発達障害のお子さんをお持ちのお母さん、幼児期から将来の生活自立に向けて意識して教えたいのはズバリ「料理」です!子どもの発達にも効果がある料理の側面について解説しながら、発達障害の幼児のお料理デビューにぴったりのメニューも教えちゃいます! |
【目次】
1.母の目標!息子に18歳で一人暮らしをさせたいワケ
2.やらかしました!私の一人暮らし失敗談
3.発達障害の幼児にぴったり!「料理」が持つ発達効果とは
①さまざまな材料で触覚を育てる
②さまざまな道具を使う
③手と目のコンビネーションが発達する
④自己肯定感アップ!
4.料理をする前に必ず事前準備を!
5.幼児のお料理デビューにおすすめはコレ!
1.母の目標!息子に18歳で一人暮らしをさせたいワケ
パステルキッズを育てるお母さん、「子育ての目標」はありますか?
実は、私には1つ目標があります。それは、発達障害・自閉症スペクトラムの息子が18歳になったら一人暮らしをさせることです。
息子は現在小学校1年生。幼稚園の年少さんのときに発達の遅れを指摘され、直後に診断を受けました。
この「息子に一人暮らしをさせたい」という目標は、発達の遅れを指摘する前から思って抱いていたもの。息子だけではなく年長の娘にも、一人暮らしをしてほしい!と思っています。
18歳までに一人暮らしをさせられる人間に育てる!それが、息子を授かったときからの私の目標なんです。
私自身、大学入学とともに実家を離れて一人暮らしを始めました。それから社会人になって結婚するまで、合計8年間、一人で生活するなかでさまざまな経験をすることができました。
・家事全般のスキルを習得でき、就職・結婚後もうまく両立できた
・レポートや企画の締め切りに追われていても、一人でとことん集中できた
・友達や同期と一緒に朝まで語りつくした
などです。
私自身、一人暮らしをしてとてもよかったと感じています。子どもたちにも親の目を気にせず、親を頼りにせず、勉強でも仕事でも友達関係でも、一人でとことんやってみる経験をぜひしてほしいと思っています。
また、基本的な家事のスキルを習得しておくことはとても重要です。
家事のやり方を教えるだけなら一人暮らしまでさせる必要はない…というご意見もあるかもしれませんが、「お手伝い」として家事をするのではなく、「家のことは自分の責任ですべてを管理する」経験は一人暮らしだからできること。
すべてを完璧にこなすのではなく、
「今日は遅くなったからどこかで食べて帰ろう」と手を抜くバランスを覚えたり、
「月曜日はトイレ掃除、火曜日は玄関掃除…」と自分でルールを作ってこなしたり。
自分がどうやったら楽に、でも快適に暮らしていけるのかをマネジメントできるのが一人暮らしを経験できる最大のメリットだと思います。
子どもには18歳で一人暮らししてほしい!と思っている私は、一人暮らし時代の数ある失敗体験を踏まえて、子どもたちに幼稚園から生活スキルを教え始めました。
この記事では、一人暮らしを始める前にマスターしておきたい「料理」に着目して、幼児のお料理デビューを応援します。料理は発達障害のお子さんにもピッタリ!発達を促す効果も抜群!
ぜひこの冬休みにチャレンジしていただきたいと思っています。
2.やらかしました!私の一人暮らし失敗談
そもそも、どうして私が「料理」に着目したのかについてお伝えします。
私は18歳で一人暮らしを始めたのですが、当時の料理スキルは完全にゼロ!
