小学生の癇癪に悩んでいませんか?お家療育シリーズ第3弾では、感情のコントロールを育てる絵本の読み聞かせをSSTの視点から解説。実体験と専門知識を交え、家庭でできる関わり方を紹介します。
1.小学生になっても癇癪が続く…それは「わがまま」ではないかもしれません
「もう小学生なのに、まだ癇癪がひどい…。うちの子大丈夫なのかしら?」
そんな悩みを抱えているママはいませんか?
✔️思い通りにならないと泣き叫ぶ。
✔️ゲームを終わらせると怒る。
✔️負けると物に当たる。
学校ではいい子なのに、家では感情が爆発してしまう。
親としては「そろそろ感情をコントロールできるようになってほしい」と思ってしまいますよね。
私も以前はそうでした。
でも、発達について学び、たくさんの親子と関わる中で気づいたことがあります。
それは、小学生の癇癪は「困った行動」ではなく、まだ自分の気持ちをうまく整理したり、言葉で伝えたりすることが難しいというサインであることが少なくない、ということです。
だからこそ、「癇癪を止めること」を目標にするのではなく、「感情をコントロールする力」を少しずつ育てていくことが大切です。
この記事では、お家療育シリーズ第3弾として、生徒さんの実体験と脳科学の視点を交えながら、家庭で無理なく取り組めるお家療育をご紹介します。

2.「落ち着きなさい!」と怒鳴るばかりの毎日
ある生徒さんの体験談をご紹介します。
Cさんは、小さい頃は息子さんの癇癪にずっと悩んでこられました。
- ゲームで負ける。
- 思い通りにならない。
- 予定が変わる。
そんな些細なことでも感情が爆発し、大泣きしたり、怒ったりすることがよくありました。
そのたびに Cさんは
「もう小学生なんだから」
「そんなことで怒らないの!」
「落ち着きなさい!」
と声を荒げて叱ってばかりいたそうです。
しかし、その言葉で息子さんが落ち着くことはほとんどありませんでした。
それどころか、Cさんが感情的になるほど、息子さんの癇癪も大きくなっていったのです。
当時のCさんは
「どうしてこんなに怒るんだろう。」
「他の家の子は、小学生にもなってこんなわがまま言っていない…。」
「私の育て方が悪いのかな。」
と自分を責めていました。
そんな時に発達科学コミュニケーションを学び、子どもの発達特性にあった関わり方を学んでいくうちに
息子さんが怒っていたのではなく「どうしたらいいか分からなくて困っていた」ということに気づきました。
悔しい。悲しい。不安。恥ずかしい。
こんな気持ちをうまく言葉にできず、「怒る」という方法でしか表現できなかったのです。
そう考えられるようになると、Cさんの関わり方も少しずつ変わっていきました。
Cさんは「どうして怒るの!」ではなく、「嫌だったんだね。」と、まず気持ちを受け止めるようにしました。
すると少しずつ、息子さんは自分から「悔しかった。」「負けたから悲しかった。」と言葉で話せる場面が増えていったのです。
もちろん、小学校高学年になった今でも、息子さんの感情が大きく動くことはあります。
でも、「怒るしか方法がない」状態から、「言葉で伝える」という選択肢が増えたことで、癇癪は少しずつ落ち着いていきました。
Cさんはこの経験から、子どもに必要だったのは、「怒らない練習」ではなく、「気持ちを表現する練習」だったのだと実感したとおっしゃっていました。

3.癇癪は「感情をコントロールする力」が育つ途中のサインです
小学生になると、「もう感情をコントロールできるはず」と期待してしまいます。
でも実際には、感情をコントロールする力は、少しずつ経験を積み重ねながら育っていくものです。
例えば、大人でも
仕事で失敗した時
予定どおりにいかなかった時
突然嫌なことを言われた時には
すぐに気持ちを切り替えるのは難しいですよね。
子どもなら、なおさらです。
特に発達障害グレーゾーンや自閉スペクトラム症(ASD)傾向のある子どもの中には、自分の気持ちを整理したり、相手に伝えたりすることが苦手な子もいます。
そのため、悔しい気持ちや悲しい気持ちが一気にあふれ、「癇癪」という形で表れてしまうことがあります。
ここで大切になるのが、「メタ認知」という力です。
メタ認知とは「今、自分はどんな気持ちなんだろう?」と、自分の心を客観的に見つめる力です。
悔しかった。
悲しかった。
不安だった。
恥ずかしかった。
このように自分の気持ちに気付き、言葉で表現できるようになると、「怒る」以外の方法で気持ちを伝えられるようになっていきます。
だからこそ、お家療育では「癇癪を止めること」を目標にするのではなく、感情に気付き、言葉で表現できる力を育てることを大切にしたいのです。
その方法の一つとして、私がぜひおすすめしたいのが「絵本の読み聞かせ」です。
絵本は、ただ物語を楽しむものではありません。
登場人物の気持ちを一緒に考えたり、「もし自分だったらどうする?」と話したりすることで、自然と感情を整理する力や相手の気持ちを想像する力を育てることができます。
児童発達支援の現場でも、絵本はSST(ソーシャルスキルトレーニング)の教材として活用されています。
次は、家庭でもすぐに実践できる「絵本を使ったお家療育」の方法をご紹介します。

