旅行嫌いで外泊を嫌がるASDの子ども、不安が強い子にどう関わる?「だいじょうぶ」が逆効果になる理由と、実体験から分かった外泊に挑戦できた3つの関わり方を紹介します。
1.旅行嫌いで外泊を嫌がる子どもに、どう関わる?
旅行やお泊まりの予定があるたびに、「行きたくない」と強く嫌がる子どもに困っていませんか?
無理に連れていくわけにもいかず、 かといって毎回あきらめると、 家族も我慢が続く…。
どう関わればいいのか、悩んでしまいますよね。
もしかすると子ども自身も、「本当はやってみたい気持ち」と「でも不安で動けない気持ち」の間で揺れているのかもしれません。
わが家の息子は、旅行や祖父母の家での外泊を毎回嫌がっていましたが、関わり方を工夫する中で、少しずつ挑戦できる場面が増えてきました。
この記事では、外泊を嫌がる子どもが挑戦できた3つの関わり方を、実体験をもとにお伝えします。

2.旅行や外泊のたびに強く嫌がる息子の対応に困っていました
現在小学3年生の息子は、自閉スペクトラム症(ASD)の傾向があり、不安が強く、慣れない場所が苦手です。
幼児期は、旅行直前に少し嫌がることはあっても「だいじょうぶだよ。きっと楽しいよ!」などと声をかければ行くことができていました。
でも、次第に、「いやだ、家がいい」「行きたくない」と強く拒否するようになりました。
旅行から帰ると「楽しかった!」と言うこともあったのに、 次の旅行や祖父母の家に泊まりに行くのをまた強く嫌がる。
「なんで?」「どう関わればいいの?」と私は分からなくなっていました。
私が子どもの頃は、旅行が楽しみだったので、なおさら息子の気持ちが理解できませんでした。

3.不安が強いASDの子どもが旅行嫌いなのはなぜ?
♦①ネガティブな記憶が残りやすい
ASDの子どもは、ネガティブな記憶が残りやすい脳の特性があります。
そのため、息子は旅行での楽しかった記憶よりもネガティブな記憶のほうを覚えていることが多く、次の旅行の前に思い出し「旅行嫌い。行きたくない」となると考えられます。
息子の場合のネガティブな記憶とは、
- 車酔いして吐いた
- 渋滞で疲れた
- 行った先でやったことが思ったより楽しくなかった
- 家以外の場所で寝るのが落ち着かない
などが息子と話して分かったことです。
また、ASDの子どもは、脳の扁桃体という不安や恐怖を感じる部分が過剰に反応しやすく、不安を強く感じやすい特性があります。
もともと、初めての場所や見通しが立たないことに不安を感じやすく、他の人であればそこまで気にならないことでも、強い不安を感じることがあります。
幼児期には、旅行前に強く嫌がることはなかった息子ですが、振り返ると、旅行先の初めての場所に入るのを嫌がったり、祖父母の家で落ち着いて眠れず、泣いて暴れたことがありました。。
♦②「だいじょうぶ」では不安は消えない
ASDの子どものネガティブな記憶や不安は、「だいじょうぶ」というだけでは解消させません。
「行きたくない」と言われると、安心させたくて「だいじょうぶ。楽しいよ。」と声をかけていました。
でも子どもにとっては、
「行きたくない気持ちを否定された」
「ママが自分の気持ちを分かってくれない」
と感じることもあります。
私は、「旅行は楽しいもの」という自分の考えから、息子の不安を十分に受け止めないまま関わっていました。
その結果、幼児期から出ていたSOSにも気づけず、旅行への不安を強めてしまっていたのだと思います。

4.旅行嫌いな不安が強い子どもが挑戦できた3つの関わり
♦①カウンセラーモードで話を聞く
旅行へ「行きたくない」と言われたら、まずは「そっか。そうなんだねー」と子どもの気持ちを受け止めます。
ここで大事なのは、ママの気持ちや意見を言わないことです。
その上で、子どもの気持ちを聞いていきます。
私「旅行に行くのなんで嫌なのー?」
息子「家がいい。落ち着かない」
私「そっか。そうなんだね。他にもある?」
息子「車に乗ってる時間が長いから疲れる」
私「そっか。乗ってる時間が長いと疲れるよね。話してくれてありがとう」
こういった感じで、子どもの不安を全部聞いてあげます。
「行きたくない」と言ったとき、「大丈夫だよ」と言うよりも「そっか。そうなんだね。」と気持ちを受け止めてあげ、不安な気持ちを全部聞いてあげる。
そして、「乗ってる時間長いと疲れるよね。」と理解を示してあげる。
そうすることで、「ママが分かってくれた!」と安心し次の一歩に進めます。
♦②挑戦できる条件を一緒に考える
息子の不安を聞いた上で、「これならできそう」を一緒に探していきます。
そのときに意識したのが、 以前の旅行でうまくいったときの行動や持ち物を思い出し、それをもう一度やってみる、持っていくことでした。
息子の場合は、以前の旅行先でポケモンGOをやることを楽しみに、「じゃあ頑張っていく」と挑戦することができました。
他にも、お気に入りのおもちゃや抱き枕を持っていくことで落ち着いて眠ることができたので、それを持っていくことを提案しました。
どうしても車で2泊は不安だという様子だったので、「電車で1泊ならどうかな?」と、 できそうな形に変えて一緒に考えていきました。
♦③見通しを立ててあげる
挑戦できそうなことを考え、旅行へ前向きになったら、見通しを立ててあげるようにしました。
「電車に1時間乗ったらおばあちゃんの家に着くよ」
「おばあちゃんの家に着いたら、まずお昼を食べて、それから公園に行くよ」
また、出先で行く場所の写真を見せてあげると、イメージがしやすくなるのでおすすめです。

5.旅行嫌いで外泊を嫌がっていた息子の変化
息子が安心できる3つの関わりをすることで、 最近では祖父母の家へ泊まることができました。
- 電車で行く
- 好きなものを持っていく
- 好きなことができる
まずは不安を受け止め、「これならできそう」な条件を整えたことで、 息子の中に「やってみようかな」という気持ちが生まれました。
中でも大きかったのは、 行った先で好きなことができるようにしたことです。
好きなことができるなら、苦手なことでも頑張ってみようかなと、息子のやる気につながりました。
また、事前に見通しを立てていたことで、直前に「行きたくない」と強くぐずることもありませんでした。
祖父母の家でも落ち着いて過ごすことができ、「もう1泊泊まってもいいかも」と言うほどでした。
ただ、次の旅行や外泊でも、 また「行きたくない」と言うことはあると思っています。
それでもその都度、「どうしたらこの子が安心できるかな」と考えながら関わっていくことで、不安があっても「行ってみようかな」と一歩踏み出せる場面が少しずつ増えていくように思います。
もしかしたら今は、 外に出ること自体が難しいお子さんもいるかもしれません。
そんなときは、無理に進めなくても大丈夫です。
まずは、子どもの気持ちを聞くことから試してみませんか?

執筆者:木村 まい
発達科学コミュニケーション アンバサダー