私の両親は「子どもはお手伝いよりも勉強しなさい」という勉強至上主義。何か家のことをしようとすると「勉強したら?」と言うタイプの人間でした。
そんな状態で、まともに家事をしたことがない私が一人暮らし。大学時代は本当に悲惨でした。
・物の管理ができてなくて、鍵を何度も無くす
・洗濯機を回したまま、洗濯物を干さずに実家に帰る
・朝起きられなくて、ごみ出しのタイミングを失う
・生活費を使いすぎて仕送り前に親に泣きつく
はい、完全に黒歴史です…
そして一番困ったのは料理でした。
・見よう見まねで作ってもおいしくない
・ハンバーグはもちろん生焼け
・実家は農家なのに野菜の良しあしが見分けられない
という悲惨な状態。特に、一人暮らし用の狭いキッチン、一口しかないコンロ、小さな冷蔵庫で初心者が料理する…というのは至難の業でした。
大学を卒業する頃には、一通りなんでも作れるようになり、手を抜くところ、丁寧にやりたいところ、自分が譲れないところもうまく調整できるようになっていました。
大学生活という慣れない環境での一人暮らし。なかなか軌道に乗せられなかった経験から、絶対に子どもはある程度料理をマスターさせてから送り出す!と心に誓ったのです。
3.発達障害の幼児にぴったり!「料理」が持つ発達効果とは
今は便利な調理器具がありますし、レシピサイトも山のようにあります。料理ができなくても、コンビニだけでもバランスのいい食事ができます。デリバリーサービスも充実しています。
ですから、無理に料理をしなくても問題なく生きていけます。
それでも、ぜひ幼児のうちから料理に挑戦してほしい理由。それは、発達を促す効果があるからです!発達障害・グレーゾーンのお子さんだからこそ、積極的に料理に取り組んでほしいのです。
◆①さまざまな材料で触覚を育てる
料理に使う材料の触感はさまざまです。例えばハンバーグを作るなら、
・玉ねぎの皮の触感
・皮をはいだあとのつるつるした触感
・みじん切り後の触感
・ひき肉と合わせてこねたときの触感…
など、1つの料理を作るだけでもさまざまな触感を体験することができます。これが触覚を育てます。
特定の触感を嫌がる子、手が汚れるのを嫌がる子もいると思いますが、無理をさせなくてかまいません。好きな触感の物をたくさん触らせてあげてください。
◆②さまざまな道具を使う
包丁、まな板、お玉、フライ返し、トング…料理には様々な道具を使います。
それぞれ持ち方や握り方、使い方に特徴があります。発達障害の子どもは不器用な子がとても多いので、道具の使い方もぎこちない場合があります。
だからこそ、小さい頃からいろいろな道具を触る経験をさせることが大事!
触覚も育ちますし、使い方も少しずつマスターすることができます。
◆③手と目のコンビネーションが発達する
例えば、「包丁で玉ねぎを切る」という場面では、玉ねぎと包丁の動きを目で見ながら手を動かす、ということをしています。
しっかり目で見れていないと手を切ってしまいますし、手の動きがぎこちないと切り進められません。目と手がコンビネーションしている動きなのです。
料理の経験を通して、目と手を同時に使う機会を増やすことで、発達を促すことができます。
料理は、包丁で切る以外にも、炒める、混ぜる、盛り付けるなど、目と手を同時に使う場面がたくさんあります!
目と手のコンビネーションは料理だけではなく、字を書く、運動する、などあらゆる場面で使われます。もしも字を書くのが苦手、という場合は、頑張って書かせるよりも、料理をすることでも鍛えることができるんですよ。
◆④自己肯定感アップ!
料理は自分がやったことに対する結果が見えやすいです。
お料理が得意な方の中には、SNSやお料理サイトに写真を投稿されている方もたくさんいらっしゃいますよね。
頑張って作ったらこんなにおいしそうにできた!
最高においしかった!
と成果を実感できるうえに、実際に食べた方からは「すごくおいしかったよ!」「ありがとう!」とほめてもらえる。
写真を見た方から、「すごい!おいしそう!」と感動してもらえる。
こんな風に、料理には大人でさえ自己肯定感がアップする機会があるのです!
特に幼児から料理を始めたい理由はここです。中学生が作るよりも小学生が作った方が、小学生が作るより幼児が作った方が、周囲も子ども自身も求めるレベルは下がります。
幼児ならきゅうりを切っただけでも、多少焦げてしまっても、「すごい!」と言ってもらえますが、中学生だと「これだけ?」「焦げてるし!」となってしまいがち。
周囲が褒めたとしても、大きくなればなるほど子ども自身の自分への評価が厳しくなっていってしまいます。
「作っただけでもすごい!」と言ってもらえるうちに料理をスタートして、褒めてもらう機会をたくさん作るのがおすすめです!
4.料理をする前に必ず事前準備を!
こんなにたくさんの発達効果がある料理、今すぐ始めたくなりますよね。 でもちょっと待って!料理を始める前に準備することがあります。
幼児が初めて料理をする場合、子ども自身はどんな材料を準備して、どんな道具を使って、どんな工程で調理を進めていくのか、全くわかっていません。
お母さんが「人参、取ってきて」と毎回指示を出しても、子ども自身が調理の流れ自体を把握しているわけではありません。自分が今何をしているのか、分かっていないまま調理に参加することになってしまうのです。
これでは、ひとつ料理を作るというよりは、「材料を用意する」「切る」といった断片的な作業の記憶になってしまいます。
料理を始める前に、必ず調理の流れを説明することが大事!
