ってもどちらが上りでどちらが下りかも興味がなく、分かっていません。
これでは、やりたいことがあってもやる前から挑戦するハードルが高くなってしまいます。
そんな様子から、娘が自発的にやってみたいと自信を持つためにはどう関わったらいいのだろうとずっと悩んでいました。
2.内向的なASDの子どもは安全地帯が大好き
自分の好きな趣味や特技は仕事で疲れていてもついつい取り組んでしまう、なんてことが誰にでもあると思います。
もしかすると、うちの娘もそんな風に打ち込める何か、熱中できる何かがあれば視野がかわるのではないかと思いました。
ただ、内向的な性格の娘にとっては、毎日の習慣化されたことは簡単でも、自ら新しいことに挑戦することや、やる気を発揮するにはとてつもないパワーが必要です。
不安の強い子どもにとって、親が心の安全地帯となることは子どものメンタル的な安定のためにとても大切なこと。
けれども、安心できる安全地帯にずっといることが子どもにとっての成長につながるのか?というと疑問に感じるのです。
「ママがいれば、大丈夫。なにも困ることはない、問題ない」ということは、見方を変えると子どもの可能性を奪っていることと同じかもしれないと思ったのです。
かといって、じゃあ、1人でなんでもやってごらん!と言うのでは、それはそれで突き放された、見捨てられたと子どもが余計に不安になってしまいます。
では、どのような関わり方をすればいいのでしょうか。
3.心が動くのが先か?行動が先か?ママの関わり方
娘の場合、興味があること、好きなこととして1番に思い浮かぶのは「絵」です。
描くことは思うようにできずにイライラしてしまうようですが、カラフルな絵やデザインを見ることはとても気分が上がるようです。
家で見ているYouTubeも、色彩が鮮やかなイラストレーターさんのものや漫画家のものが多く、視覚過敏も影響しているのか、きれいな絵に反応することが多くありました。
そのため、興味のある絵や写真を子どもの行動を起こさせるきっかけとして、取り入れてみることにしました。
◆興味への情報提供と予習
まず、市内でやっている写真展のパンフレットを見せて誘ってみたところ、「行ってみたい!」とノリノリに。
さらに、その写真展の近くの美術館でも絵画展をやっていることを伝えてみました。
すると、「じゃあ、どっちも一緒にいける?いつ行く?どうやって行く?」と聞くので、一緒にネットで調べてみることにしました。
写真展も絵画展も開催期間は月末まで。
人が少なそうな平日を選んで、何時くらいの電車に乗るのか? 駅まではどうやって行くのか?そこから写真展まではどうやっていくのか?
普段は何をするのにも腰が重い娘でしたが、一緒にネットで出かける工程について調べていくうちにどんどん興味がわいてきたようです。
朝から出かけてお昼は和食がいいんじゃない?
ミュージアムショップでこれが欲しいな。
ミュージアムショップでこれが欲しいな。
など、自発的な提案も出て、家でいつもゴロゴロしている娘とは違って見えました。
◆安心の下、楽しむ
そして当日。
普段、家からは車で出かけることしかなかったので、駅でのICカードの使い方、電車の時間の見方、上り線、下り線のホームの位置などは一緒に確認しました。
人が多く視覚に入る情報が多い中、改札1つ通るにも自分で行動しないといけない状況で少し表情に陰りが見えた娘でしたが、一緒に行動し見守ることで無事目的地まで着くことができました。
そして、ゆっくり鑑賞した後のミュージアムショップでは、欲しかったポストカードも念入りに選び、自分で支払いを済ませることができました。
いつもなら内向的な性格で、知らない人に声をかけることを極度に嫌がる娘でしたが、この時ばかりは何事もなく自然に支払いをしていた姿に本当に驚きました。
また、帰りにはパン屋さんで焼き立てのパンを買って帰ろう!と自分でチェックしていたパン屋さんで買い物もできました。
自分の好きなこと、興味のあることに挑戦してできた!という経験が娘にとって大きな自信になったようです。
社交的な子にとってはなんでもないことが、内向的な性格かつ発達の凸凹による困り感がある子どもにとって、自分の安全地帯から出ていくことはとても大きな挑戦かもしれません。
けれども、こうしたちょっとしたやってみたい!からのできた!ということが、子どもにとってもこれからのモチベーションの1つになってくるのではないかと思うのです。
子どもの興味のあることを大きく広げる関わりは、子どもの可能性も大きく膨らませることになります。
ぜひちょっとした興味を広げることから、始めてみてもらえたらと思います。
ちなみにわが家では、また来月どこかにお出かけしようと、今から計画中!
少しずつ自信も持って、さらにできることが増え、視野も広がっていくのではと思うとこれからの成長に期待が止まりません。
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執筆者:井上喜美子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)