小・中学校で不登校だった現役大学生は大学へ入学してからどのように過ごしているのか、そして将来はどうしたいと考えているのかをインタビューしました。ポジティブに不登校をしていたからこそ考える不登校経験の生かし方を教えていただきました! |
【目次】
1.大学は小・中学校とは違う!めっちゃ楽しいところ
2.元不登校の大学生の将来の夢は?
3.不登校をポジティブに捉えて
4.前向きな不登校の子どもに必要な親の関わり方
5.周りと比べずポジティブに子どもを伸ばそう
1.大学は小・中学校とは違う!めっちゃ楽しいところ
不登校の暗いイメージを払拭したいという思いで、不登校経験のある現役大学生にお話を聞いています。
前編では、現役大学生のK君に聞いた不登校時代の気持ち、大学受験を目指すまでの道のりをお伝えしました。
後編では、不登校を経験して大学生となった今の、K君の将来の夢について聞いていきます。
―――今現在、心理系の勉強をしているんですか?
「学部は違うんですけどね、履修できる心理系の勉強はしています。社会学や統計も興味があって勉強したかな。あとは経済系も結構勉強しました。」
―――心療内科の先生や家庭教師さんに大学は面白いと言われて入って、実際面白いですか?
「めっちゃ面白いです‼︎めっちゃ‼︎面白いです。」
―――よかったですね!
「2人くらい、いい先生がいるんです。質問をたくさんしに行ったら、自分のことを気に入ってくれて、僕の意見にも理論立てて説明してくれて。
『それおかしい、面倒くさい』って言わない。
『いいね、面白いね』『その質問いいね、よく気づいたねー』と言ってくれる先生達で。
小中学校の先生と決定的に違うのは、小中の先生は教科書の内容をただ喋っているだけで、先生本人が頭いいわけじゃないということですね。」
―――(苦笑い)
「小中学校の先生達は、自分で研究したわけでも、勉強したわけでもないんですよね。 大学の先生は、本人が研究して、長年勉強してきて、それを伝えようとしているので、頭も良くて、尊敬できる。
『本当にこの科目好きなんだな』『この人の知識に触れたい、考え方真似たい』と感じる。
『師匠』って感じ。こういう人達に触れることができた。
こういう人に出会えるっていうのは小中学校ではなかった。だから大学は面白いです。
お世話になった2人の先生に出会えただけでも元取れたねって、親と一緒に言っています。 個別に連絡して進路の相談に乗ってもらったりしているし、勉強の仕方などもアドバイスしてもらっているかな。」
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本当に自分の好奇心や疑問を解決してくれる人を求めていたんだなぁということが伝わってきますね。
賢すぎるがために、先生や友達から疎まれてしまい学校が面白くなくなってしまう不登校の子どももいます。
でも、このように最終的に自分の求めていた学びに出会うことができたら、何も問題はないんじゃないかなという気持ちになっていきます。
2.元不登校の大学生の将来の夢は?
―――これから、どういう道に進もうと思っていますか?臨床心理士を目指す?
「『目指してた』ですね。
なくはないんですけど、大学に入ってみていろんな先生の考え方に触れていって、社会学が面白いなと。結局は扱うのは人なんですけど。
大学の先生を見ていて、先生達がとても面白そうに講義で喋るんですよね。
この職種面白そうだなと思っていて。自分の好きなことを研究して、それを解説して発表する場があるっていいなと思って、研究の道に進むのもいいなと思っています。専攻を社会学にしての大学院への進学も考えているところです。」
―――かっこいいですね!今、大学4年生になって、K君にとっては不登校だったっていう概念がないかもしれないけど、小中学校に行かなかったことでネックになったことって、ありますか?…なさそうですよね?
「ないですね(笑)」
―――そうですよね!じゃあ、学校に行かなくてよかったことってありますか?
「話のタネにもってこいなんですよ。不登校って。
ゼミの先生と仲良くなったときなんかに、個別に話すときに、通信制高校通っててって言うと、食いついてくるんです。面白みを感じてくれる。
『君面白い人生歩んでいるね!ちょっと話聞かせて!』って、人の気を引かせる話題になるんですよね。人と違うことに興味を感じてもらえる。
授業で心理系の科目を履修していて、レポートを書くときに最後のまとめで自分の経験をそのまま書けることが多いので結構成績がよかったり(笑)
―――すごいですね!