最近は調理過程1つずつに対して画像を掲載していたり、調理の流れを動画でチェックできたりするレシピサイトがありますから、利用しない手はありませんよ!
5.幼児のお料理デビューにおすすめはコレ!
幼児のお料理デビューを成功させたいなら、最初から難しい料理に取り組むのはNG!
① 調理過程が少なく、火や包丁などを使わない
② 口に入ってしまっても害がない材料だけで調理できるものを選ぶ
③ 調理工程をすぐに確認できるようにしておく
という3つのポイントを意識してくださいね。
初めての料理で、たくさんの材料を扱い、たくさんの工程を経るものを選ぶと、どんなに事前に説明しておいたとしても、お子さんは混乱します。
また、お子さんに「それ触っちゃダメ!」「やけどするよ!」と言いながら料理するのはお母さんもストレスフルですよね。
カレーやシチュー、ハンバーグはお子さんが大好きなメニューですが、調理工程も使う材料も多いので最初の頃は避けたほうが無難です。
また、作りながらでも調理工程を確認できるようにしておくのがポイント!とはいえ、レシピをスマホや本で確認するのはちょっと手間です。
そこでおすすめなのが、市販の「○○の素」を使うこと!
「○○の素」のパッケージには必ず必要な材料と調理工程が書かれてありますから、とても便利です。
イラストで説明してくれている商品もありますよね。また、パッケージには完成イメージの写真も掲載されていますので、完成をイメージしながら調理することができます。
事前に画像や動画で作り方を確認しておき、作っている途中はパッケージを確認する。これで完璧です!
以上を踏まえて、料理デビューに最もオススメなのは…
フルーチェです!
フルーチェは、
①牛乳を計量する
②フルーチェの素をボウルにそそぐ
③混ぜて冷やす
と、調理工程が単純、火も包丁もお湯も使わず、けがややけどの心配もありません。万が一完成する前に材料が口に入ってしまっても全く問題なし!牛乳を多く入れすぎさえしなければ、必ずおいしく作れます!
この単純な工程でも、
・牛乳を指定されたメモリまできっちりはかる
・箱やパウチを開封する
・フルーチェの素をこぼさないようにボウルにそそぐ
・混ぜる
・小皿に盛り付ける
は、目と手のコンビネーションの動きになりますので、発達を促す効果もばっちりです!
特に、牛乳を計量する作業やこぼさないようにボウルにそそぐ作業は、より目でしっかり見る力と、手をゆっくり丁寧に進めるコントロール力が必要。より発達の効果が見込めます。
もしも牛乳がうまく注げない、という方はお風呂でコップに水をそそぐ遊びが有効です!
フルーチェのほかにも、混ぜて冷やすだけでできる「○○の素」はたくさんありますから、お子さんの好みに合わせて選んであげてくださいね。
フルーチェを作って、カットした果物やアイスクリームを使ってデコレーションすれば、スペシャルなパフェのできあがり♪ご家族でのパーティにもぴったりですよ!
調理工程の流れを理解できているのであれば、一部だけをお子さんにお願いするのも有効です。
例えばおひたしなら、ほうれんそうをゆでるまではお母さんが担当し、調味料を計量して混ぜ合わせるのをお子さんが担当する、ということもできます。
お子さんが作っている姿を写真に撮って記録し、「あのときは上手にできたよね!」と後から褒めるのも効果的。お母さんは少し大変ですが、カメラの準備もお忘れなく!
調理工程ごとに写真を撮って、お子さん専用のレシピブックを作るのもおすすめです。私の息子は寝る前にレシピブックを読み聞かせてほしい!というぐらい喜んで、調理工程をすっかり覚えてしまいました。
料理は生活自立に直結するだけでなく、発達効果が高く、お子さんの発達段階に合わせて実践できます。
調理過程では 「ゆっくり注げているね」 「ていねいに混ぜられているね」、完成したら「おいしそう!」としっかり声をかけてくださいね。
食べ終わったら「ありがとう」と伝えてあげましょう。
生活自立に直結し、発達の効果も大きく、自己肯定感もアップするお料理。ぜひ今日から始めてくださいね!
お子さんのお料理デビューの参考になれば幸いです。
執筆者:丸山香緒里
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)