給食が怖くて食べられない子が「多分できるよ」に変わった声かけ

給食を持っている男の子
「無理だよ」と言われるたび、どう関わればいいのか分からなかった私。 母子分離不安で給食がつらかったわが子が、『魔法の枕詞』という声かけで、安心して過ごせる時間を少しずつ重ねていった体験です。
 
 

1.「無理だよ」と言うわが子 に「勇気を出す声かけ」が分からなくなるとき

 
 
ちょっとでいいから踏み出してほしいのに、どんな声をかければ勇気を出せるのか分からない。
 
 
やればできそうだと感じているからこそ、「無理だよ」という言葉で終わってしまうたびに、このままでいいのかと不安になる
 
 
背中を押したい気持ちはあるのに、追い込んでしまうのではないかという怖さも拭えず、その間で迷い続けているママはいませんか。
 
 
この記事では、不安が強く「無理だよ」と動けなくなっていたわが子に、私がどのように声をかけ、少しずつ「できるかもしれない」を増やしていったのかをお伝えします。
 
 
悩むお母さん
 
 

2.背中を押したいのに、 背中を押せなかったあの頃の私

 
 
私の子どもは小さいころから、大きな音や人の表情、言葉に敏感な子でした。
 
 
人混みや初めての場所も苦手でしたが、小学校入学当初は大きく嫌がることもなく登校していました。
 
 
ところが、小2の2学期を境に、突然学校に行けなくなってしまいました
 
 
校門から一人で入ることもできず、私と一緒に、今日は校庭まで、今日は下駄箱まで、今日は階段までと、少しずつ進めるようにはなりました。
 
 
それでも状況は安定せず、車から出られない日があったり、前日まで行けていた場所に行けなくなったりと、進んでは戻ることの繰り返しでした。
 
 
数か月かけて、私と一緒なら一日学校で過ごせるようにはなりましたが、給食だけはどうしても食べられませんでした
 
 
給食の時間になると一度家に戻り、昼食を済ませてから、また学校へ戻る…そんな生活を続けていました。
 
 
一日に何度も車で往復する日々に、正直、心も体も疲れ切っていました
 
 
「ママが見ててあげるから、少しだけ食べてみたら?」 そうやって安心させる声かけをしても、返ってくるのはいつも「無理だよ」という言葉。
 
 
理由を聞くと、
 
「気持ち悪くなったら嫌だ。」
「吐いてしまうのが怖い。」
 
と教えてくれました。
 
 
勇気を出してほしい気持ちと、無理をさせてしまう怖さの間で、どう関わればいいのか分からなくなっていました。
 
 
困っている男の子
 
 

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3.母子分離不安の子に、声かけが届かなかった理由

 
 
私の子どものように、音や人の表情に敏感な子は、気が弱いのではなく、危険を察知する脳の働きが強く出ている状態にあります。
 
 
周囲の刺激を受け取りやすいため、実際の状況以上に「何か起きるかもしれない」と感じやすいのです。
 
 
不安が強まると、子どもの脳は「考える」よりも先に、身を守ることを最優先に切り替わります。
 
 
このとき使われているのは、落ち着いて判断するための脳ではなく、逃げる・避ける・固まるといった反応を司る脳の回路です。
 
 
その結果、やりたくないのではなく、やろうとしても体が動かない状態になっていました。
 
 
この状態のときに、「大丈夫だよ」「少しだけやってみよう」と声をかけても、子どもの脳には励ましではなく、『今すぐ動かなきゃいけない』というプレッシャー として届いてしまうことがあります。
 
 
私自身、背中を押しているつもりでしたが、息子にとっては『不安なまま動くこと』を求められている感覚だったのかもしれません。
 
 
すると不安はさらに強まり、「無理だよ」という言葉で自分を守ろうとしてしまうのです。
 
 
不安の文字と不安そうな人形
 
 

4.給食だけ食べられない子に届いた声かけ

 
 
私が出会った発達科学コミュニケーション(発コミュ)では、前置きを効果的に使うことで、言いにくい状況を打破したり、子どもをその気にさせる事ができる「魔法の枕詞」と呼ばれる声かけを教えてくれました。
 
 
当時、私がよく使っていたのが「多分できると思うんだけど…」という言葉で、勇気を出してほしい時や、苦手な事にチャレンジさせたいときに使える声かけでした。
 
 
この一言をつけるだけで、子どもの表情が少しやわらぐのを感じました。
 
 
給食を食べることが難しかった頃、私はこんなふうに声をかけていました。
 
 
多分できると思うんだけど廊下に机を移動して、給食を一口だけ食べてみない?」
 
 
最初は「無理だよ」と言っていた息子も、少し考えてから、「本当に一口でいいなら、やってみようかな」と答えてくれました。
 
 
一度できると、その次は一口が五口になり、気づけばお皿の半分まで食べられる日も出てきました
 
 
そこで今度は、
 
多分できると思うんだけど、教室の後ろで食べてみない?」
 
と場所だけを変えて声をかけてみました。
 
 
すると返ってきた言葉は、「無理だよ」 ではなく、「多分できるよ」でした
 
 
このとき私が感じたのは、勇気は無理に引き出すものではなく、安心できる形で差し出された選択肢の中から、子ども自身が選んでいたということです。
 
 
「多分できると思うんだけど…」という枕詞は、ただ子どもをその気にさせるための言葉ではありませんでした。
 
 
『やらなきゃいけない』という緊張を和らげ、「これならできるかもしれない」と感じられる安心の入り口になってくれました。
 
 
安心と安全と人形
 
 

5.わが子が、安心して過ごせる時間を重ねていった変化

 
 
少しずつ安心できる時間が増えていく中で、息子の中にも目に見える変化が現れていきました。
 
 
給食の時間、自分の机で食べられる日が増え、最初から「これなら食べられそう」と感じる量に自分で減らしに行けるようになりました
 
 
また、給食の時間の過ごし方も少しずつ変わっていきました。
 
 
最初は落ち着いて座っているだけで精一杯だった給食の時間が、私が教室の後ろにいるだけでも、安心して過ごせる時間になっていきました
 
 
やがて、私が教室の外にいても不安が大きくならず、給食の時間そのものを最後まで過ごせる日が増えていきました
 
 
「ママが近くにいなくても平気」という感覚を、息子は食べられた量ではなく、その時間を過ごせたという体験として、少しずつ積み重ねていったのだと思います。
 
 
授業中の風景
 
 

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執筆者:夏井 さや
発達科学コミュニケーション トレーナー
 
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