4.親子で取り組みたい|絵本の読み聞かせで感情を育てよう
「感情をコントロールする力を育てたい。」
そう聞くと、何か特別なトレーニングが必要だと思うかもしれません。
でも実は、家庭でできる一番身近なお家療育の一つが「絵本の読み聞かせ」です。
児童発達支援の現場でも、子どもたちの社会性や感情を育てる活動として、絵本をよく取り入れています。
ただ読むだけではなく、登場人物の気持ちを一緒に考えたり、自分の経験と重ねたりすることで、子どもは少しずつ感情を理解し、言葉で表現する力を育てていきます。
つまり、絵本は「読むもの」ではなく、「気持ちを育てる教材」でもあるのです。
① 「この子はどんな気持ちかな?」と聞いてみる
読み聞かせで最も大切なのは、親が物語を説明することではありません。
登場人物の表情や行動を見ながら「この子は今、どんな気持ち?」と問いかけてみましょう。
最初は「うれしい」や「かなしい」だけでも十分です。
慣れてきたら「悔しかったのかな?」「恥ずかしかったのかもしれないね。」と、少しずつ感情の言葉を増やしていきます。
感情の語彙が増えることは、癇癪の代わりに言葉で気持ちを伝える力につながります。
② 「○○くんだったらどうする?」と自分に置き換えて考える
主人公の出来事を、自分の経験と結びつけることも大切です。
例えば、「もし○○くんだったらどうしたかな?」と聞いてみるだけで、絵本の世界が自分の経験とつながります。
これはSSTでもよく行われる方法で、「自分ならどう行動するか」を考える力を育てます。
③ 正解を教えず、子どもの気持ちを受け止める
「こう考えるのが正しいよ。」と答えを教える必要はありません。
子どもが「怒ってると思う。」「嫌だったんじゃない?」と話したら、「そう思ったんだね。」と受け止めることが何より大切です。
自分の考えを安心して話せる経験が、気持ちを言葉で表現する力につながっていきます。
④ 登場人物の気持ちの変化を一緒に見つける
絵本の中では、主人公の気持ちが少しずつ変化していきます。
最初は怒っていた子が、友達に話を聞いてもらって笑顔になったり、
失敗して泣いていた子が、最後には前向きな気持ちになったりします。
「最初はどんな気持ちだった?」「それからどう変わった?」と一緒に振り返ることで、子どもは「気持ちは変わるものなんだ」と学んでいきます。
これは、癇癪が起きた時にも「今は怒っているけれど、この気持ちはずっと続くわけではない」と理解する土台になります。
⑤ 最後は「今日、似たことあった?」で終わる
読み聞かせが終わったら「今日、学校で似たことあった?」「悔しかったことあった?」 と、子どもの一日に話題を広げてみましょう。
ここで初めて、絵本の世界と現実の生活がつながります。
毎日続ける必要はありません。
一冊の絵本を読みながら、5分だけ親子で話す時間を作るだけでも十分です。
その積み重ねが、「怒る」だけだった子どもに、「悔しかった」「悲しかった」と言葉で伝える力を少しずつ育ててくれます。

5.癇癪をなくすことより、「気持ちを伝えられる子」を目指しましょう
癇癪が起きるたびに、「どうしたら怒らなくなるのだろう」と悩んでしまいますよね。
でも、子どもは好きで癇癪を起こしているわけではありません。
言葉にできない気持ちがあふれ、「どうしたらいいのか分からない」というSOSを、一生懸命伝えているのです。
だからこそ、お家療育で目指したいのは、「怒らない子」にすることではありません。
自分の気持ちに気付き、言葉で伝えられる子を育てることです。
その積み重ねが、気持ちを切り替える力や相手を思いやる力につながり、少しずつ癇癪も落ち着いていきます。
夏休みは、親子でゆっくり過ごせる貴重な時間です。
絵本を通して「今日はどんな気持ちだった?」と話す時間をつくってみてください。
その何気ない5分間が、お子さんの未来につながる大切なお家療育になるはずです。