「自分が当事者だったから、結構書けちゃうんですよね。だから不登校だったことがプラスになっているかな。」
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不登校中は、不登校ということを引目に感じてしまったり、不登校ではなくなった後もいじめの対象になるのではと心配で隠してしまったり…
そんなケースもあるかもしれません。しかし、K君のように堂々と、自分のやり方を貫いている人には賛同して支援してくれる人が集まってくるのではないでしょうか。
不登校の子どもは年々増えていますが、まだまだレアなケースという考えが多いです。不登校経験を面白く人に伝えられるようになれば、人とは違う強みを持てるようになりますよ。
3.不登校をポジティブに捉えて
―――世間では、子どもが学校行けなくて悩んでいるお母さんや子ども達がいるんですが、メッセージをもらえますか?
「結局、子どもが学校行かないんであれば、てこで動かそうとしても動かないと思います。何やっても動かないんです。絶対に。
もしかして、一回行くごとに1万円くらいくれたら行くかも(笑)
行きたくない子を無理に行かせようとしても、お互いにメリットはない。
だったら、家にいる状態をよく観察した方がいいですよね。他の子よりも親子で接する時間多いから、お父さんお母さんは、学校へ行かないということはちょっと置いておいて、何が得意なんだろう、何が向いているんだろうって探してあげるといい。
うちの母親はそういう風にしてくれて、ずっとゲームばっかりしているんだったら、ゲームについてブログの記事かいてみたら?とホームページの作り方教えてくれたり、投資とか株とか家でできるからやって見たら?と教えてくれたり。
家にいて、その子が何が好きなのか、ちゃんと見つけてあげて、そして誘導してあげることが大事なんじゃないかな。学校行かなくても死ぬわけじゃないし、逆に学校行かないことをプラスに使ったほうが絶対いい。
不登校中で後悔していることが一つだけあって、中学校の1〜3年のときに大手の家庭教師で勉強していた時期があって、その時間が無駄だったなと。
何もテストとかない状態でやる勉強はモチベーションが上がらないから辛い。
家で勉強しているのは偉いって思うかもしれないけど、学校に行っている子に遅れて勉強しているわけですよね。あとを追いかけている。
『なんでやってるの?将来のため、みんなやっているから』
そういうのあんまり好きじゃないんですよね。
それが無駄だった。国数英じゃなくて、宅建とか簿記とかみんなの先回りをして勉強して高校生になったらすぐ資格とるとかしたほうがよかった。
みんながやってないことを先回りしてやって資格取れたら、「最年少で合格!」みたいなことができて面白かったんじゃないかなって思う。
みんなは受験できる年齢になってから勉強するけど、その前から勉強して受験できるようになったらすぐに試験を受ける。
受験資格のゆるいやつなんかを探して、勉強したほうがプラスになるんじゃないかな。 国数英なんかほったらかして、中学校までの勉強は高校になってからでも追いつくものが多いので。
人と違うことをやっているんだから、人と同じようなレールに戻そうとするのはもったいない。人と違うことにどんどん突き進むべき、プラスにするべき。
不登校をマイナスに捉えている人が多いですよね、『学校に戻さなきゃ、学校行ってないから危ない』と。
でも、学校でできないことができるよね。好きなことできるよね。大人が勉強することを先にやったっていいじゃん。国数英は必要になったときにもう一回やったらいいじゃん。
悲観しない。親御さんが子どもをよく見てあげる。それが大事。
不登校をどうやったら強みにできるのか。
スーパーにも売ってるじゃないですか、形がいびつだから安い野菜とか。あれ、味は変わらない。うちらからしたら、大きいしありがたいじゃないですか。味はいいし、安いし。
それならそっちでいいじゃん。
不登校の子ってそんな感じで、形はいびつなんだけど、ちゃんと使い方さえ間違わなければ全然強みになると。
そういう感じの捉え方ですよね。 形がいびつだからといって捨てちゃうのか、今なら形がいびつで面白いからインスタとかにあげちゃうのか。
捉え方だと思います。
不登校という特殊な状況をプラスに捉えて生かしていく目を親御さんには持ってもらいたいなと思います。
子ども達へのメッセージは、好きなことしたらいいんじゃない?あんまり考え込まずに。
時間があるからなんでもできる。工作も調理もゲームも。
一つ自分の得意なことできたら自信が付きますよね。あいつら学校行っているけど、俺のほうが料理はうまい!と。料理の腕なら俺が勝てる!と。
何かで自信を持つというのが大事かなと思います。」
4.前向きな不登校の子どもに必要な親の関わり方
―――先ほどのメッセージ、経験者の方から聞くと、すごく説得力があります。
「うちの両親はなんでもやらせてくれたし、嫌だと思ったらすぐ辞めさせてくれた。 だらだら続けてもお金も時間ももったいないですから。
僕はボーリングをやって自分のコミュニティができたんです。俺をボーリングの仲間が認めてくれて、他のやつよりも全然上手い。
好きなことを極めるのは全然ダメなことじゃない。
『好きなことをやるために学校行け』っていうこともあるかもしれないけど、それはちょっと違うかなと思っていて。天秤にかけて、いいやと好きなことを手放してしまったらもったいないので、好きなことはとことんやらせてあげて極めちゃちゃったらいい。
それが仕事になる可能性だってある。
僕は、ボーリングは高校くらいまで頑張ってやっていた。絶対負けないっていう自信があって、全国大会も出てたんだけど、中学の体育は1なんですよ。でも学校行っている子が部活で国体とか出たら体育の成績良くなるんですよね。
担任のお前に俺の内申の何がわかるんだ!って思ってました。
好きなことを見つけて伸ばしてあげるのが大事で、学校と切り離して考える。
学校を気にしないでやれたら、スポーツだったらいっぱい練習できるしオリンピックだって行けちゃうかも。
それくらい割り切った方がいい。自信がついたら、自ずと学校ももしかしたら行けるようになるかも。行きたいと思えばまた行かせてあげればいいし。
お互い学校にとらわれちゃうと、頭の悪い子ができあがっちゃう。学校に行けないために学業が遅れた子。悪いレッテルだけが残っちゃう。学力なくてもこれだけはすごくできるっていうことを探してあげる。
それが一番かな。経験からいうと。」
―――すごく参考になります!
「心療内科の先生も頭を抱えていたから、僕は珍しいタイプかもしれないですけど。
コロナの状況で社会も変わっていきますよね。不登校で家にいた人、オンラインでなんかやっている人、そんな人が強くなっていく。
僕も外でなくても全然苦じゃないので。これから面白くなっていくと思いますよ。」
5.周りと比べずポジティブに子どもを伸ばそう
K君とお話をしていると、子どもの力を学歴や偏差値で評価したり、他の子どもと比べて焦ったりする必要が無意味だなと改めて感じることができました。
お母さん達が学校教育を受けて育ってきていると、学校教育を受けないとなるとどうしたらいいのかとても不安になると思います。
でも、『みんなと同じだから安心』なのでしょうか?
みんなと同じ学校で勉強しなくても、子どもが楽しく明るく頑張れるものや、学びを学校外でやり、その自信を持って社会へ出ていけるようにサポートした方がよっぽど幸せですよね。
K君は不登校だったことに対して一切引け目を感じておらず、むしろ強みにして自分のアピールポイントとして話すことのできる青年に育ちました。
きっと、見守る大人達が学校へ行くか行かないか関係なくK君を肯定してきたのだからだと思います。
もしも、お子さんが学校へ行けない、行かないことを引け目に感じているのなら、
「○○にはこんないいところがあるね」
「お家でこんなことができるようになったね」
と声をかけてあげましょう。元気になってきてお家の中でやりたいことをどんどんできるようになってきたら、
「学校じゃこんなことできないよね!」
「みんなにはない力があるよね!」
「〜やるのは誰にも負けないね!」
などと、学校へ行かないことをポジティブに捉えられる言葉をかけてあげると、お子さんの考えもポジティブになっていきますよ。
今後、K君をサポートしたお母さんと、家庭教師さんへのインタビューもあります!こちらも皆さんに明るい不登校情報をお伝えできるようなお話を聞けそうなので、楽しみにしていてくださいね!
パステル総研の不登校キッズの未来想像プロジェクトでは、元不登校の社会人の方や不登校のお子さんを育てるお母さん、多様な学びに関わる大人の方々にインタビューをしています。不登校から自分の道を切り拓いたカイロプラクターさんのインタビューはこちらです。
学校以外の道を選択して楽しみながら成長した人たちの経験を学ぶことで、不登校で悩んでいることが解決していきますよ。お子さんのタイプに似ている人を探してみるのがおすすめです!
不登校の子どもの将来の選択肢を多数お伝えしています!
執筆者:すずき 真菜
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)